コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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サンゴ礁は危険がいっぱい 完

 翌朝、神宮寺は小型クルーザーを借りスピードマスターの反応があった海域をフィッシングを装い流していた。
 10キロ程離れた所には八木のドーニがいる。が、探す範囲は広くそのほとんどが無人島だった。
 アトーレ管理局に事情を話し、今日1日この周辺の島への上陸は許可された。
 もちろん2人でも手に負えないので、ジョーの居場所を教えると言っていた奴らの連絡を待つしかない。しかしそれより大変だったのはトーニの説得だった。
 プレゼンは10時から首都マーレで行われる。奴らはそれを承知でトーニを足止めしたいのだ。
 当然トーニは言われた所に行くと言った。それをマルティーノと神宮寺が時間をかけて説得したのだ。
 プレゼンの時間を変更してもらう事も考えたがそのためには事件を話さなければならず、ノイス社の不利になるので─原因はあちらにあるが─トーニが良しとしなかった。それでも神宮寺が保養所にいる仲間と必ずジョーを救出すると誓い、やっとトーニの首を縦に振らせる事ができた。
 彼はマルティーノと共にマーレに向かった。
「どうだい、神宮寺君。何か見つかったかい?」
 八木のドーニがクルーザーに横付けされた。
「だめですね。2、3島に上がってみましたが人の気配はなくて」
 飛んできたロープを神宮寺がキャッチしクルーザーに結びつけた。ダイビングボートやクルーザーなど、この海域ではサンゴの破壊を避けるため海底にアンカーを下ろさない。と、キャビンの電話が鳴った。
『アントニオはそこにいるのか!こっちの言う事を無視するつもりか!』
「いきなりなんだ。名乗りたまえ」
 トーニにかかってくる奴らからの電話はすべてこちらに回すよう言ってある。この声は昨日かかってきた電話の男に間違いない。
『今、マーレから連絡があった。アントニオはプレゼンに出るつもりらしいな』
「最後の大事なプレゼンだ。あたりまえだろ。ノイス社ももちろん参加する。お前達の正体はバレているんだ。ジョーを連れておとなしく出て来い」
 一瞬、相手が沈黙するが
『青い目の坊やが死ぬぞ。10分だ。10分しか猶予はない。10分過ぎたら窒息して─』
「なんだと?あ、おい!」電話が切れた。「どういう意味だ・・・」
「今、思い出したんだが・・。捜索範囲からちょっと離れるが廃業したリゾート島があるんだ。ホテルは壊され器材は撤去されたが小屋の1つや2つは残っている。あそこなら人1人隠すくらいできるかもしれない」言い終わらないうちに八木がドーニに飛び移った。「行ってみよう」
「はい」
 ロープを外すと神宮寺はクルーザーのエンジンを掛けた。

「くそォ、あいつら─」
 ガシャンと電話を切りステンが唸った。ふと横を見ると灰色がかった青い目をじっと自分に向けている男がいた。体の自由を奪われているのに、その男の口元には勝利を確信する笑みが浮かんでいた。
「お前の一族はお前を見捨てたらしいな」
「言ったろ?おれにはなんの価値もないって。教えてやったのに無視したのはあんたらだ」笑みが大きくなり青い瞳に光が帯びる。「それにおれは見捨てられてはいない。もうすぐ恐ろしい奴がくるぞ。そいつに捕まったら、仲間から見捨てられるのはそっちの方だ」
「なに言ってるんだ。─ギラー」
 ステンが合図するとギラーがジョーにマスクを被せた。
「おい、こんな物を付けて・・・泳いで帰れとでも言うのか」
「できるならそうしてみろ」
 ステンがジョーの鳩尾に拳(こぶし)を入れた。気を失わなかったが一瞬体の自由が利かなくなる。ボクシングでもやっていたのかと思った。その間にタンクを背負わされ、レギュレータを口の中に押し込まれた。
「よし、上げろ」
 海中に下りていた鋼鉄製のロープがキリキリと巻き上がっていく。ザーと海面を割りそれが姿を現した。
 目にしたとたんジョーはすべてを悟った。

