コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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光と影のラプソディ 4

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   1800人が立食パーティできるフロアなんてどのくらい広いのだろうと思ったが、実際それだけの人がひと部屋に集まっているとあまり広く感じないものだ。
 さらに集う人々がセコセコ動き回っているのならともかく、皆着飾って優雅にゆっくりと動いている。室内の豪華な飾り付けや大きなシャンデリア、そして人々がつけている宝石が光を浴びてキラキラと輝いている。マルティーノは宣伝用のパーティだと言ったが、それらしいディスプレイもなくただきらびやかだ。
「おれ達、浮いてないか?」
 ジョーがソッとマルティーノにささやいた。
「若い人が少ないですからね。でもお2人なら大丈夫。どうぞそのままで」
 ジャンニ・ベルサーチのスーツをすっきりと着こなしているマルティーノが言った。彼はジョーより背が高いが細身だ。薄茶のスーツが良く似合う。武道家らしくスキがない。
 その横に立つジョーと神宮寺はそれぞれデザインの違うジョルジオ・アルマーニのスーツで決めている。ジョーが濃いグレイ、神宮寺が紺色だ。グレイドの高い物ではないが20代前半の2人には年相応で無理なところがなく好感が持てる。 難を言えば2人揃って・・・いや3人揃って立つ姿は会場でも目立つらしく特に女性が目を向けてくる。それをうまく捌くのはマルティーノの仕事だ。
「奴らの姿は見えないな」ジョーが神宮寺の耳元でささやいた。「あまりおしゃれされるとわからないかもしれないな」
 と、苦笑した。その彼らに1人の大柄な男が近づいてきた。
「やあ、マルティーノ。よく来てくれたね」一瞬身構えた2人だがその顔を見て動きを止めた。今回のパーティを主催するジミー・マーキンスだ。「シニョーレが来られないのは残念だが」
「すみません、ミスター・マーキンス。ミラノでの商談が長引きまして」
「商売人が忙しいのは良い事だ」ふと横に立つジョーに目を向けた。「おお、君がアントニオか。なるほどシニョーレと同じグランディーテのブルーグレイ・アイだね」
「い、いえ彼はアントニオではありません。ジ・・ジュゼッペという遠縁の者でMGMに泊っています。こちらの彼は友人のジングーといいます」
 ジョーは一瞬マルティーノに目を向けたがすぐに如才なくあいさつし握手を交わした。
「嫡流外にもこんなに強くブルーグレイ・アイが出るんだね。シニョーレの隠し子じゃないのか?」ハハハ・・・と笑うマーキンスに、い、いえ・・とマルティーノが引きつっている。「ご覧のとおり今日のパーティには若い人はあまりいないが、まあ楽しんで行ってくれ。ご婦人方の良い目の保養になるしね」
 そう言いマーキンスは次の客へと声をかけた。
「す、すみません、ジョー・・」ホッと息をつき、が、自分を見ているジョーに気がついた。「偽名を考えていませんでしたので・・つい・・・」
「─気にしなくていいさ」
 マルティーノから再びマーキンスに目を戻しジョーが言った。と、“マルティーノ!”と声が掛かり、マーキンスの息子ウィリーが3人の所に来た。互いに紹介しウィリーがマルティーノと話し始めたのを見たジョーと神宮寺がソッと彼から離れた。
 広い会場をゆっくりと回る。ふと神宮寺が足を止めリンクを見た。ジョーの体が彼を隠す。通信は立花からだったがただ一言、“異常なし”だけだ。手配の奴らはまだこの階には現れていないという事だ。
 奴らはマーキンスを誘拐するつもりらしい。が、彼にはボディガードがついている。そして常に大勢の目が彼に向けられているのだ。その中でどうするつもりなのだろう。
 やがてステージでは今回のパーティの目的である新部門参入のプレゼンが始まった。通信衛星の利用拡大に伴うIT機器の云々・・・と、ジョーにはよくわからなかったので目はマーキンスに向けてはいるものの耳はプレゼンターの言葉を素通りさせるのを許していた。
 隣では神宮寺が目も耳もしっかりその役目を果たさせている。「おれ、絶対商売人はいやだ」 そう呟くジョーに神宮寺がクッとにが笑いした。
 プレゼンが終わるとマーキンスはステージから下りて招待客達の間をまた回り始めた。彼の行く先々で笑い声が上がる。
「陽気なおじさんだな。彼がニューヨークマフィアと繋がりがあるという噂は本当なのか?」
 ジョーが、いつの間に2人の横に来ていたマルティーノに言った。
