コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Posted by  朝倉 淳   0 comments   0 trackback

当世幻話 完

 
 光が強すぎて何も見えない─。入った瞬間そう思ったが、すぐさま眩しさは消え、ジョーの周りを囲むコンピュータ群が目に入った。10台あるそれは全部稼働していた。
「う、うわ・・・」
 大きな事を言って来たのはいいが、コンピュータはあまり得意ではない。しかしやらなければならない。すでに目の前のカウンタは動き出し、10:00と表示されている。タイムリミットまで後10分という事か。
「文句言ってるひまねえや」
 ジョーがキーボードを叩き出した。不思議と頭の中にアルファベットや数字が浮かぶ。それを打っていくだけだがテンポが速い。ジョーはゆっくりといきたいのだが、頭の中を走るキーはあっという間に消えてしまう。
「くそォ、これは洸の仕事だぜ」
 これをクリアすれば、どこかに仕掛けられている爆発物が解除できる。ボヤいているひまはなかった。
 ふと、なんでそう思ったのだろう、と疑問が湧いてきたが・・・。それすら考えてはいられない。頭の中を走るキーはますますスピードアップしていく。が、
「よっしゃァ!」
 バンッ!とENTERキーをぶっ叩いた。モニタの中の羅列が一瞬止まり─消えた。8:20でカウンタが止まっている。
 ホオと大きく息を吐き─と、隣のコンピュータのカウンタが8:19になり動き出した。
 えー!?と声を上げ、すぐさまキーボードに取り付く。1台止めるとその次が動き出すのを繰り返し、最後の1台になった時にはカウンタが0:51になっていた。
「ま、間に合わねえ─」
 緊張で指の動きが悪い。後30秒を切った─と、キーを叩くジョーの手の上に何かがフワリと降りた。自分よりやや小さい手が、しかし活力を与えてくれた。見違えるようにスムーズに動く。
「これで最後だ!」
 ENTERキーが叩かれた。カウンタのメモリが止まる。0:02だった。ヘタ・・とジョーが床に座り込んだ。と、スピードマスターが彼を呼んだ。
「チーフですか。爆発物のタイマは解除されました。─は?なんです?」
『ミサイルが東京に向かっている。迎撃してくれ!』
「ミ、ミサイルって─、空自は何してるんだ!」ジョーは思わず大声を出したが、ノイズ混じりの通信は切れていた。「迎撃だと?ウッズマンで撃ち落せというのか」
 これはもはや自分の範疇ではない。
 そうだ、自分はもういいのではないか。この辺で・・もう・・・。
「う・・・」
 急に息苦しさを感じた。何かが口元を覆う。
“ジョー”
“ジョージ君”
 ─誰だ?おれを呼ぶのは・・・。
 息苦しさはなくなった。フワリと空(くう)に浮いているような・・・不安定だけど心地よい・・。
 ああ・・おれももうすぐ・・・と、目の前に何枚かのカードが現れた。なにげなくその1枚に触れる。パッとカードが消え、その向こうに現れたものは─。
「戦闘機!?」それは復座式の戦闘機だった。シュウウ・・・とキャノピーが開く。「おい、ムチャ言うなよ!おれは国際警察で自衛官じゃねえぜ!」
 もういいだろう、この辺で戻してくれ─。
 意識がフワッと浮き上がる。これで戻れる。神宮寺の所へ─。
 だがジョーは自らを今いる所へと引き戻した。なぜだかわからない。しかし‘これ’に乗られければならないと思った。
 自分を呼んでいる柔らかな声に逆らうように、ジョーは機体に手を掛けた。
「・・・2人乗りか」
「タンデムの相手がいないんなら、おれが付きあってやってもいいぜ」
