コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳   1 comments   0 trackback

東京てんやわんや大追跡 2


「見て、コト。すごいでしょう」
「ホ~ント、大きなブレープフルーツ!」果物好きのコトは大喜びでグレープフルーツを放りあげた。「おいしそ~
「今夜までお預けよ」ジュンはコトの手の中で震えているフルーツを取り上げた。「それにしてもミスター遅いわね。もうそろそろ着いてもいい頃なのに・・・」
「道が混んでるんだろ。今はラッシュ時だもの」
 部屋の真ん中でテーブルを拭いているジョーが答えた。その時だ。リリリ・・・とベルが彼らを呼んだ。
「あ、私が出るわ」コトが受話器を取った。「はい─え?─あ、あの・・」
 なにやらコトがあせっておる。ジョーとジュンは彼女を見た。
「その・・つまり・・、ジャ、ジャスト ア モーメント プリーズ!」
 そう叫ぶとコトは受話器を離すとハ~と息をついた。
「どうしたの?そんな真っ赤な顔して」
「外人なの。すごいの、英語でペラペラと─」
「英語?どれ」
 ジョーがコトから受話器を受け取った。
「Hello. Who is it?─えっ?なに?」ジョーは受話器を口から離すとコトに言った。「なに言ってるンだ。日本語じゃないか」
「へっ!?」
 コトが変な声を上げた。隣でジュンが彼女を憐れむような目で見ている。
「やあ、なんだ、ルカじゃないか」
 相手がルカだとわかるとジュンもコトもジョーのそばに駆け寄って来た。
「どうした。神宮寺にはもう会えた?─え?いない?そんなバカな・・・」今まで笑っていた3人の顔がこのジョーの言葉で急にきつくなった。「うん・・うん・・わかった。よし、じゃあそこにいてくれ。おれが行くよ。─ああ、じゃあな、待っててくれよ」
 ジョーは静かに受話器を置いた。そして2人の方を見た。
「いないって・・どういう意味?」
「きっと擦れ違っちゃったのよ。ねぇ、そうよね、ジョー」
「だといいけど・・・」
「ジョー!」
 ジュンがジョーを突っついた。ジョーはあわてて口を押さえた。
「ねェ、ジョー、私も行くわ。いいでしょ」
「大丈夫だよ、コト。おれ1人で─」
「ううん、行きたいの。ねっ、いいでしょ」
「ジョー」今度はジュンだ。「私も行くわ、いいでしょ」
 2人共真剣な目だ。ジョーは無言で2人に背を向けた。いいという証拠だ。
 ジュンは戸締りをし、コトはキッチンに広げてある物を片付けジョーの後に続いた。
 急に静かになった室内には水道から漏れた水が一滴落ちてかすかに音を立てた。

「ジュン、後席のレバーを引いてくれ」
「あ、はい」
 ジュンが前席の後ろにあるレバーを引くとガタンという音と共に後部席が出来上がった。
 ジョーのカウンタックは元々2人乗りなのだが彼の仕事上車体や内部を色々改造してある。このワンタッチバックシートもそのひとつだ。
 渋谷から首都高速に乗れば羽田まで40分で行かれる。
 ジョーは買い換えたばかりの真っ赤なランボルギーニ・カウンタックを違反スレスレのスピードで ぶっ飛ばしていた。おかげで40分のところ30分で着いてしまった。
 しかし生憎空港の駐車場はいっぱいだった。そこでジョーは近くの私設駐車場に車を置くと、ちょうど来合わせたタクシーで空港へと向かった。その間3人共ひと言も口をきかなかった。
「おれも行けばよかったよ・・」ジョーがポツリと言った。「一緒に行ってどうなるものじゃないけど・・でも・・」
「やめてよ、ジョー!」ジュンが止めた。「そんな言い方しないで。それじゃあまるでミスターが─」
 そこまで言うとジュンはハッとして口を押さえた。そして横に座っているコトをチラッと見た。
 だがコトは彼女の方を見ようともせず唇をギュッと噛みしめている。ジョーはバックミラーでそんな コトの様子を見、なんとも言えない表情をした。

