コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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つながる想い 6

 「ジョー!」
 関がジョーに駆け寄る。
 正面から爆風を食らったジョーは顔や髪を焼かれそのまま後ろに倒れた。そこへ男が何かを投げつけようとしていた。関の部下がその男に組み付き阻止する。だがあちこちで爆発が続いている。
  「ジョー!」
  「行け、神宮寺!車を出せ!」
 関に抱え起こされたジョーが叫んだ。一瞬互いの目が合う。神宮寺が口元をキュッと引き締めマークXを発進させた。後部席の鷲尾の顔が見えた。ケガはないようだ。
 ジョーの意識がフッと薄れる。
 「お、おい、ジョー」
 「・・・大丈夫だ」だが腹部を押さえている手から血が溢れ出て来た。「それより奴らを捕まえろ。まだ爆発物を持っているかもしれない」
 「─わかった」関はジャケットを脱ぎ、ジョーの腹部に掛けると袖をギュッと結んだ。「おとなしくしてろ。すぐ戻ってくるからな」
 そう言って走り出した。
 「・・動けねえ・・って・・・」
 遠くからサイレンの音が聞こえる。
 鷲尾の無事を気にしつつ、ジョーは目を閉じた。

 「まったく相変わらず無茶しおって」口をへの字に曲げ鷲尾が言った。「爆発物の前に身を晒すようなやり方を教えていないぞ」
 「鷲尾さんこそ、ケガ人相手に説教はやめてください」やはり口をへの字に曲げたジョーが言う。「それにこんな所をウロついて・・・。神宮寺やルイスが気の毒だ」
?こんな所?と言うが、ジョーが今いる所は都内の警察病院だ。もちろん一般外来患者もいるが、考えようによってはかなり安全な場所だと思う。
 「ま、とっさに体の向きを変えた事で、直撃は免れたようだが」
 鷲尾がジョーの腹部に巻かれた白い包帯に目をやる。
 爆発物の破片がいくつか肉体を食い破っていたがどれも小さく大事には至らなかった。急激な出血で一時的に気を失ったジョーだが、あの後犯人を確保した関が戻ってきて救急車に乗せられる頃には完全に意識を取り戻していた。
 今は個室のベッドにいるが、きっとすぐ出たがるだろう。
 「幸子から電話があって君の様子を訊かれたので、現場でコケたが大した事はない、と言っておいた」
 「・・・・・」
 ジョーが眉を寄せ鷲尾を睨む。そんな事いちいち幸子に言うな、と目が言っている。彼女を心配させるのがジョーにとっては一番辛い。
 「大丈夫だよ」そんなジョーを見て鷲尾が微笑む。「彼女は私の妻で君の母親だ。私達より強いよ」
 ジョーがかすかに表情を和らげる。確かにそうだ。いざという時、本当に強いのは幸子のように、戦いに出る男達を受け止め見守り対応できる女性(ひと)なのかもしれない。
 ただ突っ走っていくだけのジョーのような人間は、どこかで大きな石につまずき転んだらケガを治すだけでも大変だろう。
 だがそのような男達が世界の平和を担っている事もまた事実だ。
 「ヴィクトルを覚えているか?彼に君がいつ帰ってくるのかと訊かれて困ったよ。健も君に会いたがっているし─」
 「鷲尾さん」
 ジョーが遮る。
 平凡だが穏やかだったソーでの暮らし。だがその生活はジョーの望むものではない。
 「もう戻った方がいいですよ。神宮寺達が待ちくたびれている」
 ジョーが無事だと知った神宮寺とルイスは、鷲尾に同行してきたものの廊下で待機している。
 ヘンな気を遣うな、と思ったが確かに彼らの前では鷲尾もジョーもお互いに言いたい事も言えないかもしれない。と、ドアがノックされた。
 「ほら、お呼びだ」ジョーが返事をする。が、入ってきたのは関だった。「なんだ、あんたか」
 「なんだって、なんだ?」関が眉をひそめた。
 「なにしに来たんだ?」
 「いや・・・一応命の恩人に礼のひとつも言おうかと・・・」ちょっと真面目な顔になり、「3人の男達は確保した。小さな爆発物をたくさん持っていたよ。ケガ人が何人か出たが擦り傷やちょっとした火傷だけで済んだ。君が1番重症だ」
 ジョーが鼻を鳴らし仏頂面になる。