「神宮寺!」いつの間にか傍らに神宮寺が立っていた。先ほどまでのように淡い色合いではなく、はっきりとしたいつのも相棒の姿─。「な、なんでここにいるんだ」
「ん?、なんでかな・・・。気がついたらここにいた」神宮寺も機体に手を触れた。ゴォォ・・・とエンジンが掛かった。その振動が2人の心に沁みる。「それに、呼んだだろ?おれの事」
「呼んでねーよ」フンとそっぽを向き、しかしすぐに前席に入った。「付きあえ、神宮寺!」
「ちょっとまて!なんでお前がパイロットなんだ。これはどう考えてもおれだろ」
「おれにナビができるかっ。上がる前に落ちるぞ」
 確信を持って言われ、神宮寺は納得して後席についた。Gスーツも酸素マスクもなくて大丈夫かと思ったがすぐに忘れた。
「ところでここ、滑走路あるのかよ。タキシング・ポイントさえ─」と、キャノピー越しに一直線に伸びる滑走路が見えた。「ファイン・アプローチだぜ、神宮寺」
「ああ。チェック省略!オールグルーンだ、行け!」
「ラジャ!」徐々にスピードを上げ2人の乗る戦闘機が大空に舞い上がった。「す、すごいGだ。カーレースとは比べものにならない」
 上がった所で機を水平に戻す。
 Gスーツもヘルメットや酸素マスクさえ着けていない男達が戦闘機を飛ばしているのを他のパイロットが見たら、腰を抜かしているかもしれない。しかしここには─この空間には2人だけだ。上には雲もなく、下に見える街はまるで誰もいないかのように静かだ。
「目標確認!後方60キロ」
 ナビの神宮寺だ。本来なら双方のやり取りはヘルメットについている通信機で行われるのだが、なぜか生の声が聞こえる。
「サイトワインダーだ。この機体─F4にも装備されている空対空ミサイルだ」では、近くに他の機がいるのか?だがレーダーレンジの中にその影はない。「核弾頭ではないな」
「ラッキーなのかねっ、それって」ジョーはF4をスロー・ロールさせた。「で、奴の着地点は?」
「知るか。あいつに訊いてくれ」
 神宮寺は地上と連絡を取ろうと試みている。しかしどことも─JBじゃもちろん、警察庁や防衛省とも交信できない。リンクも繋がらなかった。
「チェッ、頼りねえナビだぜ」
 ギロッと背後からの視線を感じ、ジョーはあわてて前方に目を戻した。このままスロー・ロールで相手の後ろに回り込むつもりだ。
 警視庁から飛び立ったのに─それもおかしな話だが─いつの間にか眼下は東京の街ではなく、だっだ広い草原になっていた。
「奴のケツについたぜ。このまま1発ぶち込んでやる!」
「・・・?そっち?のシュミだとはな」
「どっちの?そっち?だ!」
 怒鳴った勢いのまま、20ミリバルカン砲が発射された。が、
「あ?」
「き、消えた─。どこに行ったんだ、神宮寺!」
「わからない。レンジ内には反応もないし」もちろん肉眼でも見えない。
「ワープ機能を搭載したミサイルかよ」
 再びF4を旋回させ─突然目の前が真っ白になった。自分が─機体がどこにどう向いているのかわからない。自分は上昇し始めたつもりだったが果たして真っ直ぐに上に向かっているのだろうか。
「ど・・どうしたんだ・・。雲の中か・・・感覚が・・ヘンだ・・。どこに向かって飛んでいるんだ」
「おちつけ、ジョー。コンソールの中央にある姿勢表示器を見ろ。横傾斜角や迎え角がわかるはずだ。機体を水平に保つんだ」
 落ちついた神宮寺の声に誘導され、ジョーは水平位置器を見ながらF4を地平線に平行に合わせていく。
「バーディゴ(空間識失調)だな。高速で飛ぶと自機の姿勢がわからなくなる事があるんだ。だがもう大丈夫」
「う?、気持ちわりィ・・・。素人が乗るもんじゃねーな」
 だがその素人がこんなにがんばっているのに、専門の自衛隊機が一機も現れないというのはどういう事だろう。
