コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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光と影のラプソディ 5

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(これでまた1つ手掛かりがなくなった)
 ジョーはサントスの部屋から一度1階に下りた。
 フロントデスクの前を通りカジノに足を向ける。喧騒と熱気がジョーを押し包んだ。ふとフロアに眼をやる。
 MGMグランドのカジノはラスベガス一の規模を誇る。あまりに広すぎて時々迷子になる客もいるという。 21才にならなければ遊べないカジノ。あれほど楽しみにしていたのに1日で飽きてしまった。
 ジョーはストリップ側の入り口まで行き、また引き返してきた。奴らがいつまでもこんな所にいるとは思えないが、紛れ込んでいるとすればやはりこのような雑踏の中だろう。
 彼はふとライオンハビタットに目を向けた。ガラス張りの檻の中に数頭のライオンが飼われている。中央通路の天井もガラス張りなので真下から檻の中を見る事もできる。
 説明書きを読むと、この中の2頭はこのホテル建設時にはまだ子どもだったそうだ。
 では彼らはずーとこの檻の中にいるのだろうか。1回も外の世界に出た事もなく何年もこの中だけで─。
「外に出してやりたそうな顔をしているな」ふいに日本語で言われた。いつ間にジョーの横に関が立っていた。「やめた方がいい。ここを出てもこいつらは生きられない」
「相変わらずいいカンしてるな」
「子どもみたいな目で見ているからさ」フンとジョーが顔を背けた。2人は並んでカジノをフロント方向へ歩く。「あちらさんの1人がTEの手引をしたらしい。ニセの招待状で入れた」
「そんな事だろうと思った」ジョーが再び鼻を鳴らす。「ウィリーをうまく連れ出したのもそいつの手引きで?」
 おそらく、と関が頷く。もちろん手引きした男はとうに姿を消している。
「市警が極秘で行方を追っているがね」
 あまり期待していない口調だ。
「マルティーノがマーキンスを気遣ってそばについている。会おうと思えば会えるぜ」と、スピードマスターに神宮寺からのメールが入った。関を探して至急部屋に戻れ、という。「何か動いたかな」
 2人はすぐさまグランドタワーのダブルJの部屋へと戻った。


「早かったな」
  部屋では神宮寺と立花が待っていた。んー、とジョーがワインクーラーからペリエを1本抜く。冷たい液体で喉を潤す。
「ジョー、サントスの友人を脅したのか?」
「え?」ペットボトルから口を離して神宮寺を見た。「脅してなんかいねーよ。話を聞きたいから呼び出してもらっただけだ。第一、始終話をしていたのはサントスだぜ」
「ドウラはしばらく動けなかったそうだ」
「・・・知らねーよ、そこまで」ジョーはペットボトルのキャップを音を立てて閉めた。まったくこいつはどこでこんな事を知るんだ?GPSみたいな奴だ。いや監視衛星か?「そういえば昨夜のプレゼンでも通信や監視衛星の新しい用途がどうのこうの言ってたが、そんな事はお前に訊けばいいのにな、神宮寺」
「?」時々相棒の話がわからない。が、「そのマーキンスからマルティーノを介して連絡があった。おれとジョーをボディガードとして雇いたいそうだ」
「は?なんでボディガードに─」そういえばマルティーノがそんな説明をしていた。そして2人はマーキンスを助けたのだ。ウィリーが行方不明になっている今、マーキンスが用心を重ねるのも頷ける。「・・・おれ達の本職ってなんだっけ・・・」
「だがこれで遠慮なくマーキンスに張り付けるぞ。支度しろ。マーキンスは今日中にレイク・ラスベガスの別荘に移るそうだ」そういえば部屋が散らかっていた。荷造りをしていたらしい。「立花と関さんはここへ残ってください。マーキンスの部下も何人か市警に詰めるらしいですから、情報をよろしく」
 わかった、と2人が頷いた。
「気をつけろよ、立花。関と同室なんてやばいぜ」
 シャツをバッグに入れながらジョーがニヤつく。立花がちょっと不安そうな顔を向けて来た。
「立花君に誤解されるような事を言うな、ジョー。おれは君しか目に入らない」
「それが誤解される言い方って奴だ!」関目掛けてライターが飛んだ。が、目の前でキャッチされた。続いてたばこも飛んでくる。「やるよ。形見にしては安っぽいけどな」
 手にした2つの品を見ながら関が思いっきりいやな顔をしている。だがジョーは気にせず荷物をバッグに押し込んだ。


