コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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光と影のラプソディ 9

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 ジョーがファーのいる部屋に呼ばれたのは閉じ込められて3時間程経った頃だった。
 時間は夜の8時を過ぎているのにまだ明るかった。今頃の日没は8時20分頃だ。日の出も6時過ぎと
遅い。
 ジョーは後ろ手にされたままファーと2人の男のいる部屋へ入った。
 ファーはもちろん、他の2人の方がジョーより体格が良いが部屋の一角に立つジョーの存在感に3人の
男達は一瞬言葉を失っていた。ジョーは余裕を持って室内を見回しファーに目を戻した。
「お前に訊きたい事がある」気を取り直しファーが訊く。「おれの後任だって言ってたな。じゃあマーキンス
の後ろ暗い事を知っているだろう。それを教えろ」
「後ろ暗い事?」フンと鼻を鳴らした。「あんたらと付き合いがあるって事が一番後ろ暗いんじゃねーの」
 シュッと空気を裂きロープが飛んできた。ジョーの首に掛かりそのまま前に引き倒された。
 後ろ手にされているので手を床に付く事ができない。ジョーはとっさに横を向き鼻への直撃を避けた。が
、その分頬骨を強かに打った。頭がクラッと揺れた。
「生意気なぼうやは好きだが調子にのったガキは嫌いだ」ロープ片手にファーが言う。「おれたち以外でマ
ーキンスがつき合っているのはどこだ?それとももうお前が処分したか?後任者」
「・・・あんたがマーキンスと仕事をしていた時・・・ペラペラしゃべったのか」
 波を打ってロープがしなる。顔を叩かれた。だがジョーは怯まない。床から真っ直ぐにファーを見上げる

「強情なぼうやだな」
「言ったろ。あんたより優秀だって」
「─まあいい。明日になればマーキンスもまたおれの言う事を聞くようになるさ」明日?とジョーがファーに
問う。「マーキンスのいるレイク・ラスベガスでちょっとお祭りをしてやるのさ」
「祭り?まさか別荘地を・・・」
「明朝には仲間も集まるし、ま、お前は次の就職口の心配でもするんだな」
 連れて行け!とジョーの横に立つ男に言った。男はジョーを立たせ首からロープを外した。
「ファー、手のロープも外してくれ。こんな所から逃げられないし」
「だめだ。お前はおれより優秀なんだろ。油断できないからな」
「チェッ」
 舌を鳴らすジョーを男が小突き、さっきまで彼がいた部屋に再び戻した。

 日が落ち暗くなるに従ってだんだんと気温が下がって行った。
 インナーの上に薄手の半袖シャツ1枚のジョーだが寒さはあまり感じない。だが床やロープで打たれた
顔だけは熱かった。
「くそォ、絶対仕返ししてやる」
 が、その前に明日の事を神宮寺に知らせなければ─。
 ジョーは手首を結わえているロープを外しにかかった。よほど特殊な縛り方をしていなければ時間が掛
かっても解く事はできる。
 奴らはジョーを少々気の強いただの若造と見たのか、きつく縛ってあったが10分くらいで解く事ができた
。ファーの後任というのも信じていないかもしれない。
 ジョーはスピードマスターの通信をオンにしたがノイズがひどくて繋がらない。距離ではなく周りのピュート
やメサに邪魔されているからだろう。
 ジョーは迷っていた。彼の第一の任務はファーの逮捕とTEの本拠地を発見する事だ。ここはアジトの1
つにすぎない。このままファーに付いていて本拠地を探るか─。
 しかし明日の事も見逃せない。
 奴らはマーキンスを脅すためにレイク・ラスベガスでひと騒動起こすつもりだ。そのための銃や爆薬なの
だろう。ウィリーも盾にされる─。それを知らせる手立ては今のところない。
「仕方がねえな」
 あと数時間─朝になれば仲間も到着すると言っていた。ますます面倒な事になる。
 だがここは街中ではないので街灯などない。こう暗くてはセスナを飛ばすのも無理だろう。仕方なく夜明
けを待つ事にした。
 ジョーは冷たい床に座り、ふと熱を持った頬に手をやった。

