コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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海は広いな 騒がしいな 1

「集合はJB前だとして・・、東京インターから東名に入っちまおう」大きな机いっぱいに地図を広げ神宮寺が指差している。「そして厚木で降りて246に乗る。後はこの道を突っ走ればいい」
「この道はずうっと海が見えるんだろ」海好きの洸が早くもはしゃいでいる。「下田の方なんて小さい時に行ったきりだもんな。たっのしみ?♪」
「それで車はどれを使うの?」洸を押しのけ一平が訊いた。「おれ達4人の他に西崎と風間が入るんだろ」
「ああ、6人だからジョーのセリカXX(ダブルエックス)とおれのポルシェで大丈夫だろう」
「いや、車は3台。セリカXXとクラウンとマーク?だ」
「え?」今まで黙っていたジョーの方に3人共顔を向けた。「どうして3台も」
「さっきチーフから言われてよ。今回の旅行の参加者。おれ達4人、捜査課の西崎と風間、それから森高成、榊原良明、鷲尾健太郎─」
「ひぇ???!」
 3人は思わずひっくり返った。

 草木も眠る丑三つ時・・・には小1時間ばかり早い今、午前2時。オフィス街のビルの1つ、12階建ての太陽ビルの横の駐車場に忍び寄る6つの影があった。彼らは駐車場に1台しか停められていない車のそばに集まった。
「こんばんは、諸君─。いや、おはよう、かな」1番最初に声を掛けたのは最高司令長官、鷲尾健太郎氏であった。「涼しくてとても良い気持ちだ。夜中に出発というのは正解だったな」
「そうですね」森が答えた。「ところで・・・全員集まったのかな」
 彼はグルリと見回した。
「神宮寺君とジョー・・それに榊原さんがいないようだが・・」
 その時彼らの後ろからクラクションが響いて来た。
「やあ!遅くなって申しわけない」
 珍しくも赤いシャツを着たジョーが新車セリカXXから降りてきた。もう1台の車は茶色のクラウンで運転席には神宮寺、後席には榊原が座っている。
「念には念を入れろってね。隅から隅まで点検してたら知らぬ間に時間が経っちまってよ。─それにしても・・・なんとまあ・・」ジョーは集まった一同を見回し呟いた。「たとえ国際秘密警察会議でも、これだけの人間はそう簡単には集まらないぜ」
 確かに彼の言うとおりだ。国際秘密警察最高司令長官から日本支部長、JBSメンバー・・・みんな互いを見回し思わず頷いた。
「ちょうど日本で会合があってな」コホンと1つ咳払いをし、鷲尾がしゃべり始めた。「その帰りにJBに寄ったのだが・・。そうしたらお前達が下田へ行くと言うから、それなら私も10年ぶりにと・・・。ま、森君も誘ってくれたし・・・」
「え?」森は思わず鷲尾を見た。「・・ええ・・まあ・・・」
 うそをつくのが下手な彼を見て、洸と風間がククッと笑い声を上げた。
「ま、そんなわけだからこの3日間はお互いの立場も身分も忘れて無礼講で遊ぼうではないか」
「ハッ、長官が1番はしゃいでるぜ」ジョーの言葉に一同は笑い声を立てた。こんな時でもなければ長官を笑うなんてめったにできる事ではない。「ちょっと偏ってるが、9人家族ってところだな」
 ジョーが小声で呟いた。
「それじゃあ出発するからそれぞれの車に乗って」神宮寺の指示で彼らはアトランダムに決められた3台の車に分乗した。「えと、1号車のクラウンはぼくと榊原さん、風間。2号車のセリカにはジョーと洸、鷲尾長官。3号車のマーク?は一平、西崎、森チーフ・・・こぼれた人、いないねェ」
「は??い!」
「洸?」声のした方を向くと洸が手を上げていた。「お前はジョーの車だよ」
「だからこぼれる!きっと海辺の道に出たら突き落とされる?!」
「よ?ゆーた。覚えてろよ」
「ひえ??!
 ジョーの言葉に洸は声を上げ、神宮寺は無視した。
「ジョー」西崎だ。「皆の朝食だ。まとめて買ってきたんだけど入らない?」
「朝食!」とたんに洸が泣きやんだ。「入る入る、いくらでも入るよ?!」
「・・・・・」あまりの洸の変わり様に西崎はじと目で彼を見た。「・・なんか、入れる所間違えそうだな・・。いいや、神宮寺の所に頼んで来るよ」
「ま、まってよ!おべんと?や?い!─わっ!」洸がコケた。急に車が走り出したからだ。「ジョー、ぼく達2番目じゃないの」
「かまわねえよ。なんだったら途中で待ってりゃいいし。それより洸、ナビ頼むぜ」彼は洸に地図を放ってよこした。「東名なんてめったに通らないが、その赤線通りに行きゃいいんだからラクなもんよ」
「道はラクかもしれないけど・・・なんか起りそうな気がするんだよな?」
 バックミラーに映る2台の後続車を見ながら洸が呟いた。

