コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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Breaking the habit 4

「えー、ジョーまだ来てないの?」
 トレイを手に自分の隣に座った神宮寺に洸が言った。
「重役出勤・・・いや、うちならさしずめチーフ出勤か?」
 向かい側の一平が笑った。
「チーフはいつも早いさ。そんな事聞かれたら、またとんでもない所に飛ばされるぜ」パルメザンチーズを手に神宮寺が言う。「おそらく中目黒だろう。GTのノリでどこかで飛ばしているのかもな。事件もないし、いいさ。後は奴の仕事が溜まるだけだ」
「冷たい相棒・・・」
 一平はじと眼で神宮寺を見た。
「冗談じゃない。ジョーのデスクワークの半分はおれがやってるんだぜ」
「GTといえばさ、ヘンな符合があるんだけど・・・」パンをちぎりながら洸が言った。「さっき3課の木村と話したんだけど、昨日のGTフェスティバルに関さんも行ったんだって。で、今日は出勤のはずなのにまだ来ていないって言うんだ」え、と2人が顔を向ける。「あっちは出勤する時間って決まっているんだろ?なのに?2人共?来ていないって事は─。まさか、駆け落ち!?」は?、と2人が目を見開く。「そうだよきっと!GT見て意気投合して、さあ、あのGTのように2人の愛にターボエンジンをつけて一直線に─いてっ!」
「関さんはともかくジョーならターボエンジンで逃げてくる」右手をグーにした神宮寺が言った。「そんな事言ってるとお前を関さんに差し出すぞ」
「冗談だってば、もォ!関さんだってミスターと三角関係にはなりたくないだろうさ」
「?」
「でも一緒に行動しているのなら、どちらかが連絡を入れてきてもいいのに」
「ジョー、応答しろ。ジョー。─だめだ、完全に休日モードになっている。またヘンな所に首を突っ込んでなければいいが」
 リンクを切り神宮寺が呟いた。

 中央自動車道を1台の黒いトランザムが東京方面へとひた走っている。運転しているのは厳しい表情を浮かべた関だ。
(くそォ、あいつら舐めやがって)関は先程までシルバーのブレスレットがはまっていた左手首を見て唸った。(あんな脅しでおれやジョーが言いなりになると思うなよ。おれを放した事を後悔させてやる)
 関の想いに答えるようにトランザムのスピードが上がる。
 そう、奴らは見誤ったのだ。
 どんな脅しを受けても関が弱気になる事はないし、たとえ死の淵に立たされようとジョーは諦めたりしない。
 2人が屈する時は、奴ら諸共巻き込んで自爆する時だ。
 だが反面、ジョーを残してきた事に対しての焦りもあった。彼は何度でもこんな目に遭っているだろう。危険をうまく切り抜ける術を知っているはずだ。
 だが右腕の銃創の出血や体中の傷は確実にジョーの体力を奪う。あのジョーが関が戻るまでおとなしく部屋で待っているとも思えない。大事にならないうちにジョーを助け、奴らを一網打尽にしなければ─。
 やがてトランザムは霞が関に入った。そのまま警察庁の駐車場に車を置き、関は有楽町線の桜田門駅へと急ぐ。
 実は彼は高速のSAで1回車を止め車体を調べている。その時フロアに小さな発信機が取り付けられているのを見つけたのだ。が、そのままにしておく。ヘタに外して警戒されないためだ。そのために関は、トランザムをわざと霞が関まで持って行った。
 そう、彼が目指しているのは千駄ヶ谷のJBだっだ。
 警察庁の公安官である関は、本来なら公安課の上司である課長に状況を報告するべきだ。それから必要に応じて国際警察に連絡すればいい。しかし関は職務規則に反してJBを優先させた。
 自分のせいで巻き込んでしまったジョーを救出するにはJBの方が確かだ。もちろん公安の機密書類を渡す事はできない。これはジョーも承知しているはずだ。おそらく彼は、もう関が戻ってこない事を願っているだろう。
(だけどおれも君に借りを作るのはいやだもんね)
 平日の昼という事もあり、車内は空いていた。関はドアの横に立ち窓から流れる景色を見ていた。
 自分の立場がどうなろうとできる事はしなければならない。迷っているひまはない。もう、あんな思いをするのはいやだ。手遅れにならないうちに彼を─。
 関は地下鉄からJRに乗り換えた。

