コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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当世幻話 4

 普段なら車列の絶えない内堀通りや桜田通りに、今、車1台人1人見る事ができない。警察庁公安課の指示で交通封鎖が成されているのだ。
 ─ワレワレハ ケイシチョウヲ イタダイタ─
 これが公安への第一報だった。その後の事は何もわからない。なぜか警視庁の建物に近づく事ができないのだ。まるで目に見えない幕を張られているようで─。もちろん内部の様子も職員達の安否も確認できていない。
 霞ヶ関のこの一角だけが別空間にあるようだ。
「警視総監や公安部長にも連絡が取れない」
 今まで使用した事はないが、チーフ室には警視庁へのホットラインもある。それが今は機能していないのだ。
「警視庁のホームページにも入れませんね」キーを叩きながら佐々木が言った。「メールもだめか・・・。警視庁管轄内の通報にも支障をきたしています。長時間続くとマズイですね」
 と、モニタを覗いている神宮寺と目が合った。
「ジョーは?」
 が、神宮寺は首を振った。彼は駆けつけた石丸にジョーを託し、自分はチーフ室に戻ってきたのだ。
「まだ事態は動いていない。ジョーについていてあげた方が─」
「おれがいても役には立ちません。それよりあいつが動けるようになった時のために事態を把握しておきたいんです」と、リンクが鳴った。画面に文字が走る。「チーフ!」
 ─フタリデ コイ─
 エンドレスで流れる6文字を、3人が凝視する。
「・・この2人というのは、神宮寺君とジョーの事でしょうか・・。では犯人は2人の事を知っている・・・?」
「私だ」森が医療部に連絡を入れた。「ジョーの具合はどうだ?」
『先ほど意識を回復しました。大丈夫です。しかしもう少し様子を診たいのですが』
「わかった。頼みます」フォンを切り神宮寺に向き直る。「“来い”というのは警視庁にだろう。相手の様子がわからず危険だが─。一平か洸をつけよう」
「いえ、おそらくおれとジョーでなければ入れないと思います」神宮寺がドアへと向かう。「根拠はありません。でも、なぜかそう思うんです」
 かすかに頭を下げ、6階へと戻った。

        ×    ×    ×    ×    ×

「・・い・・いしま・・」手を上げる。重い。「・・これ・・取って・・れ・・いし・・さん・・・」
「石丸?ここをJBだと思っているのか」
 榊原が姉の敬子看護師長と顔を見合わせた。
「でも呼吸が止まった時はどうなるかと思いましたが、よく持ち直しましたね。数値も安定しているのでもう大丈夫でしょう」ふと、もう1人に目を向ける。「2人共強いわ。これだけの─」