「今は知りませんが昔は関係があったようです。でも何代も続く家にはよくある事で、かく言うグランディーテ家も─」ハッと口を閉じた。マーキンスに目を向けたままの─しかしジョーの貌付きが変わっていた。「し、失礼を─。すみません、ジョー」
 マルティーノの長身が深々と2つに折れた。神宮寺もどうすればよいのか迷っている。と
「おれの前で2度と口にするな」ジョーの低く、しかし鋭い声がゆっくりと2人の耳に刺さっていく。「あんたがシニョーレの秘書でも─次はない」
「は、はい」
 マルティーノが再び頭を下げた。
 彼はジョーの部下でも側近でもない。むしろグランディーテと関わる事を望んでいないジョーに対してマルティーノが臣下のように仕える理由はない。
 しかし父親の代からグランディーテに仕え、彼自身も子どものころからロレンツォの勢いある姿を目にして育ったマルティーノにとってグランディーテのブルーグレイ・アイは絶対だった。特にジョーの話し方や雰囲気はロレンツォによく似ている。
「ジョー」
 神宮寺が諌めるように彼の名を呼んだ時、突然リンクが振動した。立花の持っているのは普通の通信機でリンクやスピードマスターと交換性はあるもののメール機能はない。
 立花からの言葉は、“入室”だった。例の奴らがこのホールに入ったという事だ。
「ジョー」
 今度は先程とは違う意味で彼の名を呼んだ。その時すでにジョーはその場から離れ、会場を回り始めていた。神宮寺もすぐ後に付く。立花からの連絡とほぼ同時にホールの入り口近くに向かったのに、2人が写真で覚えた顔の男達はいない。
「もうこの千人の中に紛れ込んじまったのか」
 ジョーが舌を打った。
「マーキンスのそばに行こう」
 奴らは必ずマーキンスに近づくはずだ。2人の目がマーキンスを捕らえ人々を掻きわけて彼のそばへ寄ろうとした時、
「皆さま、ただ今からベラッジオ名物の噴水ショーが始まります。パティオへどうぞ」
 と、司会の男性の声が響いた。客の全員ではないが多くが─特に女性客はパティオに出てホテル前の人工湖を見降ろす。
 と、室内の電気が消えた。それと同時にクラシックが流れ、時にはコミカルに時にはドラマチックに噴水が動き出す。パターンは20以上もあり昼と夜とでは雰囲気がまったく違う。特に夜は光の共演も加わり、さらに美しい。室内の電気を消したのもそのためだろう。
 だが神宮寺とジョーにとっては裏目に出た。目の隅に入っていたマーキンスを見失ったらしい。だが、
「ここかっ!」
 ジョーがドアに取り付いた。ガチャガチャと揺すっている。
「休憩室」
 ここベラッジオルームも広いフロアをいくつかの小部屋に分ける事ができる。今回はナンバー3とナンバー4の部屋を休憩室としてパーティフロアとは区切ってある。
 ジョーが開けようとしているのはナンバー3の部屋だ。
「どけ、ジョー」
 神宮寺がベルトから針金を取り出し鍵穴に入れた。バンッ!とドアが開き神宮寺が飛び込んだ。
 室内には3人の男がいる。1人がマーキンスを押さえ、なんとソファの座部を開けその下の空間に押し込もうとしていた。
「人間イスか。エドガワランポかよ」妙に古い事を知っている。「電気が消えたとたんにボディガードを倒しマーキンスをこの部屋に押し込めるなんて手慣れているな」
「なんだお前らは!」
 男が怒鳴ったがその眼は明らかに2人を敵だと認識している。
「それはこっちの台詞だ!」
 男達が銃を取り出したのを見た2人が左右に跳んだ。ソファの後ろに入る。ボムッと鈍い音がした。サイレンサーだ。
 ジョーがテーブルの上の燭台を投げた。神宮寺も置いてある飾り箱を投げ付ける。男の腕に当たったがこれだけではどうしようもない。かえってこちらに武器がない事を奴らに知らせる事になる。が、それが狙いだった。
 素手の若い男2人に銃を手にしている3人の男は余裕の笑みを浮かべ、1人がマーキンスを押し込み座部を降ろしてフタをした。これでマーキンスを盾に取られる事も、流れ弾に当たる事もなくなった。
 他の2人の男が神宮寺達が隠れているソファに走り寄る。後ろに回り込もうとした瞬間、2人が大きくジャンプした。ソファを飛び越え男達に襲い掛かる。
 銃声が響いた。と、同時に銃が男の手から飛んだ。神宮寺が蹴り飛ばしたのだ。続くもう片方の足で男の胸倉を突く。後ろに倒れた男に伸し掛かった。
 その少し向こうではジョーが男を床に押し付けていた。そのすぐ横を弾丸が飛んできた。マーキンスのそばに残った男が撃ったのだ。
 ジョーは床で暴れる男の手から銃をもぎ取ると撃ってきた男に向かってトリガーを引いた。肩から赤い糸を引き男がひっくり返った。
「ジョー!」
 神宮寺の声と共にジョーは自ら横に転がった。ブンッ!と今までジョーがいた場所を男の足が横切って行った。
