コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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大地と海のプレリュード 4

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「二手に分かれるぞ」リーダーのサムが言った。「ドリューとマックジーは向こうのビルを、おれとサントスはこのビルを調べる」
“Yes sir”とドリューとマックジーは駆けて行った。
「サントス!」
「来たか、青い眼のぼうや。ミスター・ジングージはどうした?」
「ぼうやじゃねえ」ジョーがサントスを睨み上げた。ジョーより20センチは高いだろう。いつもと勝手が違いムカついたので質問は無視した。「協力します、シュネバー隊長」
「サムでいいよ、ジョージ」と、そこへ神宮寺達3人も到着する。「ではジングーとアレンは向こうのビルを、ジョージとリックはこちらのビルを頼む。ライアン達は5人。全員が銃を持っている」
 ラジャ!と、神宮寺とアレンは隣接している─といっても廃墟同然でお互いのビルが行き来できるくらい大きな穴があちこちに開いているのだが─ビルに向かう。
 こちらのビルはサムとサントスが建物奥の階段から、ジョーとリックは手前のやはりボロボロに半分崩れた階段を慎重に上がっていく。
「リック、ライアンって奴は何をやったんだ?」
「銃の密売だ。それも毎回毎回違う手を使って綿密な計画を立て取引相手に渡して─。なかなか尻尾を掴めなくて。でも4日程前にやっと現場を押さえたんだが逃げられちまって、行方を追っていたんだ」2階になるのだろうか。元は何が保管されていた倉庫なのかさっぱりわからないくらい荒れていた。「本当はニューヨーク市警の担当だったんだけど奴らのバックが大物でね。で、うちの出番となったんだが」
「つまり市警の尻ぬぐいってやつか」フンと鼻を鳴らした。「よくある事だな」
「おれのじいさんがドイツ人だって言っただろ?国際警察のハンブルク支部にいたんだ」え、とジョーがリックを見た。「残念ながら君のパパとは入れ違いに退官したけど。でも初のSメンバーが組まれると聞いたじいさんはこう言ったそうだ」
 2階の奥まで来た。これ以上は神宮寺達のいる隣のビルに入ってしまう。2人はもう1本の廊下に移り引き返す事にした。
「“これからの犯罪組織は巨大化し様々な手を使って事を成し遂げようとするだろう。ますます凶悪化して、Sメンバーの誕生がそれを物語っている。対抗するにはこちらも世界規模の警察組織が必要になるだろう。その先導となるのが国際警察だ”って」
「・・・・・」
 リックのじいさんの言うとおりだ。以前はSメンバーだけで対処できたが、ここ何年かは犯罪組織の巨大化、多様化でバックアップチームが必要になる事が多い。ダブルJ自身、西崎率いるチーム1が事実上バックアップチームだ。
 だがもし大勢の奴らとチームを組んでやるとしたら、おれは─。
「ジョー」声を落としリックが呼んだ。前方に人影が走った。体型からしてサントスではない。「行くぞ」
 リックの後ろにジョーが続く。
 先日まで奴らを追っていたリックは当然ライアン達の顔を知っているだろう。ここは彼が先行した方がよい。
 まさかこれテストじゃねーよな・・とジョーがチラッと思った。
 と、バンッ!と銃声が響いた。2人が左右に飛び退く。
 ジョーの体が壁に当たりバラバラと壁の欠片が降ってきた。余計な事を考えてる場合じゃねえや、と内ポケットからウッズマンを取り出す。と、
「ジョー、おれはこっちから回る。君は向こうの柱の陰からあっちへ」
 リックの指示にジョーが頷く。
 神宮寺以外に指示された事はあまりないのだが、ここはひとつリックのお手並みも見てやろうと思った。
 リックは柱や瓦礫を使いながら銃声のした方へと進んでいく。ジョーはそのリックを視界に入れ、自分も慎重に進む。相手の姿はまだ見えない。
 と、突然リックが走り出した。ライアンを視確したのだろうか。ジョーもリックの平行線を行く。