       ×     ×     ×     ×     ×

 彼ら4人がこの旅行を思いついたのは1週間程前だった。
 2ヶ月に一度貰えるか貰えないかの貴重な連休だ。しかし今回はいつもより短い。ならば近くでギリギリまで遊ぼうというのが彼らの考えだった。
 そこに加わったのが同じJBの捜査課にいる西崎と風間である。2人は4人より年はいくつか上だが、何度か一緒に仕事をした事があるので気心は知れている。
 休日にSメンバーも何もない。たとえどこかの国の王様がいようとまったくの無礼講─それが彼らだ。
 さて、となると問題はどこへ行くか、だが・・・。これは割合簡単に決まってしまった。と、いうのは海を中心に見つけていた彼らに森が知っている民宿を紹介したのだ。そこは数年前にまだ日本にいた鷲尾に一度連れて行ってもらった事のある下田の方の小さな民宿村であった。
 場所も時間的にも手ごろなので1日で決まりさっそく申し込んだのだ。が、出発の2日前に急に森を始め榊原や、なんと鷲尾長官も一緒に行きたいと言い出したのだ。
 これにはさすがの彼らも驚いた。だが断る理由もないし、それに日頃恨み重なる(?)上の人を遊びの中でコケにするのもおもしろい。
 彼らはニンマリと笑って頷いた。

       ×     ×     ×     ×     ×

 キャラバンを組んだ3台の車は東京インターチェンジから東名高速道路に入った。この時にはもう1、2、3号車と並んでいた。
 クラウンは風間、セリカは洸、マーク?は西崎がそれぞれナビゲータを務めていて標識ごとにドライバーに伝えている。
「キャラバンはいいけど1番後ろってつまんないな」ハンドルを握っている一平がぼやいた。「高速に入った事だし少し遊んでやるか」
「さ?んせ、さんせ」
 西崎も手を叩いて一平を煽る。
「これ、いくら夜中とはいえあんまり無茶は・・・と、いつもなら言うところだが今回は別だ。行け、一平!前の2台を追い抜かせ!」
 後席でわめく森に一平と西崎は一瞬顔を見合わせたが、すごさま口元を歪めた。
「チーフのお許しも出たし・・。それじゃ行くぜェ!」
 一平の勢いと共に1番後ろに付いていたマーク?はパッと速度を上げ、あっという間にセリカを追い抜いてしまった。

「あんのォ??。このおれを追い抜いて行くなんて許せねえぜ!」
「だめだよ、ジョー。わっ!」
 洸の言葉もむなしく、セリカは一気に速度計の針を跳ね上げ追い抜かしたマーク?に迫った。

「ん?」一方クラウンに乗っている榊原は、急にものすごいスピードで横を走り抜けて行った2台の車に目を見張った。「あれは確か後車の2台・・・」
「ジョーも一平もここまで来てレースも何もないもんだぜ」
 神宮寺がため息をついた。
 なるほど、ジョーも一平も乗るものは違っても確かにレースと名のつくものには何度となく出場している。いわばプロだ。こんな時にもそのプロ気質が出るのだろう。
「しかし考えてみればおれだって・・・。よおし!」
「おい、神宮─ひゃ!」
 風間がコケるのと同時にクラウンも飛び出した。
「高速道路でカーレースか。こりゃめったに味わえるものじゃないな、うん」
 後席の榊原が感心と期待でしきりに頷いた。

