コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Posted by  朝倉 淳   3 comments   0 trackback

聖夜幻話

thumb-jcast-83012-economy.jpg  ヒュッテが囲むイベント広場の真ん中に立つクリスマスツリー。
 今は昼間だから点灯はされていない。どうせなら夜に来たかったな、と思った。
 だが店舗代わりのヒュッテからはうまそうな匂いが漂ってくる。
 ああ、あの香りはシュニッツェルだ。牛肉のグーラッシュの匂いも懐かしい。日本でも最近見るようになってきたシュトーレンもある。
 ついそちらに足が向きそうになったが・・・いかん、おれは今仕事中だ。あ、これは・・・名前は忘れたが、母得意のアーモンド入りの焼き菓子だ。これが入ったシュトーレンが好きだったなあ。
「よだれが出ているぞ、ジョー」
 相棒の言葉に思わず口元を押さえた。
「ンなわけねーだろ」口元に持って行った手をわずかに下げ時計を見る。タイムリミットまであと5分を切った。「こんな場所に爆弾を仕掛けるなんて。奴らなにを考えているんだ」
「うん・・・。せっかくのクリスマスマーケットなのにな」
 港町で開かれているドイツのクリスマスマーケット。そこに爆弾を仕掛けたと県警に予告が入ったのは3時間前。その首謀者が国際警察が追っていた男だったのでJBにも情報が行き、ダブルJの出動となったのだ。
 本当なら今頃はもう入場客でいっぱいになっているイベント広場。だが動いているのは2人と警官達、爆発物処理班だけだ。
 店を開けたばかりだったが、急な避難にヒュッテには先程まで調理していたクリスマスの料理がそのまま残されていた。
「見つからねえな」
 探知機も役には立たない。最近こういう爆弾が増えてきて面倒だ。
 神宮寺が一番端のヒュッテの裏側に回ったのでジョーは店内に入ってみた。マンデルの焼き菓子の良い匂いがする。思わず手に取ろうとし、やめた。
 母はこのマンデルがたっぷり入ったケーキが得意だった。
(なんで今日はこんなに思い出すんだろう)
 懐かしいドイツ菓子の香りに包まれているせいか。
 いや・・亡き人を思い出す時はその人が自分のそばに来ているからだ、と聞いた事がある。じゃあ、今・・・。
(だったら爆弾の在り処を教えてくれねえかな)
 ふと店の奥を覗くと不釣り合いな金属製の箱が置いてあった。
 ジョーのセンサーが鳴った。確かめようと近づく。

─Nein─

「え?」
 誰かが止めた。向こうへ行くなと言っている。だが、不審物を見逃すわけにはいかない。
 神宮寺を呼ぼうとしたその瞬間、轟音と共に激しい衝撃がジョーを襲った。顔や体を打ちつける激しい爆風にそのまま床に叩きつけられ・・・いや・・・立っていた・・・その場に。
 あんな至近距離で爆風を浴びたのに彼の体はひとつの傷も負ってはいない。だが眼をやられたらしい。昼間なのに真っ暗で何も見えないのだ。と、目の前にバッ!と光が現われた。
 クリスマスツリーだ。

