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コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

いらっしゃいませ


 淳のお話ブログへようこそ


   「なんでも書いていいノート」を友人達でまわして好き勝手な事を書き・・そこから生まれたお話が、この「コールナンバーダブル J」です。

  ならば、登場人物も私や友人達のお気に入りアニメキャラにしよう。国際秘密警察なんて本当はいないから(当時、そう思っていました)自由に書けていいよね、と安易な設定で書き始めたお話が、昭和を生き抜き、中断があったものの平成の世で再び甦るとは思っていませんでした。

  サブタイトルは「昭和(S51~S57)」「平成(H18~ )」にわかれます。
  何も考えずに書きなぐった昭和。少しは考えて・・でも書きなぐっている平成。
  しかし元々自分が楽しむために書いたものなので、他人様には読みにくい所が多々あります。でも文章がよほどおかしくない限り、当時のままを載せようと思います。

  では、下記の一覧よりお入りください。


  コールナンバーダブル J  サブタイトル一覧へ

  ※  S51~S57   ⇒    一覧へ
  ※  H18~         ⇒    一覧へ
  ※  登場人物紹介

  ※  淳のたからもの      ⇒    一覧へ   

 

   お話は1話完結ですが、シリーズ物なので最初から(上記一覧の上から順番に)読んでいただければ、詳細もわかってよいのですが、「細かい事は面倒くさい!でも、ちょっと読んでみてもいいかも」という方はこちらへどうぞ─

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Posted by  朝倉 淳   0 comments   0 trackback

スクール・ララバイ 1


「内田か? 神宮寺だ」
『おー、久しぶりだなァ、神宮寺』
 携帯電話からいつも元気な友人の声が響く。
「先日の、キャンセルが出たからってお誘いの件だがまだ空きはあるか?」
『ああ、あと1人分だが、なに? 参加できるの?』
「うん、急に休暇が取れて・・・2日前で悪いんだけど」
『なに言ってる、大歓迎さ』
 中学の同窓会を箱根1泊旅行で行うと幹事の内田から連絡が来たのは1ヶ月程前だった。だが仕事上参加は無理だ、と神宮寺は不参加の返事を出した。
 が、10日程前にキャンセルが出たので行かれる人は連絡をくれ、と内田からの電話が回ってきた。
『今回は少人数の予定が本当に少人数でな。君を入れて8名だ。就職した奴らが多いから仕方ないが、でも君が参加するといったら女子がうるさいぞ。もっと早く知らせてくれたら君をエサに女子を誘えたのに』
「エサってなんだよ」
 苦笑し─ 言ってしまってからジョーの言い方に似てるな、と思った。その目をいつも彼が寝っ転がっているソファに向けた。
 ポカリと空いたその空間がとても広く感じた。

「休暇、ですか?」
 神宮寺は目の前に座る森を見つめた。
「うむ。榊原さんからの提言でね。今回のMOX エンジンシステムの件は長丁場だったし、君の勤務記録を確認したら最低限の休暇も取れていない。管理課からも指摘があった」
「しかし、ジョーがこんな時に自分だけ休暇を取るというのも・・・」

 3日前、MOX エンジンシステムを搭載したマークXからMOX ボックスを回収したジョーは、衝突間際の車から飛び出し地面に転がった。腹にMOX ボックスを両腕で庇うように押し付けていたので受身が取れず、おまけに飛んで来た車体の一部に当たり全身打撲の重症を負った。
 神宮寺から連絡を受け榊原が受け入れ態勢を整える。
 その際少量の血を吐いたと報告があり、肺からの喀血かと懸念したが一目見て胃からの吐血だとわかった。すぐに抗潰瘍薬が投与された。
 それから1日意識が戻らない状態が続いたが、早期の治療と持ち前の体力で2日目の朝には目を覚まし榊原と話せるまでに回復した。今日の午前中に神宮寺が寄った時にはカップ半分ぐらいだがスープを飲んでいた。が、退院するまでにはもう何日か掛かるだろう。

