コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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北海道の旅はいそがしく 2

 太陽はすでに顔を出している。が、その光はやわらかく清々しい。
 青函連絡船の乗船場に立った4人は、そんな太陽の輝きに思わず表情を緩めた。
  「同じ太陽でも東京で見るのとでは、こんなに違うもんなんだなァ」
  「太陽じゃなく、こっちの目が違っているのかもな」
 ジョーの言葉に一平は思わず彼を見た。ジョーは軽く口元を歪めた。
  「今日はぼくも、いつもと違い目で君達を見るからな」と、これは洸。
 どうやら昨夜の事をまだ根に持っているらしい。ま、ムリもないと言えばムリもないが・・・。
 そんな3人に向かって神宮寺が言った。
  「ちょっとチーフに電話してくるよ。着いたら知らせるように言われてるんだ」
  「ヘェ、子どもの旅行じゃあるまいしねっ」膨れながら洸が言った。
  「向こうから連絡はできないからね。万一のために定期的に電話するんだよ」
  「おれも行くぜ」ジョーが言った「哀れなチーフにこっちの事をたっぷりとのろけてやる」
  「ミスターとの仲をかい?」
 言ったと同時に一平がひっくり返った。なぜか両手で右膝を押さえ唸っている。
  「フン、てめェは地面とキスでもしてろ!」
 そう冷たく言い残すジョーと、苦笑している神宮寺の二人は乗船場に消えた。
 あとに残された一平と洸は互いにチラリと横目で見つめ合い、同時に口笛を吹き始めた。と、洸が一平を睨む。一平はあわててそっぽを向いた。
  「・・昨日はよく寝られたかい・・・」洸が訊いた。
  「・・まあ、ね・・」そっぽを向いたまま一平が答えた。
  「そう・・良かったね・・・」
  「???」
 一平は何か言おうと洸の方に振り向いた。と、その時、乗船場内でなにやら大勢の人の声が聞こえてきた。その数人の言葉を聞いた二人は反射的に顔を見合わせ場内に飛び込んだ。
 一方、こちらは神宮寺とジョーである。
  「ええ、これから青函連絡船に─お、おい、ジョー!」
  「チーフさん、こちらはとても良い天気ですよ。太陽は輝きその光を受けて海はさらに青く美しく─な、なにすンだ、神宮寺!」
  「すみません、チーフ。ですから函館には9時15分に─ジョー!」
 神宮寺はジョーを睨んだ。ジョーはなんとか彼の手から受話器を奪おうとしている。神宮寺は叫んだ。
  「いーかげんにしろ、ジョー!おれはホーコクしてるんだぞ、ホーコク!」
  「だからおれにも少ししゃべらせろって言ってンだ!」
  「そー言いながら、ほとんどお前がしゃべっているんだぞ」
  「いーからよこせ!」ジョーはとうとう神宮寺の手から受話器を奪い取った「あーもしもし、チーフですかい。こちら青森の空の下ですよ─あれ?おかしいな・・。チーフ─おい、こらチーフ!ありゃりゃ・・」
 神宮寺が思わずジョーを見た。ジョーも彼の方にゆっくり顔を向けた。
  「切れちまったぜ」神宮寺は呆れたように額に手を当てた。ジョーは音をたてて受話器を置くとぼやき始めた「職務怠慢だよなァ、せっかくわざわざ遠い所から電話してやったのによ」
  「そりゃあれだけメチャクチャすれば、誰だった切りたくなるさ」神宮寺は戻り口に落ちてきた数枚の100円玉を玩びながら言った「知らないぞ。東京に帰ったらどういう事になるか・・。お前は前科もあるから、まっ、北極送りは免れないな」
  「なんでおれ一人のせいにするんだよ。お前も共犯だ」
 ジョーはわざと凄んでみせた。と、2人の横で電話をしていた青年がスゴスゴと引き上げて行く。ジョーは目を見開いて青年の後姿を見送ると神宮寺を見た。神宮寺は片目を瞑り思わず頭を掻いた。
