コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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Way of life 1

「なっ、これがナイト2000、ポンティアック製のファイヤーバード・トランザムだ」ジョーがモニタに映る、全身真っ黒な車を指差す。「格好いいよなァ。今でも充分通用するモデルだぜ。レプリカオーナーが多いのも頷ける」
 ジョーの横で立花もウンウンと頷いている。
「そしてこれがナイト2000に搭載されている人工頭脳のキット」ジョーがDVDを少し早送りにした。「運転はもちろん会話もでき、自分で考え主人公を助けてくれる」
「それはもうわかったからさ」洸がため息をついた。「でもこんなの作れったってムリだからね」
「お前コンピュータ得意じゃん。ナビにプログラムできないか?」
「ただ指示するだけなら今のナビと同じだろ。でもキットは人間みたいに犬が嫌いだったり高所恐怖症だったりするんだろ。そんな高性能のナビなんて作れないよ。わかるだろ?なのに沈着冷静が売りの立花までジョーとつるんで─」
「だって・・・」立花が困ったように呟く。「ジョーにこれ見せたのぼくだし、キットがいたらいいなって」
「おい、なにか?おれはチンチャクレーセイじゃないとでも言うのか?」
「・・・そうだと思う?」
「・・・・・」
 眉をへの字に曲げ、ジョーが考えた。

「やはり簡単には口を割りませんね」コーヒーを手渡してくれた山本に頭を下げ神宮寺が言った。「浩二の救出には協力的でしたから、もしやと思ったのですが」
「短い期間だったが、一度はゾンタークに加わったんだ。そうヤワな考えではないだろう」
 関が短い髪をカシカシしながら書類に目を通す。
 彼らがいるのは警察庁公安部公安第3課の主任、関のデスク周りだ。一応ソファなどが置かれているが専用の部屋ではなく、他の公安官との間にはパテーションが1枚置かれているだけだ。
「それにしても、公安の取調べがあんなに優しいものだとは思わなかったぜ」神宮寺の向かいに座るジョーが言った。「もっとガンガンぶっ叩くと思ってた」
「いつの時代だ?おれ達は?特高?か」?トッコウ??と若い3人の目が関に向けられた。「・・・ま、いい・・・」
 本当は関だって?特高?が横行していた時代を知らないのだが、一瞬彼らとの年齢差を感じてしまった。
「とにかく今までの自供はまとめておいたから森チーフに渡してくれ」
“はい”と神宮寺が受け取った。
 先日の事件で逮捕された三神は公安預かりとなり尋問を受けた。
 浩二の救出には協力的だった彼だが、話がゾンタークの事になるとさすがに口が重くなる。
 それでも関と山本が根気良く訊き出した事によれば─。
 大学で語学の勉強をしていた三神は高地ドイツ語に興味を持ち、教授の講義を取り卒業後は南ドイツで高地ドイツ語の勉強を続けていた。
 そこで彼はゾンタークのメンバーと会い、その思想に賛同してしまったそうだ。そして帰国後、彼はゾンタークの指示通り国会議員の秘書になった。
 井出登を選んだのは息子の浩二が以前ゾンタークに新宿でさらわれ、彼の父の身分を知っていた事、そして登も浩二も三神と同じ大学という事も都合がよかったからだ。
 ゾンタークの狙いは日本の行政機関に出入りできる人間の確保─いずれ井出の後を三神が継ぐ事を期待しての潜入だった。
 浩二に大学のデータを盗ませたのは、あくまでも井出を脅す手段の1つだったようだ。
 ちなみに浩二に掛けられていたのは神宮寺の推理どおり?後催眠?だったが、これはゾンタークのアジトで掛けられたものではなく、三神によって浩二の部屋で行われたものだった。
 ─これだけの事を訊き出すのに数日を要してしまった。神宮寺とジョーは何度か同席したが口を挟む事はしなかった。
「JBに戻ります」
 と、腰を上げるダブルJに関が
「明日はおれ公休でさ、今夜久々に山本や木村と飲むんだが、君達も来ないか?」
「・・・・・」
 神宮寺とジョーは顔を見合わせた。彼らはこの書類を森の渡せばその後の予定はない。もちろん事件が起こらなければ、だが。
「おれは構いませんが」
 神宮寺が言うがジョーは答えない。人嫌いではないがジョーは他人とつるむのは苦手だ。JBのメンバーならまだしも、数回しか顔を合わせていない公安のメンバーともなると
「以前、約束したろ?ピカピカの色っぽい店に連れて行ってやるって。今夜の店はそう色っぽくないけど、それはまたゆっくり─」
 関がニッコリ笑い、神宮寺が“いつの間にそんな約束をしたんだ?”とジョーに目をやった。と、ジョーはプイッと立ち上がりそのまま出て行った。
「後で店の場所をメールしてください」神宮寺も立ち上がりペコッと頭を下げた。「連れて行きますから」
 そのままジョーの後を追う。
「・・・失礼な奴だなァ」
 山本がポツリと呟く。
「自分に正直なことろが彼の魅力さ」
 関が楽しそうに言った。

