コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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光と影のラプソディ 完

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「発信機が回復したって!?」ドアを開けるなり神宮寺が叫んだ。「どこにいるんだ!」
「待って。今、無線が─」
 立花の言葉に待ち切れず神宮寺がマイクを取った。
「ジョー!今どこだ!無事か!」
『私はウィリー・マーキンスです』
 ガガ・・とノイズ混じりに聞こえるのはジョーの声ではない。
「ウィリー?よかった、無事脱出できたんですね」
『はい、実は─』ウィリーは捕らえられていた所でマルティーノの知人の男性に遇い、助けられた事などを話した。『彼はまだやる事があると残ったんですが、その後何かが爆発したようで・・・彼の安否は確認できませんでした』
「・・・・・」関も立花もマイクを持った神宮寺も凍りついたように動きを止めた。だが─「それはどこですか。場所がわかりますか」
『おそらくモニュメント・バレーの東側だと思います。ビュートやメサがあったので』
「わかりました。あなたはこのままマッカラン空港に向かってください。市警に連絡しておきます」はい、とウィリーの返事を聞き神宮寺はマイクを置いた。が、すぐにリンクをオンにする。「ジョー!応答しろ!神宮寺だ。ジョー!」
 繋がっているのかどうかわからないが応答はない。周りをビュートやメサに囲まれていては通信は難しいだろう。
「上がろう!」
 神宮寺が部屋を飛び出した。関が続く。立花はマッカラン空港の一角に置かれているチャーター機の離陸準備を頼むため電話を取った。