「後方警戒レーダー作動!」ビィィ!とコックピット内に鳴り響く音と、神宮寺の声が重なった。「サイドワインダーだ!後ろに付かれた。食らうぞ!」
「・・お前は?そっち?か」パンッ!と頭をはたかれた。キャノピーで区切られているのに??「まさか、着地点はおれ達じゃねえだろうな!」
 ジョーはバーナー・オンで振り切ろうとした。が、独特の蛇行した軌道を描きながら、ミサイルは2人が乗るF4の後ろについてくる。
「だ、だめだ。振り切れねえ!」
「ジョー、太陽に向かって飛べ。空対空ミサイルは赤外線探知誘導だ。太陽を前に置けば逸らせるかもしれない」
 ラジャ!と半ばヤケクソなジョーの返事と共にF4は急上昇に入った。ワイドサインダーもついてくる。いつもより大きく感じる太陽に向かって2つの影が進む。
 ジョーはカーレースを、神宮寺はセスナに乗っているのでGには慣れている。しかし戦闘機のGは桁違いだ。
 おまけに2人はGスーツを着用していない。頭が重くなり、ボーとして首が押さえつけられたように動かない。2人は気を保つだけで精一杯だ。
「こ、こんなに太陽に近づいたら、熱で機体が爆発しちまうんじゃないか」
「大丈夫。その前に大気圏で燃え尽きる」神宮寺?!とジョーがわめいた。と、「ワイドサインダーの軌道が狂っている。逸れていくぞ。左後方─」
「口を閉じてろ、神宮寺!」F4が急速反転した。空に逆Uの字が描かれる。戦闘機でやる技ではない。素人ゆえにできたのだ。「目標確認!バルカン砲発射!」
 バババ・・と20ミリバルカン弾が、フラフラと蛇行するミサイルに向かって飛んだ。弾はミサイル胴体に当たり─だが爆発はせず、2つに折れたまま眼下の海へと落下していった。
「や・・やったァ・・」スロットルを握り締め、ジョーが長い息をついた。これで戻れる。もう大丈夫─「う?」
「どうした、ジョー。機体がまた上昇し始めたぞ」
「わからねえ。スロットルが動かないんだ」
 思いっきり引いてもスロットルはビクともしない。
「こっちに渡せ!」
 神宮寺が操縦を代わったが結果は同じだった。
 キャノピー越しに雲が後ろに飛んでいくのが見える。F4の機体がボォと赤くなった。
「ま、まずい。これ以上は持たないぞ」
 戦闘機で大気圏が突破できるとは思えない。もう、戻れないのか─。
 2人がそう思った時、スーと体が軽くなった。まるで凄まじいGから解放され、宇宙空間に漂うような・・・。
 神宮寺がソッと目を開け、キャノピーを見上げた。
「・・・ジョー」
「あ・・・」
 キャノピー越しに2人を囲むのは星、星・・・すべて星・・・。そして
「・・・地球だ」目の前に浮かぶひときわ美しい星・・・。「きれいだな・・。おれ達、あそこにいるんだな・・・」
「ん・・。人間も建物も・・ここからは見えない。ただ陸と海だけの青い星だ」
「狭いよな」
 仕事で世界を駆け回る─。地球の広さはわかっているつもりだった。だがこうして見ると、ユーラシア大陸でさえ、手の中に入る。
「おれ達・・・何してるのかな・・」
 指令を受け、1つ1つ仕事を片付けていく。しかしそれは永遠に続く。あの狭い星の中で─。
「だけどやらなければ」静かな、だが力強い神宮寺の声。「おれ達だけでなく─」
「戻れるかな・・あそこに・・・」
「ああ、戻れる─いや戻るんだ」
 神宮寺の体が淡い光に包まれる。今度は拒まない。
「うん、戻ろう。おれ達のいるべき所へ─」
 後席の神宮寺がフーと消えていくのを感じた。ジョーはもう一度目の前の青い星を見る。と、両親が、クロードが微笑みながら自分を見ていた。
「まだ・・・会いに行けねえや」
 ジョーの体がボォ・・と光を発した。

