コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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東京てんやわんや大追跡 3


 その頃ジョー達は銀座の中央通りを走っていた。どうして銀座に来たのかと聞かれても困る。車はもちろんジョー自身もわからないのだ。
 それに彼らに目的などない。なんせ気まぐれターゲットは今どこをどう行っているのかわからないのだから─。
「へ~、賑やかだな~。ニューヨークのマンハッタンのようだぜ」
「今日は金曜日だからこんなものさ。日曜なんか歩行者天国になってもっとすごいんだよ」
「ニューヨークも東京もそう変わらないな」
「都市なんてどこでも同じようなものさ」
 いくらうまく改造されているとはいえ、やはりカウンタックの後席の窓は小さい。ルカは前席のシートを掴みジョーとジュンの間から顔を出すようにして外を見ている。
「綺麗な髪だね」
「えっ?」
「君の髪だよ、ジュン。柔らかい栗色でさ。先っぽのRolleがこれまたいい。日本人てーのはどうしてこう髪が綺麗なんだろうね」
「ローレ、ドイツ語で来たわね。でもこの髪はフランス人の母譲りよ。瞳は黒いでしょ」
「ヘェ、君のお母さん、フランス人かァ。どうりで」
 栗色の髪はジュンの自慢のひとつである。それを褒められるのはとても嬉しい。だが今の彼女は自慢の髪を褒められても大して嬉しくなかった。何か他の事に心が行っているのだ。
(今度の事はなんだかピンとこないわ。まるでお芝居をしているみたい・・・。第一、あんなにミスター達を心配していたジョーがこんなに明るい顔で笑ったりして・・・。それにもし本気で捜す気ならまず最初にJBに連絡して行方を追うはずだわ。─よ~し)
「ねぇ、ジョー」
「ああ」
「こんな事してるより、いっその事JBに連絡してみたらどうかしら」
「ああ、なるほど!それはいい考えだ。なんで今まで気がつかなかったんだろう」思ったよりさらっと言ったジョーにジュンは頸を傾げた。その間にジョーはメモリを合わせ本部との交信に入っている。「こちらJA215─JB応答願います」
『こちら第6部隊通信部』返事はすぐに返って来た。『ジョーかい?中西だよ』
通信部の中西は第6部隊のチーフでジョーとも仲の良い男だ。
「中西か、ちょうどいいや。君の配下の通信レーダーを出してくれないか」
『通信レーダー?それで可愛い娘ちゃんでも見つけようというのかい?だったら賛成、手伝うよ』
「バカ言うな。おれは探さずとも向こうから─」ジュンが横目で睨んでいる。ジョーはコホンとひとつ咳払いをし、今までの事を簡単に話した。「神宮寺は可愛い娘ちゃんじゃないが、かと言って放っておくわけにはいかないだろ。彼の可愛い娘ちゃんもいる事だし」
『コトも一緒か。よし、わかった。なんとかしよう』
「ああ、頼むよ」ジョーはスイッチを切った。「さあ、これで少しは手掛かりが掴めるだろう。通信用レーダーを使えばおれ達みたいに休暇で休んでいるメンバーにも連絡が行く。それだけ範囲が広くなるわけだ」
「日本の機関もかなりのものだね」
 ルカが感心して言った。
「おれ達は秘密メンバーさ。誰にも悟られず自宅に連絡が取れるように通信機関は特に発達しているんだ」
「その発達している通信機が力さんに繋がらないのはどういう事かしら・・・」
 コトはポツリと言った。
「─いつまでもここにいても仕方がない」車内の暗い沈黙を破るようにジョーが口を開いた。「もう少し昇ってみる事にしよう」
「ジョー、神宮前に寄って」ジュンが言った。「私やっぱり車を出すわ」
「ジュン」
「大丈夫よ、ジョー。ルカが一緒に来てくれるわ」ジュンはルカを見た。と、彼は黙って頷いた。「通信機があるんですもの。もしあなたが先にミスターを見つけたらこっちに連絡してちょうだい。周波数は同じのはずよ」
「しかし・・・」
「お願い、ジョー。あのミスターがこんなに長い時間私達になんの連絡もせずいなくなるなんてこれはただ事ではないわ。それなら少しでも・・たとえ1台でも多くの車や人を出して探すべきよ」ジョーは黙っている。ジュンは少し口を止め、やがてまたゆっくりと言った。「私達は秘密メンバーだけど絶えず狙われている事は・・確かよ」
「・・フッ・・わかったよ・・・おてんばめが・・・」
 そう呟くとジョーは港区を突っ切って渋谷区に入るコースを取った。

 ちょうどその頃、神宮寺とマコを乗せたポルシェは品川辺りをウロチョロしていた。
 あれからなんの情報も入らず、彼ら自身どこへ行っていいのかわからないのだ。マコは相変わらずイライラしている。その横で神宮寺が28回目のため息をついた。
「ミスター、いったいどこへ行ったらいいの?」
「さあね─。情報が入らないとこれ以上どうしようもないよ」
「そんな呑気なァ」
 マコは神宮寺を睨んだ。これにはさすがの神宮寺も弱いらしい。いつもコトの睨み目で慣れてはいるものの、やはりマコとコトでは一味違う。ミスターは味にはうるさい方だ。
「わかりましたよ。それじゃもう一度ジョーに連絡を取ってみよう」
 マコの睨み目を料理する程神宮寺は器用ではない。またそんな彼の姿も見てはいられない。
 逃げるにはこの台詞が1番だ。