「夜の高速ってェのは最高だぜ!ブルーコンドルでなくて残念だ」
「ジョー、あと1.3キロで厚木インターだよ」
「ああ、見てろ。もう少しでクラウンを抜かしてトップだぜ」
 ジョーは舌舐めずりをした。ハンドルを握る手にも力が入る。
「大丈夫かね、こんなに飛ばして」
 後席の鷲尾が言った。が、別に本気で心配しているようには聞こえない。彼自身、ジョーの腕はよく知っているし、長官という地位にいる彼を乗せた車はいつもこんな乱暴な運転はしないのでそのスリルを楽しんでいるようだ。
「ジョー、あと0.3キロでインターの出口─」
「そおれ!トップだぞ!」洸の言葉がジョーの大声で消された。見るとクラウンもマーク?もなぜか速度を落とし遥か後方にいる。「どんなもんだ。だいたいこのおれと争おうとする方が─」
「出口!」
 洸が大声を上げた。が、セリカは130キロのスピードのまま落とそうとも曲がろうともしない。標識が後方に飛んで行った。
「・・・過ぎちゃった」
「なにが」
「厚木インターチャンジ」
「うっそだろ?」
 洸の冗談には慣れている。ジョーは笑い飛ばした。
「ホントだってば?!」わめいて洸は後ろを向いた。鷲尾も反射的に後ろを向く。「バックミラーで見てごらん。あとの2台が付いてこない来ないじゃない」
 確かに彼の言うとおりだ。今までデットヒートを飛ばしていた3台だが、常に前車が見えるくらいの位置に後車がいた。が、バックミラーにはクラウンもマーク?も映っていない。それに彼らはさっき急にスピードを落とした。と、いう事は・・・。
「どうやら洸君の言うとおりらしいな・・」
「もう!せっかくぼくがナビしてあげたのにィ!」
「うるさいな!そんなのUターンすりゃすぐに追いつけ─」ジョーの言葉が切れた。センターラインは高さ1.5メートルほどの柵になっている。それがずうっと続いているのだ。「・・・・・」
「高速道路でUターンはできないのだよ」
 鷲尾が人ごとのように言った。
「約1、5メートルか・・。試みてみるかな」
「ム、ムチャだよ、ジョー!このまま行くしかないよ。大井松田、23キロ─」
  」
 目の前に星がいくつか飛んだ。珍しく青い顔をしている。
「仕方がないな・・」鷲尾がため息をついた。さすが国際警察の長(おさ)だけあって他の2人よりは落ち着いている。「しかし向こうも心配しているだろうから、連絡だけは取っておいた方がいい」
「そ、それが・・・。この車買ったばかりで・・それまでカウンタックを乗り回していたものだから通信機をまだ・・付け替えてなくて・・」
「・・・通信機が付いていない時計して来ちゃった・・」
 2人の言葉にさすがの鷲尾も絶句した。この2人がSメンバーだというのだから日本の、いや世界の将来が不安になるのももっともである。
 鷲尾は今になって、おとなしくこの車に乗った事を後悔し始めた。ジョーと洸のコンビだと聞いた時、何がなんでも拒否すればよかったのだ。
 が、時すでに遅く3人を乗せたセリカは厚木インターから5キロの所を相変わらず走っていた。

「あれっ?」風間が声を上げた。「ジョーの奴、名古屋まで行く気だぜ」
「えー?」料金所の前まで来て神宮寺はあわてて車を止めた。「も、もう出たんじゃないのか?ちゃんと打ち合わせしといたんだぜ」
「ミスター!」後車から一平が降りて来た。「ジョー達、インター降り損ねたぞ」
 榊原が車から降りた。同時に全員が車外に出て神宮寺の周りに集まった。
「まいったねえ・・。ハンドルはジョーが握っているのだろう」
「ええ・・・」榊原の横で神宮寺がため息をついた。「あいつよくラリーに出られるなぁ。そういえばナビゲータは洸だ」
 彼は納得したように頷いた。
「ところで・・・どうするんだね」
「・・どうしましょう」
 神宮寺にしては珍しく気弱げに呟いた。
「向こうに乗っているのは?」
 見ると森がJBのチーフの顔をしていた。
「ジョーと洸、鷲尾長官ですが・・・」
「なるほど・・。構成メンバーに影響はないっ。出発だ!」
「わ、鷲尾さんを置いて行くのかね!」
 榊原にしては大声で叫んだ。
「ええ」森はケロッとして言った。「あのまま行けば大井松田に出ます。そこから255に乗って135に出ればいやでも真鶴に出ますよ。─さあ、行くぞォ!」
「・・・・・」
 皆アッケにとられて森を見つめた。が、元よりチームワークの良い彼らである。すぐさまチーフの森に同意してしまった。
「そ?しょ!そ?しょ!」西崎がわめいた。「こんなおもしろい事2度とない」
「ジョーだってそれほどドジじゃないだろうし、洸だっておれのコンビだし長官もいるし、大井松田からでも行けるだろう。そうと決まれば、しゅぱ??つ!」
 全員それぞれの車に乗り込んだ。料金所を出て右に曲がる・・・つまり246み入るのだ。
「ここからちょっとややっこしいからな。頼みますよ、西崎さん」
「大丈夫!前に神宮寺もいるし、なんとかなるさ」
 地図を見ながら西崎が呟いた。
(それもそうだな・・。キャラバン組むのもいいけど、ただ付いて行くのもつまらないな・・。こうなるとかえってジョー達が羨ましくなってくる。なんたってスリスがあるもの)
 口には出さないが一平のこの想いはおそらく皆・・・特に若い者達の心そのものであろう。


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