コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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北海道の旅はいそがしく 3

 この日は札幌泊になっていたので、彼らは長万部、洞爺を通り5時頃に市内のホテルに入った。
 ツインで二部屋続きになっている。
 部屋は自然にコンビ同士になってくるものだが、昨夜の事をまだ忘れていない洸が一平と一緒ではイヤだと言い出し、不本意ながら洸はジョーと同室する事になった。
 一息つくと4人はさっそく札幌の街に繰り出した。
 ホテルの前の道を真っ直ぐ行くと、彼らは自然に時計台の前へ出た。
 「ヘェ、あれが有名な時計台か」洸が言った「意外とあたり前の所にあるんだ」
 「写真だけ見りゃ、まるで公園の中にでもあるように思えるがな」ジョーも同意した。 
 確かに初めて見た人のほとんどはそう思うだろう。
 ジョーの言う通りパンフレットなどに出ている写真を見れば、公園か静かな所にひっそりと建っているように見える。いや、見た人間がそう決めつけているのかもしれない。だが実際の時計台は、車の往来の激しい大通りの四つ角のわきに木々を被りながらまるで人々の目を逃れるようにこっそり建っている。場所は知っていても、ともすれば見逃してしまいそうだ。
 「ああ・・、それに思っていたより小さい感じだ。だがこの塔は100年も時を刻んでいるんだぜ」
 「ミスターはホントいろんな事を知っているんだな」
 「あたり前さ、一平。こいつ出発の2、3日前から一生懸命ミニガイド読んでたもの」
 「フン、一緒に読んでて途中で放り出した根性のないのは誰だい」
 「あ、あれは他にやる事があったから─!」
 「そンな事どうでもいいからさァ、ラーメン食べに行こうよ?ォ!」
 「ラーメン?」一平が変な顔をした「なんだって急にラーメンなんて─」
 「そうか、アメリカ育ちの一平は知らないかもな」洸はニヤッとすると得意そうにしゃべり始めた 「札幌はその名の通り札幌ラーメンの本場なんだ。札幌に来てラーメンを食べないなんて、射撃場に行って銃を撃たないようなものだよ」
 「少し大袈裟だな」神宮寺が苦笑した「だけど洸の言う事もまんざらうそではないし・・・。ラーメンはいいとして、もう少しまわってみようよ。まだ6時だしさ」
 その意見に洸はブチュブチュ言ったが、結局彼らのあとにくっついて行った。
 大通公園は幅105m、長さ3、8キロのグリーンベルトが東西に伸びる札幌の観光地のひとつである。
 公園の東の外れには時計台と並ぶ名物のTV塔がある。展望台からの眺めは最高だ。その下には特産物のトウモロコシを焼くワゴンが出ていて、なんともいえぬ良い匂いを辺りに漂わせている。
 育ち盛りと称する洸はさっそく一本齧り始めた。まことに良い匂いである。
 3人はチラリと洸を見た。彼の食べ方がさもおいしそうなのを見ると3人も堪らなくなって、結局この4人の若者はトウモロコシ片手に公園内をブラブラし始めた。が、平均身長180の彼らはとかく目立つらしい。擦れ違う多くの人が振り返り4人を見る。だがそれも無理はない。
 長身に立派な体格、それぞれ個性的な面持ちの男が4人、固まって歩いているだけでも人目を引くのに、さらに4人揃いも揃ってトウモロコシで口をいっぱいにしているのだから─。
 トウモロコシをお腹に消した彼らは地下街、ポールタウンに入った。
 「ヘエ、東京より店があるみたいだァ」洸はさっきから“ヘェ”ばかりだ「見てよ、かっこいいジャケットだぜ。買っていこうかな?♪」
 「チェ、ここまで来て衣装選びかよ。女みたいな奴だな」
 「ヘン、ぼくはジョーみたいにワンパターンじゃないんでね。常に新しい物を求めてるのさ」
 「ワンパターンで悪かったな。しかし問題は中身さ」
 「大して変わらないよ、どっちも─。ぼくみたいなのを“水も滴るいい男”ってンだよ」
 「よおし、それなら本当に滴らせてやろーじゃねェか!」ジョーは口元の笑みを浮かべ洸に近づいた。洸が思わず一歩後退した。が、それがいけなかった「そォれェ!!」
 「わっ!わわわわ?!!」
 フイにジョーが洸を押した。洸は足に何かが当たり、それ以上後退する事ができずひっくり返ってしまった。
 バシャーン!!と素晴らしい音がした。
 「アハハハ・・」ジョーが笑いだした「どうだ、それがホントの“水も滴るいい男”って奴だぜ」
 洸がひっくり返った所は、地下通路の中央にズーと続いて作られている水路であった。それには“愛の泉”とか“幸福の泉”と名付けられている。
 洸が落ちたのは、この“幸福の泉”であった。その立札を見ると洸は思わず立ち上がった。
 「ちくしょう!何が幸福なもんか!」彼は勢いよく泉から飛び出した。
 「つめてェな!もっと気を付けて出やがれ!」
 「るせー!元はといえば、ジョーが悪いんじゃないか!」
 「なんだと!口のきき方に注意しろ。また叩きこまれたいのか!」
 「いくら先輩だからって、それとこれとは話が別だ!」
 2人の会話─ぐらいにしか当人達は思っていないのだ。他の人がなんと思おうと─は続く。
 その横で腰に手を当て、あるいは腕を組んでいる神宮寺と一平とが互いに顔を見合わせため息をついている。
 年が近いせいか幼いせいか、まったくこの2人の騒ぎを聞いているとまるで幼稚園児のようだ。  そう思っているのは2人ばかりではない。この通路を通る善良な人々もだ。
 彼らはジョーと洸の言い合いに一度は足を止める。が、不思議な事に誰一人、いやな顔をしないのだ。
 人々はただ、なんともいえない面持ちで2人を見ている。それはまさに彼ら2人のみに許されている行為だとでも思わせる表情である。
 同じ人間でありながら、どことなく雰囲気が違う2人・・いや4人の、それは得というべきか、それとも悲しみなのであろうか・・・。
 それから1時間ほど経って─。
 なんとか仲直りしたジョーと洸を引っ張り、4人は大通公園からそう離れていないラーメン屋にいた。さすが本場だけあってラーメンの種類も多い。注文すると10分で持ってくる。それぞれの香りが妙に合う。
 少し前に大きなトウモロコシを食べたばかりなのに、彼らのお腹はもうそんな事はすっかり忘れてしまったようだ。4人は一斉にどんぶりに手を伸ばした。
 「うまいな?」チュルチュルピュッピュッと音をたてながら洸が言った。
 「ああ、同じラーメンでも東京とのでは一味違うような気がするよ」
 「ヘェ、アメリカ生まれでアメリカ育ちの一平がそんな事わかるの」
 「両親は日本人だし近くに中国人のラーメン屋があったんだ。ま、その店のラーメンとも違うけど」
 「しかしこうして見回してみると、ほとんだが本州からのお客らしいな。地元の人はいい店を知っているだろうに」
 「ミスター、それじゃまるでこの店がまずいみたいだよ」
 「い、いや、そんなつもりで言ったんじゃないけど・・。それにしてもジョー」神宮寺はフト、横のジョーを見た「さっきから静かだけど、何か言う事はないのかい?」
 「こンのやろうっ!」
 「へっ!?」 サテ、ダレデショウ
 「あったまくるぜ!この2本棒!」
 「ど、どうしたんだよ、ジョー」
 一平は、向いに座っているジョーの言動に思わず自分のどんぶりを引き寄せた。
 「どうしたもこうしたもあるか!この2本棒の奴、さっきからおれに逆らいやがって!」
 「2本棒・・箸の事か」
 「トーヨーカンジ外の字を使うな!おかげで掴めやしない」
 「なンのこっちゃ」一平はさらにどんぶりをガードした。
 「どーしてここにフォークが出ないンだ!」
 「ラーメン屋にフォークが置いてあるかい!」洸が叫んだ。
 「とかくおまえにはラーメンなんて上等な代物は扱えないんだな」神宮寺がマジに言った「なんだったらこの少し向こうにレストランがあるから、そこでスパゲティでも食べてきたらいいさ」
 「るせェ!今に見てろ!この2本棒を征服してやる!」
 「やれやれ」一平が呆れてため息をついた。と、次の瞬間、もの凄い声を上げた。あとの3人は驚いて一平に顔を向けた。
 すると、彼のどんぶりがいつの間にかテーブルから消えている。フト下を見ると見た事のあるどんぶりが転がっており、そのまわりはラーメンの海だ。さっきから少しづつ、自分の方にまだ半分ほどラーメンの入っているどんぶりを引きよせ、気がついた時にはどんぶりの下にテーブルがなかったのだ。
 「・・・・・」
 「やれやれ・・まったく・・」
 今度は神宮寺が呟いたので、また何かやらかすかと洸が顔を向けた。が、残念ながら彼のどんぶりはすでにカラになっていてテーブルの半ほどに置かれている。動きそうもない。
 洸はガッカリしたがフト気が付いて、まだ中身が残っている自分のどんぶりを抱え込んだ。