「AI(エイアイ)─人工頭脳のキットか。確かにこんなのが作れたらすごいなあ」
「だろ?」洸の横で一緒にDVDを見ている立花が嬉しそうに言った。「ぼくはキットよりナイト2000の方に興味があるけど。このボディは特殊セラミックに分子結合殻を組み込んだ、という設定になっていてロケット・ランチャーが当たってもビクともしないんだ」
「両方ともジョー好みってわけだね」モニタでは主人公がロケット・ブースターのスイッチを入れ“ウワォー!”と叫び、すっ飛んでいく。「単にすっ飛ばしたいだけかもしれないけど・・」
「そうだね」立花が同意する。「でもキットは主人公が無茶な運転をしようとすると止めてしまうんだ。ジョーの車についていたらいいと思わない?」
「そーだね」洸も同意してニマッと笑う。「ついでにジョーにもつけておけばもっと安全だ」
 休憩室の片隅でDVDを見ながらウンウン、ムフフと話している男2人にあらぬ噂が立つのは時間の問題だった。

 関が送ってきた店は新宿の繁華街から少し離れたビルの1階にあった。
 平日の、まだ少し早い時間のせいか店内は客よりスタッフの方が多かった。だから2人がその店のドアを開けた時、店中の人の目が2人に集中したのも無理はない。
 仕事柄、目立つ事を嫌う2人だが、たとえ地味なスタイルをしていても彼らの風貌は充分人目を引く。
 端整な顔とスキのないしなやかな体の神宮寺も、店のライトの中で銅色に輝く髪とスラリとした長身のジョーも、万人の中に沈み込む事はない。見慣れている関や山本でさえ、一瞬見とれてしまった。
「遅れてすみません」
 如才なく神宮寺が言う。その横でジョーがかすかに頭を下げた。
「いや、おれ達も今来たところだ」
 関が言い、席をずらしてくれたので、2人は関と山本の間に座る形になった。関の向こうには木村がいる。
 この店は女の子が付いてくれるシステムではない。気ままに仲間同士で飲める店だ。
 それでも女性スタッフは多いので、気が向けば一緒に飲む事もできる。
 神宮寺とジョーはちょっと珍しそうに店内を見回した。
 彼らが飲みに行く店は客が10人も入るといっぱいになるような小さな店が多い。女の子はいなくもっぱらとまり木専門だ。ソファからだとまた風景(?)が違うな、と思う。
 5人は思い思いに手酌で酒を楽しみ、たわいない話に花を咲かせた。
 山本が先日の事件で、三神が話していたアウトバーンに貨物機を下ろした話を聞きたがったので、渋々ではあるがジョーが話し始めた。
 彼の声は低めだがよく通る。話し方も決してていねいではないし内容も物騒なので、もし聞いている者がいたらこの5人に疑いの目を向けてきたかもしれない。しかし幸いにも(?)店内は空(す)いていた。音楽もかかっていたので他の客の席までは届かないだろう。
「だけど本当におもしろいのはこの後だ」
 酒が入っているせいか、ジョーがいつもより饒舌になっている。
「この夜、カイザーに連れられてバーデン・バーデンの町に繰り出した神宮寺は─!」急にジョーが呻いた。見ると彼の脇に神宮時の肘が入っている。「な、なにすんだよ!」
「余計な事を言うな」
 口元にグラスを当てながら神宮寺が睨む。その鋭さに、向かい側に座っていた木村がビクッと体を震わせた。が、もちろんジョーには通じない。
「だって、聞きたいって言うから─」
「山本さんが聞きたいのは事件の事で、その夜の事じゃない」
「えー、そっちの方が絶対おもしろいのになァ」思わせぶりにジョーが言う。「すンません、山本さん。もし聞きたいなら神宮寺の奴を説得してください。そしたら一部始終全部話します」
「・・・・・」
 再びジョーを睨みつける神宮寺に、さすがの山本も何も言えない。
「大丈夫だ、山本。そのうちおれがジョーと2人で夜を過ごした時に聞いといてやるから」
 赤い顔の関が言う。が、神宮寺とジョーの2人に睨まれ、一瞬引きつった。と、“氷、換えますね?”と女の子が新しいアイスペールを持ってきてくれた。
 関は天の助けだ、と女の子に目を向けたが、テーブルの上のアイスペールにはまだ半分くらい氷が入っていた。
 そういえばさっきから頻繁に誰かが5人のテーブルにやってきて、アイスだの水割りだのを作ってくれる。いつもは呼ぶまであまり来ないのに・・・。
 その理由はすぐにわかった。
