コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Posted by  朝倉 淳   0 comments   0 trackback

Countdown a deadline 2

「なんだよ、あのきつね目。ぼく達を見て、“国際警察のSメンバーはこんな子どもしかいないのか”だってよ!失礼な奴だ!」
 普段、人の悪口は言わない洸が頭から湯気を出す勢いで怒っている。あまりに憤慨しすぎて、“だって、お前ガキじゃん”というジョーのちょっかいにも気がつかないくらいだ。よほど腹に据えかねる事を言われたのだろう。
「一緒に晴海にいたんだけど、なんか邪魔者扱いなんだよな」一平だ。洸ほどではないがやはり機嫌が悪い。「手柄を焦っているというか、横取りされるのを警戒しているというか」
「本庁のキャリアらしい。早く手柄を上げて戻りたいんだろ。気にする事ないさ」
「神宮寺は?コンちゃん?に強そうだよな」
 名前なんだっけ?と、洸が首を傾げる。
 今、この食堂には彼ら4人しかいない。新宿御苑を望む窓際のいつもの席に陣取っている。
 もっとも夜の8時を過ぎた今、弱いライトしかない御苑は新宿という光の街の中でそこだけ黒く穴が空いたように見える。
「公安の他のメンバーの話じゃ、コンちゃんは神宮寺とジョーを怖がっていたってさ。ぶっ飛ばしたの?」
「何もしてないぜ」
「そっ、いつものよーに任務に就いていただけさ」シラッと言うジョーを見て、洸と一平はなんとなくわかったような顔になった。「それより洸、お前ご自慢のソフトだけどよ。時々何もしてないのに窓がポップアップするぜ。暗号みたいで何が書かれてるのかわかンねえし」
「そう?後で見てみるよ」
「お?、4人もいてちょうどいい」杉本がトレイに大きめの椀を持って現れた。「試食してくれ。これは関東風バージョン5。こっちが関西風バージョン2だ」
「うわ?、白いお雑煮だ!杉本さん、まだ作ってたの?」
「テレビで見たら京風もうまそうだったからね。ジョー、食べてみないか?」
「すンません、おれパス」一応、申し訳なさそうに言う。「何か食うと胸が痛くて」
「ああ、アバラをやられてるんだったな。流動食バージョンを作ってやるか?」“遠慮します”と丁寧に断る。と、調理室から杉本を呼ぶ声がした。「おっと、バージョン5進化系とアンコ餅系が作りかけだったんだ。後で感想聞かせてくれ」
「マメだな」急いで調理場に戻る杉本の後姿を見て一平が苦笑した。「でもジョーもついてないな。あんな奴のためにケガしちまうなんてさ。正月の餅も食えないぜ」
「任務中の事だ。仕方ないさ」
 品川での事は引継ぎの時に一平達に話してある。もっとも坂下がジョーに言った言葉とそれが原因で関に殴られた事は伝えてないが。
「で、晴海はどうだった?」
 神宮寺が手にしているのは関東バージョンだ。
「別に何もなかったよ。貿易センター前で大きなガキがケンカしてたくらい」白みそって甘いんだね、と箸につけた汁を行儀悪く舐めながら洸が言った。「本当に密輸の計画があるんだったら、もっと目立たない場所に上げると思うけどね。あ、けっこうイケる」
「おれは苦手だな 」
 一平が残った椀を見比べている。
「アメリカじゃ食わなかったし─。なあ、ジョー─あれ?」6つの目玉が振り向いた。「・・・寝てる?」
 見るとジョーは自分の腕を枕にしてテーブルに横を向くように頭を落とし眠っていた。
「え?今頃効いてきたのか?鈍いなあ」呆れる神宮寺に2人が問うような視線を向けた。「どうせおとなしく寝ないだろうからって、榊原さんが導眠作用のある鎮痛剤を打ったんだけど、あれからもう5、6時間経っているぜ」
「体中巡ってやっと脳に着いたんじゃないの?」洸がジョーの顔を覗き込む。「でかいから」
 だが目を閉じているジョーの顔は年相応の貌を見せている。
