コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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9月3日 日曜日


 夏の太陽もわずかに和らいだ9月最初の日曜日。
 神宮寺とジョーは久々に揃って渋谷をブラブラしていた。珍しくチーフが映画の券をくれたのでそれを見た帰りなのだ。
「すごい迫力だったな。向こうはやる事が違うよ」まだ興奮が冷めないのか、ジョーはさっきから一人でしゃべっている。「おれ達ももう少し後に生まれていたら地球だけじゃない宇宙のダブルJになっていたかもしれないな。そしたらコスモガンとかいうのを手にしてよ。こう宇宙船でかっこよく─」
「赤だぜ、ジョー」神宮寺がジョーの腕を引っ張った。「地球の信号を無視するようじゃ宇宙ではとても無理ですな」
「フン、宇宙に信号機が立っているかい。─おっ」ジョーは少し向こうを見るて声を上げた。「見ろよ、神宮寺。ありゃ西崎と風間だぜ」
「えっ、本当だ」
 神宮寺は2人に向かって手を振った。と、彼らも気がついたようだ。
「よう、神宮寺。ジョーも一緒か」神宮寺に負けないくらい立派な体格の西崎が顔中口にして言った。「こんな所で遇うとはおもわなかったなァ」
「まったくだ。2人してどこへ行ってきたんだ」
「どこって─JBの帰りさ」
 西崎よりひと回り小さな風間が言った。
「そうか。おれ達は時間が自由なものだから、つい・・」
「うらやましいよ、ホントに。おれもSメンバーになりたいものだ」
「まっ、ムリだな」2人の間に割り込みジョーが口を出した。「Sメンバーは使命が重いんだ。この前みたいに、すぐ正体を見破られたんじゃとても務まらんよ」
「え?いやあ、こいつはまいったなァ」
 そう言うと風間は頭に手をやり笑い出した。
 西崎も風間もJBの機動捜査員の一員である。数ヶ月前Sメンバーである神宮寺とジョーと手を組んだ事があるのでこんな冗談も通じる。西崎は24才、風間は26才で年も近く、捜査隊員の中では一番2人とも気が合うらしい。
「それよりさあ、せっかく4人が出会ったんだもの。このまま帰る、なンて事はないぜ。いっちょパーっといこうぜ、パーっと!」
「パーっとねえ・・」神宮寺が横目でジョーを見た。こういう事は妙に子どもっぽくなる。いくらでかくてもまだ21、それも無理はないだろう。「パーかどうかわからないが、食事ぐらいしていこうぜ」
「そ?んな事言うなよなァ、神宮寺!ここはいっちょハデにさ、パーっと!」
「それじゃ・・キャバレーにでも行くか?」
 ニヤニヤしながら西崎が言った。
「キャ・・って・・そんな・・」
 今まで威勢がよかったジョーの口が突然怪しくなった。西崎はもちろん風間や神宮寺まで声を押し殺したように笑っている。それを見たジョーは真っ赤になり頭上から湯気を出し思わず怒鳴った。
「あー、いいぜ!キャバレーだろーが、ストリップだろーが行ってやろーじゃないか!」
「バ、バカ!大声でわめくな」
 神宮寺はあわててジョーの口を塞いだ。
「なんだよ!言ったのはそっちじゃないか!」
 ジョーの反撃が始まった。こうなるともう誰にも止められない─と、いつもならなるはずだが、笑いを押し殺しながら言った風間の言葉にジョーの動きがピタッと止まった。
「キャバレーとまではいかないが・・・この近くのバーにウィスキーがキープしてあるんだが」
「よーし!それにしよう!」
 かくて4人の男どもはもうすぐ日の落ちる渋谷の街を揃って歩き始めたのである。

