コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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闇に溶け込む黒い影 8


「サントス!」ダンプカーがサントスに迫る。「避けろ!」
 言われるまでもない。
 さすがのサントスもダンプ相手では分が悪い。ドドド・・・とダンプに負けない勢いでこれを避ける。
 と、ダンプカーがUターンした。この先は行き止まりで、出口はジョーのいる後方だ。
 その際、荷台の土がサントスに降りかかって来た。地面に膝を付いていたサントスが埋まる。
「チッ、ベッドじゃなく土に埋まってやがる」
 が、人の悪口を言っている場合ではなかった。ダンプは明らかにジョーを轢くつもりだ。それにこのまま逃がすわけにもいかない。
 ウッズマンでタイヤを撃ち抜こうかと思ったがそのひまもない。ダンプはもう目の前だ。
 と、銃声が響きダンプがわずかに左に逸れた。
 ジョーはダンプに飛び付き助手席のドアを開け、車内に体を滑り込ませた。
「ジョー!」
 銃を下ろし西崎が叫んだ。
 キキ・・・とダンプがスライドし助手席から男が1人放り出された。今井ではない。
「ジョー! 前を─!」
 聞こえないのはわかっているが西崎が大声を上げた。
 ダンプはコンクリートの塀に向かっていた。わずかに右に曲がったものの、ダンプはそのまま塀に激突した。
「ジョー!」
「待て!発火するかもしれないぞ!」
 加地が止めたが、西崎と立花はダンプに走り寄る。土の中から脱出したサントスもだ。
「うおおお~!」ひしゃげたドアをサントスが引きちぎった。「無事か、ジョー!」
「あ・・あたりまえさ」
 フロントガラスに塗れ、しかし不敵な笑顔を見せジョーが這い出てきた。
 今井はジョーの体の下にいて怪我はないようだ。だが足が挟まっていて車外に出てこられない。
 西崎が今井の足を抜こうとしたがジョーが止めた。そして、
 「ノーマンの居所を知っているだろう。どこだっ」今井の胸倉を掴み引っ張り上げた。足が挟まっている今井は苦痛の声を上げる。「お前が吐くまで。このままここに置くぞ」
「おい、ジョー」
 眉をひそめる西崎を、だがジロリと睨んで黙らせる。
「組・対に引き渡していたら時間が掛かる。今ここで吐かせてやる」再び今井の胸倉をグッと絞めた。「言え! 早くしねえとダンプが爆発するぞ!」
 ジョーの言葉を裏付けるように、ダンプの後方から黒い煙が吹き出してきた。あちこちに開いた隙間から運転席にも流れ込んでくる。
「このままここに置いておかれてえのか!」
 ガラスで切ったのか血が飛び散る顔面に、鋭く光るブルーグレイの瞳をのせて迫るジョーに今井はうめき声を上げた。
「やめろ、ジョー。限界だ」西崎がジョーを押し退け、立花と加地が今井の救出に入った。「今井はおれ達が組・対に引き渡す。お前は戻って傷の手当てをしろ」
「・・・・・」
 ジョーは西崎を睨んでいたが、やがて踵を返すとダンプから離れた。
「日本人っていうのはやさしいんだな~」
 サントスが言い、だが西崎に睨まれたので彼もジョーの後を追って2人が乗って来た車の方へと向かった。
「あんな事はアメリカでは普通の事だ」RX-8の助手席に体を滑り込ませ、ステアリングを握っているジョーにそう言った。「だが、君は気負いすぎだ。ジングージにいい報告がしたかったのか?」
「そんなんじゃねえ」エンジンを掛けた。右足に力が入りエンジンを吹かせる。「こんなヤマは早く終わらせ、あんたを日本から追い出したいだけだ」
「ハッ! 可愛くないぼうやだね。だいたい君は─」
 ギュルル・・・とタイヤを鳴らしRX-8がバックした。が、すぐさま2速に入れその勢いのまま敷地内を走り抜けた。