 八木のドーニにスピードを合わせるのは難しかったが、そう長くは続かなかった。
 やがて行く手にかなり大きな島が見えてきた。三日月形をしたその島は中央に大きなミルキーブルーのラグーンを持っていた。が、2人にはその美しい景色も目に入らない。と、その島の裏側からスピードボートが一隻、外洋に向かいかなりのスピードで走って行った。
(奴らだ!)
 そう思ったものの後を追うのはやめた。奴らの言っていた?10分間の猶予?というのが気になった。
 現在9時50分、奴らの言う通りだとしたらあと20分という事だが。
 八木も同じ考えらしくドーニは壊れかけた桟橋へと向かっていた。と、リンクが鳴った。
「ジョー!」桟橋に近づいているのも構わず神宮寺がリンクに叫んだ。「どこだ!今どこにいる!」
 が、それは通信ではなかった。トレーサーだ。急いで画面を切り替えると四象現のレンジにブルーの光が点滅している。この島に間違いない。
 停止したドーニにぶつかるギリギリにクルーザーを止め、神宮寺は桟橋に飛び移った。

(くそォ、こーいう事かよ。悪趣味な奴らだぜ)
 マスクを通して見るミルキーブルーの海はとても綺麗だった。
 鮮やかな色の衣装を身に纏った魚達がジョーの周りをゆっくりと泳いでいく。手を伸ばしたら触れそうだが、後ろ手にされているのでそれもできない。とにかく手の縄だけは解こうと思った。
 特殊な結び方をしていなければ2、3分で解く事ができる。続いて足の縄も解いた。が、ジョーは浮上する事ができない。
 彼は鉄製のゲージに入れられ海中に沈められているのだ。
 テレビで見た事があるが、サメなどを海中で見るために人間が入る防護用のゲージだ。深度は浅いが、持ち上げたり曲げたりするのはスーパーマンでなければ無理だ。それどころかヘタに暴れれば深みに落ち込んでしまう。
 ジョーはスピードマスターのトレーサーをオンにした。神宮寺が必ずキャッチしてくれると信じている。
 そんなジョーを尻目に、優雅に泳ぐ魚達は鉄格子の間をスッと抜けて行った。

 島に上陸した神宮寺と八木は、島に残る建物─といっても2、3個だったが─を見て回った。そのうちの1つに先程まで人がいた形跡を見つけたがジョーの姿はなかった。
「この島なのは間違いないはずだが」
 神宮寺がリンクを見た。
 ブルーの点滅はレンジの中央に止まっている。少なくともスピードボート等で動いているのではない。
 しかし、駆け足すれば10分も掛からず一周できるこの島のどこにもジョーはいなかった。
「小屋にもいない。森といっても低木ばかりで隠しようがない」息を弾ませ八木が呟く。「海ならやたらあるこの島のどこにジョーがいるんだ」
「・・・海」
 神宮寺の目がコバルトブルーに輝く海へと向けられた。
“10分過ぎたら窒息─”“そちらに入り込んで色々悪さをしている─”─男達の声が頭に浮かぶ。
 奴らはスキューバダイビングの知識がある。海しかないこの島で人を隠すとしたら・・・。
「そうか、奴らはジョーにエアを背負わせ海の中に隠しているんだ」
 つまり、?10分しか猶予がない?というのは、
「それだけしかエアを入れてないって事か?」さすがに八木は話が早い。「しかしそうだったら彼は自分で浮上してくるだろう。縄抜けだってできるだろうし、気を失ったまま放り込まれても水に入れば─」
 と、八木の言葉が切れた。ふと、島の外洋に目を向ける。
「・・まさか、あれを・・・」
 いきなり走り出した八木に躊躇う事なく神宮寺が続いた。

 トレーサーを発信してからどのくらい経つのだろう。おそらく20分と経ってはいまい・・・。
 だがジョーは考える事ができなくなっていた。
 少し前からエアがうまく口に入らなくなっていた。それまではゲージに取りついていたが、今は体を倒してラクな姿勢をとっている。それでも息苦しさは変わらない。
 目を開けると海面を通して太陽の光が見えた。
 暖かい・・・いや、暑いくらいの光・・。
 胸が痛い・・暑い・・・ここは・・どこ?助けて・・・鷲尾のおじさん・・・。
 いや、違う・・。助けに来てくれるのは神宮寺だ・・・神宮・・・あれ?あいつってこんなに老けてたか?・・・って、あいつって・・ダレ・・・。
 ジョーの意識がコバルトブルーの海と同化していく・・・。

