コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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Countdown a deadline 完

 横浜の中心部に入ったとたん、鮮やかな色彩と光の渦に巻き込まれた。
 お台場やディズニーランドと並ぶ人気スポットのみなとみらい地区。
 ジョーが?横浜?と?タワー?という言葉から真っ先に思い浮かべたのは、この地区に建つランドマークのタワーだった。しかしひと目見て違うと思った。
 年末のカウントダウンが行われるこの辺りは人に溢れ、タワーはもちろん、時刻を表示した大きな観覧車も、その周りのビルや船も光に満ちていた。
 モニタに浮かんだ?失いし光─?ではない。ではいったい─。
 目標を失ったジョーは横羽線の横浜公園出口から一般道に下りた。横浜スタジアムを左に見て横浜港に向かう。
 年街年始のあまりの人の多さに一時期かなり厳しい交通規制を布いていたが、みなとみらい地区ができた事により人出が分散したらしく、今はそれほど厳しい規制は布いていない。しかし車で行かれない所も多く、路駐はもっての他だ。
 ジョーは山下公園通りを右折し元町方面に向かった。この辺りはあまり来た事がなく、ランドマークの他に?タワー?と呼ばれる物があるのかさえわからない。
 ふと横浜出身の江川の顔が浮かんだ。あいつなら─。と、右側に黒い空間が現れた。その空間はスラリと上に伸びている。
「・・・タワー?」
 あっと言う間に通り過ぎた。その黒い空間をバックミラーで見ながら呟いた。
 そういえば3、4日前、JBの食堂で捜査課のメンバーと雑談している時、横浜港のナントカいう船とタワーが営業を終えてその身を飾る光を落とされた、と江川が言っていた。彼が生まれるずっと前から港のシンボルであった2つの光がクリスマスの夜、船の汽笛と共にその光を消されたのだと─。
 ジョーはセリカを戻すと再びタワーに向かう。
 それは独特の形をしているマリンタワーだった。塔の部分は組まれた鉄骨で素通しになっている。真ん中にあるのはエレベータか。そして上には2層に分かれた展望台が─。と、その窓がキラッと光った。そして移動していく。
 夜回りの警備員かと思ったが、すでに営業をやめ人のいないタワーを見回ったりするだろうか。
 ジョーは迷わずセリカをタワー前の広場に乗り入れた。この辺は不思議なほど人が少なかった。カウントダウンに立ち会う人はみなとみらいか山下公園の海の近くに出ているのだろう。
 タワーは閉鎖されている─と思ったが、入口のドアが抉じ開けられていた。明らかに関係者以外の誰かが入り込んだのだろう。
 まったくのカンだった。それも恐ろしく無謀な─。しかしジョーは自分のカンを信じた。
 彼は中に入りすぐ横の階段を上った。エレベータ前に出たが当然動いてはいない。と、その横に小さな階段を見つけた。古びた看板が展望台への階段だと教えてくれた。
 外から見た、あの鉄骨の素通しの部分の真ん中に伸びるエレベータをグルグル回るように作られている。全部で333段。大人なら8分くらいで登れるだろう。
 しかし回りはもちろん、足の下も素通しとなり地面が見える。その分、眺めはバツグンだが─。
 やがて地上100mの第一展望台に着いた。一応中を一周してみるが誰もいない。その上の第二展望台に向かう。JBに連絡を入れようかと思い、ふと人の気配を感じた。
「誰だ」日本語で訊いて来た。かすかな光がその声の主を照らし出す。若い日本人の男だった。「だ、誰だ、お前は。なんでこんな所に─」
「日本人だったとはな」ジョーがゆっくりと男に体を向けた。「A LOSE IT AND DO IT─。全部英語だったから外国人だと思ってたが」
「!」
 今の言葉でジョーの素性と目的がわかったのだろう。男は拳銃を取り出しジョーに向けた。だが彼はその場に立ち塞がる。そしてゆっくりと口を開けた。
「なぜ、こんな事をする」暗く冷たい空間にジョーの声が響く。「?失いし光を再び灯せ?。このタワーに爆発の光を灯すつもりか」
 ジョーが男の左手に目を向ける。手にしている小さな箱はたぶん─。
「金か。金で誰かに雇われたのか。それとも─」
「金じゃない」ジョーを睨んだまま、男が答えた。「自分の腕を試してみたかったんだ」
「なんだと?」
「おれは大学でコンピュータを学び、色々なソフトを開発した。便利なソフトなのに教授は危険なソフトだと言って、それ以上の研究を認めてくれなかった。だからそのソフトを使って警察を出し抜けば、おれの腕が証明できる。企業だって認めてこのソフトを─」
「バカな。こんな事をして証明した腕を、いったい誰が認めてくれるっていうんだ!」
「いるんだよ、それが。おれに金を与えこのソフトを作らせてくれた人が」
「なに?」と、ふいに男が身を翻し走り出した。「まて!」
 ジョーが追う。
 このタワーは10角形をしているので、中心を柱が占めているこの展望台も先を見通す事ができない。なんとなく床が斜めになっているようで走りづらい。と、角を曲がった所で銃声がした。飛び退き床に転がる。が、すぐさま男に飛び掛った。そのまま体重を掛けて床に押し倒す。だが
「ぐっ!」
 男の腕がジョーの胸部に入った。いつもならなんでもない。しかし今はまだ完治していない骨がグキッと鳴った。勢いで背中から倒れた。
「くっ、う」
 胸を押さえ体を曲げる。が、激痛は収まらない。その時、男の手に拳銃が握られているのが見えた。銃口はこちらに向けられている。ジョーはとっさに内ポケットからウッズマンを抜いた。
 ガーン!
 銃声が重なった。
 男の撃った弾丸(たま)はジョーのすぐ横で跳ねた。が、その男はジョーに右肩を打ち抜かれ後ろにひっくり返った。そのまま動かない。
 ジョーはしばらく男に目を向けていたが、その手からウッズマンが床に落ちた。
 痛む胸を押さえ、ジョーはその場に倒れた。