 横にサラッと流れ落ちている前髪も、彼の風貌とは不釣合いの長いまつげも、口元をかすかに開け無防備に眠るその姿は、普段決して見せないジョーのもう1つの貌だ。
「あの鋭い目がないとすごく可愛く見えるな」
 洸の言葉に2人は頷く。ジョーの存在感を示すブルーグレイの瞳、しかし閉じられた目元は思ったより幼く見える。
「で、このでかいのをどうやって仮眠室まで運ぶ?」
 う?ん、と唸ったまま3人はその場に固まった。

 ─こちらはロレンツォ・カスネロ・グランディーテ─君のお母さんの父親だよ─
 ─カテリーナに似てないな。瞳の色だけか。後はあのジュゼッペという男にそっくりだ─
 ─カテリーナの子が─その子を自分達ファミリーが擁して─
 ─ジェルマーノ・ファミリーの血縁者がなんで国際警察にいて─
「!」
 ジョーは息を呑み目を開けた。体が跳ねたらしい。目の前に計器類があった。
「どうしたんだ?」
 運転席の神宮寺が彼に目を向ける。
「あ・・いや・・あれ?」目の前のフロントガラス越しに海が見えた。「え・・と・・」
「おい、もう大丈夫だと言うから任務に復帰したんだぞ。しっかりしてくれ」
「あ・・悪い・・。なんかまだ寝てるみたいで・・」
 昨夜、食堂で神宮寺達と話をしていたのは覚えている。が、目が覚めたのは医療部隣の仮眠室のベッドの上だった。誰かが─おそらくあの3人が─運んでくれたのだと思うが・・・。
 そういえば胸はもちろんだが、なぜかあちこち痛い。しかしあまり考えたくないのでやめた。
 彼らは今、有明のビックサイト南の鉄鋼埠頭に停めたハリアの中にいた。少し離れた所には公安のインテグラが見える。
 今朝早くもたらされた情報で、この埠頭に船籍不明の小型船が何回も接岸し近くの貸倉庫に積荷を運び入れているらしい。この埠頭を使用している物流会社が警察に通報し公安に回ってきたのだ。だが今その船の姿は見えず、動きが止まっている。
「公安も情報に振り回されすぎじゃねえのか」
 やっと目が覚めたのかジョーがいつもの鋭い目つきで海を見ている。
 パソコンの前に座るのはもうご免だ。アバラはまだ完治していないがとにかく出たかった。が、現場に着き公安のメンバーの顔を見た時、ジョーはちょっと後悔した。あの坂下がいたのだ。
 坂下も2人を見るとあからさまにイヤな顔をしたが、今回は関も一緒だったので何も言わずその場は済んだ。
 今、インテグラの車内には関と坂下、あと2人の公安のメンバーがやはり張り込みをしている。
「おれ達は一応公安のバックアップだからな。向こうの指示に従うさ」
 神宮寺も歯がゆさを感じているのだろう。彼には珍しく投げやりな言い方になる。
「なんでおれ達がバックアップなんだよ。そんなのはあっちのメンバーにやらせりゃいいだろ」
 なぜか公安室長から森に、“JBは公安のバックアップにつくように”と依頼があったらしい。
 森は一度は突っぱねたが仲間同士で争う事ではない、と考えたのか一応承諾した。しかし現場で事が起こればバックアップだのなんだのと言ってはいられない。その場の状況に合わせ動くだけだ。
 もちろん森も承知している。だから頷いたのだ。
「あのきつね目を立てろって事かな?。やーなこった!」
「・・・ジョー」
 子どもか?と呆れる。もちろん神宮寺にも坂下を立てる気はないが。と、
『関だ』通信機が鳴った。『目標接近。奴らが上陸して倉庫に積荷を運び込んだら職質をかける。神宮寺君、来てくれ』
「わかりました」
 見ると2隻の小型船がこの埠頭を目指している。
『ジョーは待機。突入は連絡があってからだ。─ジョー?』
「・・・・・」
 ジョーはなぜか体を硬くし息を詰めていた。彼は自分の感情に正直だ。それが時には自分勝手や粗暴に見られる。
 もちろん思いのまま感情を曝け出してはいけない場も心得ている。しかし今はその場ではないらしい。
『どうしたジョー?聞こえているのか?』
「わかりました、関さん。大丈夫です」
