コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Posted by  朝倉 淳   0 comments   0 trackback

Countdown a deadline 3

「まったくとんだミスを─」関が後ろから助手席に移ろうとしジョーに当たった。“つっ!”とジョーが身を縮ませた。「あ?どうした?」
 関はジョーの負傷を知らない。ジョーも言うつもりはないのか前を行くレガシィを睨んだままだ。
 やがてビックサイト前の信号を左折した。
「このまま行くと、遊園地とかお台場とか呼ばれるエリアだな」
 年末の今でも人出はかなりあるはずだ。あのレガシィに密輸された銃の一部が積まれているかは不明だが、そんな人の大勢いる所で持ち出されたらやっかいだ。
「ジョー、せめて奴らをお台場とは反対の方向へ向けられないか」
 返事の代わりにハリアのスピードが上がった。
 あけみ橋を渡るとパレットタウンの入口前を通る。この次の門を右折したらフジテレビやアクアシティがあるお台場だ。ここからでも、人が集まる華やかな雰囲気が感じ取れる。
 レガシィの男達はこの辺の地理に不案内らしい。多少モタついているうちにハリアが追いついた。交差点に突入する。ハリアがレガシィの右横につき右折を防いだ。そのままレガシィの右側にガンッ!と車体を当てる。シートベルトをしていなかった関が左のドアに押し付けられた。
 ハリアはそのままレガシィを巻き込むように強引に左折させた。
「い、いい腕だが、怖いぞ」
 関が文句を言う。
「まだだ」
 ジョーはレガシィのすぐ後ろに付き、容赦なく追い立てていく。メーターが120キロを突破した。ピッタリ後ろにつけれられているレガシィは、曲がっているひまもない。そのまま一気に埠頭の先端に追い込んでいく。
 右にテレコムセンター、左には倉庫や上場などが見える。コンテナターミナル前の少し広い空間に出た。
「やるぜ」
 関が“おう!”と答え、あわててシートベルトをつけた。
 レガシィの後ろについていたハリアが一気に躍り出た。あっという間に横に並ぶ。そのまま車体をスライドさせぶつけてやる。
 レガシィがスピンし速度が落ちた。が、あちらも必死だ。見事なターンでハリアから遠ざかろうとする。
「逃がすかよっ」
 ジョーは前輪を固定したままテールを流し方向を変えた。一気にスピードを上げレガシィのリアに突っ込む。ショックでレガシィがポンッと前に跳んだ。
 ツーリングカーレースに出ているジョーにとって、ターンや加速などお手の物だ。もちろん本当のレースでの危険な行為はペナルティを受けるが、ここではそれもない。
 ジョーの本当のドライビングテクニックは、実戦の時にもっとも発揮されるのだ。
 リアガラスから後席の男と坂下があわてている姿が見える。坂下など後ろを向いて何か叫んでいる。“やめろ!”と言っているようだ。
「ざまーみろ!これをチャンスに車を乗っ取るぐらいしてみろ!」
「・・・相手が違うぞ、ジョー」
 関がぼやく。だがやっといつもの、荒っぽいがわかりやすいジョーに戻ったと思った。彼の不機嫌の原因が自分にあるなんて、関は考えてもいない。
「しかしそろそろ止めた方がいいな。坂下も目を回しているだろうし」
 その言葉にジョーはチラッと関に目をやる。怒気と不信感と、かすかに見せるこの感情は・・・関にはわからない。と、レガシィの後席の男がハリアに発砲してきた。
「上等じゃねぇか」
 ジョーが右側の足元近くに設置されているダッシュボードを開けた。中から取り出したのはウィンチェスターらしい。しかし銃身は三分の二ほどに短くされている。
 左手でステアリングをキープし、窓からウィンチェスターを出しサイトをレガシィに合わせた。
「ジョー」さすがの関も声を掛けた。「やりすぎるなよ」
 だがジョーは返事もしない。ステアリングを関が執ろうとしたがジョーは放さなかった。