 すると、そんな2人の後ろから誰かが名前を呼び走ってくる。一平と洸だ。
  「どうしたんだよ、2人共、そんなにあわてちゃって・・」
 「何かあったのか」神宮寺が眉をひそめた。
  「いやあ・・あった事はあったが・・よかったよ、何もなくて・・・ああ、驚いた」
  「??」
 2人の言った事をまとめると、ほぼこうなる↑。だがもちろん意味は通じない。
  「おい、内容は簡潔に、言葉はきちんとした文法を使ってくれ」
 珍しくもジョーが真面目な事を言った。
  「つまりさァ」フウと息をついて、一平がしゃべり出した「君達2人が行って少し経った時、中から人が2人乗船場から海に落ちたって声が聞こえてきたんだ。その1人が外国人だっていうからさ。こりゃてっきり君達かと─」
  「アホかっ!おれ達がそんなヘマするはずねェだろ!」
  「そうは思ったんだけど、なにしろ急で・・・」
  「チェ、たとえ急でもおれ達は冷静かつ敏速に物事をだな─」
  「いいじゃないかジョー。2人共おれ達の事を心配してくれたんだし・・。それにほら─船が入った」
 神宮寺が指さす方に3人は目をやった。桟橋には“大雪丸”と書かれた白い船体が着岸している。
  「さっ、行こう」
 神宮寺が先に立ち、3人もそのあとに続き乗り込んだ。
  「ヘェ、けっこう大きいんだね」洸が声を上げた「レストランまである」
  「席に落ちついたら船内を見てまわろうよ」一平も嬉しそうである。
  「まっ、ゆっくり楽しむといいよ。3時間50分この中にいなければならないんだもん」
 神宮寺の言うとおり、青森─函館間60海里を青函連絡船は3時間50分で繋ぐ。 船は8000トン級。青森を離れて約2時間は本州の北部に沿う。
 やがて平館海峡に入り、東側には秀峰岩木山や八甲田山の連峰が南から長く見える。
 そしてさらに北に進むとやがて斧形の先端、大間崎を右にして本州を離れる。1時間もすれば津軽海峡を越え、松前半島を左に函館湾に入る。
 その間船のまわりは空と海一色で塗られる。船に弱い人はこの長い時間を耐えられず、無理にでも寝ようとするが、窓からこの美しい景色を望めばとても寝てはいられないだろう。それでも寝る者はまさに根性以外の何者でもない。
 席に落ちついた彼らは、出港と同時に思い思いの行動を取り始めた。
 一平と洸は船内を見に、ジョーはデッキへ、そして神宮寺は座ったまま船独特の揺れを楽しんでいる。かすかな震動と遠くで聞こえる波の音とが彼の心をくすぐった。
  (やはり海はいいな・・・。またヨットで外海に出てみたい・・。だけど嵐はお断りだな)以前仕事でヨットに乗り、嵐に遭った事を思い出し苦笑した(今度こそ本気で遊んでやるぞ。休暇というといつも何かしら邪魔が入ってダメになってしまうんだからな─いったい誰のせいやら・・・)
 神宮寺はため息をつくと目を瞑った。
 一方、一平と洸はまるでおのぼりさんのように、あっちこっちキョロキョロしながら船内を探索していた。船内は思っていたほど広くはないが、それでも土産物屋やレストランなどが置かれている。
  「一平、絵はがきでも買ってチーフに出してやろうか」洸が言った。もう“根”も取れたようだ「この船のパネルもいいな。大雪丸って割合かっこいいじゃん」
  「今から色々買い込んだらあとあと大変だぜ。だけど絵はがきはいいな」一平は並べてある絵はがきを手に選び始めた「アメリカの姉さんにも送ってやりたいし」
  「い?なァ、兄弟がいるって。ぼくなんか生まれた時から一人っ子だぜ」
  「4人のなかで兄弟がいるのは、おれだけかな」
  「そうだろ─あ、これいいな」
 そう言いながら2人は数枚ピックアップした。