 関が出て行ってからどのくらい経つだろう。さっきまでジョーを小突いていた男達も今はいない。ここは1番最初の、関と一緒にいた部屋だ。
(チェ、せめてソファでも置いてくれればいいのに)
 悪態をつきジョーは床から体を起こすと壁に寄り掛かった。
 暖房もないのに体が熱いのは胸や背中に受けた傷のせいだろう。右腕の出血はとうに止まっている。貫通したここも熱を帯びていた。
(自家発電であったかくっていいや)傷は痛いし気分は最低だが気持ちが萎えてはいない。(関、戻ってくるだろうな・・。あいつもバカだから・・・)
 しかも手ぶらでだ。
 ジョーを盾にいくら脅しても関が機密文書を持ち出す事はない。彼が出たのは公安に報告するためだろう。
(いや・・JBかもしれない)
 長年警察組織に従事する関は、正体のはっきりしない相手に対しての警察の対応の遅さを熟知している。それに対して国際警察の動き出しは早い。それは組織の仕組みや、主に国内を活動範囲にしている日本警察と、世界を飛び回る国際警察との違いで仕方のない事だ。
 関は、この一両日中にジョーが動く事を予想してJBに応援を頼むだろう。
(しかしこうバカばかりじゃ、公安もJBも大変だな)
 冷たいコンクリートの壁に頭を預けジョーが苦笑する。奴らは選りによって、違う組織の中の1番最悪な2人に手を出してしまった。このままで済むわけがない。
 奴らが?ボス?と言っていた奴まで引きずり出してやる。
 ジョーははだけたシャツの胸を合わせ、しばしの休憩をとる事にした。

