コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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つながる想い 9

「まったくやンなっちゃうよな。うまく潜入したと思ったらあいつ(友人)はいないし、情報取って帰ってくればチーフに怒られるし、相棒は勝手な行動とっちゃってるし─」
「人の部屋来てうるさいぞ」ジョーが睨む。「一平はお前を追って行ったんだぜ。お前がそー言うなっ」
 プーとふくれる洸を無視し、パソコンの前に座っている神宮寺に目を向けた。
「どうだ?わかったか?」
「ん─、洸の話を総合すると、たぶんこの辺りだと思うんだけど・・・」モニタには山形県とその沖合い50キロほどの地図が映し出されている。「この辺は人の住んでいない小さな島がけっこうあるからな。奴らのアジトがあっても不思議じゃない」
「フロイントリヒって言葉を聞かなかったのか?」
 ジョーの問いに洸はう?んと首を傾げた。
「やはり一部の人間しか知らされていないんだな。─おっ」パソコンに情報課からのデータがアップされた。「フロイントリヒ研究炉・・?」
 それは神宮寺が?フロイントリヒ?という言葉をキーワードに掛けておいた検索の結果を知らせてきたものだった。情報課のスパコンのデータにこの言葉があったのだ。
 それによると、東北地方のある機関が研究用に設置した小型の原子炉らしい。研究炉とは実験炉とも呼ばれ、理論の基礎的研究段階の原子炉で教育目的、放射線や中性子線の照射実験などに用いられる。
 もっともこのフロイントリヒ研究炉は去年で役目を終え、解体される予定だった。が、解体を依頼して2、3ヶ月が経つのにまだ着手されていないらしく、原子力研究開発機構でも近々調査に乗り出す─というニュースだった。
「内部のウラン燃料などはすでに処理済みで、今は器(うつわ)だけらしいが・・・」
「それってどこにあるの?ミスター」
「山形県沖合い100キロの岩島と呼ばれる無人島らしい。─まさかなあ」
「ぼくは原子炉なんて見てないよ。もっとも島全体を歩いたわけじゃないけど」
 ただ最後に船に乗ったので島だという事はわかるのだが。
「この岩島の映像があれば・・・。あ、これだ」神宮寺が洸を振り返る。
「あー!この山!ここだ!」モニタを覗いた洸が叫んだ。「この2つの山、高くはないけどこんなに三角の山が2つも揃っている所なんてそうはないよ。間違いない」
「フロイントリヒ・・・優しい原子炉。こんな所で何をする気だ」ジョーもモニタを見る。画面にはその建物は映っていないが、不安感が広がる。「もしかしたら一平はここにいるかもしれない。行ってみるか」
「だが周りに島1つない海の真っ只中だ。船で近づいたらすぐバレちまう」モニタの映像が次々と変わる。確かにこの辺にあるのは岩島だけだ。「手はあるか?」
「そーいう事を考えるのはお前の仕事だぜ」ニッと口元を歪めジョーが言う。「おれは肉体労働はOKだが、頭脳労働には向いてねーのよ」
「なに言ってるんだ、こーいう時だけ・・」が、「山形・・・確か酒田海上保安部に」
 神宮寺の指がキーボードを跳ねる。
「まだ実験途中か。まっ、いいだろう。こいつを借りて─」
「なに?ミスター、どうしたの?」
 洸が訊いたが、“しっ”とジョーに止められた。
「コンピュータが動き出したぜ。パソコンより確かなコンピュータが」
 ジョーと洸が見守る中、神宮寺はひと通り検索を終え、さらにプリントアウトした3、4枚の紙をジョーに渡した。
「潜水艇のマニュアルだ。読んでおけ。─洸、来てくれ」
「えっ、な、なんだよ潜水艇って─神宮寺!」
 と、洸がジョーに向かって“しっ”と指を唇に当てた。ウインクして神宮寺と共に出て行く。
 ジョーが舌を鳴らしプリントを見た。
「うわっ、漢字ばっかりじゃねえかよ!こんなもの読んでる場合じゃないのに・・・。せめてドイツ語で出してくれよ」
 紙面にビッシリと書かれた文字にジョーがクサった。

 酒田海上保安部を発進した高速特殊警備船?つるぎ?は日本海を西に向かって航行している。その甲板にはロングコート姿の神宮寺とジョーがいた。
「考えたな、神宮寺。海保の警備船を使うなんてよ」
 日本海の冷たい風に髪を乱され、しかしその間から覗くいたずらっ子のような瞳を向けジョーが言った。
「警備船なら海上をウロついていても不思議じゃない。奴らは追い詰められているわけじゃないから、海保に攻撃を仕掛けては来ないだろう」
 コートの裾が風で翻る。が、黒い瞳を真っ直ぐ前方に向け、神宮寺が立つ。細身の体が風を切っている。
「ミスター」官服を着た50代の男が近づく。「潜水艇の準備ができました」