 銃声がしリックが体を下げた。そのままの姿勢で奥へと進む。が、今まで一定の間をおいて聞こえてきた銃声がピタリとやんだ。だがリックには相手の位置がわかっているらしい。確信を持った足取りで進んでいく。
 一瞬空気がピンッと張り詰めた。
「行くな、リック!」ジョーのセンサーが鳴った。「戻れ!」
 次の瞬間、轟音と振動とがビル全体を激しく揺らした。飛んできた爆風でリックが押し倒された。
「リック!」
「大丈夫・・・ちょっとコケた」ニッと口元を歪める。怪我はないようだ。と、リックの瞳がチラッと動いた。人影が2つ奥へと走っていくのが見えた。「奴ら隣のビルに移るぞ」
「ヤロウ!」
 ジョーが走り出した。
 視界の片隅にサムとサントスが駆けつけてくるのが見えたからだ。彼らにリックを任せようと思った。
 
 奴らは、ほとんど棟続きになっている隣のビルへと入って行った。目の前にいるのは3人。後の2人はこっちのビルにいるという事か。と、奴らの1人が立ち止りジョーに向かって発砲した。
 ジョーは立ったままの姿勢を変えず、右手で持ったウッズマンをスッと上げ、男に向かって撃った。足を撃たれ男がひっくり返った。
「見事だな、ぼうや」
 その言葉と共にジョーの横をスッと走り抜けたサントスが倒れている男の横っ面を蹴飛ばして気絶させた。
「乱暴な奴だ」ジョーが舌を打った。「ひとつ間違えば死んじまうぞ。で、リックは?」
「奴は大丈夫だ。サムがついてる」
 ジョーの方に体を向けニッと笑う。しかし図体の割にあまり威圧感を感じないのは、笑うと人懐っこいその表情のせいか。それよりジョーの圧倒感の方がサントスを押し包む。
 彼の好みは神宮寺のような一見たおやかで静かな・・・しかしいざという時は自分(サントス)をも倒すだろう力強さを秘めた男だが、目の前のきつい眼を仲間である自分にも遠慮せず向けてくるこーいう男もいいかも、と思ってしまった。
「─あまりおれのそばにくっつくな」
 サントスの想いがわかったのか,、ジョーがいやそうな顔を遠慮せず向けてきた。そして踵を返し、逃げた2人の後を追う。
「?ぼうや?なのか?男?なのか、わからン奴だな」サントスは楽しそうに笑いジョーの後についた。「おれ達は一旦上階まで行って1階づつ降りてきた。途中誰もいなかったぜ」
 やはり後の2人もこちらのビルにいるのだろう。
 ジョーが撃った男はリーダーのライアンではなかった。彼を含め4人が潜んでいるはずだ。と、2人の目の前に男が1人飛び出してきた。
「ドリュー!」
「伏せろ、サントス!」その言葉にサントスとジョーは素早く床に伏せた。バムッ!という破裂音から逃れるようにドリューが2人のそばに転がってきた。「奴ら爆発物を所持していて近づけない。マックジーが負傷した」
 口早に伝え、また来た方へと走って行った。サントスもジョーも体を起こしドリューに続く。銃声が響きドリューが廊下の隅に転がった。
 ジョーが両手でウッズマンをかまえ視認した男に銃口を向けた。が
「こんのやろ?!」
 サントスが唸り声を上げた。ジョーの視界がサントスの背中に覆われる。
「どけ!」銃口を上げたままジョーが怒鳴った。「邪魔だ!」
「うるせ?!これはおれのヤマだあ!」
 サントスはS&Wモデル845─45ACP弾を使用する大型ピストルだ─を大きな手でガチッとかまえ発砲した。廊下の奥の1人に命中し、だがもう1人が何か細長い物をサントスに投げつけた。
「ジョー!」
 サントスがジョーに飛びつき床に押し倒した。後頭部を打ちジョーは一瞬何も見えなくなった。自分の顔の上にサントスの手が乗っていたが爆音と共にそれがズッと滑って顔の上から外れた。
「サントス!」
 ジョーは体を返し腹這いになると、とっさにその手を掴んだ。状況などわからない。まったく反射的な行動だったが、サントスの手を掴んだ自分の左腕にズン!と衝撃を感じやっと状況を把握した。
 男が投げた爆発物からジョーを庇ったサントスは、その爆発でボロボロだった床が崩壊しそこに体が滑り落ちてしまったのだ。
 そのサントスを支えているのがジョーの左腕だ。
