コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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怒りの44マグナム 5

「と、まあ、そないなわけで大阪ではわてら東西会の方が幅利かせとる」村井は生まれが東京なので何やら混ぜくった大阪弁で言った。「東京も早くそうなるとええなァ」
 冗談じゃないと神宮寺は思った。
「ところで矢崎、その腕どないしたんや?」
「え、ああ・・これか・・・」矢崎は後ろを向いた。「ちょっと事故起こしちまってな。ご覧のとおり左腕ダメにしちまってよ。てなわけで急遽こいつが雇われたというわけよ」
 雇われたというより強引に引き受けさせられたんだ、と神宮寺は思った。
「なにせ東京の本部にはセスナを飛ばせる奴はおれしかいねェからな。しかし、まっ、ひっくり返らなかっただけでも儲けものさ。もしあんな住宅街でぶちまけたら・・・・・・大変だったぜ」
「きィつけなあ、あかんな」
 2人の話は続いた。
 神宮寺は今まで何の気もなくそれを聞いていたが、事故の話が出たとたん彼の頭の中を何かが走り抜けた。
(東京、事故・・ま、まさか!)
 神宮寺は矢崎の方に振り返った。と、突然物凄い轟音が響き、機が一段階エスカレートした。
 矢崎も村井も思わず声を上げた。と、再び轟音と激しい振動が機体を襲った。
(爆弾だ!)
 神宮寺はとっさにその正体を知った。が、それ以上どうしようもなかった。
 後部からは火の手が舞い上がり、やがてそれは燃料タンクへと広がっていった。
「このままでは爆発してしまう!矢崎が叫んだ。「ナントカしろ!」
「言われるまでもない!こっちだってお前らと心中はごめんだ!」
 久しぶりに逆らった神宮寺は胸がスーとした。しかしそう気持ちよさがってはいられない。セスナの高度は下がる一方だ。悲鳴交じりに村井が声を上げた。
「矢崎!銃が─!」
 その後は聞こえなくなった。
 機は失速を続け、やがて森林の陰に見えなくなった。

「気がついたか、ジョー」
「中根!?」目を開けたとたんJB機動捜査隊の中根の顔が飛び込みジョーは思わず跳ね起きた。「つっ!」
「無理するな、ジョー。たった今、弾の摘出手術を終えたばかりなんだぞ」
「摘出・・・そうか、おれは・・・」ジョーは周りを見回した。「ここは?」
「安心しろ。浪速署の特別課室だ。おれはあの写真・・・・を見つけた後どうも気になってな。チーフに頼んで特別にここに来たってわけさ。お土産にこれを持って─」
 そう言いながら中根はケースから2丁の銃を取り出した。ジョーのワルサーと神宮寺のマグナムだ。
 それを見るとジョーは思わず口元を歪めた。
「わざわざすまないな。君には〝ハイジャック〝の時にも世話になったし」
「名高いダブルJの手伝いができるんだ。こんな光栄な事はないね。あっ、そうだ、忘れてた」中根は再びケースからテープを取り出した。「チーフからの指令だ」
「チーフからの・・?」
 ジョーは体を半分起こした。中根はテープをデッキに掛けるとスイッチを入れた。
『ダブルJ、緊急指令だ』ややして森チーフの声が流れてきた。『東西会が大阪から大量の銃やダイナマイトを東京に輸送しようとしている。それを阻止してもらいたい』
「輸送・・?なんのために」
『これは東西会の幹部の1人を締め上げて得た情報だ。それによると東西会は近々古川組と一戦交えるらしい。その銃などはもちろんその時に使うものだ』
「あ、あの巨大な組織同士が争ったら東京は大変な事になる。もはや一般警察では手に負えないぐらいの・・・」
「だから君達ダブルJにこの仕事が回ってきたんだな」
「フン・・・。とかくおれ達はこういう運命なのさ・・」
『ああ、それからもうひとつ─』森は一度言葉を切り、続けた。『神宮寺君が追っている犯人はやはり東西会の1人だとわかった。犯人はその日荒川建設のトラックで何かを運んだんだ。その途中事故を起こしたらしい。奴も左腕に怪我を負って─』
「左腕だって!」ジョーは思わず叫んだ。「神宮寺と一緒にセスナに乗り込んだ男もやはり左腕に包帯を巻いていた・・・。も、もしや・・あいつが!」
 その時、突然ドアが開き男が飛び込んできた。浪速署特別課々長の北だ。
「中根さん!セスナの墜落地点がわかりました!」
「本当か!」中根の代わりにジョーが答えた。「よし、すぐに車の用意をしてくれ。おれもそこへ行く。さあ、早く!」
 ジョーの勢いに北はちょっと驚いたようだが、それでもすぐさま部屋を飛び出していった。
「しかし、ジョー。君はまだ・・・」
「大丈夫さ」ジョーはゆっくり立ち上がりながら言った。「これはチーフからの命令だ。受けたからにはのんびり寝ているわけにもいかない。それに・・・」
 ジョーはちょっと言葉を切り下を向いた。が、すぐに顔を上げ中根を見た。
「おれ達はSメンバーダブルJだ。こういう事には慣れている・・・」
 最後の方を呟くように言うと、ジョーは机の上に置いてある自分の愛銃ワルサーとマグナムを取り部屋を出て行った。
 そんな彼の後姿をじっと見ていた中根もやがてジョーの後を追い部屋を出た。
 誰もいなくなった部屋には、もはや声の出ないテープだけがかすかな音を立てて回っていた。