 レガシィの左ドアに続けて2発ぶち込む。坂下が“ヒッ!”と頭を抱えた。もう2発。ドアと車体の繋ぎ目を撃つとドアがバッ!と跳んだ。
「飛び降りろ!」
 関が叫んだ。と、それが聞こえたのかどうか、坂下が車内から転がり落ちた。
 ジョーの左手がステアリングを切る。坂下スレスレに避けて再びレガシィを追う。が、その時レガシィの前方から2台の車が近づいてきた。カローラとシルビア─公安の木村達だ。行く手を遮られレガシィが止まる。木村や山本が男達の確保に向かった。もう抵抗する術のない男達がノロノロと車外に出て来た。
「チェッ」
 つまらなそうに、ジョーが舌を打った。
「いいタイミングだな。奴らもこれ以上怖い思いをせずに済んでラッキーだったぜ」関が軽口を叩き、ポンッとジョーの肩を叩いた。ジョーが顔をしかめる。「もしかして・・・どこかケガってるのか?」
「・・・アバラを2、3本」
「え、なんで言わないんだよ!」
「言ったら、あんたのアバラ、折らせてくれるか?」
「なんでおれがアバラを折られなきゃならないんだ?」関が眉をひそめ、ジョーがフンと顔を背けた。「おっと、禅問答している場合じゃない」
 関は加勢のため車を降りた。
 ジョーはホッと息をつきシートに体を預けた。
 自分の不機嫌さに自分で腹が立った。が、胸がギシギシ痛む不快感と合わせ、イライラ感が収まらない。弾丸を相手の車にもっと叩き込んでやればよかったと思う。と、その時、いきなりドアが開き、誰かの手がジョーの肩をガシッと掴んだ。
「─坂下」
 見ると激しい形相の坂下が立っていた。彼はジョーを車から引きずり出そうとしているようだが、体の大きなジョーはビクともしない。が、胸倉を掴まれそうになったのでその手を払い、仕方なく車外に出てやる。
「き、貴様、おれが乗っているのになんで発砲したんだ!」
 頭から湯気を吹いたように怒る坂下に、しかしジョーは答えない。いや、こんなバカバカしい質問にどう答えればいいのかわからないのかもしれない。
 しかしその態度が坂下にはふてぶてしく見え、自分をバカにしていると思ったようだ。
「国際警察は事件解決のためには、こんな無茶をするのか!人の命をなんとも思ってない奴に銃を持たせて!一般市民だったらどうするつもりだ!」
「・・・・・」
 一般市民が人質だったらジョーとてこんな無茶な事はしない。今回は警官だったから・・・。いや、坂下だったから・・・?
「やめろ、坂下」関だ。「確かに少々荒っぽいが、これがいつもの彼のやり方で─」
「関主任までこいつの味方をするんですか!だからつけ上がるんだ!」
「・・・・・」
 ジョーにはなぜ彼がこれほどまでに自分を目の仇にするのかわからない。やはり・・・。
「だいたいあそこまで詰めておいて撃たれるなんて。Sメンバーというのも噂ほどじゃないな」
「!」
 今まで黙っていたジョーの目がカッと坂下に向けられた。坂下は一瞬たじろいたが、
「あそこで神宮寺君が倒れなければ、私が奴らを取り押さえ─」
 坂下がすっ飛んだ。ジョーのフックが彼の右頬にまともに入ったのだ。ヘタすれば歯の2、3本折れているかもしれない。
「あ?あ」
 と、関がため息をつき、木村と山本が固まった。
「おれの事は何を言ってもいいが、相棒の事をとやかく言うなら二度とその口を利けないようにしてやるぜ」
 青く冷たい瞳が坂下を見下ろす。発砲された時とは違う恐怖が坂下を締める。この男に向かって言った言葉に、自分で恐ろしさを感じた。
「言いたくてもしばらくは何も言えなーね、あの口じゃ・・・」
 関は頭をカシカシしながら報告書の内容を考えていた。

「押収されたのはトカレフ50丁、弾薬20キロ。予想した量より遥かに少ない」デスクの前に立つジョーと、その向こうのソファに腰を下ろしている神宮寺に向かって森が言った。「もしかしたら、鉄鋼埠頭の奴らは囮の役をしていたのかもしれないな」