「ジョーの事は君がヤキモキしても仕方がない。榊原さんに任せておけば大丈夫だ。休みは取れるうちに取っておいた方がいい」
 MOX ボックスは回収できたがアンディを始めとしたザーツの連中を捕まえる事はできなかった。追跡捜査はチーム3の担当となった。
「私としても榊原医療部長の意見は尊重したいし」
「・・・同窓会に、行けるかな・・」え? と森が聞き返すのへ、「あさって同窓会の旅行があるんです。一泊で箱根ですが今まで一度も参加できなくて」
「榊原さんは自宅でゆっくり休むように言っていたが一泊なら行って来たらいい。箱根なら近いからすぐ東京に戻ってこれるだろう」
 ニッコリ笑顔で言う森に、やっぱり何かあったら呼び戻されるんだろうなと半ば諦め顔で神宮寺はチーフ室を出た。
 だが、6階に戻るとすぐに幹事の内田に電話を入れた。

「ねえ、師長さん。なんで今回おれこんな高い部屋に入れられてるの?」
 ベッドの背を少し起こしジョーが訊いた。
 見るとそこはいつのも312号室ではない。部屋の広さは倍近くあり、内装も豪華だ。10階なのでベッドからは本当に空しか見えない。
「312号室は改装中なの」師長─榊原敬子看護師長は榊原医療部長の姉だ。今回はジョーの担当らしい。「脱走する患者がいるから鉄格子を入れるとか入れないとか─」
「ひでェ・・・」とクサるジョーに敬子が笑った。「こんな高い部屋に何日もいたらまた借金が増えそうだ」
 特別室ではないが、このフロアに入院するのは金持ちが多い。病室もそれなりに豪華だし、隣接した病棟の屋上を利用した庭園にもすぐに出られる。食事も豪華らしいがジョーはまだお目に掛かってはいない。
 もっともJB持ちなので、ジョーはここで暮らしても大丈夫なのだが。
「ところでおれいつになったらメシ食えるんです? ハラへって病院で餓死なんてまっぴらだ」
「午前の診察で潰瘍がまだ完治していないので、固形物の摂取は明日以降になると院長が言ってたわ」まるで幼稚園児のようにダダをこねるジョーを、しかし穏やかな表情で敬子が取り成していく。「もう1日我慢してね。その代わり院長のお許しが出たらチョコレートでもケーキでも差し入れしてあげるわ」
「ガキじゃあるまいし・・・」
 母親と同じくらいの年齢の相手に、ジョーもあまりきつい事は言えない。手際よく包帯を換え、点滴を調整する敬子をじっと見ている。
 実際、空腹はあまり感じない。だが車から飛び出しそのまま地面を転がった際の打撲で全身が悲鳴を挙げている。何か言っていないと呻き声がもれそうだ。そんな格好悪い事はいやだ。
 ジョーは枕に頭を押し付け、知らずうちに大きく息を吐いた。
「鎮痛剤を入れたから少しは痛みが緩和されるわ。ベッドを戻す?」
「いや・・・このままで」
 ジョーは目を瞑りそのまま眠りに落ちそうになる。催眠剤を入れたのかな? と思ったとたん目を開けた。病室を出て行こうとする敬子を止めた。
「師長さん、おれが子どもの頃、事件の後に入院したのを覚えてる?」
「・・・ええ」小さく頷き敬子はもう一度ベッドのそばに戻って来た。「報道規制がされていたのにここに入院した事がマスコミに知れて、父が苦慮していたわ」
 アサクラ氏の事件は報道規制がされていたのだろうか。そんな話は聞いた事がない。
「ここは完全看護だから夜間の泊り込みは禁止されているけど、父があなたに関してはご両親の泊まり込みを許可して、病室にエキストラベッドを持ち込んで─」
「・・え」
 両親? その時にはもう両親は亡くなっているはずだ。入院の付き添いなどできるはずはない。敬子は誰か他の子どもと間違えているのだ。
「師長、それはおれじゃなくて─」

─ ジョージ! ─

   え? 

 突然ジョーの周りに風景が飛んだ。どこかわからないところに立っていた。右手が痛い。

  誰かが強く掴んでいた。 

   放して! 

 ─ ジョージ! ─ 

 男の声が彼を呼ぶ

    放せ!