「ありがとうございます、船長」2人が振り向く。男は3等海上保安監で、この船の船長の羽村だ。「打ち合わせ通り、岩島から20キロの地点で落としてください」
「あの潜水艇はまだ改良中のものです。安全は保障できません」
 羽村は目の前の男達を改めて見る。彼はこの2人が何者かは知らない。だが管区海上保安本部から彼らに協力するよう指令を受けている。実験途中の潜水艇?アサヒ?を使用したいというが・・・。
 だが羽村はこれ以上口出しはできない。もしかしたら自分の息子より若いかもしれない2人を気遣わしげに見る。
「大丈夫です。何か起こってもあなた方が責任を問われる事はありません」
「・・・できる限りの協力を」
 にこやかに言われてしまうと、これしか言えない。黒い瞳の男が微笑み頷く。もう1人の長身の男はその瞳を前方に向けたままだ。
「行くぞ」
 神宮寺が言い、ジョーが頷く。羽村の案内で船尾にまわる。そこにはクレーンに吊り下げられた2人乗りの小型潜水艇があった。
 2人はコートを脱ぎ、そばにいる洸に渡し潜水艇のハッチを開けた。体格の良いジョーがやっと入れるくらいの幅しかない。
「ミスター」洸が声を掛けた。「ぼくも、6部隊や3課も後から行くから」
 急な出発だったので、とりあえず3人だけが先に山形を目指した。6部隊の西崎達や関は今頃はまだこちらに向かっている頃だろう。
 神宮寺は頷きジョーと共に艇内に降りていった。
「?アサヒ?、潜水開始」
 岩島の東20キロの地点で?つるぎ?は?アサヒ?を海面の降ろした。
?つるぎ?は速度を緩めているものの停止してはいない。海面スレスレまで降ろし、ワイヤーを外す。?アサヒ?がザッと海面を後退した。やがて止まるとその場で潜水を始める。
「ソナー、OK。目標、西20キロ」
 ジョーが目の前の計器を読む。
 2人は以前、ハワイ沖2000mを潜った事がある。しかしあの時の潜水艇はもっと大きな船だった。海底調査船でもあったので設備が多く、オートも使えた。しかし今回潜水艇は、ただ潜って進むだけのものなのだ。
「深度30。このまま進むぞ」
 操縦舵を握る神宮寺が確認した。潜水艇は一級小型船舶操縦士の免許があれば舵を握る事ができる。もちろんジョーも洸も操縦はできるが、正式に免許を持っているのは今のところ神宮寺だけだ。
「一級小型船舶で潜水艇が動かせるとは思わなかったぜ」ジョーが言った。
「お前も早く取れよ。仕事中に免許がないから動かせない、なんて笑い話にもならん」
「なくても結構動かしているけどな、おれら」ジョーの言葉に、まーな、と神宮寺が苦笑した。「と、言ってる間にもうすぐ岩島だ」
 と、腰を上げた。
 内部は185センチのジョーが真っ直ぐに立てないくらい低い。天井に頭を打ち付ける少し前の高さにスコープがある。潜水艇は真っ直ぐに島に向かわず少し回り道をしたので、ここは島の南側になる。洸が覚えていた特徴ある三角の2つの山が、ここからでは重なって見えた。
「人影はないな。小さな入り江がある。あそこなら波の影響は少ないだろう」
「ラジャ」
 神宮寺が深度30から徐々に潜水艇を上げていく。実験途中の艇と聞いていたが今回のようにただ航行するだけならなんの支障もない。
「浮上」
 両舷のバラストが海水を吐き出す。不快な浮力感に襲われた。
「こいつは苦手だぜ」
 ジョーが唸るが、今回は長くは続かなかった。
「浮上完了」
 神宮寺がホッと息をつく。
 2人はハッチを開け潜水艇から岩場へ飛び移った。神宮寺は濃紺の、ジョーは深い緑色のジャンプスーツ姿だ。胸にはそれぞれの愛銃が収められている。
 島は木と岩に覆われていた。フロイントリヒ研究炉の建物を目指す。
 途中小さな宿泊施設があった。建物内は少し前まで誰かが使用していた痕跡はあるものの、今は無人だった。もしかしたら洸達がいた建物かもしれない。もしそうならここにいた若者達はどこへ行ってしまったのだろう。と、神宮寺が足を止めた。
「研究所だ」
 2人の目の前に白い建物が見えた。それは想像していた原子力発電所のような大きなものではない。陸地から離れたこの島で、本当に研究のためだけに使用された小規模のものだ。
「静か過ぎるのが気に入らねえぜ」
 辺りを見回しジョーが呟く。奴らのアジトとはいえ戦闘基地ではないので防衛設備などもないようだ。
「とにかく行ってみよう」
 入口は開いていた。2人は素早く侵入する。抵抗がまるでない。
「まさかもうここから引き上げたのでは」
 2人は一瞬不安を感じた。が、
「いや、奥に人の気配がある」
 薄暗い廊下の向こうから明かりが漏れていた。その部屋にはドアはない。広く、大きなモニタや機械類が置かれていた。5、6人の外国人らしい男達がいる。と、1人がモニタに映し出されたものを見て声を上げた。