 3日目のコースはちょっと強行軍である。おまけに峠ばかりだ。
 車も心配だが、ここが腕の見せ所とジョーが張り切っている。
 彼らは7時半にホテルを出、狩勝峠の頂に着いたのはそれから5時間してからだった。
 この狩勝峠は日本八景のひとつで、北海道の分水嶺日高山を横切る峠で石狩と十勝の国境になっている。その頂から見下ろす景色はあまりにも壮大すぎて、誰もが一瞬我れを忘れてしまう。いや“壮大”という言葉が、その眺めに相応しいかどうかも疑問である。それほど見事な眺めなのだ。
 さすがの4人もしばらくの間声も出ず、ただこみ上げてくる感動に浸っていた。壮大な西部育ちの一平とて例外ではない。まして完全な都会育ちの神宮寺や洸は、ただもう呆然と見とれるばかりだ。感想も言おうにも、この景色を前にそれにぴったりという言葉が見つからない。いやそれすらも考えられない。彼らはただ見とれるばかりなのだ。
 「・・すごいよ・・」だいぶ経って、洸がオズオズと口を開いた「これが自然の姿かと思うと、人間の小ささが身に染みる・・」
 あとの3人は無言で頷いた。
 いつもなら洸が真面目な事を言うとからかうジョーや一平も、今回は何もいわなかった。洸の言葉はズバリ彼らの心内でもあったからだ。
 4人は何回となく、上から下まで壮大なその光景を見回した。