 耳元で誰かが自分の名を呼んでいるような気がしてジョーは目を開けた。
 目の前に見えるのは赤い色をした土だ。時々風で舞い上がる。
 ジョーは頭を動かし再び目を開けた。青い空が見えた。その視界の隅に黒く空に向かって立ち上っていく煙が入った。
(アパッチか・・・)
 ジョーはすぐに現状を思い出す。油や機械の焦げた臭いが漂っている。サンダーバードは大破したがアパッチは墜落したものの炎上しなかったようだ。もし炎上爆発していれば自分も無傷というわけにはいかなかっただろう。
(って、その前に弾傷受けちまったようだけど─)
 ジョーはゆっくりと体を起こした。あちこち痛いが思ったより体が動く。ただ時々視界がぶれる。放り出された時に頭を打ったのだろうか。
 と、アパッチの中から1人の男が這い出て来た。ゆっくりと立ち上がる姿が陽炎のように揺れて見えた。ユラユラと優雅に踊っているようだがジョーのセンサーが危険を察知して、彼の眼を覚ますように鋭く鳴った。
 体を起こし立ち上がる。男が近づくにつれ、ぶれていた顔立ちがはっきりと見えて来た。ファーだ。
「とんだ爆弾ぼうやだったな」ジョーの様子を見てファーがニヤリと口元を歪めた。「あの中にあったどんな武器よりも強力だったというわけか」
「・・・・・」
 ファーの言葉が耳を素通りしていく。代わりに聞こえるのは自らの乱れた息遣いと少し早目の鼓動の音と─。
 突然体が沈み膝をついた。
「火薬が切れたか。このまま放っておいてもいいんだが─」
 服の内側から小型の銃を取り出しジョーに向けた。それを目にするとジョーも再び立ち上がり、武器庫から持ち出したやはり小型銃を彼独特の立射スタイルで構え銃口をファーに向けた。
 ファーが一瞬目を見開く。それはジョーが銃を持っていた事に対しての反応ではなかった。瞳が遥か昔の記憶を追う。そして、
「そうだ・・思い出した・・・」と呟き、「昔、お前と似た男に会ったと話しただろう。バズーカを構えるお前の姿や今の、その銃の構え方で思い出した。そいつはどこかの警察関係者だった。お前とそっくりの立射スタイルで・・・まさかお前は・・・あの時の赤ん坊か?」
「・・・・・」
 と、言われてもジョーには答えられない。たとえファーの言う赤ん坊がジョーだったとしても、その時赤ん坊だったジョーにわかるわけがない。
「それがなんでマーキンスの所に・・・マーキンスは知ってて雇ったのか?」
「・・・・・」
 ジョーにはファーが何を言っているのかわからない。確かにマーキンスも20年くらい前にジョーとよく似た男に会ったようだが・・・その時の事か?
「お前の親父はな、おれを撃とうとしたんだ。自分の子どもごとな」
「・・・え?」
「〝お前〝を抱えていた〝おれ〝に銃口を向けたのさ。あれは本気だった。撃つつもりだった」
「・・・・・」
 ファーはその時の〝男〝がジョーの父親だと決めつけている。もちろんジョーには真実なのかどうか判断できない。それ以上にファーの言っている事がよくわからなかった。
「お前の親父は仕事のためなら自分の子どもも犠牲にできるんだ」
「お、おれの親父はそんな事はしない!人違いだ!」
「そうかな。お前のその顔、声、射撃スタイル─あいつと同じだ」ジョーは髪と瞳の色以外は父親とそっくりだ。ロレンツォもひと目でわかったと言っていた。「お前も大したガキで、泣きもしないでじっと親父を見ていたぜ。だがあの男はそんなお前の目を無視したんだ。子どもの事よりおれを捕まえる事を優先させて─」
「違う、それはおれの親父じゃない。自分の子どもに銃を向けるような事をするはずが─」
「左腕の銃創痕はまだ残っているか?」
「!」
 ジョーはとっさに左腕に目をやった。
 銃声が響き左腕から血しぶきが飛んだが、それと同時にジョーの指がトリガーを引いた。
 右胸を撃たれファーが後ろに倒れた。そのまま動かない。
 ジョーもしばらくの間ファーを撃った格好のまま動かなかった。と、上半身が揺れて膝をつきそうになる。辛うじて堪えた。
 一歩一歩ゆっくりとファーに近づき、彼が息をしている事を確かめるとホッと息をつきその場に座り込んだ。
 ファーの言っていた事を思い出そうとしたが頭の中を霧が覆ってしまったようにはっきりしない。痛みは感じないのに体が─意識が動かない。
 ジョーはその場に体を倒した。薄っすらと開いた瞳が舞い上がる赤い土を捉えた。
 このまま眠ってしまいたい、と思った時だ。左手のスピードマスターが振動した。が、その正体がわかるまで時間が掛かった。
 振動は1回切れ、だがまたすぐに震えた。ジョーの手がノロノロと口元まで動いた。スイッチを入れる。
『ジョー、神宮寺だ。無事か?今どこにいる?ファーはどうした?』
「・・・そんなにいっぺんに訊くなよ」苦笑混じりにジョーが答える。「でなくてもなんかボーとしてて・・・今にも眠っちまいそうで・・・」
『やられたのか?』これは関の声だ。『どこをやられたっ』
「ん~、よくわかんねえ・・・。とにかく今いるのはでっかい2つのメサから東へ10キロくらい・・・そのメサのそばで建物が吹っ飛んでるから目印になるかな・・・。ここは車が大破してアパッチが黒煙を上げていて・・・おれの横にはファーが寝ている・・・」
『な、なんかすごい状況だな』
『ジョー、そのままトレーサーに切り替えろ。おれ達はあと10分くらいでモニュメント・バレーに入る。すぐ行ってやる』が、応答がない。『ジョー!おい!』
『こらあ、ジョー!しっかりしろ!』関の怒鳴る声がスピードマスターから飛び出した。『おれに高価な形見をよこすまでは死ぬんじゃねーぞ!』
「・・・絶対にやらねぇ・・・」
 一言だけ返した。