「やっぱり・・・。どうりで堂々としていたわけだ」
「チェッ、公安の情報もアテにならないぜ」
「その公安から君宛に謝罪文を提出するようにと言って来てる」
「は?」
「めったやたら銃をぶっ放して公安官を危険に晒した、と」
「・・・・・」
 ジョーが眉をひそめ森を見た。反論しないところを見ると?ぶっ放した?のは本当なのか?と思う。
「あれはおれのミスです」神宮寺が言った。左腕と右足に3、4発被弾したがいずれも軽症で済んでいる。「最初に作戦を坂下さんに話しておくべきだった」
「ありゃどう見たって坂下の勇み足だ。いや、無謀だ。行き当たりばったりって奴だ」
「いや、現場でハプニングは付きものだ。どんな状況になろうと対応できなくては」
「あいつはこっちの仲間なんだぜ。なのに仲間を蹴落とそうとしたんだ。そんな奴に対応しようなんて無理な話だ。そんな余裕なんかあるもんかっ」
「だから最初にちゃんと言っておかなくちゃいけなかったんだ。それをついお前と行動しているような気になって─」
 ジョーなら打ち合わせができてなくても神宮寺の考えをわかってくれる。いやたとえ噛み合わなくても神宮寺の邪魔をする事はないだろう。
「それなら、おれだって─」
「とにかく、だ」森が割って入った。「うちにはうちのやり方がある。それを承知でバックアップを頼んできたのに、今さら文句を言われる筋合いはない─と返事しておいた」
「チーフ・・・」
「いいんですか、そんな事言って」
 さすがに2人も心配になった。
「おれ、謝罪文ぐらいいくらでも書きますよ。いっその事全部ドイツ語で書いてやるかな。英語より読むのに時間が掛かるだろうし。いや、それとも一言、“Es war schlecht!(悪かったな)”って─」
「ジョー・・・」神宮寺が呆れたように目を向ける。「それ、謝罪じゃない・・」
「実はな、関さんが報告書をうちと公安課長に挙げている。それには現場での様子が細かく書かれていてね。それを見る限りこっちに非があるとは思えない。課長もキャリアさんの手前、一応抗議してきたが、それ以上強くは言えないのさ」
「ふうん・・・。関のおかげで助かったってわけか」
「もちろん、君がそのキャリアをぶん殴った事も書かれている。とりあえず謹慎だ」
「そ、そんな、左手で殴ったのに」
 ジョーの場合、右でも左でも大して変わらない。が、殴った事は本当だったんだ、と森は思った。
「ま、骨休めだと思って・・・あ、本当に?骨休め?だな」森の笑顔にジョーはクサった。「ただし他のチームのバックアップをしてもらう。情報収集及び連絡だ」
「えー!また昨日に逆戻りですかあ!骨じゃなくて目を休めたい・・・」
「神宮寺君も待機だ。いざという時は動けるか?」
「大丈夫です。ただ新年マラソン大会は無理だと思います」
「わかった。その任務からは外そう」
 森が微笑み、2人はチーフ室を出た。この1階下にダブルJ室がある。神宮寺が少しぎこちなく階段を下りた。
「すまない。おれが・・うまく援護できなくて」
「あの場合仕方がないさ。本当のところ、おれだって坂下があんな行動に出るとは思わなかった」ダブルJ室のいつものデスクではなく、ソファに腰を下ろした。「おれのミスだ」
「違うんだ。あいつはおれが嫌いだからその相棒のお前まで─」ジョーはパソコン前のイスに跨るように座り、背もたれを抱えた。「おれがジェルマーノ・ファミリーの─」
「たとえそうだとしても、おれ達には関係ないだろ?」
「お前が撃たれた」
「任務での事だ。お前のアバラと一緒だよ」
 いつの間にか神宮寺がコーヒーの用意をしていた。ジョーは手伝おうと思ったが、どうしても立てなかった。背もたれに腕を掛け額を押し付けている。
「コーヒーだ」コン、とカップをジョーの肩に当てた。ジョーはノロノロと受け取るが口をつけようとしない。「どうしたんだ。いつまでもクヨクヨしてるなんてお前らしくないぞ」
