コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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赤と青のワルツ 7

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「起きて、神宮寺。ちょっとおもしろいものを見つけたよ」
 JB2室の仮眠用ベッドで寝ている神宮寺を洸が揺り起こした。隣のベッドの一平も目を覚ます。夜中の2時だった。
「なんだ?」2人は洸のパソコンのモニタを覗いた。「これって─」
「そう、ぼく・・のソフト」洸がニッと2人を見る。例の〝お騒がせソフト〝だ。「〝モナコ公国〝で検索かけたんだ。そしたらモナコ警察署のコンピュータに変な動きがあって─。そこでちょっと入って・・・みたら、どうも誰かが侵入して少しづつデータを書き替えているようなんだ」
入った・・・って・・洸・・」眉をしかめた神宮寺だが、「バレないようにやれよ」
「任せといてよ」
 神宮寺のお墨付きを貰った。
 新宿からJBに戻り鷲尾は無事だと知った3人だがどうも気になり、結局コンピュータで色々検索しているうちに帰りそびれていた。
「まだなんの影響も出てないようだけど、警察のコンピュータというのが気になるな」
「書き替えられているのがなんのデータかわからないか?」
「今はね。そのうちあちこちから不具合が出てくるんじゃない?そしたらわかるよ」
「それまで待っていられないだろ」
 一平がコーヒーを淹れて来てくれた。香り高い褐色の飲み物が3人の頭と目を覚ましてくれる。
「でも、何か起きているわけではないから、おれ達動けないし」
「とにかく洸はその情報を追ってくれ。一平、ここ何ヶ月かのモナコ公国に関する事件をピックアップしてみよう」
 ラジャ!と2人が答えた。
 コーヒーカップはカラになっていた。

