コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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海は広いな 騒がしいな 完

 その頃、洸、一平、風間の3人組は浴衣のかわい子ちゃんを探し場内をウロチョロしていた。
 しかし時間が悪いのか殺気を感じたのか女の子は見当たらない。どこもかしこも強そうな男達ばかりである。さすがの彼らも男を相手にする気にはならずシラケていた。
「誰だい・・浴衣のかわい子ちゃんがいるなんて言ったの・・・」
 洸のじと目が横を指す。と、それを受け一平がその横の風間を横目で睨んだ。風間はあわててそっぽを向く。
「・・・こいつらが一緒だからな・・・。来るものも来ない・・・」
「何か言ったか」
「な?んにも!─おっ」
「いたか!」
 洸と一平は同時に風間の視線の先に顔を向けた。
「いや、チーフ達のようだけど・・、どうしたのかな」
 確かに風間の言葉通り彼らから30メートルほど前方にいる5人は森を始め鷲尾や神宮寺達だ。しかしそんな彼らを取り囲む10人程の男達は何者だろう。ハデなアロハなどを着たどう見ても遊び人風だ。
「まさか・・・ねえ・・」
「そんなバカな。この旅行は極秘だぜ」早くも洸の心内を見抜き一平が言った。「それに相手をよく見ろ。どう見たって町のチンピラの団体ってところがいいとこさ」
「それもそうだね。─という事は・・・」
「とにかく行ってみよう」
 風間が言葉と同時に行動を起こした。後の2人もそれに続く。と、それを1人の男が止めた。
「!?」
「あの人達はあんたらの知り合いかね」
「ええ、そうですが」見ると男は地元の漁師のようだ。「それが何か」
「そんなら気をつけた方がいい。あいつらは下田のチンピラでな。祭りというと来よる。普段はそうでもないが今夜は酒が入っているからなに因縁つけられるかわからんぞ」
「ありがとう、おじさん。でも大丈夫。ぼく達だってそーとーなものですから」洸が答え3人はピョコンと頭を下げると再び鷲尾達の方に足を向けた。「やっぱり町のチンピラだったんだね。でもぼく達の敵じゃないや」
「まあ、な。でも今の言い方じゃ、おれ達もどこかのチンピラのように聞こえるぜ」
 一平の言葉を洸はあえて無視した。と、そこへ森の声が聞こえてきた。

「だから謝っているじゃないか。第一ぶつかったと言っても、そっちが道いっぱいに広がって歩いていたのではないか。長─この人だってわざとぶつかったわけじゃない」

「ぶつかった、ぶつからないって・・町でよくやるアレね」
「古い手使いやがるな、作者も・・・」
「呑気な事言ってる。ぶつかったのはどうやら長官のようだ」
 風間が2人を急かせた。

「うるせェ!てめェらがぶつかったのはおれ達の兄キ分だ。このままじゃ済まねえぜ」
「どうしろと言うのかね」
 相変わらずあんずあめを持ち他人事のように鷲尾が言った。
「治療代、とまでは言わないが、せめて2、3万は置いてってもらいたいな」
「それっぽっちでいいのかね?」
「それっぽ・・・」
「いっその事10万ぐらい持ってくかね」
 鷲尾は財布に手を掛けた。
「待ってください」その手を森が止めた。「こっちだけが悪いわけじゃない。渡す事ありません」
「なンだと、このヤロウ!」
「しかしな─、せっかく遊びに来たのだからあまりハデな事はしたくないのだよ」
「あなたがそれで収まっても他の連中が収まりませんよ」
 森の言葉に鷲尾は神宮寺と西崎を見た。2人共血気盛んすぎる若者だ。目の前に長官達がいなければ、もうとうにチンピラ共を地面に寝かせているかもしれない。
「それにプラスして、さらにハデな奴らも来ましたしね」
 もちろん洸や一平、風間の事だ。
 これだけ揃ってしまってはいくら鷲尾でももはや止めようがない。すでに5人の熱血男達はチンピラ達に対して有効かつ有利な方へと少しづつ移動を始めている。
 5人がいつも相手にしている世界の大物ならまだしも、町のチンピラ程度では彼らのこの何気ない動きを見破れはしないだろう。それどころか反対にビビッていると見られているかもしれない。