        ×    ×    ×    ×    ×

 桜田門の交差点から入る警視庁の正面に、神宮寺は1人立っていた。
 ここへは数えるほどしか来た事がない。その時はいつも地下駐車場から上がるのでこうやって真っ向から見る事はあまりなく、彼には見慣れない光景だ。
 階段を上がりドアに手を掛けた。が、開かない。“来い”と言ったくせに、おれにドアを壊せという事か。と、リンクが鳴った。画面に文字が走る。
 ─アイテムガ タリナイ─
「アイテム?ゲームじゃあるまいし、おれに炎の剣でも打ち出せと言うのか」
 マグナムでドアを撃ち壊そうかと一瞬迷ったが、
「剣はねえが、おれならいるぜ」
「ジョー!」
 いつの間にか傍らにジョーが立っていた。薄いオレンジ色のTシャツの上にホルスタをつけ、茶色のジャケットを着たいつもの彼のスタイルだ。だが─、
「お前・・・」訝しげに見る神宮寺にジョーが正面からその眼を合わせる。一点の曇りもない見慣れたブルーグレイの瞳。その瞳に映っている自分もまた─。「─本物だな」
「お前もな」ふっと、2人が口元を緩めた。それだけで充分だった。2人はドアに体を向け同時に手を掛けた。スッと開いた。が、「うっ!?」
「な、なんだこれは」そこには何もなかった。入ってすぐの受付も、柱や壁さえも・・・。ただ真正面に伸びる廊下だけが‘見えた’。「・・・おれ達、夢を見てるのか・・・」
「夢なら覚める前に楽しもうぜ」
 ジョーが足を踏み出し、神宮寺も続いた。
 この先に何かが待っている事は確かだ。それは例の2人の偽者だろうか。と、ふいに目の前にドアが現れた。あまりに近くて鼻をぶつけてしまいそうだ。再び2人で同時に触れるとスッと消えた。
 空気が変わった。どこか違う空間に入ったようだ。赤いライトが灯った。
「神宮寺!」
 叫んでジョーが横に飛んだ。反対側に神宮寺も跳び─しかし何かにぶつかって跳ね返された。そこへ銃弾の雨が降る。ジョーが神宮寺に跳びつき、転がり避けた。今度はぶつからず2人は銃弾の雨から逃れることができた。
「なんなんだよ、ここは!─どうした?」見ると神宮寺は床に伏せたまま動かない。どこか撃たれたのかと思ったが銃痕は見えなかった。「神宮寺、おい─」
「・・・体が・・・いや・・意識が・・どこかへ持っていかれるようで・・・」え?、とジョーが神宮寺の顔を覗き込んだ。「“戻れ”と・・誰かが言っている・・・。戻らなければ・・ならない・・」
「・・・・・」ジョーには彼の言っている事がわからなかった。だが?戻った?方が良いのかもしれない。「一度出よう。立てるか?」
 神宮寺の体に手を回し立たせようとするが─。
『神宮・・君、ジョー、聞こ・・・』スピードマスターとリンクから途切れ途切れに森の声が聞こえた。『奴らからの・・・君達が来なければ・・爆破される。リミット・・30分以内・・・』
「くそォ!どこでも勝手に爆破しろ!」なおも神宮寺に手を貸そうとするが─、その手を押し戻し神宮寺が立ち上がる。そしてさらに奥へと足を向けた。「おい、外へ─」
「行かなければならない」神宮寺の瞳が、果てのない空間へと向けられた。先は見えない。だが目的の地はわかっているように。「こっちだ」
 しっかりと歩むその足取りに、あっけにとられたように見上げるジョーだが、やはり立ち上がり後に続こうとしたが、
「─あ」
 カクンとジョーが膝をついた。目の前がブレるような─、意識がどこかへ引っ張られるような感覚が彼を襲う。
 さっき神宮寺が同じ事を言っていた。が、ジョーはすぐに立ち上がった。どこか別の方へと向かおうとする意識を目の前にいる相棒に向ける。
 その男の向こうにボオと白い影が浮かんだ。モヤモヤしたそれがだんだんと人の形になっていく。背の高い、ダークブロンドにとび色の瞳の─。
「・・クロード・・」ジョーは自分の目を疑った。だがそこに立つのは確かに─。「・・あんたが・・こんな事を・・・」
 いや違う。クロードは死んだ。鷲尾がそう言っていた。
 だがジョーはその場に立ち会ったわけではない。両親の時と同じ様に、ジョーが眠っているうちにすべてが終わっていた。
「クロードだって?」面前の人影を神宮寺が見つめた。「違う、クロードじゃない。・・あれは・・・」
 人影が小さくなり少年の姿が現れた。
「・・さ・・とし・・」
 少年は─、しかし8才の子どもの姿ではなかった。高校生くらいの・・・弟が生きていれば18才になっていたのと同じくらいの少年の姿に─。もちろん神宮寺は見た事がない。だがすぐわかった。
「なぜ、こんな所に・・」
 神宮寺が一歩踏み出す。
「神宮寺、クロードがいる。彼がこんな事をやらかしたのか?」
「違う。あれは弟の智だ。大きくなった智が─」
 言いながら、お互いに何かが違うと感じていた。だが相手に対しての想いは止まらない。言いたくとも言えなかった想いが沸き上がる。
「クロード、あんたが死んだのはおれのせいだ。あの時・・おれが奴らのアジトから逃げ出さなければ、あんたが撃たれる様な事はなかった・・」
 ジョーが手を伸ばす。
 ─Ich liebe kleiner Gerge─ 
 クロードの声が聞こえた。とび色の瞳が自分を見ている。伸ばした手を掴まれ引き寄せられた。
「・・おれを・・許して・・・」
「智、おれがゲームに入れなかったら・・・。小さいから友人達は無理だと言ったのに・・、お前をゲームに入れて外野になんか出さなければ・・・」見かけは大きくなっても弟のあの無邪気な瞳は変わらない。それゆえ辛い。「おれがホームランなんか打たなければ・・・」
 キー!と、急ブレーキの音。
 いつもここで目が覚める。確認するのが怖い。1つ残らず目にしているはずなのに、感情がそれを否定する。
「・・許してくれ、智・・・」
 クロードが、智が、ジョーを抱く。神宮寺を抱く。
 許してくれるのか、‘おれ達’を─。と、
「うっ!」
 突然目の前に<神宮寺・ジョー>が現れた。<智・クロード>がささやく。やさしく・・強く・・。
「・・う・・あ・・あ・・」
 相手に目を向けたまま、<神宮寺・ジョー>が間合いを取っていく。
 こいつは・・ダレ・・?<智・クロード>を死に追いやった奴・・。
 違う、それは‘自分’だ。
 いや・・こいつか・・?
 2人の間に両刀の剣が現れた。伸ばされた震える手が柄を掴む。切っ先を相手にむけたまま、だが動けない。
 違う・・・こんな事をしてはいけない・・・これは違う・・。が、その2人の目の前に血に塗れた<智・クロード>が見えた。グキッと胸が鳴った。
「でやああ!」
 2人同時に動いた。カシーンと刃が合わさる。ジョーが力で押し切ろうとしたが、すぐに神宮寺が後ろに飛び退いた。
「でやあ!」
 息つくひまも与えずジョーが剣を振り下ろす。時間が経てば自分が不利になるのはわかっている。相手を休ませてはいけない。
「くっ!」
 その剣を下から受けた神宮寺が、だがすぐに弾き飛ばした。竹刀ならともかく両刃の扱いには慣れていない。相手の強い力で押されたら不利だ。接近戦は避けたいが─。
「・・お、お前が・・クロードを・・」─違う!おれだ!おれが貨物船で─。
「智を・・お前が弟を・・・」違う!─弟はひき逃げに遭った。おれがホームランを─。
 シュッ!と剣が唸る。あっ!と2人が左肩を押さえた。血が噴き出し腕がダラリと下がる。もう左腕は使えない。こうなったら─。
「たああ!」「とうっ!」
 剣先を相手に向け一気に刺し貫こうと2人が飛んだ。目の前に相手の切っ先が見える。それが自分の胸に吸い込まれる刹那─、2人の間で金色の光が爆発した。
「うわっ!」
 2人が同時に床に叩きつけられる。空(くう)に金色の光が浮いていた。
「・・・タグ・・ネックレス・・」
 いつもはジョーの胸にあるそれが四方に輝きを発し浮いていた。ジョーも神宮寺もその光を見つめ・・・床に崩れ落ちた。