 目の前を金色に光る髪が流れた─

「ジョージ君、どうしたの?」
 敬子がジョーの顔を覗き込んだ。
「う・・・」
 自由になる右手で口元を押さえ、ジョーは全身を震わせている。顔面は青ざめ、目は何かを探すようにキョロキョロと動き回る。頭の片隅で何かが光ったような気がした。思わず瞳を閉じる。が、それも長くは続かなかった。
「ジョージ君、おちついて、大丈夫だから」何が大丈夫なのかよくわからないが、敬子の言葉にジョーは次第におちつきを取り戻していく。「いい話ではなかったわ。ごめんなさい」
 その言葉にジョーが首を振った。言い始めは自分だ。敬子が悪いわけではない。
「・・・師長・・今の話・・・」口が渇いたようにうまく声が出せない。おまけにとても眠い。「・・話を・・・」
 だがジョーはそのまま眠りに落ちた。
 白いシーツの上を枯葉色の髪がサァと流れる。その髪をソッと整え敬子が小さく息をついた。

「逃走車両が発見されたって?」
 神宮寺が目の前にトレイを置く洸を見上げた。
「N システムでアンディ達が使ったと判明した車さ。所沢に乗り捨てられていたって」
 アンディ達の行方を追っているチーム3から聞いたのだ。同チームの巻は一平や洸の養成所の同期だ。
「もちろん奴らの行方はまだ掴めていないけどね」
「・・・そうか」
 飲もうとしたコーヒーを、しかし彼はトレイに置いた。
 明日からの休暇のために今日はいつもより少し早く出て来た。書類の整理をして早めの昼食を摂りに食堂に来たのだが。
「この分ではいつ呼び出しが入るかわからないな」
「そんな事気にするなよ。いざとなったらおれ達が出るから」クルッとフォークにパスタを巻きつけ一平が言った。「同窓会旅行か、いいなあ。ジョーには言ったの?」
「いや、言うと、“おれがスープしか飲めねえのになんでお前が豪華な料理食うんだよ!” って言われそうで」確かに~と2人が笑った。「何かあったらすぐにリンクに入れてくれ」
「大丈夫だってば。それよりお土産忘れないでね~」
 トレイを片付け食堂を出て行く神宮寺に洸が手を振った。
「あの調子で遊べるのかな。遊ぶ時は何もかも忘れてパーと思いっきり遊ばないとかえって疲れるのに。神宮寺らしいけど」
「お前は忘れすぎだ、洸」一平がチロリと横目を洸に流した。「張り込みの最中に休日の事を考えていて。もう少しでマル対を見失うところだった」
「それって養成所の訓練の時の話じゃん!」
「だけど、さっきの神宮寺の言い方・・・ジョーに似てたな・・」
「うん・・・、ぼくもそう思った・・・。神宮寺もジョーみたいになったら・・・」
 なにかとても恐ろしいことを口にしたようで2人は全身をブルル・・・と震わせた。

 その頃神宮寺は4階の捜査課に顔を出していた。
「アンディ達の車が所沢で発見されたのはおれも聞いてる」珍しくデスクワークに就いている西崎が言った。「チーム3が周辺を洗っているがまず無理だろうな」
 ダブルJとタッグを組んだチーム1の任務はザーツのメンバーの確保だった。だが奴らはMOX エンジンシステムの車を暴走させるという混乱の中うまく逃げ延びた。
 西崎は引き続きこの事件の担当を望んだがチーム3に移行された。
 途中で担当が代わる事は決して珍しくはない。が、西崎達チーム1の悔しさは容易に想像できる。
「ヘタしたら、もう日本にいないかもしれない」
「ジョーが奴らのコンピュータのデータを消却したと言っていた。残っていたとしてもあの爆発でコンピュータ自体使い物にはならないだろう。データが流出しないだけマシか」
「ん・・・。ところで明日から同窓会で箱根だって? いいなァ、おれも温泉に浸かりたい!」
 その言葉に周りから、“土産は温泉まんじゅうな” “蕎麦もうまいぜ” と声が飛ぶ。
「まったく・・・。君といい一平といい、どこから聞いてくるんだ?」
「そんなの決まってるだろ」西崎がツンツンと指で上を指し示した。2つ上は6階、ダブルJ やJB2の部屋がある。「でも君は事件の事は気にせず温泉を楽しんで来いよ。友人に会って話して笑って・・・。そうすればまた活力が出る。明日に向かって行かれる」
「・・・うん」
 一時、期神宮寺が悩んでいた事を知っている西崎の言葉に彼は素直に頷いた。そしてこの2日間呼び出しがなければいい、と本気で思った。