 ルイ2世スタジアムは地元のサッカーチーム、A・S・モナコのホームグランドだ。
 土地の狭いモナコは建物はどうしても上に伸びる。このスタジアムも高い建物の間に埋まるように建っている。
 しかし実際には人口の半分を収容できるキャパシティを持ち、スタジアムの他に屋内競技場やバスケットコート、ジム、プールまである総合スポーチセンターだ。
 そのスタジアムに近い空き店舗のひとつで小さな爆発事故があった。いや、ガスは止められているので事故ではなく事件かもしれない。今、警察が入って調べている最中だ。その報告は後で聞けばいい。今聞いたところで相手はフランス語だ。細かい事まではわからない。
 ジョーはその店舗周りを一周してみた。
 モナコ特有の高い建物が視界を塞ぐ。そのせいかあちこちに監視カメラが見えた。
 事故現場を遠巻きに見ている人達が何か話していたが、これもフランス語だ。単語を繋ぎ合せてわかった事は、あの店舗は1ヶ月くらい前から空いていて、ここ2、3日は見知らぬ男達が出入りしていたからまた店舗として使われるのかと思っていた矢先だったらしい。
(不便だよな。世界中で一言語にしてほしいぜ)
 だとしたら英語か日本語かドイツ語がいいなと思い、角を曲がろうとしてふと足を止めた。視線の先にいる若い男は─。
「あれー、また会ったね」マルケスだ。だが今日は1人ではない。昨日港で会ったあのすさまじい威圧感を発する男と一緒だ。「爆発事故があったんだってね。君も見に来たの?」
「ん・・まあ・・」
 マルケスに答えながらジョーはその傍らに立つ男を気にしている。
 イタリア人だろうか。黒い髪と瞳、ガッチリした体格と意志の強いその眼差し─。男としては魅力があるが、ジョーにはその男が纏う黒い影のようなものが気になった。
 と、向こうの角からバラバラと四方に散らばる警官達が目に入った。近所への聞き込みに向かうのか。
 ジョーはとっさに警官達から身を隠した。なぜそんな事をしたのかわからない。自分が警察関係者だと2人に知られたくなかったのか。それとも警官に彼らと一緒にいるところを見られたくなかったのか─。
「君、警察に追われているの?」
 じっとジョーを見つめマルケスが訊いた。男もジョーを見る。
「いや、そうじゃないけど・・なんか苦手で・・」
「君、イタリア人だろ?フィレンツェって言ってたけど。でもイタリア人なら想いは我々と同じ仲間だ」
“マルケス”と男が鋭く声を上げた。ジョーが思っていたような低く、それでいて耳に突き刺さるような響きだ。
「トニーニョだって言ってたじゃないか。ただ者じゃないって。おれもそう思う」
「・・・・・」
 この男はトニーニョという名前らしい。しかし仲間とはなんの事だ?
 ジョーがその問いを口にしようとした時、ファン!と車のクラクションが鳴った。ルノーが2人の近くに停まっていた。
「縁があったらきっとまた会うな」
 マルケスはトニーニョとその車に乗り込んだ。発進するわずかの間にトニーニョがジョーに目を向けて来た。
 もう2度と目の前に現れるな、と言っている。
「知らねーよ、そんな事」
 ジョーが遠ざかるルノーに向かって舌を打った。あっちが待ち伏せしていたようなタイミングで現われたのだ。その台詞はそっくりそのまま─。
「ジェノバ?」
 そうだ、モナコ署で〝ウーノ・ジェノバ〝と聞いた時に何か引っかかったんだ。確かマルケスもジェノバから来たと言っていた。
 もっともモナコとジェノバは150キロくらいしか離れていない。GPを見に来てもおかしくはないが。
 と、スピードマスターが振動した。ルイスからだ。
『今また爆発事故の情報が入りました。モンテカルロのオステンド通り沿いです』
「GPのコースじゃねえか」だがもう予選は終わっている。誰が1位だったのだろう、とチラッと思ったが、「行ってみる。道を教えてくれ」
 レンタルのプジョー207にはナビが付いていない。大きな通りは覚えたが、フランス国境に近いこことモナコ港の向こうでは途中の道はよくわからない。
『今、そこにいる部隊がモンテカルロに向かうそうです。その後を着いて行けば確かです』
「チェッ、このおれに人の後にくっついて走れと言うのかよっ」
 悪言をつくが仕方がない。
 ジョーは急いでプジョーに戻り、同じプジョーのパトカーの後を追った。