 ストリップから南東へ30キロ、ラスベガス郊外の湖畔に広がる閑静なエリアがレイク・ラスベガスだ。
 わずか車で30分しか離れていないのに、ここにはあのストリップの喧騒や混雑はなく静かでゆっくりとした時間が流れている。
 ホテルは2軒。イタリア・トスカーナ地方をイメージしたものと、ヨーロピアンスタイルのラグジュアリーホテル─だがどちらも高級ホテルだ。また丘陵地帯には世界中のセレブが所有する高級別荘地が広がっている。
 マーキンス達がその別荘に着いたのはもう夜になっていた。予定ではパーティの翌日すぐにこちらに移るつもりだったがウィリーの事もあり、市警に色々と訊かれていたのだ。
 マーキンスは犯人の心当たりなどない、と─あくまでも彼の言葉だが─言っている。彼は被害者なので無理矢理市警に止めておくこともできず、また場所の移動もやめさせる事はできない。それでもマーキンスは自分の腹心をベラッジオに残していった。
 神宮寺とジョー、そしてマルティーノはマーキンスの招待客としてレイク・ラスベガスに同行した。
 遠縁とはいえグランディーテの関係者を雇うというのはどうも・・・と苦笑いし、マルティーノと共にウィリーの身を案じて来てくれた友としてもてなすので自分のそばにいてほしいと頼まれた。もちろん願ったり叶ったりだ。もっともマルティーノだけはこの一両日中にイタリアに戻るが。
「慌ただしくてすまなかったね」夕食の後、マーキンスは3人を自室へ誘ってくれた。大きなバーカウンターがあり自ら飲み物を作ってくれる。趣味の1つらしい。「シニョーレとはずいぶん会っていないがお元気かい?相変わらず忙しいようだが」
「はい、大変お元気です。私など付いて行くのがやっとです」
 マルティーノの言葉に、それはすごい、とマーキンスが笑う。
 グランディーテはマーキンスの取引先のひとつで当然ロレンツォの事も知っている。しかしマーキンスが先に知り合ったのは実はマルティーノなのだ。
 一人息子であるウィリーがイタリアの大学に語学留学していた時に、たまたま学園祭で大学を訪れていたOBのマルティーノと会い意気投合したのだ。
 マーキンスは息子からマルティーノを紹介されその柔らかな人当たりと、しかし時折り見せる英知の輝きにすっかり彼を気に入ってしまい、ぜひウィリーの片腕となってほしいと頼んだのだが─。
 その頃すでにマルティーノはトーニの父親の秘書として仕事を始めたばかりだった。
 あと2、3年早く会っていれば、とマーキンスを悔しがらせたが息子の友人としての付き合いは続いている。
 今回もそのマルティーノの知り合いと言う事で神宮寺もジョーもあっさりと彼の懐に潜り込む事ができたのだ。したがってマルティーノへの信頼を損ねるような事はしたくないのだが。
「ジュゼッペはシニョーレ・ロレンツォに会った事はあるかい?」いきなり振られジョーが戸惑った。「あ、ジョーと呼ばれているんだったね」
〝ジョー〝という愛称は〝ジョセフ〝や〝ジュゼフィン〝から取られるが、イタリア読みの〝ジュゼッペ〝もそうなのだろう、とマーキンスは思ったようだ。
「一度だけ・・・遠くから目にしただけですが」
 あまり減っていない水割りを持て余し、呟くように答えた。。
「彼はすごい人だ。昔からの色々なしがらみを彼の父親と共に打ち破り、一代で昔の何倍もの企業に育て上げた。大した御仁だ」
 その言葉にマルティーノが嬉しそうにジョーを見た。だがジョーの表情は変わらない。
「ただ子ども運に恵まれなくてね。1人は10年も前に、跡取りの息子も最近亡くして・・・。気の毒な事だ」
 マーキンスが静かにグラスの口をつけた。ジョーがちょっと視線を外した。氷が解け嵩の増えたグラスの中味に目を落とす。
「だから孫がいると聞き、良かったと思ったよ。それがアントニオだね。ぜひ一度お目にかかりたい」マルティーノが、はいと答える。「だがもう1人、男の孫がいると聞いたが、その後聞かなくなったな」
 と、問うようにマルティーノに目を向けた。
「それは噂で・・・、我々もどこから出て来たものなのかわからなくて・・・」
 マルティーノには珍しくちょっと言い淀むように答えた。エアコンが効いていなければシャワーを浴びたようになっていたかもしれない。気の毒な事だがジョーはおかしくなってクスッと笑ってしまった。