「・・・お前が撃たれた時・・・おれ、一瞬だが坂下に銃口を向けたんだ。車で追っている時も、奴を助ける事より犯人を捕まえる事ばかり考えていて─。めったやたらに銃をぶっ放したつもりはないが、そうじゃないとも言えなくて」
「おれ達は機械じゃない。人間だ。そういう感情も湧くさ」再びソファに腰を下ろす。「おれだって坂下に突き飛ばされた時、こいつ蹴ってやろうかっ、と思ったぜ。ただ足が痛くてできなかったけど」
 弾丸は神宮寺の両足を掠っている。
 しかしそう言って笑う彼だが、ジョーは知っている。この男は思っていても実際にはやらないだろう、と─。
 しかし、おれはやる。今までもそうだったし、これからもきっと─。だがその反面、いざとなったら本当に怖いのは神宮寺だという事も。
「それから、何でもファミリーのせいにするな。原因の一番はお前の性格だ」
「うわ・・・きつ・・・」
「ファミリーの事はどうしようもないだろう。だが性格は自分でコントロールできる」
「それができれば苦労しねえや」
 ジョーは手にしているカップの中味をまるで酒を飲むように一気に呷った。神宮寺には何もかも見抜かれている。だからこそ素直に言う事が聞ける。と、ふいにパソコンが立ち上がった。
「あ?、びっくりした。自動メンテ入れてたんだ」
「0時か・・。今年最後の1日だな」
「できれば何事もなく過ごして、正月の悩みは黒と白のどっちのゾウニを選ぶべきかって事ぐらいに─ん?なんだ、これ。増えてるぞ」
「すごい?窓?だなァ。広告─ではなさそうだが」
 2人が覗くモニタには5、6コのウインドが開いている。もちろんこちらの操作によるものではなく、ネットを見ていて広告が勝手にホップアップするのと同じだ。表示されているのはアルファベットだが、
「暗号みたいだ。さっぱり読めない。広告だとしたら意味がないな」
「洸に見ておいてくれって頼んだのに」
 ジョーが窓を消そうとした。が、
「まて」ジョーの手を止め、しばらく眺めていたが、「それを記録しておいてくれ。これから先に表示されるのも全部だ。─何か気になる」
「おれの仕事増やすなよな」と言いながらもキーボードを叩く。「ひまつぶしに暗号でも解く気か?解読したら“初詣は○○神社へ”なんて事かもしれないぜ」
「神様はこんな面倒な事はしないよ」
「ま、十字架の代わりにマウスを持った神様なんていただけないが」
「神社に十字架はないぞ」
 軽口を叩きながらも2人は真剣だ。
 以前JBのメインコンピュータが乗っ取りに遭い、セキュリティがダウンした事があった。それ以来JBではネットやパソコンの異常には敏感だ。
「どうせしばらく外へは出られないんだから─」
「・・・え?あれ?」急に途切れた神宮寺の声にジョーが振り向くと、彼はソファに寄り掛かり、クーと寝ていた。「今頃効いてきたのか。鈍い奴だぜ」
 ジョーが呆れたように神宮寺の頬をペチペチ叩く。榊原の秘密兵器、導眠剤入り鎮痛剤だ。
「さて、邪魔だから」
 彼を隣の部屋の仮眠ベッドに放り込むのは難しい事ではない。だがジョーには1つ引っかかる事があった。
 昨夜、食堂で寝てしまった自分を仮眠室まで運んでくれたのはいいが、今朝やたらに体のあちこちが痛かった。どう運べばああなるのだろう。わからない事は試してみるのが一番だ。
「こいつ、目閉じるとけっこう可愛い顔になるよな」
 自分も同じ事を言われているとはつゆ知らず、ジョーは無防備に眠る神宮寺の腕を取った。


         2 へ     ⇔     4 へ

スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://junstory.blog63.fc2.com/tb.php/114-84ae2f20
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。