コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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当世幻話 3

「警察庁の監視カメラには侵入者の姿は記録されていなかったんだって?」 
「そうらしい」珍しくコーヒーにミルクを入れ、神宮寺が頷いた。「入り口はもちろん、各階のカメラにもだ。だからおれ達や関さんは侵入者の姿を見ていない」
 あの後、8階はもちろん全館の捜索を行ったが、侵入者とされる2人の男達は発見されなかった。
 そうなると、その侵入者にそっくりの神宮寺とジョーに疑いの目が向けられたが、彼らが入庁以降ずっと公安3課の防音室にいた事は責任者の関を始め3課の全員が証言している。
 また一部の人間が、8階のあの部屋に入った2人が銃弾を浴びたのも見ていた。さらに監視カメラのモニタには侵入者が映っていたものの、テープには記録されていなかった事も混乱を招き、2人が警察庁を出られたのはもう夜も遅くなっての事だった。
「さっきチーフに報告して、お目玉を食らったよ」
「路上カメラにはジョーと神宮寺らしき2人組か・・・」西崎が首を傾げ呟く。
「もちろんおれ達じゃないぜ」ムスッと神宮寺が言った。
「わかってるよ。君達が本気で金を奪うつもりなら、ケチな強盗なんかするより、スイス銀行でも襲っているさ」
 褒めてるのか?それ、と神宮寺が首を傾げたが、 
「ツケの次が食い逃げ、そして強盗に警察庁への侵入・・・だんだんエスカレートしてきていないか?」それは神宮寺もそう思っていた。「まるで洸のゲームのようだな。だんだんと難しいコースに挑戦していく─」
 では、警察庁侵入の次は何を─。
「ジョー」ずっと無言の相棒に神宮寺が声を掛けた。「どうした、大丈夫か?」
「・・・ん」見るとジョーは、前に置かれている杉本特製の夜食のサンドイッチにも手をつけていない。「なんかだるい・・・。眠いだけかもしれないけど・・・」
 と、コーヒーに手を伸ばし・・・そのままバタンとテーブルにうっ伏した。
「寝た・・・」
「あ?あ、こんなでかいのがいたら杉本さん達片付けられないぞ」
 口々に言う仲間を見ながら、神宮寺自身軽い眠気を感じている自分に気がついた。ジョーのようにこのまま寝られたらいいな、と・・・。
「─え?」
 突然目の前が真っ暗になった。寝ろという事か?
「杉本さん!おれ達まだいるよ!」
 高浜の声で、ライトが消えたのだとわかった。
 窓から外を見ると新宿御苑を挟んだ新宿2丁目の方は明るいので、狭い範囲での停電のようだ。元々御苑側は夜の光は少ないが、反対側─代々木駅に向かっている窓が暗いというのもちょっと見ない光景だ。
「遅いな・・・」
 高浜が言うのは非常時の自家発電の事だ。これは管理課のコンピュータに電気を送る事が優先される。それから各階に供給されるのだが─。
 非常時の照明が点いているとはいえ、薄暗いその中で高浜達も動けずにいた。
 テーブルに俯しているジョーの枯葉色の髪がぼおっと浮かんで見える。こんな所で無防備に寝てしまうのは珍しい。まるで息をしていないように・・・。
「ジョー!」突然、神宮寺がジョーの肩を掴み激しく揺さぶり始めた。「ジョー!」
「─な、なに・・・あれ?暗い・・?」
 ぼおっと目を開けたジョーが相棒と目が合った。
「この暗い中でなにする気だ?」パンッ!と頭が鳴った。「なんなんだよ!」
「どうしたんだ」
 ジョーより神宮寺の様子が気になり、西崎が声を掛けたが、
「いや・・・」
 神宮寺が口籠もる。自分でもよくわからない行動だったようだ。と、今度は非常用の照明も消えた。食堂の隅にある消火栓の赤いスイッチだけが浮き上がっている。
「見ろ!」窓から外を指差し西崎が叫んだ。「周辺は真っ暗だ!」
 JBもそうだが、停電になっても自家発電のあるビルは一部だが電気が点く。非常用の照明もあるはずだ。
 だが今は狭い範囲ではあるが本当に真っ暗なのだ。
「情報課へ」
 手探りで神宮寺が同じ3階にある情報課へ向かう。
 食堂のドアはオープンにしてあったので通れたが、西館へ通じるドアは開かなかった。壁の一部を開け中のレバーを下げて手動に切り替える。追いついてきた西崎達とドアを抉じ開けた。
 情報課のドアはすでに開かれていて、最低レベルの照明が点いていた。
「非常用の電源が落ちた理由はわからない。今、管理課の電源室に人をやった」入ってきた男達が何か言う前に、情報課課長の井上がいった。「今は各課のコンピュータを維持させるだけで精一杯だ。君達は上に戻った方が─」
 銃声が響いた。室内にいた男達が一斉に入り口へと振り向いた。
「ジョー・・・」
 神宮寺の目に、ドアの横で銀色の銃をかまえているジョーの姿が映った。
 わずかな光の中で靡く枯葉色の髪と鋭いブルーグレイの瞳がそこにいる男達の動きを止めた。が、続く銃声に神宮寺は我れに返った。
「やめろ、ジョー。どういうつもりだ」
 コンピュータが多く置かれているここで銃を撃つなんて・・・。いやそれよりも仲間に銃口を向けているジョーに気色ばむ。だがジョーは続けてトリガーを引いた。あっ!と高浜が声を上げる。腕から血が弾け飛んだ。
「ジョー!」
 西崎がジョーを抑えに掛かった。彼にも銃口が向けられる。それを躱しジョーの腕を引いたがその勢いを相手に取られ、西崎は床に叩き落とされた。
 フラリと体を起こしたジョーは、その瞳を自分を見つめる男達に─神宮寺に向ける。
「─違う」長めの髪や瞳、少し角ばった男らしいアゴの線─見慣れたその男の姿が見知らぬ者に変わる。「そいつはジョーじゃない!気をつけろ!」
 男達が不可解な眼を神宮寺に向けた。そのスキにジョーが情報課を飛び出した。