 やがて車は羽田空港の入り口に着いた。
 ジョーはポケットからクシャクシャになった札を掴み出すと運転手に渡した。あとの2人はすでにタクシーから出て空港内に入っていた。ジョーは車のドアをバタンと閉めると、なにやらわめいている運転手を無視して彼女達のあとを追った。
「ルカ!」
 3人共彼の顔は知っているのですぐ見つける事ができた。
「ジョージ!」
「ねぇ、ルカ」コトが詰め寄った。「力さん・・・ミスター神宮寺には会わなかったの?」
 ルカはコトやジュンの顔は知っているものの会うのは初めてだ。だが彼はこの真っ直ぐで素直な美しい髪を持つがいつも神宮寺から聞いている彼のいい娘だという事がわかった。そして彼はしばしコトの純日本的な美しい黒髪に見惚れていた。だがすぐに気を取り直すと彼女の目を真っ直ぐに見て静かに首を振った。
「!」
 ルカの、たったそれだけの動きがコトにとっては天と地がひっくり返るくらいに大ごとだった。だが彼女のキッとした表情は以前変わらずにいた。
(見かけによらずコトは強いわ。もし私だったら大声でわめき散らすとこだわ)横目でコトを見ながらジュンは思った。(コトの強さはミスターを信じている強さね─)
 それからジュンはジョーを見た。ジョーの表情は神宮寺に対する心配よりもコトに対する気持ちが出ている様だった。
「心配する事はない。大丈夫さ。奴の事だから、きっとどこかで道草でも食ってるのさ。それでなきゃ道に迷ったか─」
 もちろんそれがジョーの本心じゃない事は皆わかっていた。
「とにかく2人を捜しましょ。何もしないでいるより─」
「そうだ」ジュンの言葉にルカが相槌を打った。「ぼくのマコも心配だ。まさかと思うが・・・。とにかく ぼくを迎えに来てどっか行っちゃったんなら・・ぼくだって・・」
「よし、わかった」ジョーは出口に向かいながら言った。「車で東京中捜してやるぜ」
「ねぇ、ジョー。私の車も出しましょうか。2手に分かれた方が捜す範囲が広くなるわ」
「いや、何かあった時のために一緒の方がいい」
「何かって・・まさか、ジョー」ジュンは一瞬口を閉じたがまたすぐ続けた。「あなた、今度の事は私達の仕事に関係ある事だと思っているんじゃ・・・」
「・・・・・」ジョーはすぐには答えなかった。彼が口を開いたのは4人がジョーの車に戻ってからだった。「はっきりそうだとは言えない。もちろん違うとも・・。とにかく今はそんな事で揉めている場合じゃないだろ」
「ところで、ジョー」ルカが訊いた。「捜すあてがあるのか?」
「ああ─。ジュン、助手席へ来てくれ。そしてその赤いボックスを─」
「レーダーね」
 ジュンが助手席の前にある赤いボックスを開けると中から超小型のレーダーが現われた。
「そうだ。そいつはある一定の電波を出すものにだけ反応する。おれと神宮寺の車には同じものが取り付けられているんだ」
 説明しながらジョーはバックミラーでルカとコトがシートベルトを着けたのを確認するとギアを入れた。
「そいつは相手が50キロ以内にまで近づくと青く、20キロ以内だと赤に変化する。ジュン、目を離すんじゃないぞ」
「ラジャ」
 ジュンは自分が仕事の時に使う返事をしたのに気がつかねほどその小さなレーダーに心を向けていた。
 だがそんな彼女の背中にもうひとつ・・なにか熱いものを感じていた。
 それは紛れもなくコトの視線だった。