      ×    ×    ×    ×    ×

「だけど・・・本当にきれいだな・・・神宮寺・・」
「神宮寺とデートでもしている夢見たの?」
「!?」相棒とは違う声に、ジョーは驚いて目を開けた。「─洸?」
 そこはベッドの上だった。思わず体を起こす。一瞬めまいがしたが、
「え?あれ?おれは神宮寺と星空の中で─」
 ロマンチックだね、と言う洸の向こうのベッドにその相棒がいた。
「寝言でおれの名を呼ぶな」
 ブスッと不機嫌に睨む相棒に、
「おれ達F4で宇宙に出ただろ。ミサイル落とした後で」
 え?と神宮寺が驚いた。
「ミサイルって・・・よく知ってるね、ジョー。海自がSM3の迎撃実験をしてたんだけど失敗して、その迎撃ミサイルが一時行方不明になったんだ。でもすぐに海上に落ちているのが発見されて─」
「・・・・・」
 ジョーと神宮寺が顔を見合わせた。と、そこへ榊原医師が入ってきた。
「2人共、気がついて良かった。2日間意識不明で危ない時もあったよ」
「2日?」
「じゃあ、今までのは・・夢・・?」
 その後、榊原が2人を診て、もう2日間おとなしくしているようにと言い置き、午後の回診のため病室を出て行った。
「神宮寺、ジョー」一平と西崎だ。「今、起きたんだって?そこでドクターに会ったよ」
 そう言い、まだキョトンとしている2人に説明してくれた。
「3日前に武器庫代わりの炭鉱跡に入った時、大雨でその上の山が崩れたんだ。君達は生き埋めになり、救出は早かったんだけど呼吸停止状態で意識不明のままだった。この2日間ね」
「2日間か・・。?おれ達?夢を見ていたようだ・・」
 ジョーの呟きに神宮寺が頷いた。
 ちなみに密輸団が隠した武器は土砂の中から見つかり押収されたそうだ。
「しかし、どこからどこまでが夢だったんだ?」
 そうかクロードは・・・。
 あの大きくなった智は・・・。
「皆がぼくのゲームしていたのは覚えてる?」洸が言った。「君がネタばらしした」
「それは現実か」
 ふと何かを思い出したようにジョーが自分の胸に手をやった。
「これかい?」一平がビロードの小さい袋を取り出しジョーに渡した。「さっき店から連絡を貰ったので取りに行った」
 中はジョーのタグネックレスだ。一平がいつもアクセサリーを買う店で、切れたクサリを直してもらったのだ。
「─Danke」
 ジョーがネックレスを取り出す。
 夢の中でも助けてくれた。あの時このネックレスが光らなければ神宮寺と相打ちになっていた。
?現実?はどうなっただろう。
「ゲームといえば、パート4のプロットができたんだ。メインはダブルJ。ただし偽者だけどね」
「偽者?」「おれ達の?」
「そう!そいつらが2人に成りすまして色々と騒ぎを起こすのさ。それを阻止できるか─」
「やめてくれ。そいつらがツケや食い逃げをしたら、おれがヘンな目で見られる。不死身になるのはいいけど相棒に食われるはめになるかも─」
 パンッ!とジョーの頭は鳴った。
「おれはこいつとペアで売り出したくないし、強盗の片棒を担ぐのもいやだ」
「な、なんか具体的だな」西崎が言った。「もう体験したみたいだ」
「ゲーマーは2人で一組─つまりダブルJだ。お互いを偽者だと思い攻撃を仕掛けて─」
「おれ達を相打ちにしようとしたのはお前か!!」
 パンパンパン!ペンペンペン!と2ヶ所から同時攻撃を受け、洸の頭がハデな音を上げた。
「ヒ、ヒェェ??!!?」
 わけがわからず─それ以上に洸には成すすべはなかった。

                             完

             
           4 へ    ←
 



 
スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://junstory.blog63.fc2.com/tb.php/109-b729948c
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。