 2階とはいえ元は倉庫なので高さは普通の建物の4階はあるだろう。屈強な体のサントスだが、この高さから落ちれば大怪我は免れない。
「放せ、ジョー!君まで落ちる!」
 ピシピシと床の破片がサントスの顔に当たる。
「─るせ・・・黙ってろ・・」
 歯を食いしばりジョーが唸る。
 しかし彼が自分の倍近い体重のサントスを引き上げるのは無理だ。それどころか現状維持も時間の問題だ。
 左肩がグキッと悲鳴を上げ、一瞬気が遠くなった。と
「サントス!」
「ジョー、もう少し頑張れ!」
 階下から神宮寺とアレンの声がした。ジョーが目を凝らすとサントスの落下地点に何やら丸い物を持ってきて積み重ねている。
「く・・」
 しかしジョーにはそれを確認する余裕はなかった。左腕の感覚がなくなってきた。自分はまだサントスの手を掴んでいるのだろうか。それとも─。
「サントス!この上に落ちろ!ジョー!手を離せ!」
 確かに神宮寺の声だ。しかし本当に離していいのだろうか。いやもうすでに離れているのかも─。
「あっ!」
 2人分の体重の掛かっていた床が崩れた。サントスの手がズッと滑り抜けた。かなりのスピードでサントスが落下していき─しかしボムッと跳ねた。そして仰向けになったその体の上にジョーが落ち、ボムボムッと2人共揃ってまた跳ねた。
「うわ?、びっくりした!」サントスが大声を出した。「だ、大丈夫か、ジョー!」
「大丈夫じゃねえ。腕が抜けるかと思ったぜ」
 ダラリと下がったままの左腕を見て─
「それはすまなかったな」
 と、ヒョイとジョーの体を抱き上げた。
「な、なにをする!」いわゆるお姫様だっこをされジョーがわめいた。「放せ!」
「その腕じゃここから下りづらいだろ。一応命の恩人に敬意を払ってだな─」
「いいから下ろせ!」再びわめくジョーに、そーか?とサントスが両手を引いた。ジョーの体が落下し─またボムッと跳ねた。「このやろ?。なにしやがる!」
 立ち上がろうとして─沈んだ。
「文句は後だ、ジョー」右腕を取り神宮寺が引っ張り上げてくれた。「先に肩を固定しろ」
「・・・・・」
 ジョーは痛む左肩に手をやった。ヘタをすると脱臼しているかもしれない。
 ふと自分達が落ちた所を見た。ウレタンが詰まった袋が何十と置いてあった。元々これが保管されていたのかそれとも引き揚げる時にゴミとして残していったのか─。どっちにしてもラッキーだった。
「神宮寺、ライアン達は?こっちに逃げてきた奴がいるんだ」
「こっちの2人は捕まえたよ。後は」と、上を指差す。サムとリック、ドリューの顔が見えた。残る男達を押さえているのだろう。手を貸すためにサントスが階段を上がっていく。「大丈夫か?」
「少しダイエットすればいいんだ」ジョーがサントスを睨む。あの高さから落ちたダメージはなさそうだ。「Sメンバーにケガさせるなんて、ふてェヤロウだ。チーフから文句入れてやろーか」
「こんな格好悪い事を報告するのか?」
「・・・・・」
 確かに経過はともかく結果は格好悪い。それはイヤだ。
 ジョーは黙るしかなかった。

「No、broblem。脱臼はしていない。ちょっと骨がずれているだけだ」ニューヨーク支部に戻り医療部で診てもらったジョーは医師の言葉にホッと息をついた。「あのサントスをぶら下げたんだって?無茶をするね。ちょっとぐらい高い所から放っぽってもあの男は大丈夫だよ」
 そうかも、と思った。
「ちょっと痛いよ」医師がジョーの返事を待たず、グッと力を入れた。左肩を走る激痛にジョーは息を詰めたが声は出さなかった。「我慢強いね。サントスにこれをやると悲鳴を上げるんだ」
 医師の目が笑った。よし、勝ったとヘンな所でジョーが意気込む。
「大丈夫か、ジョー」診察室から出るとサントスがいた。「痛かったろ。あの医者は乱暴でいかん」
「あんた、あれをすると悲鳴を上げるんだって?」
「なっ─。あのいしゃ??!」
 怒るサントスを躱しジョーは7階の捜査課室へ上がった。
「ジョー」
「腕、大丈夫か?」
 アレンやリックが声を掛けてきた。ジョーが頷き
「なにしてるんだ?」
 と、パソコンのキーボードを叩く神宮寺の横からモニタを覗き込んだ。
「デイトナのサーキットとセスナの予定変更だ。出発は明後日になった」