 ラスベガスのファミリーメディカルグループの屋上から高速医療ヘリが飛び立った。市警にいる立花を介して神宮寺が要請したのだ。
 始め彼は自分達のセスナでジョーとファーを運ぼうと考えたが、通信の様子からジョーの状態があまり良くない事を察し医療ヘリを頼んだのだ。
 実際、神宮寺達もジョーのいる所を見つけるのに手間取っていた。ジョーがトレーサーに切り替える前に気を失ってしまい、通信装置だけの電波が頼りだった。また彼の言っていた〝でかいメサ〝というのもこの辺りなら掃いて捨てる程あるのだ。
 それでもかすかに昇る煙が目印になり、神宮寺がジョーの元に強引にセスナを下ろしたのは通信が切れて40分も過ぎた頃だった。そして医療ヘリが到着したのはさらに1時間も後の事だった。
 ジョーとファー、それにアパッチの中で伸びていた1人とアジト近くで倒れていた1人を収容しヘリはラスベガスに向けて飛び立った。神宮寺達がセスナで追う。
 4人共呼吸はしているが意識のない状態で特にジョーとファーが重傷だった。
 機内で救命処置がとられ、ヘリはメディカルセンターの屋上に降りた。神宮寺がセスナをマッカラン空港に降ろし関と共に病院に駆け付けた。
 と、ちょうど土や埃だらけの服を脱がされたジョーとファーが手術室へ運ばれるところだった。
 ファーはまだ気を失ったままだったがジョーは目を開け2人を視認した。
「ジョー!」関がストレッチャーに取りつく。看護師が退けようとしたが、「いいかっ、死ぬなよ!死んだら君のカウンタックを形見に貰うぞ!横っ腹に〝LOVE JOE〝って入れてやる!」
「や、やめてくれ・・」息が荒く顔色も悪いが思ったよりはっきりした口調が返ってきた。「おちおち死んでもいられねえな・・・」
「それ、〝LOVE JOE & SEKI〝っていうのはどうですか」
 神宮寺の言葉に、“いーね、それ!”と関が受けている。
「くそォ・・、絶対生き延びてやる」
 手術室に吸い込まれていくストレッチャーの上でジョーが唸った。バタン!と2人の前でドアが閉まった。
「ま、あれだけ言っておけば大丈夫だろう」
 ニヤッと関が片唇を上げた。

 捕らえられたファーの仲間の証言によりTEの本拠地が明らかになった。
 神宮寺と立花、関やサントス達が駆けつけ、その場にいた連中は皆捕らえられた。が、逃れた者もいるようだ。サントスやバートンそしてネバダ州警が行方を追っている。
 またTEに麻薬や銃を提供した組織も摘発されマーキンスも当然調べを受けた。
 あの日、レイク・ラスベガスでテロ行為を予定していたTEだったが集合場所であるモニュメントバレー近くのアジトに異常を感じ、一旦行動を中止してそれぞれのアジトに戻ったそうだ。そして本拠地に集まり警察の摘発を食らった。
 そのボスであるファーだが、ジョーに右胸を撃ち抜かれ重傷を負ったものの命に別状はなく、手術が行われたメディカルセンターで引き続き治療が為されている。元気になりしだい日本に護送されるそうだ。
 関が2年前の山荘占拠、爆破事件の真相を吐かせてやるとはりきっている。
 一方ジョーは手術を受けたその日から丸2日間一度も目を開ける事なく眠り続けた。
 全身の傷は不幸中の幸いかアパッチの30ミリチェインガンを直接受けたものではなく、被弾によって壊れ飛んできた車体の破片による物だった。そのいくつかがジョーの肉体を破り入り込んでいた。
 ほとんどが1センチ程度の破片だったが、中には3センチ程の大きな物が腰から入り込んでいてこれが体の自由を奪っていたらしい。全部の破片を取り出すのに5時間も掛かってしまった。
 それでも彼の心臓はしっかりと鼓動を打ち続けた。まだ酸素マスクの世話になっているが呼吸は乱れず穏やかだ。それが関の言葉のおかげかどうかはわからないが─。