 森は無言で頷いた。5人にはこれで充分なのだ。
「やいやいやい!金は出すのか出さねえのか!」
「出すと思ってるのか」
 チンピラは驚いて後ろを向いた。いつの間にかそこには神宮寺が立っていたのだ。
「お前らにやるこずかいは持ってないんだよ!」そう言うと彼は男の腕を捩じ上げ尻を蹴っ飛ばし地面に転がした。「10割る5・・・、1人につき2人か・・。物足りないが─」
 後ろから神宮寺に掴み掛かろうとする男の鳩尾にきれいに手刀を入れ呟いた。と、それが合図でもあるかのように、残り8人のチンピラと一平達4人の乱闘が始まった。
「タイムでも計りましょうか、チーフ。私の腹時計で・・」
「頼みますか、ドクター」
 森はニッコリ笑い答えた。
 本当は自分も遊びに参加したかったのだが鷲尾の手前さすがにそれはできなかった。それに神宮寺の計算は?10割る5?である。自分は始めから抜かされていた。
 チーフの辛いところだと、森は思わず苦笑した。
「だめェ、ミスター!君はもう2人転がしたろ!」
 洸が叫んだ。そして神宮寺の捕まえている男を奪うとストレートを食らわせた。続いてアッパーカット。
「よーし、ラスト!─ぐえっ!」突然洸が地面に顔から衝突した。神宮寺が足を引っ掛けたのだ。「なにすンだよ!」
「お前の方こそ、人の食い物取るようなまねするな!」
「割り当て決めたのミスターだぜ!」
 こうなったらもう終わりだ。内輪揉めなんて生易しいものではない。お互い日本最強のSメンバーだけに変なプライドがあるのだ。
「いい、実にいい」鷲尾が言った。「若い者が運動する姿はいつ見てもいいものだ」
 後の2人は同意し頷いた。
「ジョージがいないのが残念と言えば残念だ。いや、あの子がいたら春の小運動会が秋の大運動会になっていたかもしれんな」
「それより、今夜の運動会の事を後でジョーが知った時の方が恐ろしいと思いますよ・・]
「お前で最後だぞ!」見ると洸が鷲尾にぶつかった奴らの兄キ分を抑えている。「兄キと言われているわりには大した事ないな。いいか、兄キ、お前さんがぶつかった相手は、お前よりずうっと偉いさんなんだぞ!」
 そう言うと洸は男をぴしゃりとひっぱたいた。男はひっくり返りポカンとしている。あとの9人も同様だ。
「おれ達だって街じゃあちょっとは名のある組だ」
「乱闘競技終了。ええと・・1分15秒」
 榊原が腹を叩いた。
「これに懲りて、もう善良なる市民に手を出さない事だな」
「ヘ・・ヘェ・・」まるでどこかの刑事物みたいな台詞を吐く洸に向かってチンピラの1人が頷いた。「と、ところでそちらさんはどこからおいでなすったんで?」
「東京からさ」
「ホォ、どうりで・・・。それでどちらさんの組です?」
「く、くみィ?」
 洸が素っ頓狂な声を上げ、一同は彼の方を向いた。
「だってさっき言ってたでしょうが。あの御仁は偉い方だとか・・・。あの貫禄からお見受けしやすと幹部辺りか・・・ひょっとして組長さんでは」
「く、くみちょ!」8人の16個の眼玉が一斉に鷲尾に向けられた。鷲尾は自らを指差し口をアワアワさせている。「組長・・・この私がやくざの組長・・・」
「それで組名は」
「名前はワシオ─」
 言いかけて洸はハッと口を押さえた。が、もう遅い。
「ホー!ワシオ組ですか!勇ましい名前で─。組長さん、どうぞよろしく」
「?????」
 チンピラにあいさつされ鷲尾は口を利けずただワナワナと震えている。その振動は彼が今だ持っている右手のあんずあめにまで伝わっている。
 こんな時いつもなら愛用のコルト・ガバメントを抜きわめくところだが、場所が場所だけにそうもいかない。第一ガバメントはJBに置いてきてあるのだ。
「わ・・・私は・・私は・・・」
 と、これだけしか言えない。左右に居る森や榊原もただただ無言である。と
「このやろ!自分達だけで楽しい事しやがって!」突然怒鳴り声が響いて来た。声の主は民宿で寝ていたはずのジョーである。「目が覚めてみれば誰もいねえ。風の便りに聞けば祭りに行きチンピラ共と一戦交えていると言うじゃないか!このおれを仲間はずれにしやがって。てめえら東京に帰ったらハチの巣にしてやるからな。覚えてろよ!」