 風間の言うバーは道玄坂を登りさらにその裏道に入った所にある小さな店だった。だが明るく感じの良い店なので神宮寺達はすっかり気に入ってしまたようだ。
 4人は奥のボックス席を占領するとさっそくグラスを呷り始めた。
「それにしてもこんな時間から酒を入れるとは思わなかったなァ」
 神宮寺が言った。
「まったくだ」風間が頷いた。「もっとも家に帰っても1人だから皆と飲んだ方がいいけどね」
「そうか、風間は一人暮らしか─。そうするとおれだけか、家族といるのは─」
「そうだな・・。うらやましいよ、西崎。まっ、天涯孤独もなかなかいいけど─。神宮寺のご両親は確か東京にいるんだろ。どうして一緒に暮さないんだ?」
「ん?ん・・1人の方がいいんだよ─。ジョー、そんなにガブ飲みするなよ」
「うるせェなァ、大丈夫だよォ」
 ジョーはボトルを取るとグラスに注いだ。
「飲めないくせに人一倍飲むんだからなァ。変な奴だ」
「おれの勝手だろ。お前こそ?アミ?のくせしやがって─」
「ナンだ??アミ?って・・」
「・・・?ザル?の事だろ」
 神宮寺の言葉に西崎がコケた。
「そう、そのザルさ!気をつけろよ、2人共。ウカウカしているとこいつにみんな飲まれちまうぞ」
 ジョーは勝手にわめきグラスの中の氷を突っついている。神宮寺は呆れたように肩をすくめた。
「そう言われればそうだな」西崎の言葉に神宮寺は振り向いた。「君の酒の強い事はJBでも有名だもんな。いったい1回にどのくらい飲めるんだ?」
「どのくらいって・・・」神宮寺は思わず口籠った。「おれの場合父さんの影響さ。おじいさんも相当の酒飲みだって聞いてるし・・。遺伝するのかなァ、あれは」
「そうでもないよ」風間がそっとジョーを指差す。「アサクラ氏も相当いける口だったって言うじゃないか。その息子がコレだぜ」
 見るとジョーは真っ赤な顔をしてグラスを握ったまま大きく息をついている。ボトルの中味は半分も減っていない。
「よう、神宮寺」ジョーがニカッと笑った。「なんか熱くなってきたなァ」
「だから言ったんだ。知らないぜ、おれは」
 神宮寺は思わずそっぽを向いた。
「しかしあの名高いジョージ・アサクラがこんなに酒に弱いとは知らなかったなァ」風間が感心(?)したように言った。「ジョー、あそこのカウンターに髪の長い女の子がいるだろ?何人に見える?」
「・・・4人・・」
 ヒャックリをして答えた。
「こりゃ、そーとーなものだ!女の子は2人しかいないんだぞ」
「・・風間・・」神宮寺が小さく口を挟んだ。「・・女の子は1人だぞ」
「えっ!?」風間は変な声を上げると目を見開いて再びカウンターの方を向いた。確かに神宮寺の言葉通りだ。「・・ありゃあ・・」
 目をパチクリする風間に西崎も神宮寺もおかしくなりグラスを握ったまま笑い出してしまった。
「・・あの娘(こ)・・こっち来るぜ」
 その言葉に2人が振り向いた。と、カウンターにいたその髪の長い娘がニッコリしながらこちらに歩いて来る。18、9のスラッとしたミニのよく似合う娘だ。
「Commence-le; et un monsieur(初めまして)」少女が口を開いた。「Merci à partir de maintenant」   
「・・・・・」
 3人は思わず言葉を詰まらせた。それを見ると少女は3人の向こうでポケッとしているジョーに目をやり、親しげに小首を傾げ微笑むとそのまま行ってしまった。
 その後ろ姿を他の3人の男共はポカンとした面持ちで見送った。
「誰だい、あの娘・・」ややして風間が口を開いた。「外人・・いや、ハーフかな」
「いきなりペラペラとしゃべられて、なに言ってるのかわからなかったよ。何語だい、ありゃ」
「フランス語だよ」神宮寺が言った。「“よろしく”とかなんとか言ってたな。いったい誰によろしくなのか・・」
「そういえば彼女、ジョーを知っているみたいだったけど」西崎の言葉に2人はジョーを振り返った。が、肝心のジョーは顔を赤くしたままポケッとしている。「チェ、かわい子ちゃんにウインクされてボ?としてるぜ。おい、ジョー、ジョーったらよ」
「え」西崎に突っつかれてジョーはハッとした。と、3人が自分を見てる。「・・なんだい」
「今のかわい子ちゃん、お前の知り合いか?」
「・・かわい子ちゃん・・?」
「今、お前に微笑んだフランス娘さ」
「・・さあ・・・」
「さあって、お前!」西崎が思わず声を上げた、「今の娘、見なかったのか?」
「うん」
「な・・☆」風間は思わず額に手を当てた。「もったいないぜ、あんな娘をさー」
「そんな事より飲め飲め!早くしないとザルにみんな飲まれちまうぞ!」
「・・人の分までボトル抱えてなに言ってンだか・・」横でわめき上げるジョーを横目で見て神宮寺は肩をすくめた。「しかしあの娘・・気になるなァ・・」
「ヘェ、神宮寺!」西崎が声を上げた。「お前でも女の子を気にする事があるのかい!」
「な、なんだい。どういう意味だよ」
 神宮寺のじと目が西崎を睨んだ。
「だってさ、女なんか興味ないって顔してるし─」
「どの顔が女にキョーミないって顔なんだよ!」
「お前の顔、そのものがだよ!」
「うるせー!」神宮寺と西崎の声に負けない大きな声が響いた。「女なんかの事でわめいてねェでもっと飲め。ほら飲めよ」
「お、おい、ジョー。こいつ酒癖悪いなァ」
 ウイスキーを顔に受け風間がぼやいた。
「こんな時でもなきゃ思いっきり騒げねえぞ!一時(いっとき)の幸せよお!」
「・・・・・」その言葉に神宮寺は思わずグラスを放した。そして息をつくと再びグラスを握り口につけた。「・・確かにジョーの言うとおりかもしれんな・・」
「おれは女の子よりお前の方がいいぞ、神宮寺。安心してぶっ叩ける」
「冗談。おれは女の子の方がまだマシだ。─ん?」何か小さな音に気がつくと神宮寺は内ポケットからその音を発している超小型通信機を取り出した。「はい、神宮寺です。─ええ─わかりました」
「どうしたんだ?」
「チーフからのお呼び出しさ。おい、ジョー。コールだぜ。ジョー!」
「な・・なんらよ・・」
 ジョーはまだポケッとしている。舌がもつれているようだ。
「なんら、じゃない。呼び出しだ。いくぞ!」
 神宮寺は先に立った。
「と、いうわけだからよ。ちょっと待っててね。2、3分で戻るから─」
 そう言うとジョーは、足をテーブルにぶつけドアに肩をぶつけ店から飛び出していった。
 後に残された2人はしばらくポカンとしていたが、やがて顔を見合わせるとフッと息をついた。
「ジョーの奴、飲みすぎてフラフラだけど大丈夫かなァ」
「さあね・・。かえって正常(まとも)になるんじゃないのか」
 西崎はグラスを高く挙げ口元を歪めた。すると風間もグラスを挙げる。カチンというグラスのぶつかりあう良い音がした。
 ボトルの中味は半分になっていた。


                                完


                                           
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