コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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北海道の旅はいそがしく 1

  「そりゃ確かにおれも賛成したさ。しかしまさかこんな─」
  「まだ言ってンの?」少し向こうでコーラを飲んでいる洸が言った「ジョーもしつこいなァ」
  「ほんと」洸の下にいる一平も口を出した「それでいて、要点がハッキリしないんだもの」
  「だからおれは─アテッ!」ジョーは思わず頭を押さえ、一平と洸は肩をすくめた「くそォ、頭にくる!だからおれはこんな─」
  「だからいったいなんだと言うんだ」今まで黙っていた神宮寺も、とうとう耐えられなくなり口を開いた「今度の北海道旅行を言い出したのはお前だろ。Sメンバー4人が珍しくも揃って休み。そりゃ7、8日で北海道を回るのは確かにきついけど、でもあのコースなら行ってみるだけの価値はある。おまけに気持ち悪くも珍しく森チーフの計らいで今度の旅行のために車も1台借りた。コスモAPリミテット─最高じゃないか!おまけに向こうは涼しいし・・。他になんの不満があると言うんだ」
  「あるとも!日本の寝台車はおれにはちょっとキュークツで─テッ!」
 再び頭を押さえるジョーに、神宮寺は呆れて洸と一平を見た。

      ×     ×    ×     ×     ×

 20時発、青森行きの特急ゆうづる2号のA寝台におなじみJBのSメンバー、神宮寺力、ジョージ・アサクラ、そして新顔の峰一平、ひびき洸の姿が見える。
 彼らは珍しくも揃って夏休みを貰い、今回の北海道一周の旅を計画し、8月4日の夜、上野を発ったのである。
 これはもちろん彼らの休暇も兼ねてだが、つい最近JBに入った一平と洸が先輩である神宮寺やジョーとより一体になるためにと考えた森チーフの計らいでもあるのだ。
  だからチーフも、今回の旅行にはいつも以上に協力してくれた。車の手配やコースの下調べ、宿泊地など─挙句の果てには自分も行きたいと言い出したが、JBのチーフという立場上これは許されず、スネてしまった。
 仕方がないので4人は“できるだけお土産を買ってくるから”と説得し、これはナンとか納まった。
 4人はチーフの元に銃と国際警察の身分証明書を置いて行くことにした。今回はあくまでも遊びのために行くのだからだ。
 しかし万が一を考え、JBの息のかかった機関や仲間同士だけがわかるメンバー証だけは持って行く事にした。
  「こんな物、スーツケースの底に押し込んだまま絶対に出さないからな」 
 洸の言葉に他の3人は思わず苦笑した。が、思いは同じであった。
  「いいか、これを函館駅のすぐ前にある前田レンターリースに見せれば─」
  「ワインレッドのコスモAPが借りられるというんでしょ。もう5回も聞きましたよ」
  「君は黙っていなさい」森は目を吊り上げてジョーを見た「あのコースを一週間で回るのは長時間走行に耐えられる車じゃないとな。そして運転手も・・・」
  「なんでそんな目でおれを見るンです」
  「峠で君がハンドルを握るかと思うと、車が哀れでの?」
  「チーフ!」ジョーもとうとう大声をあげた「こう見えてもおれは一流のレーサーですよ!北海道の峠くらい時速200キロでビューッ!─と!」
  「だから言っているんだ」
  「????」
  「いいかげんにしろよ、ジョー」洸が止めた「チーフ、行かれなくてダダこねてんだよ。部下として、そこンとこをわかってあげなくちゃ」
  「私は子どもか!」
  「わっ!怖っ!─それじゃ、行ってきまーす!」
 洸が声を上げて先に飛び出すと、あとの3人もペコッと頭を下げ洸に続いた。そんな彼らの後姿を、森は息をついて見ていた。
 そんなわけで4人は今、青森行きの寝台列車に乗っている。
 A寝台の4人部屋なので、そう周りを気にする必要もない。4人は持ち込んだコーラやカンビ?ルなどを開け、ピーナッツやポテトチップをつまんでいる。
 1番強いのはやはり神宮寺だろう。五つ目のワンカップ大関を飲み干し、それでも変わる事なく洸にセスナの話をしている。
 その洸はさっきからコーラばかりだ。時々一平のウイスキーをユーカイしてコークハイを作る程度である。つい30分前まではジンとかウイスキーで遊んでいたが、もうアカンらしい。そのうち、コーラがない!と騒ぎ始めた。
 そんな洸の横では、一平が好きなウイスキーをチビチビやりながら一人楽しんでいる。めったに旅行などした事のない彼は、列車の中でやる事すべてが楽しいらしい。ビュッフェにも行かず、駅弁を買ったのも一平の意見である。