        ×    ×    ×    ×    ×     

「神宮寺君」柔らかい声が呼ぶ。呼吸がラクになった。「院長、神宮寺君が─」

        ×    ×    ×    ×    ×

(なにをしているんだ・・・こんな所で・・)
 目を覚まし、自分が床に仰向けになっているのを自覚するとジョーは思った。ノロノロと体を起こす。左の肩が痛い。が、傷はないようだ。
(─うっ)
 吐き気がして口元を押さえた。体が重く動きが鈍い。と、
「神宮寺」少し離れた所でやはり仰向けになっている神宮寺に気がついた。「おい、起きろ」
 体に手を掛け揺さぶる。と、ボォ・・と淡い光を発し、その体がだんだんと透けていった。
「神宮寺!」両肩を掴みガクガクと乱暴に揺さぶった。「しっかりしろ!消えちまう!」
「・・・ジョーか」ジョーに引っ張られるように神宮寺が体を起こした。透けていた体が元の色を戻す。「おれ達・・・何してたんだ」
 相棒の問いに、だがジョーは首を振る事しかできない。すると2人の前に1本の光が現れた。
 スーと縦に引かれていく光─やがて左右にも広がり、2人がいる空間とは違う空間が現れた。強い光が邪魔をしてその向こうは見えない。しかしここが最終目的地だとわかる。その空間に向かい、スッとジョーが立った。
「ジョー」
「お前は戻れ」顔を上げ光を見つめる。「戻れるのなら戻った方がいい。今のうちに」
「な、何を言っているんだ」
 ボウ・・と神宮寺の体が淡い光に包まれた。
「お前は戻れる。今なら」
「戻るなら、お前も一緒に─」
「・・・おれはまだだ。‘ここ’のケリをつけてくる」光の中に一歩踏み込む。「任せておけ」
「ジョー!まて!」立ち上がろうと─だが足が動かない。「おれを置いて行くな!」
 だが振り向いたジョーはきつく微笑むと光の空間へと吸い込まれて行く─。

        ×    ×    ×    ×    ×

「・・・う」
 フウ・・と小さく息が吐かれた。センサーをつけた指先が動く。
「神宮寺君」柔らかな・・・榊原看護師長の声だ。「大丈夫よ、神宮寺君」
 師長は傍らの榊原医師を見上げた。が、
「─あ、あら?ちょっと・・・神宮寺君?神宮─」

        ×    ×    ×    ×    ×

 
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