 神宮寺が食堂を後にした時、ジョーは出遅れてしまった。
 目は覚めているのにまるで睡眠薬でも飲んだように体が動かなかった。だから食堂から出た時には廊下にはもう誰もいなかった。
「あいつ、思いっきりひっ叩くんだからな」
 暗くても西館へのドアはわかる。開いているそのドアに手を掛けたとたん、何かがドンッとぶつかってきた。喉元に手刀が入る。
「ぐっ!」
 体を取られ床に落とされた。頬を打ち一瞬火花が散った。こんな入身技を使うのは─。
「じ・・・じんぐう・・・」床から見上げるその男は確かに相棒の─、「ち、違う・・・神宮寺じゃねえ・・・」
 ジョーは立ち上がり相手との間合いを取った。
「きさま、誰だ」
 だがジョーの問いに答えず、神宮寺が突きを入れてきた。右手で受ける。ジンッと響いた。
 武道家の神宮寺が本気で掛かってきたら、ジョーが敵う相手ではない。それはわかっている。しかも今の神宮寺は尋常ではない。人間とは思えない─まるで機械のような正確で強烈な突きや蹴りを打ち出してくる。ジョーは受けるだけで精一杯だ。
「う─」
 壁に追い詰められた。ジョーの頭めがけて神宮寺の右足が飛ぶ。両手で掴んで止めた。そのスキに左足がジョーの鳩尾に入った。
「うっ!」
 床に膝を付く。気は抜いていなかったので気絶しないで済んだが、息が詰まり立ち上がる事ができない。
 神宮寺の靴先が見えた。次の一撃が来たら逃げられない─。が、目の前の相手が踵を返して遠ざかっていく。西館の方へ行ったらしい。
「つ・・く・・・」
 壁に手を付き立ち上がる。正直言って助かったと思った。すぐさま後を追って西館に入った。
 行動部があるこちら側は所々だが照明が点いていた。と、銃声が響き前方の長い廊下の向こうから男が走ってきた。
「てめぇ!」
「おとなしくしろ!」
 神宮寺とジョーが対峙する。と、ジョーが神宮寺めがけて突進した。体格差を利用しそのまま床へと押し倒す。が、神宮寺がジョーの腹に足を入れ巴投げで後ろに飛ばした。
 すぐさま起き直るジョーに、神宮寺が突きを繰り出す。その手首を掴み、後ろ手に拘束しようとしたが裏拳がジョーの顔面を打った。歯に当たり唇が切れた。とっさに顔を背けなければ鼻の骨が折れていたかもしれない。
 神宮寺を抑えていたジョーの手が離れ、2人は再び対峙じた。
「神宮寺・・・ジョー・・」
 2人を囲む西崎達も手が出せない。と、
「お前・・・ジョーか・・」
 目の前のブルーグレイの瞳を見つめ神宮寺が呟く。
「・・神宮寺・・本物の?」いきなり自分を襲ってきた男と、寸分違わぬ見慣れた姿─いや、しかし先ほどの男とは何かが違った。「本当にお前か?先日の夜、おれを食うつもりでベッドに飛び込んできた時、おれは何を着てた?」
 パンッ!とジョーの頭が鳴った。間違えなく本物のようだ。
「じゃあ、あいつはいったいどこへ行ったんだ」
「確かにこっちに─」
 情報課と食堂のある東館までの廊下は一本道だ。エレベータは動かないので逃げるとしたら階段しかない。西崎達は手分けして階段を調べた。
 しかしおそらく見つからないだろう─。なぜか2人はそう思った。

