コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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Countdown a deadline 4

 今年最後の1日が明けた。
 もっとも365日24時間営業のJBは普段とあまり変わりがない。あるとすれば食堂に大きな鏡餅が置かれ、いつもと違う料理の匂いがしている事か。だがそれも外動部のある西館までは届かない。
 現在、チーム1(ワン)から4までは事件を抱え活動中だ。チーム5は待機、例の公安主体の密輸事件は今JBの手を離れている。他の事件を担当していた公安官が解決と共に戻ってきたからだ。
 従ってダブルJはもちろん、先ほどまで張り込みを続けていたJB2もお役ご免でJBに戻ってきた。
 ジョーがコンちゃんを殴ったおかげだ、と喜ぶ洸だったが、1年の締めくくりだとチーフから新しい指令が下り、成田空港に飛ばされた。ICPOからテロの手配書が回ってきたのだ。イギリス発成田行きの飛行機に乗り、昼頃日本に着くらしい。
「年末くらいおとなしくしていろよな、テロ犯」呪いに満ちた一平の声。「いっその事、成田からリゾート地へ高飛びしてやろーか」
「で、着いた先にICPOが待ってたりして・・・」
 あ?、逃げられない、と洸がため息をついた。
 一方、6階のダブルJの部屋では
「暗号は解けたか、神宮寺」
 自分ではやらないくせに、ジョーが偉そうに訊いた。
「いや、まだだ。なンか目が覚めない」
 ファ?と何回目かのあくびが出た。一晩グッスリ寝たはずなのに目覚めが悪い。それになんだか体のあちこちが痛いような・・・。
「おれ一晩中記録してたんだからな。その努力をムダにするなよ」
「ん・・・」
 記録といってもクリックひとつで済むはずだ。が、一応頷きチラリとジョーを見る。
「なンだよ」
「いや・・・何も」体のあちこちが痛い原因は心当たりがある。しかしそれをジョーに訊くとボケツを掘りそうなのでやめた。と、「どうした?まだ胸が痛むのか?」
「お前なー、動きは柔らかいくせに体は硬いのなー。おかげで腕や足が痛くて─」
「あー!やっぱりお前─!」
 勢いよく立ち上がったところにチーフからの通信が入った。
『成田で爆弾事件だ。一平が負傷した。神宮寺君、出られるか』
「大丈夫です」
 あ、おれも、と言うジョーを押しのけ神宮寺が答えた。
『ヘリを使ってくれ。チーム5がサポートにつく』
「ラジャ」
 神宮寺は急いでロッカーからジャケットとオートマグを取り出した。
「チーフ!おれも!おれも行きます!」
 切れた通信機相手にジョーがわめいている。
「だめだ、ジョー。謹慎食らってすぐ出歩いたのがわかったらチーフが困る」
「だけどお前、ケガが」
「もう大丈夫だよ。それより例の暗号な、アルファベットの羅列を表にしてある。もう少しで解けそうなんだ。続きを頼む」
 勘弁してくれ?、とわめくジョーにウインクひとつ贈り、神宮寺は出て行った。
「野郎のウインクなんか貰ったって嬉しかねえや」
 ドスンとパソコンの前に腰を下ろすが、とたんに身を屈ませた。
 昨日貰った鎮痛剤がもうない。医療部に行けば貰えるが面倒だ。
 この忙しい年末に謹慎食らって署内に残っているというのも格好悪くていやだった。
 仕方なく神宮寺の言うとおり、時々ポップする窓の中に書かれたアルファベットを条件と照らし合わせ表に当てはめていく。そうすると1つの文章になるのだろう。
「なんだ、もう1つできたぜ。簡単じゃねえか。ええと・・・THIS A NOTICE OF BOMB TERRORISM(これは爆弾テロの予告だ)・・・なんだこれ!いたずらか!?」
 試しに他の窓の文章も確かめてみる。するとそこには、“タイムリミットはAM0時”“東京の5ヶ所に仕掛けられている”という文字が並ぶ。そして、
「A HINT IS COMETEME GIVEN(ヒントは時々出るよ)─だと。ふざけるな!」
 ジョーは思わずデスクをぶっ叩いた。しかしこれは決していたずらではない、と直感した。
 すぐさま森に連絡を入れた。

 成田空港の爆弾事件はトイレ1つ壊しただけで済んだ。しかし年末を海外で過ごそうと出国する人が多い時期だったので、港内は一時パニックになった。
 公安も、共に張り込みをしていたJB2もその混乱でICPO手配のテロ犯を逃がしてしまった。

