コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳   1 comments   0 trackback

東京てんやわんや大追跡 完


「ジュン!おい、しっかりしろ!」ルカはジュンの肩を掴み激しく揺さぶった。「ジュン!」
「あ・・・」やがて彼女はゆっくりと目を開けた。「ルカ─。私・・・」
「大丈夫かい?どこも痛くしなかった?」
「ええ、なんともないわ。でも、ここは・・・」
「どうやら見事にワナにはまったらしいよ」
「ええ」ジュンは周りを見回した。「地下室かしら」
「さあね。でも上じゃない事は確かだよ。だって落ちたんだもの」
「油断してはいなかったわ。急に床がなくなるなんて卑怯だわ」
「そんな事よりどこか抜け穴を探そう」
 そう言うとルカは立ち上がり周りの壁を撫でてみた。だが硬い石ばかりでどこにも出られそうな所はない。明りとりであるただひとつの窓は30センチ四方の小さなもので、おまけに何メートルも上にある。とても登れそうにない。
「どうしてこんな事になっちゃったのか・・・まったく見当がつかないわ」ジュンが呟いた時だ。急に壁の一方が明るくなり、そこは大きな鏡になった。「ミスター!?」
「ええ!?」ジュンの声にルカが振り返り鏡を見た。「ミスター、マコ!」
「ミスター」ジュンは鏡に駆け寄った。「どうしたの、ミスター、マコ。こっち向いて」
 ジュンの姿も声を2人には聞こえないのか、神宮寺もマコもこちらを見ようともしない。
「ミスター、マコ」
「無駄だよ、ジュン」ルカが鏡を叩くジュンの手を止めて行った。「これはおそらくマジックミラーだ」
「マジックミラー?」
「前に博物館で見た事がある。と言ってもこんなに大きな物ではなく顔だけが映るぐらいの小さなものだけどね。こいつは光の当て方によって片側からしか向こうが見えない仕組みになっているんだ。だからぼく達には彼らの姿が見えても向こうからはぼく達の姿を見る事はできないんだよ」
「あ・・・。でもそうなら反対にだってなりうるわけね」
「うん?そりゃあね」
「じゃあ、早くそうならないかしら。お互いに気がつけば何ならかの手が打てるはずよ」
「そんな事言ったからって急にそうなるはずないよ」と、ルカが言った時である。突然神宮寺とマコを映していた鏡が暗くなり今度はジュンとルカの姿を映し出した。
「なったわ!」ジュンが叫んだ。「ねっ、ルカ。これで私達の姿が向こうに映ってるわね」
「たぶんね。それにしてもすごいね、ジュンは・・・」ルカが感心するように言った。と、急にジュンの胸が鳴りだした。「な、なに!?」
「マコからよ」そう言うとジュンは胸ポケットに飾ってあるブローチと取った。「これ通信機になっているのよ。女の子がブローチをつけているのはあたりまえでしょ。隠さず人目に晒すのが1番のカモフラージュなのよ。─こちら、ジュン。マコね」
『ジュン』すぐさまマコの声が返って来た。『本当にジュンね。びっくりしたわ』
「それはお互い様よ。それよりマコ、あなた達いったいどこをほっつき歩いていたのよ」
『なに言ってるのよ。ルカがさらわれたっていうから私達─』
「さらわれたァ!?」マコの言葉にルカが叫んだ。「おれがかァ!?」
『その声は・・・ルカァ!?』今度はマコだ。『あなた・・・さらわれたんじゃ…』
「おれがさらわれた?お菓子でか?それとも可愛い子ちゃんでか?」
「マコ、ルカはずーと私達といたわよ。あなた達こそルカを迎えにも行かないで─」
『行ったわ!ちゃんと時間前にね。そこでルカがさらわれたって聞いて─』
「おれはいるよォ。いったいどうなっちゃってるんだ?」
「さあ─」
「こんなことなら最初っからその通信機を使えばよかったのに」
「これ、私達が作った物だから2キロ以内じゃないと使えないのよ。それにしても・・・」
 ジュンが言葉を濁した時である。両方の部屋に突然笑い声が響いた。4人は反射的に互いの相手と背を合わせる形となった。
『ダブルJ並びKMJの諸君、ようこそ』声は若い男のようだ。『ドミニク・ルカ君誘拐事件をエサにこうも簡単に君達を捕まえられるとは思わなかったよ』
「エサ・・?目的は私達だったのね!」
『その通りだ。朝倉淳君。しかしまだ完全ではない。2人欠けておるのでな』
「そうだわ。コトに連絡して─」
『もう遅い。見ろ』
 その時、ダンッ、ダンッという音と共にドアが軋み始めた。
「ジュン!ルカ!」ジョーの声だ。「中にいるんだろ!ドアから離れるんだ!」
「ジョー、だめェ!」

 ズギューン!

