コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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光と影のラプソディ 2

2.jpg 

「こんな所につき合わせて悪いな、マルティーノ」金髪の青年が言った。「あっちは年寄りばかりだからな。たまには目の届かない所で遊びたいよ」
「おれはかまわないけど。そのうち君もあっちに仲間入りするんだぜ。そしたら秘書如きのおれには近寄れなくなるなァ、御曹司」
 やめてくれ~と、金髪の青年が苦笑いした。
 マルティーノと呼ばれた、ダークブラウンの髪の男はマルティーノ・スティウム─ジョーの祖父ロレンツォ・グランディーテの秘書で将来はトーニの片腕となる事を嘱望されたあのマルティーノだった。

「うわ~」目の前のチップの山にジョーは声を上げた。「なんでお前の所だけこんなにチップあるの?」
「ジョー」コーナー(9倍)にチップを置き神宮寺が振り向いた。「少しは借金減ったか?」
「スロットマシンがおれのチップ飲みこんだまま吐かねえんだ。神宮寺、お得意の〝叩き〝で吐かせてくれよ」神宮寺がヒョイと肩をすくめ、前を向くとチップが増えていた。と、彼の隣の席が空きジョーが座った。「スロットよりこっちの方がおれには合ってるかもな」
「ルーレットは記憶と読みと確率の勝負だ。お前には無理だ」
 ぬかしてろっ、とジョーがポケットから札を出しディーラーにチップと換えてもらう。ふと見ると向こう側にサントスが立っていた。早々に諦めたらしい。
 ジョーはニッと笑っていきなりコーナーに置いた。
「お前なあ・・」
「うるせえ、こーいうのは最初が肝心なんだ」
「使い方間違ってるぞ」
 だがこれ以上言ってもジョーが聞かない事もわかっている。神宮寺もまたコーナーにチップを重ねた。
 と、そんな2人を見ていたサントスの肩を男が叩いた。
「うおっ、ドウラじゃねえか。こんな所で何してる?仕事か?」
「よしてくれ、サントス。もう足を洗ったんだぜ」ドウラと呼ばれた、サントスに負けないくらい大きな体の男が苦笑いする。「あんたは?ESUやめたんだってな。今度はどこに行ったんだ?」
「ESUより強力な所かな。おれは優秀だからよ、あっちこっちから声が掛かるんだ」
「ふ~ん」ドウラはチラッとルーレットテーブルを見た。「あのぼうやと細っこいのが今度の仲間かい?あまり強そうじゃねーな」
 そーかい?とサントスがガハガハ笑う。その細っこいのに床に転がされたと話してもおそらく信じないだろう。
「あれはちょっと狙っている奴なんだ。ぼうやが邪魔だが」
「相変わらずだなあ」ドウラがニヤニヤ笑う。「あんたが許すなら、あのぼうやを少し痛めつけてもいいぜ。ベガスから追い出せばいいんだろ」
 それもいいな、とサントスは思った。が、そのぼうやが神宮寺と同じSメンバーなのを思い出す。いくら昔手を焼かしたドウラでもジョーに手を出させるのは気の毒だ。
「で、本当は何してる?お前がここにいるって事は何かやばい事でも起こるのか」
「仕事だがやばい事じゃない。だけど─」
 2人は自然と声をひそめルーレットテーブルから離れた。
「昔馴染みの顔をいくつか見た。皆おとなしく遊んでいたがな」ふと時計を見て、「いけね、仕事の途中だったんだ。じゃあなサントス。頑張れよ」
 と、手を振り行ってしまった。しかしサントスはしばらくその場に突っ立っていた。
「チェ~、失敗したぜ。なんであそこで赤の21なんだよ」ジョーの声に振り向く。「聞いてくれよ、サントス。ディーラーがおれのチップを全部持って行っちまったんだ」
「お前がストレート(36倍)とストリート(12倍)を間違えるからだ」呆れ顔の神宮寺が続く。「一点賭けに全チップを置くなんて、無謀を通り越して全面的に大バカだ」
「だからストリートだと思って─」よくわからない展開だが、要するにジョーは全チップを摩ってしまったようだ。「あ~あ、あそこでストレートだったら借金全部返せたのにな~。お前少しは稼いだんだろ、神宮寺。それでスロットやろうぜ」