「そうか・・・」重症ではないが昨日の今日では辛いだろう。リックも爆風による小さな傷を負っている。「勝手な事してすまない。お前の言うとおりサム達に任せればよかった」
「お前・・・」神宮寺が振り返りジョーを見る。「熱、あるのか?」
「素直に謝ってんだから、素直に聞け!」
 どこが素直なのかわからないがジョーにしてみればこれが精一杯なのだろう。
 神宮寺がふと顔を緩めるとちょっと赤くなったジョーが乱暴にソファに腰を下ろす。が、うっと息を詰め肩を押さえた。
「まだ痛ェじゃねーか。あのヤブめ」
「お前、先にホテルに戻れ。明日は1日オフを貰ってやったから完璧に治せよ」
「ん?」と言われてもホテルに戻ってもやる事はないし─と、ちょうどそこへサントスが戻ってきた。「サントス、ちょっとつき合え」
 クッとアゴを繰り再び廊下へと出した。
「デートのお誘いか?嬉しいがまだ勤務中だ」
「おれはお役御免なんだ」
 と勝手な事を言い、廊下の一角にある休憩コーナーに入った。
「こ・・ここで?」
「なにがだっ!」ジョーは怒鳴ったが一息ついてソファに座った。サントスも向かい側に腰を下ろす。「おとといの夜、テッドって奴に遇っただろ。あいつの親父って何してるんだ?」
「は?テッド?あーいうのがタイプか?」
「テッドに興味はない。あるのは奴の親父だ。大物だって言ってたな」
「確かにブラウンの髪のナイスミドルだがあれはやめた方がいい。表向き貿易商で通っているが裏でアメリカンマフィアと繋がっている」ジョーの頬がピクリと動いた。が、サントスは気がつかない。「一族には政治家も多数いておれ達もなかなか手が出せない」
「やはり武器や麻薬を扱ってるのか」
「そうだ。だがその親父はまだいい。売る相手をちゃんと見ている─と言うのもおかしいな」
 サントスが眉を八の字に曲げ苦笑する。
「だがなテッドの奴は小遣い稼ぎに親父の扱っている商品をくすねて売ってやがる。それも金さえ出せば相手が10(トウ)の子どもでも銃やドラッグを渡す。以前15、6のガキに手榴弾を売ってな。学校に持って行って暴発して生徒が何人も死んだ」サントスが心底いやそうな、激しい表情で言った。「そんな事、1度や2度ではない」
「そんな奴のボディガードをしているのか・・」
「─あの黒髪の奴か?」サントスが訊きジョーが頷く。「ま、仕事だから仕方ないさ。その黒髪の奴があいつらの手伝いをしなければ大丈夫だろう。ボディガードは違法じゃない」
 たばこを取り出しジョーに差し出す。1本抜き取った。
「だがもし取引に立ち会ったりすると─やばいぞ」
「・・・・・」
 火を貰い肺に入れないようにしてすぐに煙を吐き出す。
 灰色がかった青い瞳に紫煙が重なり、ぼおっと遠くを見つめるジョーの横顔に神秘的な影を落とす。
「あ、あの、ジョー」その横顔をチラッと見てサントスが口を開いた。「明日オフなら今夜飲まないか?もちろんバートンやアレン達も誘って─」
「やめとくよ、神宮寺に怒られそうだし。飲むなら奴も誘ってやってくれ」
「いいのか?今夜帰ってこないかもしれないぜ、相棒」
「やってみろよ」ジョーが灰皿に煙草を押し付けて立ち上がった。「あんなの手に負えるんならな」
 ニッと口元を歪め、Thankと休憩室を出て行った。
「・・ヘタしたら、おれもあの暴力医者の世話になるかもしれないって事か」
 が、いいチャンスなので声を掛けてみようと思い、ウキウキと捜査課室に戻った。


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Comment

淳 says... "覚書き"
作者の趣味(?)でジョーとサントスを絡ませてみる。
なかなかおもしろいわ、この2人。
サントスは使いようによっては、いいスパイスになるかも。
しかし大概にしないと神宮寺に叱られそうだ。
2011.01.29 18:18 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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