「かなり暗くなってきたぞ、神宮寺君」コ・パイの関が言った。「燃料もギリギリだ」
「わかっています。でも─」
 もう少し、あともう少し飛べば手掛かりを発見できるかもしれない。そう思うと神宮寺はなかなか引き返そ
うとは思わなかった。
 しかしほとんど明りのない峡谷や山岳地帯を夜飛ぶのは危険だ。それは神宮寺が一番よく知っている。
だが─。
「やっぱりおれが飛ぶんだった。あいつを捩じ伏せてでも・・・」
 そう思わずにいられない。もちろん規則に従ったのだから神宮寺の責任ではない。
 飛行機乗りとしては神宮寺の方が上だがジョーもSメンバーだ。ピンチに遭っても自ら切り抜けられるだ
ろう─。
 関はそう言ってやりたかったが、今の神宮寺にはなんの意味もない事だった。
 やがて機は大きくターンするとラスベガスへの帰途に着いた。

 夜明けが近いらしく部屋にひとつしかない天窓から光が差し込んできた。
 一睡もせず変事に備えていたジョーだったがもう我慢できない、というように立ち上がり、ベルトに仕込ん
である針金で簡単に鍵を開けた。
 廊下には誰もいなかった。ウィリーが閉じ込められている部屋へと向かう。そこにも見張りはいなかった

 今ここにいるのはジョーとウィリーの他にはあの3人だけのようだ。見張りを置く余裕がないのか、それと
も必要ないと思っているのか。─どっちにしても手間が省ける。
 ジョーはドアの覗き窓から中を確認すると、ここの鍵も針金で開ける。素速く体を中に入れた。
「しっ」床の毛布にくるまっていたウィリーが驚いて飛び起きたが、「静かにしてくれ」
「君は・・・確かマルティーノの・・・」ウィリーはジョーを覚えていたようだ。「どうして君が─」
「詳しい話は後だ。ここを出る」
 ジョーはウィリーを伴い廊下を出口に向かって慎重に進んだ。半分壊れているドアは鍵もかかっていな
かった。
 周りに誰もいないこんな平原では、忍び込んでくる者もいないのだろう。それでもモニュメント・バレーに
入れば先住民の村があるのだが。
 ジョーはウィリーと外に出て、
「あのメサの向こうにあんたんとこのセスナがある。操縦はできるよな?」
 ウィリーが頷く。
「それでレイク・ラスベガスを目指すんだ。マーキンスは今そこにいる。それから─」ジョーはポケットから発
信機を取り出しウィリーに渡した。「これを持ってるんだ。そうすれば警察が見つけてくれる。進路は西にとれ」
「わかった。君は一緒に行かないのか?」
「おれはまだやる事があるんだ」
 本当はセスナまで行ってセイフティボックスの中のウッズマンを持って来たかった。しかし実は先程から
なにやら胸騒ぎがするのだ。仲間とやらの到着が近いのかもしれない。
「さっ、行け」
 発信機を握りしめウィリーが頷き走り出した。まだ完全に夜(よ)は明けていないが、これくらい明るけれ
ばなんとか飛び立てるだろう。
 ウィリーがメサの向こうに消えるとジョーは次の行動に移った。武器が置かれた建物に近づく。と、
「サンダーバード?」
 昼間見た時はわからなかったが建物の向こう側にコンバーチブルのサンダーバードが置かれていた。 
一瞬目を引かれたがすぐさま建物に入る。ザッと見回しダイナマイトと火薬を見つけた。
 と、大きな建物の方で人が動く気配がした。ファー達が起きたのか。それともジョー達がいない事に気が
付いたのか─。
 そういえばセスナの飛び立つ音はまだ聞こえない。ウィリーが手間取っているのだろうか。
「チェッ、小細工してるひまねーや」
 仕方なく銃と小型のバズーカを肩に担いで外へ飛び出した。サンダーバードの座席にバズーカを放り入
れ自分は運転席に飛び乗った。ギアをセカンドに入れ慎重にクラッチに繋ぐ。エンジンが始動した。が
「こらっ!」
「まて!」
 と、男達が建物から飛び出して来た。
「近づくな!吹っ飛ぶぞ!」
 ジョーはバズーカを肩に乗せ武器庫目掛けて発砲した。そしてすぐさまサンダーバードを発進させる。東
に、ウィリーとは反対に進路をとった。
 その彼の後方からすさまじい爆音と閃光が襲い掛かってきた。小さな建物だったが中のダイナマイトや
火薬に引火しバッ!と大爆発を起こした。
「ちょっと、まずかったかな」
 武器の処分と奴らの眼を自分に向けさせ、ウィリーが逃げるのをカバーするためだったが思った以上の
爆発にちょっと焦る。ファー達が地面に伏せるのはチラッと見たが─。