「失礼します」神宮寺と洸、一平が森の部屋に入った。と、「関さん」
「皆すまん。おれのミスで面倒な事になっている」
 スッと頭を下げる関に3人は戸惑い、顔を見合わせた。と、森がソファに座るよう促す。 3人が座り関も腰を下ろすと、富士スピードウェイでジョーと遇った事から彼を人質に捕られ公安の機密書類を持ってくるように脅かされた事を話した。
「やっぱり駆け落ちじゃなかったんだね」
 洸が言い、彼の後頭部がパカン!と鳴った。
「そんな楽しい状況ではない。ジョーは傷と、腕には銃創を負っている。おれが出る時は元気だったが、このまま期限までおとなしくしているとは思えない」
「やっぱりヘンな所に首を突っ込んでいたか」相棒がため息をついた。「ホント、面倒な奴です」
「そう言わないでやってくれ。元はと言えば原因はおれの車にあるんだから」
「だったらさっさと引き返してくればいい。それを好奇心とヘンなプライドをかざしてよく考えもせず突っ走るから─あ・・失礼を」
「いや、君の言うとおりだ」
 もう1人の、好奇心とヘンなプライドを持った男が苦笑した。
「で、アジトの場所はどこなんですか?」
 一平が訊いた。
「それが・・指定された樹海の道はわかるんだが、その先は2回共眠らされていて。だが奴らは徒歩で樹海から抜けて来たし、男2人を運んだんだ。そう遠くではないと思う」
「その辺りを一掃してやるか」
 ニヤリと口元を歪め一平が森を見た。
「その前にひとつ気になる事がある」自分のデスクから4人の顔を見回し森が言った。「昨日公安からいつものように情報が入って、E3と呼ばれている組織の動きがここ4、5日で急に活発になってきたらしい。このE3は1年半前にある商社ビル爆破事件の時に名前が挙がり公安で調べたが、証拠不充分で検挙には至っていない。それからは目立った活動はしていなかったのだが」
 森が関に目をやり、続いて神宮寺を見た。
「このE3の代表者とされる人物の名前が引っかかってね。チーム4に調べさせたのだが─。三神寛之─町田の井出議員の秘書をしていた三神利彦の実兄だ」
「な、なんですって!」関と神宮寺が声を上げた。「自殺したあの三神の─」
「そのE3が、富士吉田市を中心に活動している過激派B1と手を結んだという情報も入ってきている。それが今回の組織と同じものかどうかはわからないが」
「もし相手が三神だとすると、ジョーの正体が知れたらまずい事になる・・・」
「だ、だがあれはジョーのせいでは─」
 神宮寺の言葉に関が引きつる。
「三神がそう思ってくれればいいですけど」
 静かに言う神宮寺に関が黙った。
 警察病院でのジョーの姿が思い出される。詳しい事情は関にはわからないが、ジョーにとって三神の事はあまり触れられたくない事なのだ、という事だけはわかる。
「だけど三神兄はジョーの事なんて知らないだろ?家族に事情聴取だってした事ないだろうし」一平が言った。「三神弟はずっと警察庁にいたのだから」
「確かにそうだ」神宮寺がホッと息をつく。「三神自身、ジョーが国際警察の人間だなんて知らないはずだ。公安の人間だと思われていたかもしれない」
 どうも悪い方へと先走って考えてしまうのは、今までの体験のせいか─。だが
「いや、三神の家族は?ジョー?という名前だけは知っている」え?なんで?と、皆の目が関に向けられた。「森さんに提出した最終報告書にも書いたが、三神は遺書を残している。その中にジョーに宛てた文章があった。名指ししている」
「それを三神の家族に渡したのですか?」
「原物は証拠の品となるのでうちで保管している。家族へはコピーを渡した。遺書だし三神もそう希望していたのでね。その文の一部を黒く塗り潰す権限は我々にはない」
「・・・・・」3人は顔を見合わせた。「でも、まだ三神兄が関わっていると決まったわけじゃないし」
「一平の言うとおりだ」彼らの話を聞きながら、何か所に電話を入れていた森が言った。「もし三神寛之の組織がジョーを拘束しているのなら、手を入れるいい口実になるがね」
「よし、さっそく─」
「まあ待て洸。いくら君達でも準備もなしで樹海に入るのは無理だ。あそこの管轄は山梨県警富士吉田署だ。今、樹海に詳しい捜査員を手配してもらっている。だが今から向かっても着くのは6時を過ぎるだろう。樹海に入るのは明朝になる。それまで君達はチーム4が調べたE3とB1の資料を頭に入れておけ。江川君に言えば出してくれる。関さん、あなたは警察庁に戻った方が─」
「チーフ、おれも同行させてくれ。それに指定の場所はおれにしかわからないんですよ。おれを外すなら場所は教えません。1人で行きます」
「関さん」神宮寺がため息まじりに言った。「なんかジョーに似てきてません?」
「誰に似ても構わん。おれは彼を見捨てるような事はできない」
「関さん」静かに、しかし真っ直ぐな視線を関に向け森が言う。「面倒な奴でもジョーは我々の仲間です。見捨てたりしません。それに指定の場所はNシステムやあなたの車のタコグラフを見ればある程度わかります。なんなら私の権限であなたの車を押収してもいい」
 クッと息を詰め関が森を見た。
 普段の森は、これが国際警察の日本支部長かと疑われるほど穏やかなやさ男だ。だがひとたびチーフの貌になれば、その迫力と威厳は何者をも寄せ付けない。
 それは神宮寺やジョーのような突き刺すような鋭さではないが、無言の圧力と体全体から醸し出される重厚な─それでいて強い意志を映した瞳が相手を黙らせる。
 さすがに30半ばで日本支部長に抜擢されただけはある。
 関は自分より年若いこの男を見つめたまま言葉を継げないでいた。が、
「まあ、関さんさえよければしばらくこちらで研修して行ってもいいですが─。ついでに実戦にも参加しますか?」
「え?あ、も、もちろんです」関は、先程とは打って変わっていたずらっ子のような森の目を受けすぐさま頷いた。「感謝します、森チーフ」
「公安へは私から連絡を入れておきます。関主任をお借りしますってね」森が元のやさ男の貌で微笑んだ。「神宮寺君、関さんを仮眠室へ。出発は夜が明けてからだ」
 森の言葉に関は甘える事にした。



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