 辺りはとても静かだ・・・。自分が俯している所もとても柔らかい。が、足の方は時々何かが当たり冷たい─。
 神宮寺は手に触れている柔らかな物をグッと握った。草だった。彼は草の上に倒れているのだ。
 焦臭さが彼の鼻を突いた。神宮寺はゆっくりと上半身だけ起こすと振り向いた。と、最初に目に入ったのは、かすかだが黒煙を噴いているセスナ機だった。その尾翼は沼に浸かっている。さっきから彼の足に当たっていた冷たいものはその沼の水だったのだ。
(おれはどうして・・・。そ、そうだ・・機が火を噴いて失速し始めて・・おれは森林の向こうにこの沼を見つけ機首を向けた・・・)頭がだんだんハッキリしてきた。(そしてなんとか着水し・・・おれは機外に放り出されたんだ・・・)
 神宮寺は体のあちこちの具合を診ながらゆっくりと立ち上がった。どうやらそう強く痛めた所はなさそうだ。が、左肩にはしばらく忘れていたあの痛みが再び帰ってきた。
(・・着水したおかげで燃料タンクまで火が回らないうちに消え、爆発しないで済んだんだな・・・) 
 神宮寺は左肩を押さえホッと息をついた。と、どこからか呻くような声が聞こえた。
 神宮寺は反対側に回った。声の主は矢崎だった。
 着水時に放り出され、やはり傷を負っている所をさらに痛めたらしい。だが意識はある。
 神宮寺は村井を捜した。いくら悪人とはいえ怪我をしていたら助けないわけにはいかない。
 彼は傾いている機内を覗いた。そして思わず声を上げた。
 村井は機内に仰向けに倒れていた。その彼の体の上には、座席の後ろに積み込んだ木箱がいくつか乗っかっていた。
 そのうちのひとつはフタが開き、中味が四方八方に散らばっているのだ。
「ハンディショット!それにミニコルトがこんなに!」神宮寺はこの時初めて箱の中味と運送目的を知った。「そうか!これで古川組を襲うつもりなんだ!」
「その通りだ」ふいの声に神宮寺は振り返った。そこには銃をかまえた矢崎が立っていた。「知らない方がお前のためだったがな・・。まっ、知らなくとも結果は変わらんが」
「・・・やはりこのミニコルトは東西会の・・・」
「そうだ。香港から大阪、そして東京に運んでいるのだ。そのためにはトラックやセスナを動かせる者を1人でも多く欲しかった。お前はそれにはまったわけだ」
「トラック・・・。そ、それじゃやっぱり─」
 その時、どこからか子どもの声が聞こえてきた。神宮寺は反射的にその方を向いた。と、小学生らしい子どもが2人こちらに歩いてくる。おそらく沼へでも遊びに来たのだろう。
 2人の子どもはいつもの遊び場にセスナが入り込んでいるのに驚いた。そして銃を持った矢崎を見ると声を上げて逃げ出した。その背後から銃声がふたつ響いた。
「ああっ!」神宮寺は思わず声を上げた。彼の目には弾丸を受け転がる2人の姿が映った。「な、なんて事を・・・」
 神宮寺は半ば呆然として言った。その彼の耳を矢崎の言葉が突いた。
「フッ、いまさら2人ぐらい殺したからって変わりはしない。おれがすでにガキを2人殺しているんでね」
「!!」神宮寺は言葉にならない叫びを上げた。「それじゃやはり・・やはり貴様が浩一君達を・・・」
「こういち?なんの事だ」
「・・・忘れたのか・・。お前が轢き逃げした子ども達の事を・・・」
「お、お前は!?」神宮寺の言葉に矢崎はビクッとした。「い、いったい・・・」
「自分が轢き殺した子どもの名前も知らないのなら・・・ただ肩を当てただけのおれの顔など覚えてはいまい」
「そ、それじゃ!お前はあの時の!」
 矢崎は思わず一歩後退した。と、神宮寺が一歩前に出る。
「そうだ・・。おれはあの時あの子達と一緒にいた・・。目の前で弟のような2人を轢き殺され、おれは・・・今までお前を・・轢き殺した犯人を捜していたのだ・・」心なしか矢崎の顔は引きつって見える。「おれはあの時何もできなかった・・・。何もできないまま、ただあの子達が死んでいくのを見ていた・・。そして今もまたおれの目の前で・・・。このおれの怒りがお前にわかるか!」
 神宮寺はさらに前進した。
 もはやそこにはいつもの精彩な神宮寺の姿はなかった。彼は今、体中の怒りといった怒りを燃え上がらせ真っ赤な炎と化していろのだ。
 そんな彼に睨まれた矢崎はたまらない。が、彼は無意識に持っていた銃を神宮寺に向けると引き金を引いた。
 神宮寺はその反動で後ろへ跳ね飛ばされた。それを見ると矢崎はハッと気を取り直すと急いでその場を離れようと走り始めた。
 その彼の行動からワンテンポ遅れ神宮寺は体を起こした。
 ふと横っ腹を押さえていた手のひらを見ると、そこからは真っ赤なものが滴り落ちていた。



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