「すみません、院長。私、間違えたようです」
「師長は10年前・・・・の事件の時のジョーの担当看護婦だったんだから仕方ないですよ」敬子と共に病室を出て榊原が言った。「だけど彼は本当に覚えていないのだろうか・・・」
 昨日、敬子と話してから眠りについたジョーはそのまま翌日も眠り続けていた。
 昏睡などという危険な状態ではなく、ただ眠っているだけだ。まるで彼の脳が記憶の調整をしているように・・・。
 榊原はそれを止める事はできなかった。

 カーテンを開けると真っ青な空が一面に広がっていた。
 神宮寺は昨夜の残りのシチューを温め直し、卵とハムを取り出して朝食の準備を始めた。
 1人暮らしをはじめて4年。朝食は行きつけのサ店かJBで摂る事が多いがこの作業は嫌いではない。
 ジョーはよく朝食を抜くらしいが神宮寺は朝食だけはキチンと食べるようにしている。
「朝メシ食わないであの体を維持してるんだから、ある意味すごいよな」
 ジュッと卵の焼ける音がした。
 昨日早めにJB を出て新宿で買い物をした。男の一泊旅行に大した荷物はないが、新しいジャケットを1枚買った。お気に入りだったジャケットは前の事件の時に焦げてボロボロになってしまった。ジョーと同じで彼の服も長持ちはしない。
 ふとジョーの所に寄って行こうかと思ったが─ やめた。
 明日から久々の休暇、それも友人に会えるという事で自分でも浮ついているのがわかる。そんな顔をジョーに見られるのはいやだった。
 それに今日は西崎が見舞いに行くと言っていたので、彼から相棒の休暇が知らされるだろう。
「西崎に当たらなきゃいいけどな」
 食器を片付け小さなバッグを持ち部屋を出る。集合場所の新宿までは中央線で5分だ。

「神宮寺ー!」
 ロマンスカーのホームに元気な内田の声が響いた。神宮寺も手を上げ応える。
「キャー! 本当に神宮寺君だァ!」
「久しぶり!でかいなあ」
 黄色い声と太い声が入り混じる。
「山村さん、安木、市田─ 皆久しぶり」
 中学を卒業して8年。皆すっかり大人になったが、こうして会うと当時の顔が浮かび上がってくるから不思議だ。
「神宮寺が参加するのは初めてだな」
 変わらぬ大きな瞳の市田が言った。
「いつも連絡を貰っているのに申し訳ない。今回も急で内田には面倒かけた」
「かまわないさ。うちの親戚の旅館だから融通が利くし」
「私、夕べ恵美に神宮寺君が参加するって電話したの」短めのサラサラヘアを揺らし美加が言った。「そうしたらひどく残念がってたわ。早く教えてくれなかった内田君を恨むって」
「なんでおれが恨まれるのよ~
 皆の笑い声と共にロマンスカーに乗り込もうとして、
「あれ? 8人じゃないのか? 1人足りないぞ」
「原口は小田原だからな。現地集合なんだ。─ お、ここだ」
 クルッと座席を回し、女の子達に席を勧めて自分もちゃっかりその横に腰を下ろした。
「おい、女子3人を1人締めかよ」
 中学時代サッカー部だった安木が口を尖らせる。
「私、神宮寺君の隣がいい」
「内田君、向こうに座ってよ」
「神宮寺君、こっち」
「・・・お前、やっぱ参加しなくていいわ」
 ジト目の内田に睨まれ神宮寺が肩をすくめた。



                                 2につづく



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暴言


 まったく、なにが自分勝手な行動はとるな、だ。
 あそこで飛び出さなかったら全滅していたぜ。

 歳取って柔らかくなっちまったのかな、親父達。
 もっと若い者に任せてほしいね。
 おれ達がJB を握る日も近いってもんだ。
 でも、チーフにはなりたくねえな。

 『間違ってもそれはない』

 げっ! ナビが入りっぱなしだった。



     ※ 日常お題ったー
          ジョージ・アサクラさんの本日のお題は「暴言」、
          ポップな作品を創作しましょう。
          補助要素は「車内 or 機内」です。