「やっぱりそうだ。ゲージが下ろされている」島の突端にはコンクリート製の立派な桟橋があった。その横の建物から伸びる鋼鉄製のロープが海中に没していた。「ここの外洋は回遊魚のコースでね。それを目当てにかメジロザメがよく現れた。くそォ、サビついていてレバーが動かない」
 八木がロープを巻き上げようと強引にレバーを引いた。長年放置されていたが奴らが修理したのだろう。
「今度はそのサメを目当てに客を集めたんだが、ゲージの中にサメが入り込む事故が起きてね。幸いお客は無事だったがそれ以来リゾートは廃れてしまって─。神宮寺君、出力のメモリを上げてくれ」
「は、はい」
 海面を見ていた神宮寺が機械に取りついた。
 ボンッ!と一筋黒い煙が上がったが構わず出力を最大にした。ギギギ・・・とロープが巻かれ始めた。
「このくらいの深度なら減圧停止はいらないな。一気に上げるぞ!」
 ギギギ・・・と耳障りな音が静かな海に響く。神宮寺が海面を見つめた。と、四角っぽい大きな影が見えた。
「ジョー!」
 神宮寺の声と共に海面が大きく盛り上がりザーと左右に割れた。が、ゲージが半分ほど出た所で機械が止まってしまった。
 神宮寺は放置されていた工具箱からバールを取り海へ飛び込んだ。ゲージの外側に付いている鍵を何回も打ちつけ、やっと叩き壊した。
「ジョー」
 まだ海面下にあるゲージの底からジョーの体を引き上げた。マスクとレギュレータを外す。
 顔の前に手をかざすが、ジョーは息をしていなかった。とっさに頬をひっぱたいた。
 え?と、八木が目を剥いた。
「こら起きろ!ジョー!息ができるぞ!さっさと呼吸しろ!」
「じ、神宮寺君・・・まずは人工呼吸をした方が・・・」
「水着の美人も綺麗なお魚も、おれが全部引き受けるぞ!いいのか!」
 と、
「・・う」
 ひとつ小さな息を漏らしジョーが目を開けた。目の前に見えるのはよく知っている相棒の顔─。老けていない冷静(?)で端整な神宮寺の・・・。
「・・魚はもういいよ・・。それよりあと1分遅かったら、水着の美人どころか天使と一緒にランデブーしてたぜ」
「そいつは邪魔したな」
 神宮寺がカラになったタンクをジョーの背中から降ろしてやる。グッと寄り掛かってきたジョーを下から支え、桟橋から手を伸ばした八木と共に地上に押し上げた。
「よかったよ、無事で」八木が言った。「肩の怪我は大丈夫かい?」
「え?─うわっ!いてェ!沁みる!」
 声を上げるジョーを八木が“よしよし”と頭を撫でた。
 ホッと息をついた神宮寺もつい手を出しそうになったが─やめた。

「カテリーナ・アイランドにこんな診療所があるんだな」
 ベッドに腰かけたジョーが言った。
 リゾート島で急病人が出たら、以前は首都のマーレに搬送していた。
 しかし近年大規模なリゾート島では、ホテル内に診療所のある所も増えて来た。ここもその1つだ。個室ではないが5台のベッドがあり入院も可能だ。
 しかし今ここにはジョーだけしかいない。その彼も午後には脱出できるそうだ。
「あとは美人の看護師さんがいれば完璧なのに」
「今回もそっち方面にはエンがないようだな」
 シレッと言う相棒にジョーは唇を尖らせるが、
「すまない、神宮寺・・。おれのプライベートのゴタゴタにまた付きあわせちまって・・・」
「トーニもマルティーノもおれの大切な友人だと思っている。彼らを助けるのは当然だ」べッド横のイスに腰を下ろし神宮寺が言った。「お前の、血塗れのTシャツが送られてきた時の2人の顔・・・。トーニなどプロジェクトから手を引くと言ったんだぞ。ショックだったんだろうな・・」
「おれも驚いた。あんなに血が出るとは思わなかった。熱帯魚が金魚になっちまったもんな」
 あまりの悪趣味のシャレに神宮寺は苦笑した。
「あ、お前を攫った2人の男はモルディブ警察が捕まえたよ。自供によるとやはりノイス社とは関係なく、子会社の知人に頼まれたそうだ。報酬は2万ドルだってさ」
「安っ!人の命をずいぶん叩いてくれたな。おれまだロクに遊んでねーし。ここから出たら遊ぶぞー!トーニがクルーザーを貸してくれるそうだから、それに女の子積んで─」
「その事だがな・・」珍しく言いにくそうに、鼻の頭なんか掻きながら「今回の事はプライベートだから、事件をJBに報告していない。つまりおれ達はここへきてずーと遊んでいる事になっているんだ。その休暇も明日で終わる─」
「ええー!そんなぁ!なんで報告しないんだよ!」
 八つ当りするジョーを見ながらたぶん報告しても結果は同じ、休暇が伸びるわけはないと思う神宮寺だった。

                        
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