 神宮寺が答え、通信を切った。ゆっくりジョーに目を向ける。
 彼は怖いくらい頑なに自分を固めている。こういう時のジョーは、さすがの神宮寺も声を掛けずらい。だが、
「仕事中だぞ」
「・・・わかってる」
 一瞬目を閉じ、だがすぐに顔を上げ前方を見る。坂下に何を言われようがかまわない。だが関が知っていて隠していたのが引っかかっていた。
 お互いに協力し合うJBと公安3課ではあるが、自分の仕事に関しての守秘義務がある。
 公安3課8係の主任の関が、自分達の持っている機密をジョーに話すわけはないのだ。それはわかっている。だが─
「行ってくる」
 前方のインテグラから関が出たのを確認した神宮寺がハリアを出た。
 小型船は接岸し積荷を50mほど離れた倉庫に運び込んでいる。関と神宮寺が合流し倉庫に向かう。
 ジョーは運転席に移動して倉庫の入口が見える所まで車を移動させた。ズキッと胸が痛んだが昨日ほどではない。動きを鈍くするコルセットも包帯もしていなかった。
 先行の2人が、積荷を運んでいる日本人ではないアジア系の男達に声をかけた。
 ホルスタをつけられないジョーはジャケットの内ポケットにウッズマンを入れている。その存在を確かめる。
 この時、関が連絡したらしく、晴海に張り込んでいた公安の車が2台、ビックサイトの方向からこちらに向かっていた。
 ふと入口を見ると、関と男達が激しく言い合っていた。
 それも当然だろう。もし本当に銃や弾丸を運び込んでいるのなら簡単に見せるはずはないのだから。と、その時、左手から公安の車が2台到着した。もっとも不用意に現場に近づく事はしない。
 インテグラとハリア、そして倉庫の入口が見えるギリギリの所に止まり待機している公安車両。その車の運転手はジョーもよく知った顔だ。
(え?)
 ジョーはインテグラに目を戻し驚いた。坂下が車から出てきて倉庫に向かっていく。それより一歩遅れ、後ろのドアが開き2人の公安のメンバーが坂下を追っていった。
 ジョーは一瞬、関からの連絡を聞き逃したのかと思った。だが通信機は沈黙したままだ。なのになぜ・・。
(関・・・おれを信用していない・・・?)
 マフィアの血統だから?ジョーに待機命令を出し公安だけで動くつもりか─。
 だがすぐに違うとわかった。
 倉庫に近づいてくる坂下を見て関が戸惑っているからだ。坂下は関を差し置いて男達に何か言っている。神宮寺が遮ろうとし、しかしその手を弾いた。
 坂下が怒鳴り、男達は倉庫の奥へ走っていった。ジョーが車外に出たとたん銃声が聞こえた。
「チッ、なにやってんだ」
 もはや関の連絡なんか待っていられない。ジョーはウッズマン片手に倉庫へと走った。関達は入口近くに積まれている別の荷物の陰にいた。
「打!(撃て)」「保持行李!(荷物を守れ)」
 男達の怒号が飛ぶ。
「大したものだな」ジョーは自分を見上げる関達を皮肉を浮かべたかすかな笑みで見返した。「自ら囮になって、ブツを引っ張り出したってわけだ」
「ジョー」
 神宮寺と関が同時に口を開く。
 ジョーの口の悪さは承知しているが仲間に、それも仕事中にこんな言い方をする奴ではない。いったい・・・。
 さすがの関も怒気を含んだ視線をジョーに向けた。関でさえこうなのだから坂下は爆発寸前だ。
 しかしまわりの状況が彼らにその時間を与えなかった。
 倉庫の奥から男達の銃撃が激しくなってきた。
 ジョーは顔を上げ、彼らの視線を振り切るように少し離れた荷物の山へ跳び移った。両手でウッズマンをかまえ連射する。反動が痛めた胸部にビシッ!と跳ね返ってくる。それでもジョーはウッズマンを撃ち続けた。関達も応戦する。
 倉庫の外でも銃声がする。倉庫内のトラブルを察した船に残る奴らの仲間の援軍を、後から来た公安のメンバーが入口の前で抑えているのだろう。
「奴らの背後にまわる。援護してくれ」