Posted by  朝倉 淳   0 comments   0 trackback

闇に輝く光の下(もと)に 完


「ボルツァーノ」誰かの声がした。「ボルツァーノ」
 おれを呼んでいるのか?だがおれの名はボルツァーノではない。おれは─。
 ふと目の前に大きな背中の男が見えた。ボルツァーノか? 
 そう呼ぼうとした瞬間、男が振り返った。と、その顔は─。

「うわっ!」
 ジョーは飛び起き、しかし体がベルトで締まり、うっと呻いた。
「ハリアを壊さないでくれよ、ジョー」
「神宮寺・・・」状況がわからず一瞬キョトンとした目を相棒に向けたジョーだが、フロントに広がる広い道路に、「東北自動車道か?」
「該当車が東北自動車道を東京方面に向かっているとヘリから連絡が入った。上空からマークX を捕捉している。関さんを確認した」
 ジョーが舌を打った。
「大丈夫か」
「ああ、休んだら復活したぜ」そう言う顔色はまだ良くないが双瞳には気力が戻っていた。以前、病室で見たジョーの顔とは雲泥の差だ。「マークX は一度も止まらなかったか?」
「中根からの報告ではそのようだな。おそらく信号と連動するシステム(信号管理システム)を搭載しているんだろう」
 都市部では朝の通勤時間のみ路線バスが近づくと、それに合わせて信号が青になり渋滞を緩和するシステムがとられている。それと同じものがマークX にも積まれているのだろう。奴にしても途中で止まって爆発してもらっては困る。
「政府の研究所で造った車よりすげえじゃん」鹿沼IC の標識が後ろへ飛んで行った。「だけどあの車のシステムは不完全だ。短時間で改良できたとは思えない」
「原因はMOX にあるのかもしれない。いくらザーツでもそう簡単にMOX は手に入らないだろうし・・・。不純物の多い物か、もしくは代用品か・・・」
 ハリアは制限速度ギリギリで他の車を追い抜いていく。平日の昼間のせいか車はそう多くない。
「マークX は川口ICまではこのまま自動車道を行くだろう。一般道に降りるまでになんとかしたい」
「乗り移るしかねーな」一瞬で決まった。「中根、おれ達もそっちに移る。迎えに来てくれ」
「チーフ、神宮寺です」森を呼び出し状況を説明した。「マークX は東北自動車道を川口IC まで行くと思われます。栃木IC から南を封鎖してください。ICもです」
『と、東北自動車道をかね』
「一般道に降りられたら手の打ち様がありません。不発弾の処理だとでも言って車を締め出してください」
 一瞬沈黙が生じたが、やがて “わかった” と森が返事を寄こした。
「あ~あ、これでチーフ諸共、今年のボーナスはないかもな」
「貰った事もないけど」
 そう言う神宮寺の目にAS355 ─ JB のヘリコプターが映った。
 ハリアを緊急待避所に突っ込んだ。路上に出た2人の上空でAS355がホバリング体勢に入る。
 車の流れはまだかなりある。森が関連省庁にすぐさま要請を出して受け入れられたとしても、東北自動車道上の車をすべて一般道に降ろすには相当の時間を要する。しかしそれが整うのをのんびり待っているわけにはいかない。多少のリスクは覚悟の上で事を進めなくては。
「中根、ホイストを降ろしてくれ」
 離着陸の時間を省くため2人はホイストで上がる事にした。
 ブレードが叩きつけるダウンウォッシュの中、スーとホイストが降りてきた。髪を煽られたジョーが手で押さえる。何台かの車が急停車した。が、かまわず2人は上空のヘリへと上がっていく。6人乗りのSA355には立花と中根が乗っていた。
「マークX は今どこを走ってるかわかるか」
 ドアを閉め神宮寺が訊いた。
「トレーサーを撃ち込んだからバッチリ捕捉しているよ」コ・パイに戻った中根が言った。「栃木IC から10キロ程行った所だ。少しスピードが落ちたようだな」
 ヘリがクルリと機首を南に向けた。神宮寺がヘリに積まれている機器や銃器の点検をしようとしたが、
「ジョー」
 後部で目を閉じているジョーを見た。顔色は先ほどとあまり変わらないが、つく息は荒く弾丸の掠った足の手当てもしていない。
「やはり無理だ。ここはおれと中根で─」
「いやだっ」ジョーが神宮寺の腕を掴む。「これはおれ達の仕事だ。今まで悉く失敗している。おれ達の手で収めたい。お前だってそう言ったじゃないか」
「だが今からやろうとしている事はかなり危険だ。失敗は許されない」
「おれが失敗すると思っているのか」
「・・・その様子では可能性はある」
「──」
 ググ・・・と相棒を掴む手に力が入った。青く光るジョーの双瞳がピタリと神宮寺に向けられた。
「おれは木梨やアンディの言葉に惑わされてデータを取り返すチャンスを逃がし関に怪我をさせた。関と一緒に捕らわれた時もチャンスはあったんだ。なのにおれは・・・奴と話がしたくてそのチャンスを握り潰した。で、このざまだ」全身を震わすジョーの想いが神宮寺にも沁み込んでいく。「ここで・・おれの手で収められなかったら、おれは・・・」
(ああ・・だから・・・、か)神宮寺が思った。(だから榊原さんが許可したんだ)
「神宮寺! チーフから連絡だ!」
 立花が叫んだ。
『今から東北自動車道の封鎖に入る。自衛隊の車両が一般車を排除に掛かる。ただし1時間だけだ。それ以上は無理だ。1時間以内に任務を完了するように』
「わかりました。さすがに今回は早いですね」
『政府が一枚噛んでいるからな。脅しがいがある』森がちょっと言葉を緩めた。が、『気をつけて。成功する事を信じている』
 ラジャ! と4人が答える。