「まあ君が将来アントニオを支えるんだろうなあ。惜しいなあ、うちのウィリーもいい奴だよ」
 息子の名前を言う時だけ陽気な男の顔が曇る。彼の傍らには携帯電話が置いてある。市警からいつ連絡が来てもいいようにそばから離さない。
「どちらかが女の子だったらよかったのにな。いや、うちのいとこにいい娘(こ)がいる。そちらに25、6でアメリカに来てくれる娘(こ)はいないかね」
 と、勝手にトーニの結婚相手の世話までしている。
(ホント、気のいい親父だな。この分じゃトーニの嫁さんは4、5人ぐらいすぐ見つかりそうだ)
 そんな彼が本当にニューヨークマフィアと繋がっていて麻薬の取引などしているのだろうか。グランディーテがそれに関わっているとは思いたくないし、今回ばかりはその情報も単なる噂であってほしいと思った。 と、自分を見つめているマーキンスの視線に気が付いた。
「君とは初めて会うよね」
 はあ・・とジョーが頷く。
「ジュゼッペという名前とその風貌・・・。以前に会ったような気がするのだが・・・」マーキンスがしきりに首を傾げている。ジョーの顔が強張った。それはまさか、父の事か─。「いや、だがもう20年くらい前の事だ。その頃君は赤ん坊だな」
 ハハハ・・・と笑いグラスを空けた。が、ジョーはちょっと口元を歪めただけだ。
 マーキンスは20年前の父の事を知っているのだろうか。その頃は確かドイツにいたはずだが。
 聞いてみたかったが、ここで父の名を出す事はできない。マーキンスもグランディーテと父─彼が言う男が父だとしてだが─との関係は知らないだろう。ましてや目の前にいるのがその男の息子だという事も、ロレンツォのもう1人の孫だという事も─。
 ジョーはこの仕事を引き受けた事を初めて後悔した。
「ジョー」
 マルティーノが呼んだ。ジョーが顔を上げ彼を見る。と、自分を見ているのはマルティーノだけではなかった。神宮寺もマーキンスも気遣うように自分を見ていた。
「大丈夫ですか?」
 ─なにがだ?
「顔色が良くありません」
 ─そうなのか?
「昨日からちょっと慌ただしかったからな」
 ─それはそうだが・・・
「もうお開きにしよう。マルティーノ、いつもの部屋の隣を2人に使ってもらってくれ。わかるね?」
 はい、とマルティーノが立ち上がった。神宮寺もジョーも後に続く。マルティーノは何度かこの別荘に来ているらしく足取りは確かだ。3人は母屋から廊下繋がりになっている3階建ての別棟に入った。湖に近く、1階のテラスの向こうにはボートハーバーが見える。
「こちらのツインをどうぞ。私は隣にいますので何かあったら言ってください」
「我々は交替で別荘内の見回りとマーキンス氏の警護に当たります」と、ジョーを見て「まずおれからだ。その後レビーと換わる」
 レビーというのはマーキンスのボディガードだ。コンビはモーガン。どちらも金髪の大きな男だ。だがあのパーティの時、ふいを突かれたとはいえあっさり倒された事に不名誉なものを感じていた。さらにマーキンスが新しいボディガードを2人雇ったので闘志を燃やしているそうだ。
「その後はおれだな」
 ジョーが言った。が
「いや、おれがやる。お前は休んだ方がいい。ひどい顔をしているぞ」
 と、言われてもジョーにわかるわけがない。彼自身不調は感じていないのだ。かえって神宮寺の態度に腹が立った。
「お前、いつの間に奴らと打ち合わせなんかしたんだよ。おれ抜きで」
「・・悪かった。荷物を運んでいる時に話しかけられて・・」
「とにかくおれを外すな。でなければ一晩中1人でマーキンスに張り付いてやる」
 ジョーのブルーグレイの瞳が鋭い光を燈す。自分に向けられていないのにマルティーノが身を固くした。ジョーはそのままドアの向こうに消えた。空間を支配していた圧力感がなくなった。
「─彼はいつもあんな感じなんですか?」
「そうですね、でも・・・」神宮寺がドアの方に顔を向けた。「口ほどきつい奴ではないし、よく誤解されるけど本当は気にいい奴なんです。ま。無茶するのが玉にキズだけど」
「シニョーレにそっくりだ。もしもの2人がイタリアにいたら我々は気が抜けないですね」
 ため息をつくマルティーノに、そうかもと神宮寺が笑った。