 スッとジョーが男に銃を向ける。彼ら─いや、少なくとも目の前にいるブルーグレイの瞳の男は銃を扱い慣れていると、床に尻をついたままの男が悟った。
 その時ドアが大きく開き何人もの男達が走り込んできた。
 
「ありがとう、ジュゼッペ、ジングー」マーキンスが2人に握手を求めた。「暗くなったとたんにボディガードが倒されてあの部屋に連れ込まれた。その後はよくわからなかったが、銃声が聞こえた時にはどうなるかと思ったよ。ありがとう2人共」
「いえ、ミスターが無理矢理連れて行かれるのが見えたので」
 神宮寺が言った。
 後から走り込んできたのは立花から連絡の入った市警察の警官達だった。男達は質の悪い酔っ払いとして市警に拘束された。騒ぎにしたくないマーキンスは同意し招待客にもそのように説明された。後は市警と国際警察との話し合いにより男達の行き先が決まる。
 解放されたマーキンスはそのままパーティ会場に戻った。
「マルティーノ、君の知り合いはすごいね。SWATかESUかね」
「いえ、以前ボディガードをしていたようで」
 警察と思われるよりはいいだろうと、とっさに口にしたマルティーノの言葉にマーキンスはホオホオと頷いていた。
「なあ、神宮寺」ジョーがマルティーノ達から離れる。「サントスの知り合いは“4、5人の男が”と言っていた。その中にファーがいるかわからねえが、後の奴らはどうしたんだ?」
「うん、おれもそれが気になっているんだが・・・」会場を見回してもそいつらの顔は見えない。失敗したとわかって早々に逃げ出したのか。「しかしあんな事があったのにパーティを続けるなんて大した人物だな」   
 本気なのか皮肉なのかよくわからない口調で神宮寺が呟いた。
「ジョー」マルティーノが小走りに寄ってきた。「ウィリーの姿が見えないそうです」
「ウィリーってマーキンスの息子の?」はい、とマルティーノが頷く。「って、おい・・・」
「まさか」
 神宮寺とジョーがステージ横にいるマーキンスや彼の部下達に目を向けた。皆あわてているようだ。
 マルティーノが言うには、ウィリーはパーティの閉会のあいさつをする予定だった。なのに時間になっても姿を見せないし会場内にもいないそうだ。
 ウィリーとは仲の良いマルティーノもマーキンスに訊かれたらしいが、例の噴水ショーの後、彼の姿は見ていないと答えた。
 とりあえず閉会のあいさつはマーキンスがする事になったらしい。
「どうやらおれ達はとんだドジをやらかしたようだ」
 如何なる時でも穏やかで冷静な神宮寺とは思えない激しい嫌悪感を現した口調に、ジョーも何も言えなかった。
 
「だから本当に知らねえよ。奴らは昨日の夕方見掛けたっきりだ。そう伝えただろ、サントス」
「もちろん聞いてるさ」ソファに座るドウラを見降ろしサントスが言った。「全員ベラッジオに行ったんだろ?その後どうしたか知らねえか?2、3人だと思うが」
「知らねえよ、本当だ。今日はまだ見ていないし」 ドウラが必死に言い募る。
 昔まだマフィアにいた頃、何回かサントスの尋問を受けた。いやあれは尋問なんてやさしいものではない。うそを吐こうものなら容赦なく何時間でも叩かれる。サントスの怖さはよく知っている。しかし今は─。 
 ドウラは本当の事を言っていた。昔よくやりあった奴らの顔だ。間違うはずはない。昨日の夕方揃ってベラッジオに入って行くのを見たのが最後だ。
 なのに・・・本当の事を言っているのに、どうしておれはこんなにビクついている?サントスがいるからか。それもある。
 しかし今は彼よりも目の前に座る若い男の視線の方が怖かった。サントスが邪魔だと言っていたちょっと変わった青い色をした眼のぼうやだ。さっきから一言も言わず、少し顔を斜めに向けて自分を見ている。ガッチリタイプだがサントスより小さな体だ。なのにこの圧倒的な存在感は─。
 じっとしていると押し潰されそうで、真実を語っている口元さえ震える。とんでもないぼうやだ。
「ジョー、こいつは本当の事を言っているぜ」
 サントスが言った。と、ジョーはかすかに頷き立ち上がった。ドウラが思わず体を硬くしジョーを見上げる。
「すまなかったな。─ありがとう」
 最後の言葉はサントスに言い、ジョーが出て行った。
「な、な、なんだ、あのぼうやは」ホーと息をつきドウラが声を上げた。「まだ若いくせになんてェ迫力だ。絶対やばい仕事をしているな」
 ナハハ・・・とサントスが眉をハチの字に曲げる。「あんたの恋敵はとんでもない奴だぜ、サントス。ヘタすると返り討ちに合うぜ」
「ん~、わかってンだけどな~」
 と、再び眉をしかめちょっと情けない貌をドウラに向けた。
 


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