 やがて眼下に自衛隊の車両が一般車を誘導しIC から出していく様が映った。当然、なかには文句を言うドライバーもいたが、危険がある事を説明して強引に追い出していく。
「あ~あ、自衛隊もボーナスないかもな」
 そう言うジョーの顔を神宮寺が見据えた。ああ、やはりこいつしかいない、と思う。そう決めたらもう迷わない。
「マークX だ!」
 中根が叫んだ。フロントには疾走するマークX が映った。
「助手席のドアを吹き飛ばす」神宮寺が小型のバズーカを手にした。「平行に飛んでくれ」
「相手は車だぜ」中根が言った。「ヘタしたら真っ二つだ。関さんは拘束されてて運転できない」
「真っ二つになったらどっちみち運転なんてできねーよ!」
 それもそうだ。
「発射角度を浅くとる。頼むぞ、立花!」
 任せて! と立花が叫ぶ。
 ヘリの高度が下がった。マークX の左側にピタリと速度を合わせて着く。車の運転もうまいがヘリの操縦もなかなかのものだ。
 神宮寺はスコープをドアの継ぎ目に合わせた。バシュッ! と音が響き、継ぎ目を削られたドアがすっ飛んだ。
「移るぞ」
 神宮寺がジョーに言う。貌を輝かせジョーが頷いた。