 その頃ジョーは一人デッキから海を見ていた。
 夏とはいえ早朝という事もあり風は涼しい。ジョーはその風に髪を掻きみだされながら、故郷ハンブルクを思い出していた。
  (本州と北海道との間の海・・・なんとなく似てるな・・)
 彼の生まれたハンブルクは100キロも北に行けばもう北海である。この涼しい風も冷たい水面も、ジョーがまだ幼い頃に両親と見た北海になんとなく似ていた。
  (そこを出て12年・・。そういえばドイツには行ってもハンブルクには一度も帰ってなかったっけ・・・。いやおれ自身気がつかないうちに避けていたんだ。あそこには思い出がありすぎる・・)ジョーは遥か水平線に目をやった(・・だが一度は帰らなければ・・・)
 ジョーは水平線に輝く太陽の光に目を細めた。と、誰かが後ろから声を掛けた。
 「まいったよ、もう」洸だ。一緒にいた一平の姿はない「あいつのうまい事うまい事。一度に3、4人手にしちゃうんだからなァ」
 「まただ」ジョーは口をへの字に曲げた「お前の話はいつもわからねェ。もう一度、日本語の勉強をしてきたらどうだ」
 「女の子さ。可愛い子がいたんだ。髪が長くてさ、数人で北海道に行くんだけど、一平の奴見事にもその娘(こ)達と仲良くなっちゃってさ。コーヒー飲みに行ったよ」
 「それでお前はスゴスゴと引き上げてきたのか?」
 「だってさァ・・」洸が頭を掻いた「あいつにはとても敵わないよ。ホントまいったなァ。やっぱアメリカ育ちは方法を心得てるのかね」
 「なに言ってやがる。お前がポケッとしていたからだろ」ジョーは洸の背中を叩いた 「それにしても、こんな所に来てまで女を相手になんかする事ないのにな」
 「アレッ、ジョーは女の子きらい?」
 「べ、別にきらいじゃねェけどよ、メンドくさいぜ、女なんて」
 「つき合った事もないくせによく言うよ。欠陥人間が」
 「なンだとォ」ジョーは洸を睨んだ「てめェ、もう一度言ってみろ!」
 「何回でも言うよ、欠陥人間!どこか悪いの!?」
 「こンのやろォ!!」
 ジョーは洸を掴もうとする。すると洸は彼をかわし後ろに逃げた。さすがのジョーも洸の素早さには敵わないようだ。だがそんな事で諦めるジョーではない。
 青く輝く海と真っ青な空をバックに進む白い船のデッキで、2人は紙一重の追いかけっこを始めた。

 長針はすでに九時を回っている。
 遥か前方からシャンシャンという音が響いてくる。窓からは陸地が見え、人々は自分の荷物をまとめ始めた。船が函館港に入ったのだ。
 神宮寺達も一等キャビンからフロアに出た。
 「まだ九時か・・。いつもなら寝てるころだよ」洸が言った。
 「なに言ってンだ。さっきまで寝ていたくせに」彼の横で一平が言った。
 「誰の責任だと思ってンの」
 洸に睨まれ、一平は小さくなってしまった。
 「おい、いつまでそんな所でくっちゃべってンだよ」タラップ半ばでジョーが振り返った「それともいつまでもそこにいたいのか。だったらいろ。静かでいい」
 「冗談じゃない!」二人はあわててタラップを駆け降りた。
 船から降りたほどんどの人達は鉄道桟橋から函館駅に向かう。
 しかし4人はそんな人々とは反対の市電十字街の方に出た。まず腹ごしらえをしようと思ったからだ。
 この十字街や大門通り辺りには、うまい物を食べさせてくれる店が多い。特に十字街にある清寿司は、全国うまいもの店で一位になったほどだ。
 彼らは新鮮な魚介類のたっぷり乗った寿司をたらふく食べ、膨れたお腹を抱え店を出た。これからまた駅前に戻り、レンタカーを借りるのだ。
 神宮寺はチーフから渡された紹介状を開いて見せた。
 「この前田という人はチーフの大学時代の友人だそうだ。前にチーフがここに来た時も色々世話になったらしいよ。だからこれを見せればいい車が借りられるそうだ」