 そしてラスト、グルッと一回りして神宮寺の横に座っているジョーはもう赤い顔をしている。息がってウイスキーでもジンでも呷る彼だが、正直なところあまり強い方ではない。今回も平気でカップを呷る神宮寺に対抗し・・たのはよいが、見事にも先に潰れてしまった。
  「ちくしょう、暑いなァ。クーラー効いてないのかよ!」
  「暑いのは君個人だろ」前にいる一平が言った「飲めもしないのに息がるからさ」
  「飲めねェだと?おれは男だ。ウイスキーの一杯や二杯ぐらいでまわるものか。ただ今は─アテッ!」ガツン!という音とともに、ジョーが頭を押さえた「くそォ、寝台までおれに逆らいやがって・・こいつが悪いんだ!」
  「メチャクチャだァ」
 一平が思わず肩をすくめた。それを見て神宮寺が言う。
  「もう12時過ぎたし、少し寝ておこう。5時には青森に着くんだからな」
  「と、言う事はあと30分で仙台だね」
  「寝るのはいいがよ、なんだってこう狭いンだっ」
  「ぼくも怖いや、上段でさ。寝ているうちに落っこちるような気がして・・」
  「それなら大丈夫だ、洸」上段へのハシゴを登って行く洸に、下から一平が声をかけた「たとえどんなに転がっても下には落ちない方法を知っている。君にもその魔法をかけておいたからね」
  「ほんと?」
  「コンビのおれを信用しろよ。大丈夫、安心してお休み」
  「それじゃ不本意ながら信じるか。おやすみ?」
 その言葉に一平はプッと脹れたが、洸が寝てしまったのを確かめると羨まし─いやいや─おぞましくも彼の寝台に入り込み、ナニやらガタガタやって5分後には下の自分の寝台に戻ったのである。
 洸はコーラがまわったのかよく寝ていた少しも気がつかない。変な弱点だ、と一平は感心した。    そしてそれから3時間後、突然ガタガタという音が響き、と同時になんともいえぬ洸の叫び声が聞こえてきた。
  「あきらァ、落ちたのかァ」一番最初に声をかけたのは、洸と向かい合った上段に寝ているジョーである「でもそんな音じゃなかったしな・・ん・・ネム・・」
  「助けて!いやっ、いやっ!」
  「襲われてるのか」今度は神宮寺だ。やはりカーテンは開けない「ジョーにでも・・」
  「なンだと!」ジョーは勢いつけてカーテンを開けると、その下に寝ている神宮寺目がけて怒鳴った「だァれが洸なんか襲うか!どうせならもっと─ん?わっ、洸!」
 その声に神宮寺はカーテンを開けて上を見た。一平も同様だ。
  「・・・あきらァ・・」間延びした神宮寺の声─「何やってるンだァ、そこで・・」
  が、それも無理はない。
 見ると洸は寝台から転げ落ち─いや、落ちる途中で宙ぶらりんになっているのだ。その腰には太いナワが巻いてあるのが見える。それが列車が揺れるたびに前後左右に動くので、洸の意思とは関係なしに体が動き、なかなかもとには戻れず手足だけがバタついている。
 神宮寺もジョーもしばらくは呆然とそんな洸の空中遊泳を見ていた。が、そのうち洸が大声を上げた。
  「ぼんやり見てないでさあ!なんとかしてよォ!」
  「・・その前に、どうしてそんなかっこしてるのか聞きてェな」
  「知らないよォ!寝返りをうったら急に下がなくなって、気がついたら途中で止まっててこんな・・あー!」洸と一平の目が合った「お前だな!このやろう!」
  「いいじゃないか、落ちて痛い目を見るより」一平は平然と言った「真夜中にトレインの中で空中遊泳なんてなかなかオツだぞ。誰もまねできない」
  「そンならてめーやってみろ!わ??!!」
 ゴチン!という音が響いた。列車の揺れが大きくなり、洸がオデコをぶつけたのだ。
  「鼻じゃなくてオデコをぶつけるとは・・鼻がないんじゃないのか」
  「うるせェ!見ろ!ここにちゃんと立派な鼻が─!わ?、またぶつかる?!」
 再び固い音が響いた。それを見ると神宮寺とジョーはおもわず顔を見合わせた。
  「アホらし・・。まったくガキの考える事は、よ」
  「・・ひとつふたつしか変らんがね。あれ?お前より一平の方が上だろ?」
  「そんな事どうだっていいよ。ア?ア、おれは寝るぜ」
  「おれも。あと1時間くらいしか寝られないもんな」
  「1時間!?わっ、もったいない!おれも寝よ!」神宮寺とジョーがカーテンを閉めるのを見ると、一平もあわてて寝台に潜り込んだ「おやすみ洸。お前も早く寝ろよ」
  「寝ろったって、どーすりゃいいンだい!!」
 洸の叫びもむなしく、血気盛んな青年達の寝息はひときわ高く室内に響き渡るのであった。
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