 中根がホイストの調整をし、まず神宮寺が降り続いてジョーが助手席側から車内に入った。ホイストを収納しヘリは上空へと戻った。
「関さん!」神宮寺が運転席の関を揺さぶる。「だめだ。薬で眠らされている」
「こら、関! 仕事中に寝るな! キャンペーン・オヤジ!」
「とにかく先に関さんを」
 神宮寺はヘリから持ってきた小型のバーナーで、関の両手をステアリングに固定しているチェーンを焼き切り始めた。
 その間にジョーがコントロールパネルを見ていく。
 この車は行き先を設定し、後は衛星によってその位置を割り出され目的地まで進むという。コントロール装置はすぐにわかった。と、
「うわ~、目的地は国会議事堂だぜ。川口IC 降りて何キロあると思ってるんだ。絶対無理だな」
 いくら信号を変えられるシステムを積んでいても、これは無謀すぎる。
「目的地を政府の皆さんに教えたらチーフの脅しがラクになるな」飛ぶ火花に顔をしかめながら、「─ 切れたぜ」
 関をステアリングから解放し助手席に移した。ドアがないので落ちないように足を結わえていたロープで関をシートに縛り付けた。と、
「ジョー!」
「おっと!」
 ジョーがステアリングを切った。自衛隊の車両が後ろに飛んで行く。
「危ねえな」舌を打ち、しかしステアリングは自動的に元の位置に戻り再び固定された。「ここを頼む、神宮寺」
 ジョーは本来なら3列目のシートの位置へ移動した。シートの代わりにいくつかの機器が置かれている。MOX エンジンシステム─ つまりMOX を収めたボックスはこの向こう側 (トリム=内張り) の車体内にあるはずだ。
 ジョーは機器をどかし、アジトで見た設計図を思い出しながらボックスの位置を探る。
 止まると爆発する車にMOX を乗せておくわけにはいかない。MOX エンジンシステムは捨ててもボックスだけは回収しなければ。だがその前に─。
「「神宮寺、関をヘリに移せ。これからトリムを壊してボックスを取り出す」
「1人でやるつもりか」
「アジトで設計図を見てるんだ。それにおれ、車の解体得意だし」
 ジョーは笑うが神宮寺は納得しない。
「頼むよ、神宮寺。関を巻き込みたくない。おれのせいで怪我をさせた。それに─」ふと言葉を切るが、「万一の場合、死ぬのは少ない方がいい」
「・・・・・」
 MOX ボックスを積んだままのマークX が爆発すれば惨事は周囲何キロにも及ぶ。ここにいてもヘリに乗っても大して変わらない。
 しかし少しでも助かる可能性のある方に関を送りたいという気持ちはわかる。
「だけど・・・」
「クタばっている関が1人でホイストで上がるのは無理だ。─ 立花! 神宮寺と関がホイストで上がる! 来てくれ!」
 バラバラとブレード音を撒き散らしSA355が近づいてくる。マークX の左側にホイストが降ろされた。
「急げ!」
 ジョーの声に押されるように神宮寺は関の体を抱えた。一瞬ホイストに彼を縛り付け上げてもらおうかと思ったがやめた。
「無理をするな、ジョー。すぐ戻ってくる」
 神宮寺の足がホイストに掛かった。そのまま上昇していく。ヘリは走るマークX と速度を合わせている。ホイストの2人への風当たりが凄まじい。
 ヘリはスピードを落とし、ゆっくりとホイストを上げていく。ドアに手が届く所まで上がると関を押し上げた。中根が引き上げる。
「このままマークX を追ってくれ!」
「無茶だ、神宮寺! 1回上がってくれ!」立花が怒鳴った。「スピードが出せない!」
「くそォ」
 仕方なく神宮寺はヘリ内に入った。

 神宮寺と関を見送り、ジョーはバーナーでゆっくりとトリムを壊していった。
 車体はマークX そのものだが、人が乗るために作られた物ではないので普通なら布張りになっている所も金属がそのまま剥き出しになっていた。その部分を最小の火力にしてバーナーで穴を開けていく。
 MO Xの収まっているボックスは強固だが、奴らが研究所の設計とおりに作ったかわからないので慎重に進める。たちまち汗まみれになった。
「これだ」
 設計図で見た物と同じ型のボックスが現れた。みかんぐらいの大きさのそれは周りをしっかりと固定されている。今度はその周りを切り離していく。
 と、車がボンッと跳ねた。と同時にジョーの手元もブレる。極度の緊張を強いられ震える手を、しかし強い意志を持って押さえつけた。
 今ここでこの仕事をやり遂げなければ、おれは─。
「よし、外れた」
 みかん大のボックスを両手で持ち、ジョーは息をついた。
 ふとフロントに目を向けると、少し先の路上に自衛隊の大型車両が止まっているのが見えた。マークX はそこへ突っ込んでいく。
 ジョーはステアリングを切ろうとしたが動かなかった。路上にいた自衛官があわててその場を離れるのが見えた。
「くそォ!」
 ジョーはボックスを抱いて車外へ飛び出した。体を丸めボックスを庇うとゴロゴロと転がる。 
 マークX は大型車両に突っ込み爆発した。

「ジョー!」
 ヘリから神宮寺が降りてきた。
 爆発で飛ばされた車体に当たり、下敷きになっているジョーを助け出した。グッタリとして、しかしボックスだけは放さなかった。
「ジョー」
「じんぐ・・う・・」
 かすかに開いた口から相棒を呼ぶ声と一筋の血が流れ出た。
「しっかりしろ、ボックスは無事だ。すぐにヘリで─」
「・・・ボルツァーノはザーツとは関係なかった・・・。ザーツには関わっていない・・・」
「・・・そうか」
 神宮寺は安堵の息をついた。と、ジョーの体がピクンと跳ねた。何か言おうとするが体が跳ねるたびにジョーの口元が赤く染まっていく。
「わかった、ジョー。だからもう─」
「これでおれはまだここにいられる・・・。よかった・・・」
「ジョー、ジョー!」
 腕の中でだんだんと重くなっていく体を抱え神宮寺が叫んだ。