「最初の2ヶ所に加えこの4時間だけで3ヶ所の爆発事故の報告が入っています」グルリと一同を見回しモナコ署々長のリーブルが言った。彼は今まで大公宮にいたのだ。「幸い3ヶ所共空き家で人的被害はありませんでした」
 彼がいつもより緊張しているのは目の前に座る面々が部下だけでなく、国際警察の長官や他国の支部長達が同席しているからだ。
 彼は現場検証の報告書を見ながら説明を始めた。
 爆弾は3つともタイマー式でそれぞれ30分づつずれてセットしてあった。規模は小さく、室内を焦がしたくらいで済んだがあまりこのような事に慣れていないモナコの住民にはショックだったらしく、彼らは挙って聞き込みに来た警官に協力してくれた。
 それによると3ヶ所の空き店舗は1ヶ月前後空いていたが、ここ2、3日見慣れぬ男達が出入りしていたという。その男達が爆発物を置いたのではと考え、監視センターに保存されているカメラのデータを4日前のものから点検した。
 というのも3店舗の入り口はそれぞれ違うカメラではあるがちょうどモニタできる所にあるのだ。もし3ヶ所に同じ人物が映っていれば─。
 しかし何度見ても同一人物は見つからず、それどころかここ3、4日その店舗に入った者さえいなかったのだ。
「3ヶ所共、出入り口は1つで裏口はありません。壁か窓でも壊さない限り出入りは不可能です。しかしその唯一の出入り口前のカメラには侵入者の姿は映っていません」
「ルパンみたいだな」つい、ジョーが口を出した。「通気口とか地下に繋がっている道は?」
「調べましたが3店舗共そのような物はありません」
 遥か年下のジョーにまでていねいな口を利くのは、彼が鷲尾の秘蔵っ子だとセルファンから聞いたからだ。それでなくてもSメンバーの肩書きは強い。
 それにしても24時間稼働しているカメラに侵入者が映っていないのはどうしてだろう。タイマーなので爆発時に現場にいなくてもよいが、その場に爆発物を仕掛けるためには誰かが侵入しなければならない。他所から勝手に移動するはずはないのだから。
「今、国内の空き家、空き店舗の捜索をしています」リーブル署長に代わり、現場に赴いた捜査課長のソワルが言った。「まだ不審物発見の知らせはありません」
「ウーノ・ジェノバというのはどういう組織かわかっていますか?」
 フェルナンド支部長が訊いた。
「実は1年程前に同じウーノ・ジェノバと名乗るグループから今回と同じ要求がありました。ジェノバ人が中心の組織らしく─。この辺りは元々ジェノバ人の築いた要塞地なのですが、それをジェノバに返還せよ、と言って来まして。我々はもちろんイタリア警察も捜査したのですが結局捕まえる事はできませんでした。もっともその時はなんの被害もなかったのですが」
「1年経って強行手段に出たのか」
 ベルギー・ルクセンブルク支部長のカイザスだ。
「そのウーノ・ジェノバの中に〝マルケス〝と〝トニーニョ〝という名前の奴はいませんか?」
「え?」
「マルケス?」ジョーの言葉に皆の目が彼に向けられた。「なんでそんな名が?」
「1回目の爆発現場で遇ったんだです。ジェノバから来た、と言っていたし」
「しかしこの時期、ジェノバからの観光客は珍しくありません」
「そうなんだけど・・・」
 そのままジョーは口を閉じてしまった。
 確証は何もない。ただ彼のカンだけだ。それだけでここにいる面々を納得させるのは無理だ。ただ1人を除いて─。
 その後警察署は24時間監視を続け鷲尾達は部屋に戻った。

「おはよう、神宮寺君」カウンターの向こうの杉本が声を掛けて来た。「泊まり込みか?」
「おはようございます。─あれ、いい匂いだな。みそ煮ですか?」
「昨日のサバのみそ煮なんだがね・・。食べるかい?サービスするよ」
 神宮寺が頷くのを見ると杉本は炊きたてのご飯と一緒にトレイに乗せてくれた。24時間体制のJBは食堂の開く時間も早い。
「一晩おいた方が味が染み込んでおいしいんだ」
「そういえばアメリカにいる時、ジョーが杉本さんのサバのみそ煮が食いたいって言ってました」
「そうか。ジョーにも日本のみそ煮の味がわかるようになったか」ジョーは日本に12年もいるのだから当然なのだが。「よし、ではサバのみそ煮強化計画バージョン2の研究開発を─」
「普通のでいいと思いますよ」
 余計な事を言っちまったかな、とソソクサとカウンターを離れた。こういう時、試食係をさせられるのは大抵洸か一平だ。ちょうど今2人共JB2室にいる。
 杉本の新作が完成するまでにジョーが戻って来られればいいが、と思った。