「爆発物処理、完了しました」
「了解しました。ご苦労様です」
 爆処の班長の報告を聞き、神宮寺がホッと息をついた。
 羽田空港での捜索は思ったより時間が掛かってしまった。爆発物はなんと人々の目の前に堂々と置かれていたのだ。
「まさか店頭の募金箱が爆弾だったなんてね」洸が言った。
「まったくだ。つい見逃してしまった」
 2人の前を爆処班が小さな箱を持って通り過ぎる。もし爆発してもそう大きな威力の物ではなかったらしい。しかし空港は間違えなくパニックになるだろう。
「0時まであと30分か。他の所はどうしただろう」
「浅草もさっき処理を完了したって。ここが最後らしいよ」
「よかった。お年玉は無理だが雑煮は食えそうだ」
「お年玉ってなにさ?」
「ああ、ジョーが杉本さんに」ふと気がつく。「そういえばジョーはどうしたんだろう。まだ捜しているのかな」
 彼らは別々に空港に着いたのでまだ顔を合わせていない。再会より捜索が先だった。
 神宮寺がリンクでジョーに呼びかける。が、応答がない。
「スピードマスターがオフになってる?」
 2人は顔を見合わせた。

 頬に当たる冷たい感触にジョーは目を覚ました。暗く冷たい空間が彼を包む。一瞬、自分がどこにいるのかわからなかった。
 手で床を押すようにゆっくりと起き上がる。胸が少し痛んだが我慢できないほどではなかった。と、少し離れた所に男が倒れていた。
(そうか・・・おれは・・・)
 ノロノロとウッズマンを手に取り男に目を向けた。かすかに胸部が動いているので生きている事がわかる。この男に金を与え、こんな事を引き起こさせた人物というのはいったい・・・。
(え?)
 ジョーは男に近づき目を見開いた。男の持っていた爆弾が見当たらない。ジョーから逃れる途中、どこかに置いたのか。
「くそォ・・、手間かけさせやがって・・・。お年玉倍増してもらうぞ」
 お年玉をくれる(?)のは杉本だ。この男ではない。が、ま、いいか。それより今は─。と、黒い小さな箱は、倒れている男から5mほど離れた所に転がっていた。
 ホッと漏らした安堵の息が凍りついた。なんとタイマーの数字が時を刻んでいた。現在時刻23時58分01秒─あと2分で0時になる。
 ジョーは解体用に持って来た小型のドライバーやハサミを取り出した。慎重に箱のネジをドライバーで外す。そっとフタを開けると粘土のような物と幾本かの配線が見えた。
「ま、まさか、プラスチック爆弾・・・?」
 手の中にスッポリ収まる量だが強力な破壊力を持つ爆発物だ。爆発する場所によっては、この展望台の半分は吹っ飛ぶだろう。
 ジョーは指で配線の元を辿る。構造は簡単だった。この配線の先にある2?4本の配線のどれかを切ればタイマーは止まるはずだ。しかし、
「な、なんで黒と白なんだよっ!」
 ジョーは思わず大声を上げた。
 タイマーに繋がっている配線は2本。どちらかが本線でもう1本はトラップだ。しかも黒と白とは・・・。
「ゾウニじゃねえんだぜ、くそォ」憎々しげに唸るがどうしようもない。時間はもはや1分を切っている。ジョーが決めるしかない。「おちつけ・・・。黒と白・・。どっちが本線だ」
 小さなハサミに指を入れた。
 杉本が作ってくれた関東風と関西風の雑煮。ジョーにはどっちがどっちだかよくわからない。わからないが・・・。
「そうだ、神宮寺」あいつは雑煮を食っていた。奴の選んだ雑煮はどっちだった?「黒か!」
 デジタルが23:59:57に変わる。ジョーは黒い線にハサミを入れ、力を込めて断ち切った。
 パーン!
 光が散った。ジョーの体がビクンと跳ねた。顔を上げ、音のした方を見た。
 光に照らされたその顔をいくつもの鮮やかな色彩が走る。カウントダウンの終わったみなとみらい地区から上がった新年を祝う数々の花火の光が彼の目に映った。港に停泊している船も一斉に汽笛を上げ新年を祝う。
「ああ─マジ、びっくりした」
 ジョーはヘタッと座り込み壁に寄り掛かった。
 目の前の大きな窓ガラスからは、みなとみらいの夜景が手に取るように見える。花火とビルの光がキラキラと輝き、手を差し出せばそれが自分の物になるかもしれないと思わせた。