                                       完


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『トヨタ博物館』


 愛知県長久手市にあるトヨタ博物館へ。
 3月に愛知のご当地ドラマの舞台になった所だ。
 本館、新館と合わせてトヨタ車だけでなく世界の車約140台を中心に、自動車誕生以来の歴史を展示されている。また日によってはレスキュー車や工事用車両の実技パフォーマンスもあるが今日は無い。

 着いたのが10時過ぎのせいか結構な人出。


     長久手瀬戸犬山ー34


 博物館というとデンッ!とした威厳ある建物が多いが、ここはなんとも武骨な外見。全部金属っぽくてまるで倉庫のよう。
 館内は人は多いが混雑というほどではない。
 まずは新館から。ZONE1「自動車の夜明け(黎明期)」からZONE13の「持続可能な未来へ」まで。


     長久手瀬戸犬山ー1



     長久手瀬戸犬山ー2



     長久手瀬戸犬山ー2

     シンプルすぎてわからん (^_^;)


     長久手瀬戸犬山ー03

     パッカード トゥエルヴ 「ルーズヴェルト専用車」


     長久手瀬戸犬山ー04

     キャデラック エルドラド ビアリッツ


     長久手瀬戸犬山ー3

     サンダーバード(赤)とシボレー(白)


 ルネ・ラリックのカーマスコット展

     長久手瀬戸犬山ー4


     長久手瀬戸犬山ー5

     鷹とつばめ


     長久手瀬戸犬山ー6


     長久手瀬戸犬山ー7



     長久手瀬戸犬山ー8

     スポーツ800(赤)と名車トヨタ2000GT(白)


     長久手瀬戸犬山ー05


 トヨタ2000GTは洸の車。もっとも普段乗りはやはりトヨタのMR─S。
 ジョーのカウンタック同様、古い車はなかなか日常使いができない。
 ここにはカウンタックはなかったが、本当に乗りたい車に思いっきり乗せてあげたい、2人とも。


     長久手瀬戸犬山ー9

     手前からコスモスポーツ L10B型 フェアレディZ43Z セリカTA22型


 フェアレディZはコールナンバーKMJTのつばさの車。ただしこの型ではない。
 本当は淳の車にしたかったが先につばさ(本人)が希望してきたので。ちなみに淳の車はランボのイオタ。


     長久手瀬戸犬山ー11



     長久手瀬戸犬山ー10


 好きな車のそばでしばし休憩。
 ジョーのセリカXXはこの型ではないが、それでも格好良い。


     長久手瀬戸犬山ー32


     長久手瀬戸犬山ー12

     レクサス LFA プロトタイプ


 LFA(これもジョーの車にいいな~と思ったが、如何せん高すぎる)は目立つので多くの人が足を止め写真を撮っている。が、

「300台しか造られなかったらしいよ」

 いえ、もっと多いです。

「2千万円だって」

 いえ、もっと高いです。

 注目しているわりには皆さん全然違う事言ってる。 (^_^;) 


 新館2階企画展示ゾーンの「風! 光! オープンカー!」 


     長久手瀬戸犬山ー13



     長久手瀬戸犬山ー14

      LFAスパイダー(手前)と2000GTボンドカー(奥)


     長久手瀬戸犬山ー15

     はたらく車展のJAF災害対策指揮者 でかっ! 幅が普通の車の倍ぐらいありそう


 じっくり楽しんでも2時間ぐらい。
 広くて見ごたえはあるが、淳はお台場のMEGA WEB の方がいいかな。
 本格的なレースゲームや利用者が参加できるアトラクションが多い。おまけに無料!


     長久手瀬戸犬山ー31


 子ども達に交じってスタンプを集める淳。
 コンプリートすると景品が貰えるが・・あれ、トヨタなのにニッサンだ。
 まさかトヨタ以外の車だと思わなかったので貰った時に確認しなかったー。
 これ1種類だけなのかな? ← いま言っても・・・


 ※ カタログ等の写真は後日にアップ