 ─ジョージ
 ─誰かが呼んでいた。あの高くて透き通った声は─
「ママ!」
 振り向いてジョージは駈け出した。足元でバシャバシャと水しぶきが上がる。彼はそのままの勢いで母親に飛びついた。体をよろけさせる母を支えているのは大きな体の父だ。
 父はジョージの体をヒョイと持ち上げ肩の上に乗せた。キラキラ輝く太陽に近くなったような気がした。
 3人の足元には青い海が広がっている。と、そこへ突然男が1人現れた。3人に向かって歩いて来る。手には黒い物が握られていた。
 父の動きが止まる。ジョージを肩から降ろして男と対峙した─が


           ×       ×       ×       ×       ×


「ジョー、おい、ジョー!」
 体を揺さぶられジョーが目を開けた。神宮寺の顔が見えた。
「・・・お前・・・まだ起きているのか」
「なに言ってる。とんでもない声で人を起こしておいて」
 と、ドアがノックされた。マルティーノだ。神宮寺がドアに向かう。
「─ええ、夢を見たようで・・大丈夫です」ドアを少し開けマルティーノに答えていた神宮寺がチラッとジョーに目をやった。ジョーがかすかに首を振っていた。「大丈夫だから休んでほしいとジョーが言っています。はい、わかりました」
 ドアを閉めた。
 ジョーは上半身をベッドに起こしてぼおっとしていた。裸の体に汗が流れている。軽い動悸がまだ治まらない。左腕が痛い。と、いきなりペットボトルが飛んできた。ジョーの左側からだったがとっさに体を捻り右手でキャッチした。
「危ぶねえな」
 神宮寺を睨み返す。
「気はしっかりしてるな。どうした?関さんに追いかけられている夢でも見たか?」
「このおれがおとなしく追いかけられていると思うか?」
 ジョーはレモン味のペリエを一気に口の中に押し流した。汗がひいていくようで少し気分が良くなる。と、神宮寺に目をやった。一瞬迷ったように目を泳がせたが、
「おれと両親と3人でタオルミーナの海で遊んでるんだ。ホントは一度も3人で行った事がないのに」デイトナで見た夢とよく似ていた。だがそれは神宮寺に話していない。「そこへ男が来て・・・おれ達に銃を向けて・・・。銃声が止んだ時にはパパもママもいなくなって・・・おれ一人が残されていて・・・」
「よく見るのか?」
「いや、そうでもない。だが今の夢に出て来た男は─マーキンスだったんだ」
「彼の印象が強烈だったのかな。確かに大物の風格はあるな」
「・・・・・」
 それだけだろうか。彼が言っていた〝ジョーとよく似た人物〝の事が頭にあったのかもしれない。ジョーの父が〝仕事〝でマーキンスに会っていたとすれば・・・。
「おれの脳は肝心な事は思い出さねえくせに余計な物ばかり作り出してきやがる。笑うなよ、神宮寺」
「悪い。おれと同じだな、と思って」
 え?とジョーが神宮寺を見た。
「最近は見なくなったけど前はよく智の夢を見たんだ。両親と4人で庭でバーベキューしてるんだぜ。そんな事した事ないのに」神宮寺もキュッとペリエのフタを捻った。「かと思えば庭の池で釣りをしていたり・・。どーいう夢なんだろうな」
「本当はやりたかったんじゃねーの?」
「・・・ん、そうかも・・」スッキリした微炭酸のレモン味が口の中に広がる。「智がいたらやっていたかもしれない・・。そういう想いが夢として現れたのかもな・・・」
「・・・・・」
 自分も両親と一緒にあのタオルミーナの紺碧の海を眺めたかったのかもしれない。いや、それは自分というよりも母カテリーナの想いだったのか─。
「交替の時間だな」時計を目にし神宮寺が言った。と、ジョーがベッドから飛び降りる。掛けてあったシャツを着ジーンズを穿いた。「大丈夫か?なんならおれが行くぜ」
「任せておけ。せっかくこの別荘の見取り図を頭の中に叩き込んだんだぜ」スピードマスターを着ける。「それにおれは動いてないとかえって調子が悪くなるのさ」
 そう言いニッと口元を歪めジョーは出て行った。
 神宮寺は自分のベッドに戻ったがすっかり目が覚めてしまい閉口した。
 時計は午前4時を指していた。


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Comment

淳 says... "覚書き"
「やるよ。形見にしては安っぽいけどな」の台詞に、このダブルJ・シリーズ1の大ラスを思い出してしまい・・・。
関の回想とか・・・アサクラに話しかけている言葉とかが勝手に浮かんでしまい涙が出て困った。

書けない、とても書けない。
シリーズ1も終わらせたくない。
2011.04.25 15:44 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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