「サントス」神宮寺がこちらに向かって歩いて来るサントスの大きな姿に気が付いた。と、サントスも神宮寺を見つけ嬉しそうに微笑む。「ジョーの見舞いに来てくれたのか?」
「ああ、面会謝絶が取れたと聞いたからな。でもおれが行った時はまだ目が覚めてなかったし、ちょうど医師の回診が始まったから出て来たんだ」
「そうか─」面会時間もそろそろ終わりだ。病室前の廊下も人通りが多くなった。「TEの残りの奴らはもう皆捕まえたのか?」
「奴らの話を信用するなら98パーセントはね。それより見舞いの時間がなくなるぜ。TEの事はおれに任せろ。最後の1人までとっ捕まえてやるぜ。ほら、行けよ」
「うん、頼むよサントス」
 手を上げてジョーの病室へと急ぐ。
 ジョーの事を心配しているのか─関に言わせれば神宮寺の顔を見たいからだ、そうだが─サントスは忙しい合間を縫ってよく見舞いに来てくれる。しかしまだ目を開けたジョーに会ってはいない。それは神宮寺も関も同様なのだが─。
 神宮寺はわずかに開いているドアに手を掛けた。と
「痛えな!さわるな!」突然室内から大声がした。急いでドアを開ける。ベッドに横になったままの ジョーが医師に抵抗していた。ふと神宮寺の姿が目に入る。「いいところへ来てくれたぜ神宮寺。こいつ傷が痛いって言ってンのにさわるんだぜ!」
「なに言ってるんですか!さわらなければ治療できないでしょ!」
 医師が言った。
「だからってそんなにバリバリ包帯剥がして─うっ!いてェ!やめろ!」
「おとなしくしなさい!暴れると余計に痛いぞ!」
「放せ!痛いってば!なんで傷をほじるんだよ!消毒液はやめろ!」
「・・・・・
 一言も発せず神宮寺がドアの横の壁に寄り掛かった。目の前で暴れる患者と医師や看護師を、勝手にやってくれとばかりにただ見ていた。
 やがて治療を終えた医師達が出て行った。神宮寺は、まだブツブツと文句を言っているジョーにゆっくりと近づいた。つい微笑んでしまう。
「なにがおかしいんだ」
 ジョーが睨みつけた。
「いや、いつものお前で良かった、と思って─」フンとジョーが鼻を鳴らした。強がってはいるものの体中の傷はまだ痛むらしくベッドから体を起こそうとはしなかった。「だが医師に逆らうのはよせ。次からは美人の看護師ではなく屈強な男の看護師がくるぞ」
「・・・・・」そこまでは考えていなかった。ただでさえ痛いのに男の手でベッドに押さえつけられるのかと思うと気が滅入る。とっとと話を変えてやる。「ファーは?ウィリーはどうした?」
「2人共生きてるよ」
 神宮寺は今までの経過をジョーに話した。ファーは2週間後に日本に送られる事が決まった事も。
「あ、マーキンスが礼を言ってたぜ。正式におれ達をボディガードとして雇いたいそうだ」結局マーキンスは被害者という事で今回はお咎めなしになった。「もちろんていねいにお断りしたけどな」
「ふ~ん・・・おれ達の本当の仕事を知ったらどーいう顔するかな」
 ふっと笑って─しかし次の瞬間表情が固まった。ファーの言っていた事が本当ならマーキンスも─
「どうした?具合が悪くなったか?」
「いや・・大丈夫だ」
「さっきまでサントスがいたんだぞ。お前はまだ寝ていたそうだが」
「立花と関は?まだ奴らを追っているのか?」
「立花はな。おれもこのあと合流するが、関さんは仕事の都合で帰国準備をしている」
「帰国?やばっ、カウンタックを獲られちまう。おれ達も帰ろうぜ、神宮寺」
「お前が生きてるんだから大丈夫だよ。それに帰るのは傷を治してからじゃないと─」
「関の言ってる事なんか信用できるか!横っ腹にヘンな事ペイントされたらどうするんだ!なあ神宮寺、帰ろうぜ。一応任務は終了したんだし」
「わからないぞ。またどこかへ飛ばされるかも・・・」
「言うな!お前が言うとロクな事にならない!」
 ジョーが叫んだ。体中の傷がズキッと痛む。ベッドに体を丸め唸った。

 ジョーはファーの話を神宮寺には話さなかった。マーキンスが知っているだろうと思ったが彼に訊く事もできない。
 20年前に何があったのか─わからぬままジョーは1人胸に閊えた想いを抱え黙って耐えていた。



                                                完


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Comment

淳 says... "覚書き"
一瞬ラスベガスは3冊!?と思ってしまったが2冊で収まる。
ページがちょっと余るかな、と思ったらそれまで考えていなかったシーンが入ってしまう。今回もまた・・・。

でもこれで次のストーリーの切っ掛けができたが。
せっかく来た関と立花をもう少し入れてやりたかったな。
2011.05.25 15:38 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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