「やだ」口元をへの字に曲げ神宮寺が睨む。が「今の男、知り合いか?」
「え?ああ、ドウラか」ルーレットをやりながら見ていたのだろうか。「ESU時代に散々やり合った奴でね。元はアメリカンマフィアの一員だ。今はもう組織から抜けて便利屋をやっている」
「あんたが足を洗わせたのか?」まーね、と頷くサントスを見ながらジョーが上着やズボンのポケットを探っている。「チェ、Penny(¢1)もNickel(¢5)もねえぜ」
「もうやめておけ、ジョー」
 ATMに向かおうとするジョーを神宮寺が止めた。
「だけどなんか悔しいよな。1回くらい大当たりを出したいぜ」
「なかなか出ないから大当たりって言うんだぞ」
「稼いだ奴は口出すんじゃねーよっ。─あ、失礼」再び振り向き、だがその時後ろにいた人に腕が当たってしまった。ジョーが目を向ける。「・・マルティーノ?」
「Joe!In tale luogo。Come per il signore。(ジョー!こんな所で。ミスターも)」
 金髪の青年と一緒のマルティーノが驚いて声を上げた。続いて何か言おうとしたが神宮寺も一緒だという事で、ここにジョーがいる理由を悟ったらしく話をしていいものかと迷っている。
「仕事じゃない、休暇だ」本当は休暇かどうかも怪しいのだが、とりあえずマルティーノを安心させてやる。「あんたこそこんな所で何してるんだ?1人か?」
「取引先のパーティがベラッジオであるので、シニョーレの代理として来ました。今回は私1人です」ベラッジオというのはMGMより北に位置する超豪華ホテルだ。その前の人工湖での噴水ショーが有名である。「マーキンスという大手企業です」
「相変わらず忙しいんだな」
 と、誰かがジョーの肩をドンッと突いた。見ると大柄の男が3人、ジョーを見降ろしていた。ジョーの瞳に剣が点り男達に向ける。
「おれ達にもぶつかったんだぜ。謝れよ」
 茶髪の男が言った。
「そうか?おれの感触では当たったのは1人だけだがね」
「ぶつかったんだよ!アザになってるぜ」
「治療費くらい出せよ!」
「医者に行くならつきあってやるぜ」
 ジョーはクルッと踵を返すとカジノの出口へと向かう。その彼を囲むように3人の男達もついて行った。マルティーノが後を追おうとする。が
「大丈夫ですよ、マルティーノ」神宮寺だ。そのすぐ後ろにサントスもいる。「この中で騒ぎを起こさないように出ただけです。すぐ戻ってきますよ」
「こーいう事は慣れてるし、好きそーだもんな~」ガハガハとサントスが笑う。そんな彼をマルティーノがじっと見ている。「・・・なんだ?」
 いえ、とマルティーノ視線を外す。その先からジョーが戻ってきた。
「ジョー」
「早かったな」
「逃げてきたんじゃないだろーな、ぼうや」
「逃げたのは向こうだ、1人伸したら早々にずらかりやがった」
 なんとなく物足りなさそうに言うジョーをマルティーノは相変わらずか、と見つめる。もしかしたら自分が仕えていたかもしれないブルーグレイの瞳の青年─。トーニとは正反対の彼を自分が制御できる自信はない。
「余計な時間を使わせて悪かったな、マルティーノ。連れが待ってるぜ」
「彼は先程話したマーキンスの跡取りです。イタリア留学中に知り合いました」
「ふうん」ジョーは気がなさそうに金髪の男に目を向けた。「じゃあな」
 と、行こうとするのを
「ジョー」と、呼びかけた。ジョーが足を止める。が、マルティーノが何か言いにくそうにしているので そばに寄ってやった。「あの・・余計な事ですが、彼(サントス)は・・その・・危ないですよ」
「へえ、人を見る目は確かだな。同類か?」ジョーの言葉にマルティーノは思いっきり眉をしかめ  ジョーを睨んだ。「大丈夫、奴の狙いは神宮寺だ。おれじゃない」
「・・・・・」
 それならいいです、とも言えない。それで納得していいのだろうか。
 マルティーノが黙っているうちにジョーは手を振りながら神宮寺とサントスの元に走って行ってしまった。
「やはり捕まえるのは難しいな」
 金髪の男の方へ向いながらマルティーノは思った。