「ジョーが?」
 西崎の言葉にベッドをイス代わりにしている神宮寺が彼を見た。
「彼のやり方は強引で、でもそれが功を成す事も多いのはわかってるけど」
 西崎が病室の隅からイスを持ってきて掛けた。
「あまりやりすぎるのもな。特におれ達以外の人間の前では」特別課の事か。「第一、あれじゃあ白状したくとも怖くてできない」
「・・・・・」
 苦笑する西崎に神宮寺も苦笑いする。
 彼はもちろんその場面は見ていないが、西崎の話だけで充分にわかる。確かに犯人には気の毒だ。
「君というタガが外れると、ジョーはさらに暴走するかもしれない」
「それは買い被りすぎだぜ、西崎。あいつが決めて動き出したら誰にも止められない」
 神宮寺はふと窓の外に目を向けた。もうとうに日は落ちている。
 新宿御苑に面しているので、そこだけポッカリと暗い空間が浮かんでいるようだ。
「もう行くよ」立ち上がった。「今夜は宿直だ。食べたいものがあったら差し入れするぜ」
「それよりパソコンを持ってきてくれないか? 榊原さんに取り上げられた」
「休めって事だよ。しっかり退屈していろ。榊原さんを敵に回すのも怖いし」
 ドアノブに手をかけようとした瞬間、ガチャリとそれが回された。

「ノーマンの居場所がわかったぜ」
 ノックもなしにいきなり開けられたドアから入ろうとしたジョーが、しかし西崎の姿を見るとピタリと止まった。
 一瞬顔をしかめ、やはり立ち止った西崎をじっと見つめる。何か言いたそうに口を開いた。が、
「パソコンがだめならCDでもいいや。頼むよ、西崎」
「あ・・ああ」
 チラッと神宮寺に目を向け、ジョーの横をすり抜けて行った。
「なにしに来たんだ、あいつ」
 パタンとドアを閉めジョーが向き直る。
「運送会社での捕り物の報告だ。お前は話に来てくれないし」
「組・対に掛けあって、ノーマンの居場所を先に訊き出してもらったんだ」手にした何枚かの書類を神宮寺に渡す。目を通す彼の横顔をじっと見て、「─お前、おれに何か言いたい事があるか」
「・・・いや」
「そうか・・・」
 ジョーが小さく息をついた。
「やっぱり1つだけ言いたい」
 神宮寺がスッとジョーに目を向けた。ビクッとジョーが顔を上げた。
「漢字を覚えろ。当て字をするな。〝不死山〝って暴走族か、お前はっ」書類をパシンと弾いた。「〝スズメ百まで踊り忘れず〝だ。習うより慣れろ」
「・・・・・」ジョーがまじまじと相棒を見る。そして、「なんでスズメがダンスするんだ? お前こそもう一度日本語を習った方がいいぞ」
「・・・・・」
 今度は神宮寺が目の前の相棒を見る。ジョーに難しい言葉を使った自分を後悔した。
 そして本当に言いたい事を押し込めている自分を自覚する。

 雨の中央自動車道を2台のJB車両が山梨県に向かって走っていた。
 前車のハリアのステアリングを握るのは立花、後席には神宮寺とジョーが、そして後車のエルグランドには西崎と伊藤、そしてサントスが乗っている。
 池袋署に連行された今井の証言に立ち会った立花からの報告で、ノーマンは富士吉田市の天道会所有の別荘にいるという。
 最近までは東京にいたらしいが一連の言わば〝あっちこっちでノーマン出現〝─実はサントスだが─に、危機感を抱いた天道会に移されたらしい。
 もっともこの事は一部の幹部しか知らず、下っ端の今井が知っていたのはノーマンを別荘に送る車の運転をしたからだ。例のビル放火も上からの指示に違いない。
「だけどわからないのは、なんでそうまでして天道会はノーマンを匿っているんだろう」
「そーだよな。ヘロインは手に入れたんだ。あんなでかい奴を置いておくのは邪魔だぜ。普通なら、とうに口を塞がれている」
 物騒な相棒の言葉に眉をしかめたものの神宮寺は頷いた。
「それとも他にも利用価値があるのかな。どこかの誰かみたいに鉛玉を避けるための盾にするとか」ニヒヒ・・・とジョーが笑う。「それより大丈夫か? まだ顔色よくないぜ。いつものお前の迫力がない」
「・・・そんな事サントスの前で言うなよ」
 眉を立て神宮寺が横眼で睨む。
 彼が出動すると聞いたサントスは、“ジングージはおれが守るっ”と意気込みハリアに乗り込もうとするのをやっとの思いでエルグランドに押し込んだのだ。
「現場に出て庇われるなんて真っ平だ」
「いーんじゃねーの? 弾よけにでも使ってやれば。それで倒れりゃあいつも本望だろうさ」
 ドアミラーに映るエルグランドを見ながら言うジョーだが、彼もサントスがJBにいる事に慣れたようだ。
 今回の出動に同行すると聞いても何も言わなかった。
「ま、お前に心配されるようになったらお終いだが・・・」
「へっ! 口先だけは変わらなく元気だぜっ」
 バックミラーの中で立花が笑っていた。ジロッと睨み上げる。立花はあわてて笑顔を引っ込めた。