 ジョーは巨大なメサをグルリと回った。
 ウィリーの操縦するソカタ・トリニダードの機体が西に向かっていくのが見えた。空に上がれば発信機の
電波もビュートやメサに邪魔される事なくラスベガスに待機している立花の元に届くだろう。後は彼らがウィリーを保護してくれる。
「さてこっちも片付けるか」
 もちろんジョーはこのまま逃げるつもりはない。引き返してファーを捕まえなければならない。
 そう思い車をUターンさせた。
 正規の道路ではなく赤土の平原だ。砂埃がブワッと立った。タイヤが埋まったらヤバイな、と思った瞬間
─突然目の前に黒い影が浮き上がった。バラバラと耳障りな音を撒き散らしその巨大な物体は真っ直ぐにサンダーバードに向かってくる。
「ア、アパッチ─」それはまさしく、レイク・ラスベガスの湖上に現れた攻撃用ヘリだった。「やばっ」
 ジョーは再びUターンしようとしたが、その進路に30ミリチェインガンを撃ち込まれとっさに反対側にステ
アリングを切った。
 ザーッと砂が舞い急激な横滑りと共に車体が振られた。横Gがジョーの体に掛かる。が、サンダーバード
はアパッチの進行方向とは反対に逃れた。
「くそォ、あんなもン、どこに隠れてやがったんだっ」
 アパッチがサンダーバードを追ってくる。バババ・・・とチェインガンが地面を舐めた。車に届く前に右に
曲がる。そしてすぐに左に。
「なんでこんな時にコンバーチブルなんだよっ!」
 ジョーは文句を言ったがチェインガン相手では屋根があってもなくてもあまり変わらないだろう。そしてあ
の機種にはロケット弾やミサイルも装備できるのだ。
 再びチェインガンが響く。
「うわっ!」
 とっさに伏せたが体に激痛が走った。それでもジグザグに進路を取りアパッチを避ける。が、それも時間
の問題だろう。
 息が乱れた。明らかに体のどこかに被弾している。
 アパッチは車に合わせ減速するのにも限度があるので一度上空に戻った。大きくターンしてまた戻ってく
る。今度掃射されたらもう逃れられないだろう。
 ジョーは決心し車を止めた。助手席のバズーカを掴む。素早く動いているつもりが実際にはギクシャクし
体がうまく動かない。
 アパッチの正面がサンダーバードに向いた。バズーカを肩にジョーが座席に立ち上がる。狙いを付けて
いるひまもなくドンッ!と撃った。その反動で車外に放り出された。
 バババ・・・と銃声が響き、ジョーはとっさに体を転がし車から離れた。チェインガンをモロに浴びサンダ
ーバードが大破した。と、同時にブレートにバズーカを受けたアパッチが機体を傾けながら墜落した。
 ジョーが認識できたのはそこまでだった。


         
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Comment

淳 says... "覚書き"
ジョーとファーの対決をどこにしようかと探していた。
ラスベガスの近くがいいな。と、グランド・サークルがあるのを思い出した。有名なグランドキャニオンを含む広大な大自然の地だ。
で、そのなかで選んだのがモニュメント・バレーだった。

実はこの話を書く少し前に、OVAのガッチャマンを見たばかりだったのだ。
公開されてから13年目に見たOVAだが、まあ内容はともかくあの地は魅力的だ。
西部劇でよく見る赤土の地とニョキニョキを伸びる赤土の山(ビュート)。そこはガッチャマンのOVAでジョーがトレーラハウスを置いていた所だ。
広大な地に道路だけが1本伸びている。あとは家も建物もなく、ただただ広大な平地が広がっている。
こんな所をいつかアクションで使ってみたいな、と思っていたので、今回の舞台にあっさりと決まった。

淳のお気に入りのシーンでもある。

2011.05.24 17:22 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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