「だ、誰です。あのお人は」
 ジョーの勢いにチンピラ共はタジッと下がった。
「・・私の・・息子だ・・・」
「するってぇと2代目で!」男の言葉に鷲尾がコケた。が、構わず男はジョーのそばに寄って来た。「若親分、今親分さんにお目通り願ってたとこなんですよ」
「わ、わかおやぶん??」
「しかしさすがは東京ですなァ。国際的で結構。近々あっしらが東京に出向く時がありましたらなにとぞよろしくお頼み申しますです」
「???」
 握手を求められ10人の男達にペコペコ頭を下げられ、ジョーは理由(わけ)もわからないまま(あたりまえだが)ポカンとしていた。

「ホォ、あのチンピラ共に東京の暴力団関係に間違われましたか」
「ええ、それも悪い事に組長にされましたよ」
 熱いお茶を飲みながら鷲尾は苦笑した。10年来の付き合いであるこの民宿の主、浜沢も笑っている。鷲尾より5才ばかり上であろうか。所々に白髪が見え、年より老けて見えるようだ。
「鷲尾さんも口をアワアワさせてないで、ちゃんと弁解すればよかったんですよ」
「そンなひまなかったぞ」彼は横にいる榊原を睨んだ。「しかし・・話は変わるが、やはり畳の部屋で風鈴の音を聞きながらお茶を飲むのは最高だね」
「本当ですね」
「こんなボロ部屋でよかったらいつでもどうぞ。わしも話し相手がおらんでちょうどいい]
「長男の・・ええと・・弘君っていいましたっけ。私が最後に来た時はまだ中学生だった・・」
「ああ・・弘は東京へ行ってますよ。この村は若い者にはつまらンらしい・・。あんた方と一緒に来たあのくらいの若者はこの村には幾人もいない・・。ところであのボウヤ・・ええ・・と・・ジョージ君だったかな。2回くらいしか来なかったが─。あの子ですか」
「いえ、その横の青いシャツを着た子ですよ」
「ほお!こりゃ驚いた!あんなにでかくなったとはね!」浜沢は縁側から庭に顔を向け、固まってなにやらやっている彼らの中から青い服のジョーに目をやり思わず声を上げた。「あの小さな子がね・・。年を取るはずだ・・」
「・・・・・」
 鷲尾は何も言わず湯のみを口元に近づけた。
「よおし、今度は線香花火だぞ」そう言うと西崎ははりきって火を点けた。パチパチといういい音が響き火の線が左右に飛んだ。「きれーだな?。やっぱり夏はこれに限る」
「信じられないや。泣く子も黙る捜査課の西崎さんのそんな姿」
「そう言うお前の持っている花火だって古典的だぜ」
 彼の言葉に風間がヘヘと笑った。風間の持っている花火というのは、先っぽに火を点けるとシューと音を立てて火の花が団体で出てくるよくあるものだ。が、近くの小さな雑貨店で仕入れたのだからあまり種類がなかったのだ。あるのは数だけである。見ただけでざっと80本はあるだろう。それを森を含めた7人の男達が取り囲み、我れ先に火を点けて騒いでいるのだ。
 神宮寺やジョーも例外ではない。いやむしろ誰よりもはしゃいでいるようだ。
 一人暮らしの彼らはこうして騒げる機会があまりないのだろう。まとめて騒いでいるようだ。特に花火などあまり見た事のないジョーや一平は見るも無邪気にわめいている。そっちを見ていた方がおもしろいくらいだ。
「ドラゴン?なンだ、これ?」
 ひしめく花火達の中から一平が小さな箱を取り出した。
「ここに火を点けるんだろ。やってやるよ」ジョーがさっそくマッチで火を点けた。「点けにくいな。一平、ちゃんと持ってろよ、─よし、点いたぜ」
 ジョーは一平の横について待った。と
「だめだよ、一平!それ下に置いとかなきゃ─」
「わっ!?」西崎の叫びが、しかしひとあし遅かった。一平が手にしている火の点いた小さな箱の先から幾筋もの火の線が飛び出してきたのだ。「な、なンだ、なンだ!?」
 文字通り一平は飛び上がった。
「放すな、一平!見ろ、きれいじゃないか・・」
 ジョーがうっとりと見つめている。
 その横顔に光が跳ね返り、ホリの深い彼の顔をますます深く見せている。
(・・アサクラ・・)
 そんなジョーの横顔に鷲尾はなにやら寂しさと懐かしさを感じた。
「は、放すなって言ったって、そ、そンなァ?