 やがて2台は大月JCTから河口湖方面へ向かう。とたんに緑が多くなってきた。
 雨も上がり、薄日が差して来たので木々の緑が一層輝いて見える。
 ジョーはコツンと窓ガラスに頭を付け、車窓からそんな光景を眺めていた。
 神宮寺も反対の窓から外に目を向けている。現場に入る前の軽い緊張感だ。
 今井は富士吉田と言ったが実際には忍野村に近い。
 2台は河口湖ICで中央自動車道を下りた。

「あの建物だ」
 かなり離れた所で立花は車を止めた。
 木々に覆われたその建物は、しかしかなりの大きさのようだ。
「さすが天道会。別荘というより別宅だな」
「池袋本部にも新宿にも組長や幹部はいなかったそうだ」シャキン!とウッズマンにマガジンを挿入しジョーが言った。「こっちに来ているかもしれない」
「そこにいた組員達はすぐ押さえたから、こっちに連絡は行っていないと思うけど」
 後車のエルグランドから3人が降り立つのが見えた。
 立花がハリアのセキュリティシステムを入れる。これでたとえドアが開けられたとしても、その他の機能は作動しない。
「3組に分かれて潜入する。ノーマンの確保が最優先だ。次はヘロインの所在」
「おれ達の時計型通信機が試せるチャンスだな」
 左手首を見て伊藤が言った。
 今までSメンバーしか所有していなかった腕時計型の通信機が、捜査課のメンバーも使えるようになったのだ。
 もっとも付属しているのは通信とトレースのみだ。
「頻繁に使うんじゃねーぞ。壊れたら変身が解けるからな」何の話だ? と一同がジョーを見たが、「だがノーマンを見つけたらおれに連絡しろ。すぐにだ」
「ヘロインの在り処を訊き出すのは彼の安全を確保してからだ」
「そんな悠長な事してたら奴らに持ち逃げされるぞ」
「その判断はおれがする」神宮寺がその目を真っ直ぐにジョーに向ける。「いいな、ジョー」
 チェッと舌を鳴らしたがジョーは口を閉じた。
「おれとジョーは裏側から入る。立花とサントスは左側、西崎達は右側だ。─行け!」
 神宮寺の合図と共に6人がバッと走り出す。

 建物に近づくにつれ、それが想像以上に大きな物だとわかった。だが周りの木々がその役目を果たしてくれるのか塀はなかった。
 窓にはカーテンが引かれ物音はしない。
 一瞬誰もいないのでは、と思ったがそれならそれを確認しなければならない。
 都合良く裏側にはドアがあった。だが電子ロックらしい。
 神宮寺が手のひらサイズの丸い物を取り出しドアノブに被せた。
 ピピピ・・・と音がし、やがてカチッとキーが開けられた。が、まだピピピ・・・と鳴っている。
 しかしそれもすぐに鳴り止んだ。
「警報装置は付いてねえようだな」ジョーがソッとドアを開けた。「試作品にしては使えるじゃねーの、これ」
 ノブから外しポンッと神宮寺に放ってよこした。
「ドアがなければだめだけどな」手で受けポケットに仕舞う。「しかし思ったより広いな」
 先に進む神宮寺がふと歩みを止めた。後ろを見ていたジョーが前を向く。
「開くぞ」
 ジョーがすぐそばのドアを開け、神宮寺と体を滑り込ませた。
 閉められたドアの向こうを2、3人の男の声が通って行った。2人はホッと息をつく。
「あの様子ではおれ達の事にはまだ気付いていないな」やはり東京からの連絡はなかったようだ。「ジョー?」
 ふと振り向くとジョーが室内を物色していた。
「なにしてる」
「こんな所にねえよな、ヘロインもノーマンも」イスと机以外には何もない。人が使っているようには見えなかった。「だがよ、おもしろい物があったぜ」
 そう言って、机の引き出しから出して見ていた物を神宮寺に放った。写真店でよく貰う小さなアルバムだ。
「こ、これは─」
 だが開けてみて驚いた。
 何人かの男の写真が入っていたが、その中には関や山本、木村─あと名前ははっきりしないが警察庁で見た事のある顔がいくつもあった。明らかに隠し撮りされたものだ。
「これは、公安の─」
「そのようだな。こいつとこいつを合同庁舎で見た事がある」
「まさか堂本さんが・・・」
 神宮寺が一瞬唇を噛んだ。が、すぐにアルバムを元の場所に戻すと、2人はその部屋を出てさらに進んだ。



                           9へつづく








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