 いくら性能の良いレーダーをフル回転しても、たった1台の車を捜し出すには東京はあまりにも広すぎる。
 もちろんレーダーだけではなく、やはり車に取り付けられている通信機も試してみた。だがどういうわけかウンともスンとも言わない。向こうで電源を切っているのだ。JBの決まりで通信機はいつでも使用可能にしておくようになっている。
 ただでさえ毛の短い神宮寺が太陽光線をまともに受け暑さボケしていようと、こんな初歩的なミスをするはずがない。
 おまけに彼はマコと一緒だ。もし・・・もし何かあったとしても彼1人ならどんな危険を冒しても敵中から脱出してくるだろう。だがたとえSメンバーであってもマコは一応女の子だ。役には立つだろうがやはり彼のような行動は難しい。
「ジョー、やっぱり2手に別れましょうよ。私の車に付いているレーダーはあなたのみたいに性能は良くないけど、それでもないよりはましだわ」
「だめだ。別行動はかえって危険だ」
「どうしてよ。─ジョー、ちょっと早合点のしすぎよ。もしかしたらなんの事もないかも・・・」
「そう願いたいな─。とにかく別かれる事は反対だ。第一君のレーダーでは彼の車を見つけ出す事はまず不可能だ。おれ達が使っているのは特別な波長だからね」
「でも・・・ジョー」
「うるさいな!おれがだめだと言ったらだめなんだ!」
 ジョーにそう言われジュンは黙ってしまった。
 ジョーが怒鳴るのは毎度の事だ。決して本気でない事はわかっている。
 だけど今日のジョーの怒鳴り声は怒っているというより少々戸惑っているように彼女には聞こえたのだった。

「こちら神宮寺。ジョー、応答頼む」
 その頃、神宮寺とマコを乗せたポルシェは羽田空港のそばの、それでいて人通りの少ない道端に停まっていた。今、彼はジョーに連絡をとっているのだ。
「ジョー、こちらTJ782、応答してくれ、ジョー」
『神宮寺か』しばらくしてジョーの声が返って来た。『いったいどこで何をしているんだ。あんまり遅いものだから捜しに行こうと今車に乗ったばかりだぜ』
「すまん、ジョー。だが今はそれどころじゃないんだ。ルカが─」
 そう言うと神宮寺は今までの事を簡単に話した。
『・・・やっぱり本当だったのか』
「え?どういう意味だ?」
『実はさっき電話があったんだ。空港でおれ達の名を騙ってルカを連れ出した奴がいる。電話はそいつらからさ。ルカは預かっているって』
「そんなァ!」マコが叫んだ。「ルカがそんなバカするはずがないわ!」
『しかし事実そうなっちゃったんだから仕方がないよ。とにかくこれからおれ達はルカを捜しに出る。何かわかったら連絡するよ』
「ああ、頼む」そう言うと彼はスイッチを切った。「ルカの奴・・どこへ連れて行かれたんだろう」
「別れましょ、ミスター」
「へっ!?」突然のマコの言葉に神宮寺はヘンな声を上げた。「別れるって・・ぼくは別に・・・」
「いやだ、なに言ってるのよォ」マコは思わず赤くなった。「別れるって言ったのは、つまり別れてルカを捜しましょうって事よ」
「なんだ、そうか」神宮寺は息をついて頷いた。だが次の瞬間、彼の首は毎秒10回転くらいの速さで横に振られていた。「だ、だめだよ、マコ。別れたら都合が悪い─」
「え?」
「あ、い、いや・・つまり、おれには少なくとも君を守る義務がある。離れたら危険だ」
「私だってKMJのメンバーよ。危険には慣れているわ」
「いや、だめだ。危ない。それとも何かい?おれと一緒なのがそんなにイヤかい?」
「そ、そうじゃないけど・・・」
「じゃあ決まりだ。それにもし君に何かあったらおれはルカにどう言えばいいんだ。狙撃銃のターゲットにされちまうよ」
「そうなったらおもしろいのにね」
「なに!?」
「いいから、いいから─さっ、行きましょう」
 そう言ってマコは勝手にキーを回したので神宮寺はあわててハンドルを握った。と、その時だ。2人の乗っているポルシェの前に10名あまりの男が現われたのだ。2人は少々驚いた。
「あの、すみません」神宮寺が車を下りて言った。「危ないですからちょっと・・・」
 と、突然男達が神宮寺に向かってきた。彼は驚いて後退したがさすがダブルJの一員である。
 神宮寺は反射的に男の腕を取り、背負い投げで後方に飛ばした。もちろん他の男達も黙ってはいない。次々と彼目掛けて突進してくる。
「ミスター、危ない!」
「出るな、マコ!車の中にいるんだ!」
 こうなってはもう何がなんだかわからない。
 神宮寺は自分に襲い掛かってくるこの男達は何者で、いったいなんのために自分に向かってくるのかわからないまま相手を倒していった。
「ミスター、後ろ!」
 マコの叫び声に神宮寺は振り向いた。