?ドラゴン?と書かれている花火は地面に置いて火を点ける物で、いわゆる火の噴水である。赤や青の幾筋もの輝きが飛び出すこの花火は見ててとてもきれいだ。皆口元を歪めて眺めている。が、間違ってそれを手に持っている一平にそんな余裕はない。
 もちろん火は手の方には来ないがそれでもあまりいい気持ちはしない。しかしそれもいつまでも続くわけもなく、最初は勢いよく吹き出していた火の噴水もやがて弱くなり消えて行った。
 一平は大きく息をつくと燃えカスを地面に落とした。
「なんだもう終わりか」
 洸がつまンなそうにぼやいた。
「もう1個あるぜ。一平、また持っててくれよ」
「じょ、じょーだんじゃない!もうご免だぜ!」
 一平はあわててその場から退散した。
 いくら驚いたとはいえ、そのあわて方はあまりにも一平らしからなかったので一同は大声で笑い出してしまった。
「そんなに笑うならその打ち上げ花火を持ってやってみたらどうだ」
「こいつか」神宮寺が拾い上げた。「こりゃちょっと危険だよ。持つのはともかく打ち上げる方向を確かめないと─」
 言葉が切れた。一同は彼に注目する。神宮寺はテレたように頭に手をやった。
「─ここ、町中じゃなかったんだよね」
 彼は苦笑して周りをグルリと見回した。高台にあるせいもあるが町中のように家同士くっついて建ってはいない。ちょっとぐらい花火を振り回しても庭の広さが補ってくれる。
「あ、そうだ。おれ、おもしろう花火作って来たんだ」そう言うと彼はポケットから小さな花火を1つ取り出した。どこにでもありそうな花火だ。「見てろよ」 神宮寺は自慢げに火を点けると地面に置いた。初めの10秒ぐらいはなんともなくただパチパチと細い火の粉を飛ばしているだけだったが、そのうちそのねずみ花火に似た花火が少しづつ回り始めた。と、神宮寺が皆の周りからスッと外れた。
 どうしてかな、と思っていると、その花火がパンッと音を立て跳び上がった。ヘェと思っていると次の瞬間、飛び跳ね花火は1番近くにいた風間の足元にまるで磁石に吸い寄せられた鉄のように近寄って行った。
「な、なンだ、なンだ、なンだ!」
 風間はとっさに足を上げた。と、花火は風間の足の下を通り西崎の所に擦り寄って行く。西崎もあわてて飛び退く。と、花火は目標を失ったようにしばらくグルグル回っていたが、やがて森に飛びついた。
「な、なんだね、神宮寺君。この花火は!」
「どうやらチーフが1番放射熱が多いようですね」森の足に当たり、一度は地面に落ちた花火が再び森の足にしがみつこうとしているのを見た神宮寺が感心したように頷いた。「その花火の中に超小型の人体熱線追跡機が埋め込まれているんです。JBの物理実験室の室長に頼まれましてね。折りがあったら試してみてくれないかと─」
「だからといって花火の中に入れる事はないだろおが!わっ!来た!」森が飛び上がって避けた。と、当然ながら花火もついてくる。「な、なンとかしろ、神宮寺君!」
「無理ですよ。チーフの体から皆より強い熱が出ている限り・・・。ま、あと1分くらいで燃え尽きますから」
「ひええ??!」
「おれ達より強い熱量か。年は取ってもチーフまだ若いんだな」
「か、感心しとらんでなンとかせ?!」
 大声でわめき森は花火を引き連れてそのまま石段を駆け下りて行ってしまった。その姿に一同大爆笑である。その笑いの中には庭のすぐそばの座敷にいる鷲尾達のも含まれている.
「神宮寺君は普段は真面目ですが、時としてとんでもない事をやらかしますね」
「だからおもしろいのだよ。─え・・と・・たばこ置いて来ちゃったかな」
「部屋ですか。取ってきましょうか」
 榊原が立ちかけた。
「いや、いい。彼らのを貰おう」鷲尾は指差した2、3個のたばこの箱は縁側に置いてあった。おそらくたばこを吸う西崎や風間のだろう。「おい、1本貰うぞ」
 そう断ると彼は1箱しかないモアを取ってきれいな紅色のライターを鳴らした。
「ぼくもおもしろい花火作って来たんだぜ」洸が言った。「ミスターのももちろんおもしろいけど、ぼくのアイデアだってちょっとしたものさ。これ─あれ?」
 縁側に目をやり洸が首を傾げた。
「おかしいな、確かにここに・・・。ああっ!」見るとモアを口にくわえた鷲尾が今しもそれに火を点けようとしている。「だめェ、長官!点けちゃ─!」
 が、ひとあし遅く火はしっかりと点いてしまった。と、そのとたんポンッと音がしてモアの先から火の花が吹き出した。
「うわっ!」
 そのはずみで鷲尾がひっくり返った。
「あァン!せっかくたばこの中に花火仕込んどいたのに?!」
 洸のわめき声と皆の笑い声、そして石段の方からまだ響いている森の叫び声の中、ここ須崎の民宿村の夜は更けていくのであった。
  
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