 「7時半!?奴らそんなに早くホテルを出たのか!で、どこへ─なに、網走!?」今井の大声に、受話器の向こうの相手は顔をしかめているだろう「奴らはなんのために網走なんかへ・・・。とにかくお前は2人を見逃すな─なに、2人じゃなくて4人だと?そんなはずはない─ん─あの船には奴らしかいなかった・・ん─もしあの船で着くという情報が間違っていなければ、確かのそいつらは─しかしあとの2人はいったい何者だ。─よしすぐ調べてみよう。お前はその4人を見失うんじゃねェぞ!いいな!」
 それだけ言うと今井は受話器を置き思わず唸った。と、何かを思いついたのかハッと顔をあげた。
 「も、もしかしたら奴らは網走か釧路の組と手を組むつもりなのでは!」今井の表情が急激に険しくなってきた「もしそうだとしたら・・おれ達はお終いだ・・。それなら奴らが組む前にいっその事・・・」

 「行っても行っても岩壁だな」一平がため息まじりに言った。
 彼らはすでに層雲峡・大雪国道に入っていた。大雪山の北麗に開けたここ層雲峡は、峡谷美が極まるといわれる岩壁と樹木が艶やかな所でその長さは24キロも続く。その名の通りまさに雲を突き抜けるような大渓谷である。
 「ほら、あれが流星の滝、もう少し行くと銀河の滝が見えてくるよ」
 洸がガイドブックで溜め込んだ知識を披露している。
 「なるほどォ・・。まさに天から煌めき落ちるような美しさってやつだな」
 「ヘェ、顔に合わないロマンチックな事言うじゃないの、ジョー」
 「フン」ジョーはバックミラーに覗く洸に向かって言った「そんな事言うと、この車は谷に向かって走っていくかもしれねぇぞ」
 「やってごらん!そしたら君だけ突き落としてやるから!」
 「う??」洸の言葉にジョーが唸る。
 やがて車はトンネルを抜け石狩峠に入った。北海道の自動車道では二番目の高さの峠である。ここからは夏でも残雪を湛える大雪連峰をはじめ阿寒の山々が一望でき、訪れる人に北海道そのものを見せるといえよう。
 「ここは2番目に高い峠だろ。1番は幌鹿峠で標高1053mの─」
 「まったくお前はタイプライターみたいによく弾き出すなァ」
 「それを言うならコンピューターと言ってもらいたいねっ」
 「そんなに上等かねっ!」
 後席では一平と洸が何やら言い合いをしている。が、決して本気ではない。一種のゲームみたいなものだ。
 それに引き替え前席は静かである。いちもなら“うるさい!”の一言も怒鳴るジョーまでもが口を閉ざしている。その瞳に大雪の巨大な姿が映った時、彼は初めて口を開きポツリと言った。
 「・・・奴は・・生きているのかな・・」その呟きを神宮寺が聞き取り、ジョーの方を向いた「それとも、まだあの雪の中に埋もれているのか・・・」
 神宮寺は前方を見た。大雪山のその雄姿は広々として彼の瞳にも映った。
 「生きているさ・・」今度は神宮寺が呟きジョーは彼を見た「必ず生きている・・。そう言ったのはお前だ」
 「・・そうだったな・・。そうさ、そうとも、奴は必ず生きている。そして今度会った時は・・・」
 大雪を映しているジョーの瞳にバッと炎が燃え上がった。それを見た神宮寺は自分で意識する間もなく、もう2度とジョーとカルディが出会わないように、と思った。

 辻はまるでくまのように室内をイライラしながら歩き回っていた。
 「道内一を誇るわが捜査課がいったい何を手こずっておるのだ」辻はドスン!とイスに腰を下ろした。と、ノックが聞こえた「入れ!」
 「失礼します」ドアが開き1人の男が入ってきた「奴らの行き先がわかりました」
 「で、どこだ!」辻は思わず立ち上がった。
 「網走です」
 「あばしり・・?」辻はポカンと呟いた「なんでまた、そんな処へ・・」
 「我々にもわかりません・・。それから別の2人についても何も・・・」
 「う?む」辻は再び腰を下ろし、腕を組んだ「奴らはてっきり松前組と手を結ぶと思っとったがな・・。とにかく、それにしても奴らから目を離すわけにはいかん」
 辻の言葉に男は頷いた。
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