「くそォ、見つかったか」モニタには2人が乗ってきた潜水艇が映し出されていた。「早いとこ一平達を見つけないと─え?」
「?」
 2人が顔を見合わせた。潜水艇を見た金髪の男が、“It is too early”と口走ったのが聞こえたからだ。
「“早過ぎる”?なにがだ?」自分達が来るのを予見していたというのか?「とにかくまず一平達を」
 神宮寺がリンクのトレーサーを入れた。
 洸の話から、この島にいた時は通信機は使えなかったと聞いている。そこで妨害電波を防ぐ装置をリンクとスピードマスターに備えてもらった。一平のクロノグラフがオンになっていれば追える。が、入ってきたのは洸からの通信だった。
 2人は男達のいる部屋から離れ、無人の小部屋に滑り込んだ。通信に切り替える。
「神宮寺だ」
『ミスター、大変なんだ』ノイズがひどいが洸の声だ。『チーフから連絡があってゾンタークの奴ら、捕まっている仲間の釈放を要求してきた。ダメなら原子炉を作動させるって』
「なんだって」2人が同時に声を上げた。「奴らそのつもりでここを」
『そこが停止された理由なんだけど、動作が不安定だったらしい。再び作動させたらどうなるかわからないそうだ。ぼくと6部隊、3課は今、島の東50キロの所にいる』
「ウラン燃料を持ち込んだって事か・・・。洸、おれ達の潜水艇が発見された。とにかく一平達を見つけて原子炉の作動を阻止する。気をつけて上陸してくれ」
『ラジャ』
 洸の通信が終わりトレーサーに切り替えたとたん反応があった。赤い点は一平の色だ。
「こっちだ」神宮寺のリンクが一平を追う。地下に降りると大きなドアが見えた。「ここだ」
「任しとけっ」ジョーがベルトから針金を取り出す。普通のキーらしく、すぐにカチンと音がしてドアが開いた。と、薄暗い中10人ほどの男達がいた。「一平」
「ジョー」
 小さく呟き、他の男達がいる事に気がつき、一平が2人に駆け寄った。
「原子炉が作動するかもしれない。お前は皆を連れて出ろ。洸達が海上にいる」
「おれ達が乗ってきた船があるはずだ」一平が言った。「それなら10人くらい乗れる」
「海保の船が島の東側から近づいているはずだ。─急げ!」
 ジョーと神宮寺が男達を守り、出口まで誘導する。が、出口にはキーが掛かっていた。神宮寺のマグナムがドアをすっ飛ばした。とたんに警報が鳴る。
「おれ達はいい。早く行け!」
 一平達を押し出し、2人はまた研究所内に戻った。ダダダ・・・と足音がし、何人もの男達がこちらに向かってくる。銃声が響き2人が身を躱した。
「Dieser typ!(このやろう)」
 ジョーがウッズマンを抜いて応戦する。恐れも躊躇いもなかった。昨日と同じ様に撃てる。大丈夫、もう大丈夫だ。
 人間に向かって銃を撃てるのが嬉しいのではない。今まで自分の心の中にあった弱いもの、恐れやわけのわからない感情─そういったものに打ち勝った結果だ。
「さっきの部屋に行こう」
 男達を床に転がし神宮寺が走る。熱くなったウッズマンを片手にジョーが続く。と、突然、ビーというけたたましいサイレンが鳴り出した。2人は一瞬足を止める。が、またすぐ走り出す。
 大きなモニタの部屋には金髪の男が1人だけだ。
「Who are you? The japaness police?」男が言った。だが2人は答えず、わずかに左右に広がり男を見つめる。「まあ何者でもいい。すでに原子炉は作動し始めた」
「なんだって!」「Ich bin dimm!(バカな)」
「そちらが要求を呑まなかったからだ。この島から200キロ四方は影響を受ける」
「あんたも死ぬんだぜ」
「大丈夫、私が逃げるくらいの時間は取ってある」と、モニタが切り替わった。「こ、これは─」
「洸、関」
 モニタには島に上陸した洸や西崎達第6部隊と関達3課の面々が映し出されている。後は洸が神宮寺のリンクを追ってここまで来るだろう。
「侵入者だ!」
 男がマイクに向かって叫ぶ。この島のどこかにまだ仲間がいるという事か。そしてさらにいくつかのスイッチを押そうとした。その手をジョーがウッズマンで止める。弾丸は後ろのコンピュータまで撃ち抜きモニタが消えた。
「原子炉を止めなくては」
 神宮寺がコンピュータに近づく。が、
「危ない!」
 ジョーの体が跳び神宮寺と倒れている男の間に入った。両手で握ったウッズマンの銃口を男に向けた。
 銃声が響く。ジョーの撃った弾丸は男の胸にヒットした。だが男の撃った弾丸はジョーの右肩を抉った。


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