─ジョージ─

 輝くツリーの向こうから細いシルエットが近づいて来る。
「Mama・・・」
 なぜここに?いや、そんなわけがない。母はとうに・・・。
─マンデル入りのシュトーレンよ。がちょうのローストもうまく出来たわ─
 そう言ってテーブルに並べられたそれらはジョージが幼い頃から知っている母の手料理。
─ジョージ─
 振り向くと、そこには樅の木を床に下ろし微笑む父の姿があった。
─どうだ?ちょっと小振りだがいい形だろう。飾り付けをしよう─
 暖炉の前に置かれた樅の木にグラスボールやブーツ、サンタのオーナメントを飾り付けて行く。
 料理の手を休め母も加わった。小さなリースは母の手作りだ。
─よし、最後はこれだ─
 父はジョージをヒョイっと持ち上げた。いつのまにかジョージは手に星の飾りを持っていた。それを樅の木の1番上に飾る。
 光を受けキラキラと輝く金色の星。こんなに近くで見たのは久しぶりだ。
 故国ドイツでのクリスマス。普段はパリにいる父だが、この時だけはハンブルクに帰って来た。ジョージは1日中、父にくっついていたっけ。
 床に下ろされたジョージが、だが再び父にしがみついた。
「ぼくも・・パパ・・ぼくも・・・」
─・・・まだ早いよ、ジョージ。お前にはやらなければならない事がたくさんある─
 父はいつものようにジョージの髪をクシャクシャと掻きまわした。と、ふわっと後ろから抱きしめられた。
 振り返ると母は自分がしていたネックレスを外し、そっとジョージの首に掛けた。
─天使様の翼よ。私達はいつもあなたを見守っているわ─
「ぼくが2人の所に行く時には迎えに来てくれる?」
─ええ、もちろん─
─だからそれまでは自分の目の前にある道を信じ、しっかりと進むんだ。さあ、お祈りを・・・ お前の願いはなんだい?─
「願い・・・」ジョージはちょっと小首を傾げたが、「みんなが・・世界中のみんなが楽しいクリスマスを迎えられるように・・・家族で」
─そうだね─
 父と母はちょっと寂しそうに微笑むとジョージの頬にキスをした。そして

「ジョー。おい、ジョー」
「え?」
「なにをボサッとしている。引き上げるぞ」
「引き上げる?なんで?」
「今の連絡を聞いていなかったのか?爆弾が発見され無事処理されたんだ。もうすぐここは開放されて入場者でいっぱいになるぞ」
 ジョーは神宮寺と共にマンデルのヒュッテの前に立っていた。どこにも、彼の体にも爆弾の痕はない。
(こんな時に夢でも見ていたのか)
 ふと胸に違和感を感じた。金のタグネックレスの他にもうひとつ・・・。
「・・・天使の翼」
 広げられた片翼。ふと指を添えた。なぜか懐かしいぬくもりを感じた。

 だが、その翌日─銀色に光っていたそれはジョーの胸から消えていた。


                                           おわり


スポンサーサイト

Comment

淳 says... "覚書き"
ダブルJでは季節的なお話はあまりない。
楽しい行事があっても彼らがそれに参加できるのは稀なので可愛そうかな、と思って敢えて書かなかった。
が、今回ドイツのクリスマスマーケットが横浜で開かれると知り、ふとこんな話を思いついてしまった。

実はこのマーケットは去年までうちの近くの大きな市で開催されていたのだ。3回(3年)ほど続いただろうか。
今年は広告を見ないなーと思っていたら、まさか横浜に行ってしまったとは。
淳の故郷で事件起こしてごめんねー。でも知っている場所だから書きやすいのよ。

Gフィクではクリスマスをさせてあげられなかったジョーに代わって、せめてこちらは─。
2010.12.24 17:37 | URL | #vDtZmC8A [edit]
響子 says... "ほんの一瞬だったの?"
わ~い。待ってました。ダブルJのSSv-10
一瞬でもママとパパの三人家族でクリスマスができてよかったね、ジョー。
天使の翼はジョーの胸から消えてしまったけど、きっとずっと心の中に残るよね。
メリークリスマス、ジョー。
2010.12.25 13:53 | URL | #/5lgbLzc [edit]
淳 says... "響子さん"
コメントありがとうございます。

クリスマスの話は書くつもりなかったけど、響子さんがツイッターでフォローされている横浜の新聞の記事にこのマーケットの事が出ていて、見ているうちになんとな~く思いついて・・。
ありがちな話だけど、ジョーには1番のプレゼントになったと思います。

>ずっと心の中に残るよね
そうなんです。そのイメージなんです。
「実体」はなくなったけど(・・残ってるのもおかしいのだが)、そのネックレスはジョーの胸に奥にスーと入り込んだイメージ(・・ちょっと怖い表現?)なんです。
わかっていただけて嬉しいですv-290
2010.12.25 17:16 | URL | #bCm9No1s [edit]

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://junstory.blog63.fc2.com/tb.php/181-f686911b
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。