 ズダーン!

 鋭い銃声が辺りに響いた。
「神宮寺さん!」こうなっては彼の言いつけを守っているわけにはいかない。マコは車外に飛び出した。「大丈夫、ミスター」
「なあに、掠っただけさ」
「じんぐうじ・・・だと・・?」マコの声を聞いた男の1人が呟くように言った。「きさま、ルカじゃないのか」
「ルカ、だと?」今度は神宮寺だ。「おれが・・・」
「冗談じゃないわ!ルカはこんなにさみしくないわよ!」
 そう叫んで頭に掛けたマコの手を取ると神宮寺はジロリとマコを睨んだ。
「しかし・・」男はまだ何か言っている。「白いポルシェ・・ナンバーも間違いないし・・」
「お前─いったい何者なんだ」
 神宮寺は立ち上がると男に詰め寄った。男はしばし狼狽えたが、ふいに神宮寺の腹を蹴飛ばすと少し先に停めてあった白いスカイラインに乗って行ってしまった。その時すでに周りには誰もいなくなっていた。
「大丈夫、神宮寺さん」マコが彼に手を貸した。「ついてないわね、2回も」
「ホントだ。おれはジョーを恨むぜ」
「どーしてジョーを恨むの?関係ないと思うけど」
「いいんだ、いいんだ。あいつが悪いんだ」
「・・・時々ヘンな事言うわね」マコは車に乗り込みながら呟いた。「それにしてもさっきの男達は何者かしら。確かルカがどうとかって・・・」
「もしかしたら・・あいつらルカを攫った奴らじゃないのかな」
「もしそーだったら。なんでボケッとしてるのよ!」助手席でマコがわめいた。「早く追ってよ!ミスター!全速力よ!マッハ15!」
「まんがの見過ぎだァ」
「なァに!」
「い、いや─。わかりましたよ。くそォ、ジョーの奴─」
 なるべくマコの方を見ないようにしていたので思わずシフトをミスッてしまい、またマコに睨まれてしまった神宮寺─。
 今回はどうもついてないらしい。


        
          1 へ        ⇔       3 へ
スポンサーサイト

Comment

淳 says... "覚書き"
そろそろ「てんやわんや 2」をアップしようかと思ったが・・・おもしろくない・・・この話・・・。
なので読みながらアップ用に整えるのが苦痛になっていた。
自分で書いたものでも出来不出来はあるが、好き勝手に書いた話はそれなりに楽しめる。だが〝おもしろくない〝というのは辛い。楽しめないので、ただのアップ作業になっているのが哀しい。

とは言うものの・・・一度アップしたのだからやめるわけにはいかない。
頑張れ!と活を入れながら・・・頑張る。

ちなみに神宮寺の髪の毛の話は当時の友人達との楽屋落ちである。
神宮寺の髪は実はカ○ラではないかという疑惑が、かしましい3人娘をさらにヒートアップさせたのだ。
2011.06.23 14:00 | URL | #vDtZmC8A [edit]

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://junstory.blog63.fc2.com/tb.php/219-07d8a9cc