 入れ代わり立ち代わり来る女の子達は必ず神宮寺やジョーに目を向けていく。なかにはウインクをしていく娘(こ)もいる。彼女らの目当ては2人だ。
「確かにいい男だけど・・・普通の女の子には手に負えないだろうな・・・」
「実は前から気になってたんだけど」山本が話を変えた。「2人共、階級は同じなの?」
「階級、ですか・・・」
 神宮寺が“う?ん”とジョーを見た。ジョーが前髪を掻き上げる。かなり離れた所に立っている女の子の“キャッ!”という声が聞こえた。
「おれ達には階級はないんです」“え?ないの”“だって─”と山本と木村が声を上げた。「ええ、おれ達は各国に支部があってその国の警察共協力しますがまったく別の組織なんです。ですからその国の警察の規則も適応されません」
 確かに彼らは銃の常時携帯が許されている。それも警察から支給されたものではなく、いわゆる?マイ銃?だ。
「もちろんうちの規則以外はその国の法律は守りますが、階級のシステムはなくて・・乱暴な言い方をすればチーフも食堂のおばさんもみんな同列なんです。その中で?チーフ?や?部長??課長?の役をしてるんです。もっとも本部の上層部ともなると、また違うみたいだけど」
「おれ達は実力主義だ。?役?に年齢は関係ない」ジョーがカラカラと氷の音を立てる。「だから明日突然おれがチーフになっている、って事もありうるのよ」
「鷲尾さんもそこまで無茶はしないと思うが・・・」
 関が呟きまたジョーに睨まれた。
「そうかあ、上司がいないっていうのもいいな?」
 山本がチロッと関に目を向ける。
「もちろん年長者には敬意を表しますよ」
「お前な?、上司がいないって、いい事ばかりじゃないんだぞ」関が山本の頭をガバッと掴んだ。「たとえばお前がミスをする。怒られるのは上司のおれだ。その上司がいなかったら、ぜ??んぶお前が1人で責任をとる事になるんだぞ」
「そ、そうか─。でも森さんは庇ってくれるんでしょ?」
「もちろん」神宮寺が頷く。「でなければ何回北極送りになっている事か」
「なんでおれを見るんだよ」8コの目玉がジョーを睨む。「おれだって好きで無茶してるんじゃねーや。回ってくる仕事が道案内だったらもっとおとなしいぜ」
「・・・・・」
 他の4人の頭の中には、“よーし、送ってってやるぜ!”と車をぶっ飛ばすジョーの姿が浮かんだ。どんな仕事でも結果はあまり変わらないような気がする。と
「関さ?ん、いらっしゃいませェ」
「うわっ、マスター!な、なんだいその格好!?」
 関が素っ頓狂な声を上げ、目の前に立つ男を見上げた。男は関と同年くらいで、なんとトラ模様のスーツを着ていた。
「だってもうすぐ節分ですよ。今年は自分が鬼役なんです」
 そして関以外の男達に眼を向けた。
「今日はまた若くて可愛い男の子達を連れて─。特に君」と、木村の腕を取り立ち上がらせた。「モモタロウの役、してみない?」
「い、いえ、あの、ぼくは─」
 と、口をパクパクさせ関に助けを求める。
「マスター、うちの若いのに手を出さんでくれ。どうしてもと言うならおれがやってやる」
「そんなひねたモモタロウはいりませんよ」
 と、“他を当たりますからごゆっくり?”と行ってしまった。関以外の男達はアッケにとられ見送る。
「な、なんですか、あれ?この店のマスター?」
 山本が長い息をついた。
「この辺りの名物マスターでね。何かの行事があるたびに奇妙な格好で楽しませてくれるが」確かにマスターは他の客にも受けていた。「そういえば、こどもの日にはこいのぼりを着てたっけ」
 見るとマスターはトラスーツにさらにツノのついた黄色の髪のカツラをつけ始めた。拍手が起こる。
「どうした、ジョー?」
 神宮寺の声に目を向けると、ジョーがマスターをじっと見つめていた。
「どうした?まさか鬼が怖いわけじゃあるまい?」
 関の言葉にジョーはチラッと彼を見たが
「─セツブンは嫌いだ」
 ボソッと呟き立ち上がった。
「おい、どこへ行く?」
「飲みすぎて気分が悪い。風に当たってくる」
 そのままフラリと店の外に出て行った。
「飲みすぎって・・・」関がジョーのグラスを見た。1杯目の水割りがまだ残っていた。「何か気に障ったか?」
 神宮寺に目を向けたが、彼も首を傾げるばかりだった。


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