 夕食はサントスの案内でMGMのレイフォレスト・カフェに行った。
 ホテルだけ指定されラスベガスに行けと言われたダブルJにラスベガスの予備知識はなく、また食事などにそう拘らない2人は素直にサントスに付いて行った。
 店内に入るや否や
「うわ~、ジャングルかよ、ここ」
 周りを見回しジョーが声を上げた。
 店内は熱帯雨林のジャングルのようなディスプレイで動物達の鳴き声が響き、時折スコールがやって来ては霧が噴出したり動物のジオラマが動き出したりする楽しいレストランだ。メニューもバー ガーやパスタ、シーフードと種類も豊富で、しかしやはり量が多い。
「うまいけど、そろそろ杉本さんのサバのみそ煮が食いたくなったな」
 妙に日本人っぽい事を言うジョーに、だが神宮寺も深く頷いた。
 ジョーが地球を背負うアトラス像を撮り、また洸にメールしている。
「しかし、おれ達しっかり観光客してるな」
 取り分けたパスタを食べ神宮寺が言った。
「いーんじゃねーの?どうせ今のうちだけだろうぜ」JBの指令で来ている以上遊んで、はい終わりという事はないだろう。それなら楽しめるうちに楽しんでおいた方がいい。「それにしてもヤロウ3人でメシ食うのってむなしいよな。なんで女の子寄って来ないんだ?」
「なんでおれを見るんだ?」ジロリとジョーに睨まれサントスが眉をしかめた。「よかったらベガス名物のセクシーショーのチケットを手配してやるぜ。おれちょっと顔利くんだ」
「普通の女の子でいい」サントスの言う〝セクシー〝はどっちだ?と思った。自分(ジョー)のカンが当たっていたら取り返しのつかない事になる。「あんたがいるから女の子が怖がって寄ってこないんだ」
「おれ1人のせいにするなよ。君だって顔怖いぜ。それにジングージを魔手から守らなくては」
「魔手はあんただ」
「なんだと!このウマ!」
「へっ!悔しかったらおれの手綱でも握っておとなしくさせてみろ!」
「君に乗りたくはない!乗るならぜひ─」
お・ま・え・ら・・・
 神宮寺の目が細くなり体がプルプルと震えている。これは─
「や、やば・・・。黙れ、サントス。こいつがキレたらこのホテルごと吹っ飛ぶぞ」
 大げさなジョーの言葉を、だがサントスは納得して口を閉じた。一応噴火は免れたようだ。
 だがサントスも2人にラスベガスを楽しんでもらいたいというのは本心で、そのためにチケットの入手が難しいショーのひとつ、MGMで行われるシルク・ドウ・ソレイユのショー〝KA(カー)〝の席を  3人分取っていたのだ。
 これはアクロバティックな演技や武術、花火、さらにマルチメディアを屈指して繰り広げられる冒険ショーで、日本ではサルティンバンコやキダムで知られているパフォーマーだ。ラスベガスに着いたその日にこのチケットが取れるのは皆無に等しい。顔が利くと言うサントスの言葉はうそではないようだ。
 ショーを楽しみその後バーで少し飲み、3人が部屋に戻ったのは夜半過ぎだった。
 JBからの連絡は入っていなかった。


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