 「もちろん会議に出ていた人達も無事だ。ありがとう」それから体を捻り、「ごあいさつが遅れました。お久しぶりです、鷲尾さん」
 「本当に。何年振りかね、関さん」
 互いに握手を交わす。
 アサクラ氏がJBの支部長を務めていた時、鷲尾は副支部長だった。当然関とも面識がある。
 「うちの若い者達が世話になっているそうだね。ありがとう」
 「いえ、かえって助けてもらう方が多くて─」再びジョーに目をやる。「そうだ。助けてもらってこう言うのもナンだが、あの時はやはり鷲尾さんを守りべきだった」
 「チェッ、あんたもお説教か?長官は神宮寺がついているから大丈夫だと思ったんだ」
 「だが・・・やはり礼を言わせてもらうよ。君が庇ってくれなければ、おれは─」
 「大した事じゃない。あんたのようなご老体が爆弾ですっ飛ぶところなんか見たくないし、それに・・・」ちょっと口籠もるが、「あんたに万一の事があったら、あのウッズマンはあんたの形見になっちまう。それはご免だ」
 「・・・そうだな。君に形見なんか残したくないし」
 「ウッズマン?」鷲尾が口を挟んできた。「関さんが持っていたウッズマンか?アサクラが渡したという銀色の、グリップの下の方にアサクラのイニシャルが入っている・・・」
 「知ってるんですか?」ジョーが訊いた。
 「もちろんだとも。あの銃は私達がSメンバーとしてコンビを組んだ時にコルト社に依頼して作ってもらったものだ。私も持っている。使ってはいないが」
 「えっ!?」関が声を上げた。「そんな大事な物だったなんて・・・。なんで、おれに・・」
 「さあ・・。アサクラはあなたを気に入っていたから─」
 「親父は・・・」ジョーが呟くように言う。「これから自分に起こる色々な事を見越して・・誰かに自分の物を渡しておきたかったのかもしれない・・・」
 ふと顔を上げると鷲尾と関が自分を見つめていた。思わず目を背ける。
 「だが、そのウッズマンをどうしてジョージに?関さんが彼に?」
 「・・・・・」
 ジョーと関が顔を見合わせた。
 鷲尾はアサクラのワルサーが分解し使えなくなってしまった事を知らないのだ。
 「おれのワルサーが・・・」仕方なくジョーが話し出した。「この前の事件の時、突然分解してしまってパーツ欠損で使えないんです」
 「なんだって?あの銃が?」
 驚く鷲尾にジョーはもう少し詳しく当時の状況を説明した。関も細かい状況は初めて聞く。ワルサーが分解したくだりを淡々と話すジョーを痛ましい表情で見つめた。
 「そんなことがあったのか・・・。あのワルサーが・・」
 そう言ったきり口を噤んでしまう。鷲尾にとってもワルサーは思い出の品だ。
 「そんな顔をしないでください、長官。今あいつは休んでいるだけです。またいつかおれと共に世界を駆け巡る時まで、ゆっくりと─」
 言いながらジョーが顔を伏せた。肩が小さく震えているのに気づき鷲尾がソッと手を掛けた。
 「そうだな。アサクラの時代から頑張ってきた銃だ。ここらでちょっとくらい休んでもいいだろう」そう言いジョーの髪をクシャッと掻き回す。「すまなかったな」
 ジョーがかすかに首を振った。が、顔を上げられない。今、鷲尾の顔を見たら・・・。と、
 「君もゆっくり休め」関が言う。「タンクックの事はおれ達に任せろ」
 「ゾンタークだ」
 ジョーが関を見る。ブルーグレイの瞳にいつもの光が点る。
 「そうそうそれだ。ドイツ語だかスペイン語だか知らないが、もう少し覚えやすい名前にしてもらいたいね」と、ふいにジョーの髪をクシャッと掴んだ。ジョーは驚いて固まった。「いいから少し休んでいろ。顔中切り傷でいっぱいだ。いい男なのになァ。このせいでおムコにいけなくなったらおれが貰ってやるからな」
 「一生独身でいい!」
 ジョーが関の手を跳ねた。と、ハハハ・・と笑い声を上げて、
 「さて、おれはもう失礼するよ。容疑者を待たせているんでね」
 「待たせてる、って・・」関はジョーにウインクすると鷲尾に一礼して病室を出て行った。「な・・なんなんだよ、あいつ・・」
 「相変わらず陽気な男だな」鷲尾がにこやかに言う。「そういえばクロードといい関といいアサクラによく似ている。君と気が合うのもわかるね」
 「は?え?」
 ジョーがキョトンと鷲尾を見た。クロードと関が父に似ている?