 一瞬の気の緩みだった。
 倒れている男の手がゆっくり上がり銃口が向いた。トリガーに掛かる指にグッと力が入った。
 バンッ!
 破裂音と共にジョーの体が壁に叩きつけられた。
 体内から何かが抜けていくような感覚に襲われ、急速な息苦しさを感じた。右の胸部が血で染まっていく。肺をやられたと思った。不思議と痛みは感じなかった。
 だが呼吸がしづらくなってきた。目の前の花火とビルの光が霞む。その光に照らされた男はまた動かなくなっていた。
 ジョーは体を動かそうとしたが、そのとたん口から生暖かい物が溢れ出て来た。血だ。口を押さえたがなかなか止まらない。
(あ・・・は・・・や、やばいかも・・)
 以前、追い詰めたカルディに胸を撃たれた時もこんな感じ・・・いや、今回の方が遥かに─。
 ジョーは右胸に手をやった。と、何か硬い物が手に当たった。携帯電話だ。銃弾を免れたらしい。
 ジョーはケータイを取り出し、霞む目を凝らしてアドレス帳を開けた。ズーと下にスライドさせていく。?Sceaux(ソー)?と記された所で止まりオンにする。少し上を向き耳に当てた。
「ママ?うん、ジョージ・・・ん、元気」相手はフランスにいる幸子だ。「大した用じゃないんだけど、新年おめでとうって─え?ああ、そっちはまだ31日か・・・。うん、日本はもう明けたよ。今?仕事が終わったところでさ」
 ふいにゴフッと血を吹いた。ケータイにかかった。とっさに電話口を手で塞ぎ息を整える。
『どうしたの、ジョージ。なにか変よ』
「なんでもないよ。仕事が終わったばかりで疲れているだけさ。だって1日中パソコンの前に座らされたんだ。わけのわからないデータ読まされてさ」
『また謹慎処分?』
 幸子の苦笑混じりの言葉に、?鋭い!?と思った。
「そっちは今何してるの?」
『午後の4時を回ったところよ。パパはまだ帰らないし、健はお友達の家に行ってるの。でも車で送るってさっき連絡があったからもう帰ってくるわ』
「そう・・・」
 フウッと目の前が暗くなった。
『ねえ、ジョージ。やっぱり変よ。疲れているのなら早く休んだ方がいいわ』
「今ね・・花火を見ているんだ・・・新年の・・横浜の夜景も・・目の前に広がっててさ。とても綺麗だよ」
『え?あ、あら・・・。どなたかと一緒なの?』
「残念ながら1人さ」
 いや、正確には野郎と2人か・・・。
『そういえばあなたが一人暮らしを始めてから、まだ1回も一緒にお正月を迎えて─』
「─ママ」言葉を遮られたが、なに?と幸子は答えてくれた。「鷲尾さんから聞いた?おれがイタリアのマフィアの血を引いているって事・・・」
『・・・ええ』
「それでママはどう思った?ああ、やっぱりって?おれの乱暴なところも口の悪さも言う事を聞かないところも、マフィアの血筋なら頷けるって─」
『ジョージ、あなた何を言っているの?』少し怒ったような声で幸子が言った。『あなたの親戚が何者で何をしようと、あなたには関係ないわ。そうでしょ?』
 神宮寺と同じ事を言う。
『あなたはあなた、ジョージ・アサクラとして生きる・・・。そう望んだのはあなたよ』
「・・・・・」
 ああ、そうだった。だからおれは鷲尾家の暖かい手を振り切り日本に戻ってきたんだ。鷲尾でもグランディーテでもない、ジョージ・アサクラとして生きていくために・・・。
「うん・・・そうだね・・そう・・・」
『でも、まだこう呼ぶのを許してもらえるのなら─。私の愛する息子と・・・あなたを呼んでもいいのなら・・・』
「うん・・もちろんさ・・ありがと・・・マンマ・・・」
 ジョーの手からケータイがスルリと滑り床に落ちた。
 目の前の花火はもう見えない。
『ジョージ?どうしたの、ジョージ?』
 床に落ちたケータイからは幸子の声が響いていた。

                       
                                 完
 

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