 神宮寺が言いジョーが頷く。置いてある荷物やコンテナの陰を回れば奴らの後ろに行かれるだろう。と、坂下も立ち上がり神宮寺の後についた。関の命令は出ていない。彼(関)はちょっと渋い顔をした。が、何も言わなかった。
 奴らの応戦は関達に任せ、ジョーは神宮寺を援護しやすい位置へと移動していく。神宮寺と坂下が奴らのすぐ横のコンテナの陰に辿り着いた。
 神宮寺が坂下に何か言おうとしたが、彼はそれを無視するように銃をかまえ、いきなり飛び出した。1人の腕にヒットしたが、たちまち奴らの銃口の的になる。
「伏せろ!」
 神宮寺が飛び出し、坂下を突き飛ばした。
「邪魔をするな!こいつらは私が逮捕する!」キャリアの研修とはいえ公安8係に配属された坂下の動きはさすがに素早い。しかし現場慣れしていないのがよくわかる。「お前達、国際警察の手柄になんかさせるものか!」
「あのバカ・・・」
 関が唸った。
 公安はまだしも、国際警察の素性を大声で明かしてどうするつもりだ。相手は中国人らしいから日本語はわからないと思うが。
「伏せろ!バカヤロウ!」ジョーが叫んだ。「神宮寺の計画をぶち壊しやがって!」
 援護射撃で3人の男を倒す。残りは5人。ジョーは躊躇わずに神宮寺達の元に進む。と、それを見た坂下が無謀にも5人の前に立ち塞がり銃口を向けた。男達が撃ってきた。
「坂下さん!」
 神宮寺が跳び込む。坂下を抱え床に伏せた。と、坂下が神宮寺を突き飛ばした。そこへ銃弾が集中した。被弾した肩や足から血が飛び散る。
「神宮寺!」ジョーは一瞬、坂下に銃口を向けた。が、なんとか押さえ一気に間合いを詰めようとした。が、「なっ─!あのバカ」
 ジョーの動きが止まる。
 目の前で撃たれた神宮寺にあ然としていた坂下が男の1人に捕まり、銃を頭に押し当てられていた。
「不要抵抗!(抵抗するな)」男が叫んだ。「打的!(打つぞ)」
「くそォ・・・」中国語はわからないが、こういう時言う言葉は万国共通だ。ジョーは“どうぞ”と言ってやりたくなった。「坂下!自分でなんとかしろ!」
 無理だろうと思いつつ叫ぶ。後方では援軍を抑えていた公安の木村達が関と合流していた。
「う、うわっ。─な、なんです、ありゃ?」
「見たとおりだよ。あの大バカヤロウ」関が頭を抱えて唸る。と、前方のジョーがスッとウッズマンを奴に向けるのが見えた。「いかん。大バカヤロウがもう1人いた」
「ジョー」
 床から神宮寺が声を掛けた。幸い急所への被弾は免れたようだ。
「動くなよ・・坂下」
 ジョーの銃口が坂下の後ろの男を狙う。
 ブルーグレイの瞳が冷たく光り、銀色のウッズマンの銃身と相まってその輝きを増す。神宮寺も動きを止め見守る。が、
「チッ!」
 ジョーがウッズマンの銃口を上に向けた。何を勘違いしたのか坂下がバタバタと体を動かしたのだ。これではさすがのジョーも撃てない。
「あいつから先におとなしくさせてやろーか」
「その前に奴ら裏から逃げるぞ」
 いつの間にか関がそばに来ていた。木村と山本が神宮寺を診る。
 関とジョーが男と坂下の後を追った。裏にもドアがありそこから出たらしい。
「木村!ブツを押さえろ!おれは坂下を─!」そう叫びジョーと共にドアから飛び出す。その目の前を1台のレガシィが走り抜けた。後部席に男と坂下がいた。「こら!逃げて来い!」
「関!」
 ハリアの運転席からジョーが叫んだ。後部席に関が転がり込むと同時に発進した。
 レガシィはビックサイト野外展示場を左に北上していく。


          
          1 へ     ⇔     3 へ
スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://junstory.blog63.fc2.com/tb.php/113-646548cc
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。