 モナコ警察は夜を徹して空き家や公園、路地など爆弾が仕掛けられやすい所を徹底的に調べ回った。
 明るくなり始めるとGPのコースや観客席、植え込みやコース沿いの建物の外部や店なども調べ上げた。
 その結果見つかったのは小さなタイマー式の爆弾1個だった。
 これだけという事はないだろう。それともまだ全部は仕掛けられていないのだろうか─。
 そう考え、モニタの前では20人の監視員が50面あるモニタから目を離さず見張っていた。その中にはジョーもいた。もっとも彼は現在の映像を見ているのではなく、ここ3、4日前の映像を見ていた。その中からマルケスやトニーニョの姿を捜したが、不思議と彼らの姿はひとつも映っていなかった。
 モナコ国内にいる人間すべてが映し出されるというわけではないが、ジョーはなんとなく引っ掛かるものを感じていた。
(マルケスはイタリア人・・・・・のおれを仲間だと言った。同郷と言う意味か・・)
 モニタにジョーがレンタルしているプジョーが映った。おとといGPコースを走った時のものだ。
 マルケスと遇った港はカメラエリアから少し外れているらしく映像はない。爆発現場近くで遇った時のもだ。
(なんかうまく避けているみたいだな)
 疑い出すと切りがない。
 ジョーはモニタのスイッチを切り、現在の映像を映している50面のモニタに目を向けた。
 250台あるカメラのうち33台が遠隔操作でズームアップできるもので主に公道に設置されている。後のカメラは固定式で一般道やトンネル、公共エレベータや駅を映している。
 昨日ジョーはホテルの地下から予選走行中のトンネルに入り込んだ。よくバレなかったな、と思う。始終モニタを見ているわけではないという事か。
(あれ?でもストックの中にもその映像はなかったな)
 ジョーはもう一度昨日のトンネル付近の映像をモニタに流した。GPコースにもなっているホテル下のトンネルはしっかりモニタリングされている。ギリギリだが地下作業場のドアも映っていた。
 彼がトンネル内に出た時間ははっきりしないが15時から1時間くらいが限度だろう。だがそのドアが開く事も、無謀にもコースに飛び出す狙撃者と追跡者の姿は記録されていない。
(どういう事だ?)
 あまり細かくアレコレ考えるのは苦手だ。その役はいつも神宮寺がやっている。と、携帯電話が鳴った。その神宮寺からだ。ジョーは管理センターから廊下に出た。
『そっちで何か事件が起きてないか?』
 あいさつ抜きだ。
「ああ、4時間で3つの爆破事件があった。─って、なんでわかるんだ?例のGPSか?」
『警察の監視カメラに異常はないか?』
「・・・・・」こうなるとGPSどころではない。やはり監視衛星を飛ばしているに違いない。「まだよくわからねえが─」
 ジョーは今までの出来事を神宮寺に話した。マルケスやトニーニョの事もだ。
『なるほど。実は鷲尾さんの件が気になって、こっちも洸のソフト・・・・・で検索したんだが─』
 それによるとどこからか警察の、それもカメラをコントロールしているコンピュータに入り込んで間違ったデータを流したり、一部、あるいは全部消却して混乱させようとしている悪意のあるファイルを送りつけているコンピュータのネット回線が見つかったという。
 アトランダムに繋がるらしく追跡は難しいが、ヘタすれば警察のコンピュータが乗っ取られてしまうかもしれない。
「じゃあ、今おれ達が見ている映像や何日分かのストックは本物じゃないかも?」
『あり得るな。今すぐ点検した方がいい。監視カメラの間違った映像なんてなんの役にも立たないぞ』それはそうだ。『それからマルケスとトニーニョというのは出てきていないが─』
「ジョー」後ろから声を掛けられた。ルイスだ。「長官が朝食を一緒に、と─」
「ちょうどいいや、ルイス。─神宮寺、ルイスに話してくれ。おれは街に出る」
 そう言いジョーはルイスに携帯を押し付けた。そのまま駐車場に向かう。
「ジョー!?─あ、コンニチハ、ジングージ」
 ルイスが日本語で言った。



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Comment

淳 says... "覚書き"
モナコ2冊目、難儀している。今まで1番進まない。ストーリーが出ない。
所々ポツポツとあるのだが繋がらない。
4日間で14ページなんて初めて。
ちょうど蒸し暑くてボーとなる季節ではあるが。

「強調点」を振ってみた。「中間点」を使ったがとても小さくなってしまう。
文字サイズやフォントを変えているせいかな。

「・・・」と同じ大きさならいいのに。

追記
わいこさんのお言葉をヒントに3つの点々をアップしてみた。
さて、どれがいいだろう。
2011.06.26 16:16 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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