 「いい車にいい運転手か、こりゃいい旅になるぜ」
 ジョーの自慢げな言葉に、あとの3人は顔を見合わせ密かに噴き出した。
 「あっ!チンチン電車!」
 「えっ!!」突然の洸の言葉にジョーは驚いた「お、お前、今なんて・・」
 「チンチン電車さ。ほらあれ─」洸の指さす方を見ると、白い電車がこちらに向かってくる「珍しいなァ。東京で見られたのはぼくがイギリスに行く前だったから─。あれ、ジョー、なに赤い顔してンの?」
 「う・・、いや別に─それより早く行こうぜ!」ジョーは先に立って歩き出した。
 「へぇ、あれがチンチン電車っていうの」一平が珍しそうにつぶやいた「初めて見るよ。サンフランシスコのと似てるね。けど名前がおもしろい」
 「一般には“市電”って言ってたけどね」
 ジョーのあわて方に今まで笑いを堪えていた神宮寺だが、そう答えたとたん、とうとう爆発してしまった。彼は彼に似合わない声を出し、腹を抱えてまさにのたうちまわらんばかりだ。洸も一平も驚いて一歩後進したほどだ。
 「何がおかしいンだ」ジョーが睨む。
 「だって・・だってさ・・ハハハ・・お前があんまりお前らしからぬから・・ハハハ・・」
 「チェッ、お前こそお前らしからねェぜ!」
 ジョーは勢いあまって神宮寺を蹴っ飛ばした。と、彼は少し離れた電柱にピトッと張り付いてしまった。今度はジョーが笑う番だ。が、神宮寺が反撃し始めた。
 2人は器用にも、互いに蹴っ飛ばされながら進んで行く。一平と洸が顔を見合わせた。
 「2人共、充分“らしい”と思うけどね」
 「ん」洸も頷き、2人は少し離れて歩き始めた。
 

 「なに!いない!?」辻は受話器に向かって怒鳴った「そんなはずはない!確かに9時15分着の大雪丸に乗っていたはずだ。えっ、乗客名簿に載っていない?ばかもん!名前などいくらでも変えられる!─なに、4人?いや奴らは2人のはずだ─4人なら見た?1人は外人で身長185ぐらい・・もう1人は180くらいの日本人・・ううむ・・それであとの2人は・・ん・・んー入ってないなァ・・ん・・よしわかった。ともかくその2人・・いや4人か・・その4人をマークしてくら。いいか彼らはプロだ。それもなかなかの名うてらしい。気がつかれんよう充分に注意しろ。あとの2人については、さっそく調べてみる─よし、いいな」
 辻は乱暴に受話器を置くと、引出しの中の書類を引っ張り出した。


 「へっ、いい車だぜ!」
 ワインレッドの美しいコスモAPリミテットのスレアリングを握ったジョーは、ご機嫌な声を上げた。
 「これで突っ走れるかと思うとワクワクするぜ」
 「ワクワクするのは勝手だがここは街中だ。こっちの心臓までワクワクさせるようなまねはやめてくれよ」助手席の神宮寺が言った「─せめて街を出るまでは、な」
 「ハイハイ、わかりましたよ。お前もだんだん話せるようになってきたな」
 「2年もつき合ってりゃね」ジョーの言葉に神宮寺は苦笑して返した。
 「あっ、次の角を右に曲がって。その方が函館山へ行くのに近道だよ」
 「OK!」ジョーはまるでマリでも転がすようにステアリングを繰る。一種の芸術だと神宮寺は思った「それにしてもよ、洸。お前よく知ってるな。行った事があるのか?」
 「北海道は初めてさ。だけど前もって調べておいたんだよ。コースのほとんどの道順も覚えてるよ。わかンなくなったら訊いてね」
 「フン、まるで修学旅行というやつみたいだな」
 「しかしいつのも事だけど、洸の記憶力のいいのにはホント参るよ」洸の隣で一平がぼやいた 「養成所時代、それで何度かこいつに負けたことがあるからな」
 「イヤァ?、努力、努力!」
 「そういえば洸は講義の時間になると寝てたっけな」
 「よ、よく知ってるねェ、ミスター。─あ、そうか、何度か一緒に講義受けたっけ」