 「似ているよ。普段は陽気でよく笑い、一緒にいたずらもした。しかし現場に立つとガラリと変わる。厳しく激しく何事にも動じない男だった」
 「・・・・・」
 ジョーは無言で鷲尾を見詰めた。
 クロードと関と父・・・?それは彼の記憶にある父親の姿とは違っていた。
 少ない休日によくジョーの相手をしてくれた。しかしジョーは父親が声を上げて笑っている姿を見た事がない。いや・・忘れているのかもしれない。顔も、自分を抱きかかえてくれた大きな腕も覚えている。だが
 「どうした?大丈夫か?」
 鷲尾の問いにジョーは頷く。
 わずか9才で突然親を失った。そんな事になるとは思ってもいなかった。それまで過ごした平凡な日々を全部覚えているわけがない。いや、覚えている必要などなかった。
 夜が明ければまたいつものように平凡だが穏やかな1日が始まるはずだったのだから。

 確保された3人の男はいずれもまだ20代前半の若者だった。公安3課に連行され尋問を受けたが、最初は口を閉ざしたまま何時間か過ごした。
 しかし話をしているうちに自分達のした事の重大性に気がついたのか、知っている事をポツリポツリ話し始めた。
 新宿で声を掛けられ事務所に連れていかれた事。世の中を変えてみないか、と熱く語られた事。ちょうど仕事も学校もうまくいっていなかったのでその話しに乗った事など・・・。元々大した志があったわけではなさそうだ。
 何十人かの若者の中から選ばれ、ホテルに爆弾を仕掛けたと電話を入れ避難する人々を狙う─。おもしろそうだと思ったという。
 ゾンターク側にはこのホテルで各国警察のトップが集まっているという情報は漏れていたらしいが、特に彼らを狙ったわけではなさそうだ。要は若者達が使えるかどうか試したかったのだろう。
 そうなると、会議参加者の中にゾンタークのメンバーが変装して紛れ込んでいるという情報も怪しいものだ。
 あの後、全員の確認も済んでいる。ルパン並みの変装をしても国際警察の鑑識課は騙せない。
 肝心の他の若者たちの行方だが、1人は南の方、2人は北へ移動すると聞いているという。うそをついているようには見えない。おそらく捕まる事も考え本当の事を伝えなかったのだろう。組織の内部についても3人の知っている事はあまりなかった。
 洸からの連絡も入らなかった。
 彼のGショックはたとえ会話ができない状態にあっても、トレーサーのスイッチを入れれば国内ならすぐにサーチできる。それもないというのは、洸のいる所が電波を遮断されている建物か地域、もしくはすでに国外に出ているかだ。
 各国際空港への手配は済んでいるが、どこか小さな港から密出国されたらまず捕まえられないだろう。


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