「君達の予想どおり、その2人は発見できなかったよ」ソファに座る2人に森が言った。「停電の原因もわからない。品川か大井の発電所の不備らしいが、30分も経たないうちに自然と直ってしまったそうだ。電力会社もさらに詳しく調べると言っているが─」
「都心全域に電気を送っている発電所の不備でたまたまこの地域だけが、って事ですか?」
 神宮寺が言うのへ、うそくせ?とジョーが鼻を鳴らした。
「奴らがどうやってJBに入ったのかも不明だ」
 森が再び2人に目を向ける。顔や手に無数の擦り傷や青アザが見える。ほんの一瞬だったが2人が本気でやりあったのだ。このくらいで済んでよかった、と思う。
「こうなると君達の偽者がいるという話も間違いではないようだが」
 しかしまだ半信半疑だ。
 今回?偽者?に気がついたのは当の2人だけだ。ダブルJが2組顔を合わせたわけではない。一緒にいた西崎達は?それぞれ?1人しか見ていないのだ。
 それにこの独特な風貌の男達が1人はもちろんだが、そっくりな2人が揃うなどという事があるだろうか。それも一瞬だが相棒を騙せるほどの─。
「でもチーフ」不満そうにジョーが口を尖らす。「そいつらがいないとしたら、今までの騒ぎは全部おれ達がやった事になっちまいますよ」
「ん・・・。まっ、ツケや食い逃げはともかく、それ以外はな・・・」
 まるでこの2人ならやりそうだという森の口調に、ジョーの口がますます尖る。
「それから関さんから連絡があったんだが、例の赤坂の路上カメラに映っていた君達だが─」2人がジロリと森を睨んだ。「─いや、偽者か・・・。とにかくその2人が記録テープから姿を消したそうだ」
 は?、と今度は目を見開く。
「3人の若い男達は、自分でコケてサイフを落としたと言っているそうだ。紛失物の届けが交番に出ている」
「ンなバカな!おれ達は確かに見たんだ。ライトに照らされた?おれ?の顔を─」
 言ってしまってから、ん?と口を閉じた。思いっきりしかめられた顔を神宮寺に向ける。
「ところで、ジョーに撃たれた高浜は」
「おれじゃねえ!」
「腕を掠っただけでもう捜査課に戻っている。ただ不思議な事に弾丸が発見─」

「兄さん」振り向くとノートを抱えた智がいた。「宿題でわからないとこがあるんだ」
「またか?」クルッとイスを回し、神宮寺が答える。「少しは自分で考えなきゃだめだぞ」
 兄の言葉に、ん・・・と困ったように目を向けてくる弟に
「どれ?」
 と、目元を緩めた。

         ×    ×    ×    ×    ×

「神宮寺君」男の声がする。白い服を着た・・・榊原・・?「神宮寺君」

         ×    ×    ×    ×    ×

「─できない。情報課の室内を隈なく捜したんだが」
「自分達の痕跡を残さないつもりか。─どうした?神宮寺」
「・・・いや」自分に向けられた黒い瞳・・・。「違う・・・。お前・・青い眼だな・・・」
「は?」その青い眼が瞬く。それでもじーと見つめる神宮寺に、「どうしたんだよ、変だぜ。そんなにおれを食いたい?」
 パンッ!と頭が鳴った。元に戻ったようだ。
『中西です』モニタに通信課課長が映った。『公安3課から連絡がありました。停電前に品川発電所に忍び込んだ2人組がいたそうです。その男達は・・その・・・』
「・・・おれ達にそっくりだと─」ジョーが言うのへ、中西が頷いた。「品川で工作して千駄ヶ谷で暴れて─。ずいぶんとご活躍だな。そのうちおれ達に取って代わるんじゃねーの」
「その2人の姿はテープに残っていますか?」神宮寺が訊いた。
『いや、職員が見ただけだ。それから・・これも関さんからですが、赤坂や新宿などでジョーによく似た男が相手構わずケンカを吹っかけていると─』
「それは本人だな」
「お前なあ・・・」
 ジョーが短い息を吐いた。突っ込む気も失せる。
「しかしこれでは君達を外へ出すのも難しくなるな」
 消えたモニタ画面を見て森が言った。
「品川から千駄ヶ谷─、時間的に言っても10分や20分では移動はできねえ。いったいおれ達は何組いるんだ?」
 モニタから眼を逸らし、ふと何かに呼ばれたように窓の方に目を向け─喉元を手で押さえると、そのままソファの下に崩れ落ちた。
「ジョー!?」神宮寺が、蒼くなっていくジョーの口元に手をかざす。「・・・息をしていない」
「なんだって?」
 一瞬言葉を失い、しかし森はすぐに医療部に連絡を入れた。
「ジョー!」神宮寺がジョーの頬を叩く。「息をしろ!ジョー!」
「神宮寺君、すぐに医療部が来るから─」
 と、ドアがノックされた。
「失礼します」
 返事も聞かず佐々木が入ってきた。
「今、3課から連絡がありまして─」室内の様子に一瞬言葉を切ったが、「警視庁がジャックされたそうです」
「な、なんだと!」森が声を上げ、神宮寺が息を呑んだ。「どういう事だ」
「詳しい事はまだ。今、警察庁が─、あ、あの・・ジョーは・・・」
「・・・・・」
 立ち竦む森の足元で、神宮寺はジョーの服を握り締めていた。

         ×    ×    ×    ×    ×

 ピー!と、ナースセンターに甲高い警告音が響き渡る。512のランプが点いた。
「院長に連絡を─!」
 榊原看護師長が指示した。

         ×    ×    ×    ×    ×


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