 「あれからまだ2ヶ月しか経っちゃいねェんだな」バックミラーからジョーが顔を覗かせた「正直言ってよ、まさか養成所出たてのお前らがSメンバーになろうとは思わなかったぜ。JBのSメンバーはおれ達以外は無理だと思ってたよ」
 「ヘン!今に見てろ?。ぼく達だって?!」
 「とっ!バカやめろ!髪を引っ張るのは!手元が狂う!」
 とたんにジョーは見事なソーイングをやらかし始めた。コスモAPは踊り出し、あとの3人は車内で飛び上がった。
 「や、やめろ洸!ジョーがステアリングを握ってるという事だけでも恐ろしいのに、これ以上ムチャなまねはさせるな!」
 神宮寺の言葉に、ジョーはキッ!と彼を睨んだ。
 キー!とブレーキの音が響いた。シートベルトをしていた神宮寺はなんとかなったものの、逆らって装着していなかった一平と洸は、まともに顔を前のシートにぶつけてしまった。
 「な、な、なんだって急にブレーキなんか踏むんだ!」鼻を押さえ一平が叫んだ。
 「しょうがねぇだろ」ジョーが肩をすくめる「目的地だもん」
 「へっ?」
 ジョーの言葉に、額を押さえた洸が前方を見た。なるほど目の前には駐車場の入口が、少し向こうにはロープーウェイの乗り場が見える。
 「なんだァ、僕はまたてっきりどうかなっちゃったのかと思った」
 「バカ言うな。あのくらいでこのおれが動揺するはずねェだろ。さ、それより早く降りろ。おれあのロープーウェイとかいうのに乗ってみたいんでね」
 「ハ?ン、子どもだなァ?」洸が呆れたように声を上げた。
 だがロープウェイに乗り一番はしゃいだのはその洸だった。
 「わっ、見て見て。街並みがだんだん小さくなっていくよ。あっ、海だ!きれいだな?。あれ大雪丸かな。ヤッホー!」
 彼は事あるごとに隣の一平を引っ張り騒ぎ立てる。山麓駅から函館山の頂上までの5分間これだからさすがの一平も参ってしまい、終いにはヘーゼンと無視し始めた。
 「チェ、どっちが子どもだい」ジョーが鼻を鳴らした。
 「・・可愛いよ、年に似合わず・・。彼を見てると10年前に死んだ弟を思い出す・・・」
 「そういやァ、2ヶ月前だったよな、あの事件・・」ジョーの言葉に、神宮寺はかすかに目を伏せた。ジョーがハッとした「ご、ごめん、別に思い出させるつもりは・・」
 「なあに、気にしてないさ。それよりほらもうすぐ頂上だ」
 そう言って神宮寺は腰を上げた。が、その間のわずかな表情をジョーは見逃がさなかった。
 (亡くしたものは違っても、やはりあいつとおれとは同じなんだ・・・)
 ジョーは胸に位置する両親の写真の入ったロケットを妙に肌に感じ、彼らのあとに続いてロープーウェイを降りた。
 函館駅から車で約30分。旧くは津軽海峡を守る要塞であった函館山も、今は交通の便の良い市内一の観光地になっている。山頂にあるプラキストンラインの記念碑の前で写真を撮って行く人も多い。
 4人はこの碑の向こう側─花や草が咲き誇る中に立ち、遥か函館の街を見下ろした。
 「最高だなァ、陸と海があんなにハッキリと別れて見える」
 「よくもまあそれだけ立て続けにしゃべれるもんだなァ」一平が言った「だけど確かに見事な眺めだな」
 「これが夜ならもっときれいだよ。光り輝く市街と暗い海に割然に分けられて、その美しさは世界三大夜景の一つと言われているんだ」
 「チェッ、それなら夜にすればよかったのに─。誰だい、コース組んだ奴は!」
 「お前だろ、ジョー」神宮寺に横目で睨まれ、ジョーはあわてて口笛を吹いた。
 それを見て洸が笑い出す。続いて一平が、そしてそれにつられ、あとの二人も笑いだした。が、そんな4人の後姿を建物の陰で見ている鋭い目があった。
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