 ジョーはジュンとルカを降ろしコトと共に新宿方面へ走り去って行った。ジュンは急いで地下の駐車場に置いてある愛車を乗り出した。
「ヘェ、フェアレディだね」
「ええ、本当はイオタ(ランボルギーニ)が欲しかったけど、女の子には無理だってジョーに言われてね。それでこれで妥協しちゃったわけ」
「これだっていい車さ。美人に合う。君にぴったりさ」
「ありがと。お世辞はあとでゆっくり頼むわ。とにかく早く乗って」ルカが助手席に乗るとジュンはギアを入れた。滑るようにして車が走り出す。「ルカ、あなたの前の青いボタンを押して」
「これかい?なんなの、これ?」
「通信機よ。これでいつでも交信OKだわ。ルカ、お願いね」
「OK。まるでスパイ映画に出ているようだな」
 本当に映画みたいだとジュンは思った。だが彼女は口には出さなかった。

「ちょっと止まるぞ、マコ。車が腹をすかせているんでな」
「私もお腹すいちゃったわ、ミスター」
「そこのスタンドで何か食ってこいよ」神宮寺が指差したのはカソリンスタンドに隣接しているランチスタンドだった。「ガソリンを入れ終わったらおれも行くから」
「早くね。でないと2人分食べちゃうわよ」
「─2人分?ジョーダンだろ」
「なンか言った!?」
「なんでもないよ。早く行きなさい」
「ハァ~イ。今行くわ、愛しのハンバーガーちゃん
 マコの言葉に神宮寺は微笑んだ。そしてあれが彼女の精一杯の台詞なのだと思った。
「おれはジョーみたいに悪役にはなれないぜ。─かと言って、あいつを裏切るわけにもいかないしなァ・・・」
 すでに車はガソリンが満タンになっている。神宮寺は係員からキーを受け取るとカギをかけランチスタンドに向かおうとした。だがまだ何か迷っているようだ。
 その時、店内から鋭い悲鳴が聞こえて来た。確かにマコの声だ。
「仕方がない!」
 神宮寺は心を決めたように走り出した。
 店のドアを音を立てて開けるとマコが数人の男に捕まっていた。
「マコ!」
「動くな!」リーダーと思われる男が叫んだ。「少しでも動いたらこのを─」
「く・・・」神宮寺は真っ直ぐに男を睨みつけた。「お前達は何者だ。どうしておれ達を─」
「ちょっと聞きたい事があってな」男はマコのアゴを撫でながらゆっくり言った。マコはスキがあったら噛みついてやろうと横眼で狙っている。「ドミニク・ルカを知ってるな」
「ドミニク・ルカ・・・」
「恍けても無駄だ。調べはちゃんとついているんだ」
「誰も恍けてなンかないわ」
マコが口を挟んだ。
「うるさい!余計な事を言うな。コケるではないか!」男はマコの頭を小突いた。そしてまた神宮寺の方を見た。「つまりおれ達の知りたいのはそいつの・・ルカの行方だ」
「ルカの行方?それはこっちが訊きたいくらいだ」
「なにィ?」
「おれ達もルカを探しているんだ。嘘じゃない」
「そーよ、こっちが教えてほしいくらいだわ、おじさん」
「お、おじさん!?おれがまだ25だ!」
「サングラスなんかしてるからよ。取ってちょうだい。そしたら25に見てあげる」
「余計な事言うなっちゅーのに!おい、このおしゃべりを黙らせろ!」
 マコの横にいたもう1人の男がマコの口を手で塞いだ。と、突然男が声を上げた。マコが噛みついたのだ。
「あなたの手まずいわ!今度は味付けした手で押さえてちょーだいっ!」
 そう叫ぶとマコはあっけにとられて隙を見せた男の腹を蹴飛ばしその手より逃れた。
うまいぞ・・・・マコ!」
「ええい!こーなったらこいつらを囮にしてルカを誘い出すんだ!捕まえろ!」
 マコに蹴られ床に転がっている男を抜かした6人の男が2人に向かって飛び掛かって来た。
「でやあ!」
 神宮寺は向かってきた1人を殴り倒し、後ろから絡まれた男の腕を取り自分の背中を通して投げ飛ばした。
「女だと思って油断するな!」
 そう叫んだ1人がマコに組みついた。と、そのとたん激しい足蹴りを食らった。
「なによ、エッチ!ルカに言い付けるわよ!」
 触られて喜んだのかコーフンしたのかマコはそばにいた神宮寺をも蹴っ飛ばした。
「いてえな、おい!」
「あっ、間違えた!そんな顔してるンだもん」
 2人は互いにナンダカンダ言いながら相手を倒して言った。
「仕方がない。これだ!」
 そう言うと男は2人に向かって鈍い音を発射した。

 ボカーン!

 音と同時に当たりに煙が立ち込めた。
「いかん、マコ。吸うな!クロロホルムだ!」
 神宮寺はマコの腕を掴み店から出ようとした。だがドアが開かない。
「ま、窓も開かないわ、ミスター」
「く、くそォ・・・」
 強力なクロロホルムだ─。
 最初にマコが、続いて神宮寺が床に倒れ込んだ。

「ど、どうしたの、コト」口に手をやり急に震えだしたコトにジョーは言った。「気分でも悪いのか?」
「そ・・そうじゃないの・・」事はゆっくり口を開けた。「なんだかわからないけど・・急にいやな気分がして・・。車のせいじゃないわ」
 ジョーはじっとコトを見ている。
「もしかしたら・・力さんやマコになにか・・・」
「まさか・・・。考え過ぎだよ、コト」
「・・そうだといいんだけど・・・」
 それっきりコトは黙ってしまった。ジョーはそんなコトを見て、それから時計を見た。
(3時か。すると・・・)ジョーはもう一度横眼で彼女を見た。(それにしてもなんてカンの強いなんだ・・・。それとも偶然だろうか)
 ジョーの目の前にジュンの顔が浮かんで消えた。



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