 ジョーから連絡を受けた森は、佐々木を伴いダブルJ室にいた。
 やはり2人共ジョー同様これがいたずらではないと考えた。しかし今JBで動ける捜査員はいない。各課長か、一応謹慎中のジョーだけだ。
 森は公安3課にこの情報を伝えたが、問題の窓がホップアップするのはこのパソコン─つまり洸がプログラミングした彼のパソコンにしか現れなかった。
 ジョーはこのパソコンを借りる時、“やばいサイトの情報まで拾っちゃうかもしれないから、強力なコピーガードを掛けてある”と、洸が言っていた事を思い出した。つまり、データを他のパソコンに送る事もできないのだ。
 ジョーは今まで保存しておいた窓のアルファベットも表に当てはめていった。と、渋谷、台場、目黒、浅草─といくつかの地名が出来上がった。どこをとっても年末年始に人が集まる場所だ。
「いったい誰がなんの目的でこんな事を─」佐々木が唸る。EU圏では年末年始のテロ警告が出ていた。しかし日本では─。「日本は時差の関係でEUより早く新年を迎えるから、まず日本で騒ぎを起こして警察の動きをシミュレーションするつもりか」
「現在、警視庁の機動捜査隊と爆処の合同チームが出動の準備をしている。しかし情報があまりにも少ない。ジョー、ヒントとやらが上がったらすぐ知らせてくれ」
「ラジャ」
 ジョーは自分も動きたかった。しかし現状で彼一人が動いても無駄だ。せめて洸か神宮寺が戻ってくるまでは─。そう思いモニタを睨む。と、窓が1つ、ポンッと上がった。
「お早い事だ。EGNIM・・・なんだこれ」
「アナグラムだ。その11のアルファベットを並び替えると─MEIZ・・・明治神宮!?」森は声を上げ後の2人を見る。「そんな所で0時に爆発が起っこたら─。佐々木君、警視庁に連絡してくれ」
 はい、と佐々木が部屋を飛び出した。
「くそォ、まさか本当に神社へのアプローチだったとはな」ジョーがモニタに目を向けた。「こうなったらマウスでも十字架でもいい。どんどん出てきやがれっ」
 やがて森の元に警視総監から明治神宮に仕掛けられていた爆発物を発見、無事処理したと連絡が入った。これで暗号がいたずらではないと確認された。
 さらに2時間のうちに2つのヒントがアップされた。しかしそのうちの1つは?熊野?だけだ。時期柄、熊野神社かと思われたが、都内には数十の同系列の神社がある。だが捜さなければならない。
 JBも公安も警視庁もできるだけの人数を回した。
「こいつ・・・どこかでおれ達の動きを見ているのかな」
 ジョーは唇を撫でながらモニタを睨んだ。実はさっきから気になる事があった。
 洸の作った情報収集用ソフトの画面に突然アップする窓。そのすべてがアルファベットの羅列であり暗号になっている。
 しかしやはり現れる窓の中には、?TOWER??YOKOHAMA?と、そのまま表示されるものもある。
 横浜は東京都ではないので、とりあえず爆弾を仕掛けられている場所ではないと思うが・・・。しかし、相手の言っている事のみ信用するのは危険だ。
 時間はそろそろ午後の4時を回る。世間では買い物や掃除を済ませ、おせち料理の仕上げに入っている頃だろうか。テーマパークのカウントダウンに出かけたり年越しそばを食べている人もいるだろう。
 だが一人部屋に残っているジョーには、そんな事を考えるゆとりはなかった。
「おっ」
 ヒントがアップされた。アナグラムを直すと、?浅草の花??羽田?と出た。これで5ヶ所全部の場所がわかった。すぐさま森に伝える。だが
『だめだ。今動けるのは1チームしかいない」
「だったら浅草にやってください。羽田にはおれが行きます」
 ジョーは洸のノートパソコンを閉じてそのまま持ち出した。セリカのPCナビに接続してネットに繋ぐ。
 インターネットが発達して世の中便利になったが、その反面相手の顔が見えない犯罪が増えてきた。今回のように─。
 突然モニタに、?TOWER?の文字が浮かび上がった。
 緊迫した気持ち悪さと違和感を覚えた。
 だが今は羽田に向かうしかない。出国ラッシュは峠を越えているだろうが、空港にはまだかなりの人出があるはずだ。
 あと6時間で新年を迎える。しかし相変わらず道路は混んでいた。
 こんな夜にみんなどこへ行くのだろう。自分と同じ様に急用で出かけるのか・・・。ジョーの心の中をふと何かが通り抜けた。と、スピードマスターが鳴った。神宮寺だ。
『成田の件は片付いた。今ヘリで羽田に向かっている。警視庁の爆処も出たそうだ』
「よかったぜ。万一爆弾を見つけても、おれ一人だと心許ないからな」爆発物処理の訓練は受けている。しかし専門家に任せたほうが確かだ。「大田区に入った。そっちへ向かう」
『ラジャ。早く片付けて杉本さんの雑煮を食いに帰ろう』
「ゾウニよりお年玉くれねえかな・・」
 JB全員に配ったら、杉本さん破産だな、と縁起でもない事を言い通信を切った。
 遥か前方に高度を下げていく飛行機のライトが見えた。空港までもうすぐだ。と、助手席に置いてあるノートパソコンのモニタに大きな窓が開いた。
「A LOSE IT AND DOIT、AND TURN ON AGAIN(失いし光を再び灯せ)・・・?」
 そしてそのすぐ後に、?TOWER??YOKOHAMA?の文字が上がる。先ほどの緊迫感が再びジョーを押し包んだ。
 なんだろうこれは・・・。この文は・・。まるで仲間に連絡しているように、何度も現れるこの文字は・・・。
 圧迫され呼吸も忘れたその瞬間、目の前に横羽線の羽田入口が見えた。
 とっさにステアリングを繰り高速に乗る。横浜まで30分と表示されていた。

 その頃、JBには各チームや警視庁から爆発物発見と処理完了の報告が次々と入っていた。
 相手の言う事を信用して5ヶ所なら、残るのは浅草と羽田だけだ。?浅草の花?は花やしきだろう。羽田にはジョーと神宮寺が向かっている。0時のタイムリミットまであと4時間。
 しかし森は彼らがこの仕事をやり遂げてくれるだろう、と確信していた。


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