 ジュンの止める声も銃声で消されてしまった。だがそのかわりドアの鍵が壊れ、ジョーとコトが入って来た。
「ジュン、ルカ、2人共無事でよかったぜ」
「ジョー!」ジュンがジョーに飛び付いた。「この鏡の向こうにミスターとマコが─」
「えっ?」
 ジョーは鏡を見た。するといつ替わったのか鏡には神宮寺とマコの姿が映っていた。
「2人共、こんな所にいたのか。よォし」ジョーは決心したように呟くとワルサーを鏡の中央に向けた。「神宮寺、マコ、2手に分かれて鏡の両端へ背中をあわせるんだ。決して動くなよ。動いたら命の保証はしないぜ。・・・動かなくてもしないけど・・・」
「無茶よ、ジョー」
 ジュンの声はまたもや激しい轟音に消された。と、目の前の鏡の中央が割れ、その周りのガラスも次第に落ちてきた。
「さあ、これっですぐ壊せる。退いてろ、2人共」ジョーは銃底で鏡を割り人が出られるくらいの大きさにした。「さあ、こっちへ、早く」
「助かったぜ、ジョー」
 神宮寺が苦笑した。
「いつまでもこんな所にいる事はない。さあ、出よう」5人はジョーの後ろに続いて部屋を出た。廊下は1本だ。他に通れそうな所はない。「仕方がない。とにかく行ってみよう」
 ジョーを先頭に神宮寺をラストに置き、彼らは用心深く進んで行った。
 だが何分か歩いてもいっこうに出口に出る様子はない。彼らは次第に不安になってきた。
「この道は出口への道じゃないのかしら」マコが呟いた。「第一、奴らがあの部屋からすんなりと私達を出したのもおかしいわ」
「だけど君達のいたのは地下室だぜ。それもそうとう深い─。出口までは距離がある」
「それに・・・なんだか同じところをグルグルまわっているみたいだわ」
「大丈夫。きっともうすぐ─」ジョーが言った時だ。偶然だろうか、彼らの目の前に光の束が見えたのだ。「ほォら、な?」
 ジョーは自慢そうに言うと、まず自分が先にその光の束の方に近寄ってみた。
 そこは直径30メートルぐらいの大きな丸い部屋だった。なにかわけのわからぬ物が置いてあるだけでどうやら危険はなさそうだ。ジョーは皆に手招きをした。
「なァに、ここ・・・」周りをグルリと見回しコトが言った。「まるで体育館みたい」
「体育館というより何かの訓練室みたいね」
 マコが呟いたその時、どこからか突然ダダダ・・・という連続音が聞こえてきた。
「伏せろ!」
 ジョーに言われるまでもない。みんな一斉に床にひれ伏した。と─、
「ハハハ・・・」またさっきと同じ笑い声だ。6人は声のする方を探した。「ダブルJの神宮寺力、ジョージ・アサクラ、KMJの広川真琴、朝倉淳、海咲麻琴、そしてアメリカ、ニューヨークのスワット隊員、ドミニク・ルカ─。これで役者は揃ったわけだ」
「誰だ、お前は!」
 上を向いてジョーが叫んだ。
「さあね。ただ言える事は・・・お前達の命を狙っている者だ!」
「なにィ・・」
「やれっ!」
 男の合図と共にまたもや銃弾の雨が降り注いだ。
 ジョーは反射的にジュンを突き飛ばし自分も反対側に転がった。神宮寺はコトを引っ張り後方へ─、ルカとマコはお互いに駆けっこしながらその場を離れた。
「くそ・・、こうなったら仕方がない」
 ジョーは、壁のわずかな隙間から覗いて銃を撃っている奴らに向かって銃をぶっ放した。
 だが今彼らの手にあるのはジョーのワルサーとコトの持っているコルト・ポケットだけだ。当然彼女はそれを神宮寺に渡した。しかしたとえ2人の腕がすばらしいとはいえ、これでは勝負は見えている。1分もしないうちに彼らの銃の弾はなくなってしまった。
「神宮寺!」
「こっちもだ、ジョー!」
 2人の会話で彼らは自分達に闘う武器がなくなった事を知った。と、突然壁の四方八方が開き何十人もの男達が彼らに向かってなだれ込んできた。しかし銃を持ってはいない。
「な、なァに!?」
 ジュンがジョーのそばに駆け寄ってきた。
「理由はわからないが銃を持っていないのは都合がいい。体術なら得意だろ!」
 そう叫ぶとジョーはジュンを突き飛ばした。と、弾みを食らったジュンは向かってくる男の1人に当たるようにしてしがみついた。
「さわらないでよ、やーらしい!」自分からしがみついていったくせにジュンは謝るどころか反対にその男にチョップを食らわした。「ハイ、一丁あがり~!」
 ジュンは自慢げに手を叩くと彼らに向かってウインクをした。
「ジュン1人に格好いい役をやらせる事はないわ」マコが叫んだ。「私達もやりましょー!」
 叫ぶと同時にマコは得意の足蹴りでそばにいた男を蹴り倒した。
 マコの声が合図になり彼らはそれぞれ得意な技で相手に向かって行った。
 神宮寺は床に転がっていた棒を拾い構えた。父から学んだ竹刀の技だ。
 幼少3才にして竹刀を握らせれた神宮寺はたった1本の棒きれをまるで自分の手のように扱える。さすがのベエさんも敵わないだろう。彼は確実に相手に峰打ちを食らわしていった。
 ジョーには武器など必要ない。彼自身備えている技が武器なのだ。5、6人の男達が一度に彼に掛かって来た。だがジョーは怯まない。それどころかかえって相手が多い事を喜んでいる。ジョーは半分楽しみながら相手を倒していった。
 ルカは銃がどこかに転がっていないか捜している。だが、転がっているのは男ばかりで銃も可愛い子ちゃんも見当たらない。
「それじゃァ、しかたがねーや!」
 ルカはそうウエイトの違わない相手を次々と投げ飛ばしていった。
 ジュンとコトは協力して相手に向かっている。まずコトが相手の前に出てチョップを食らわそうとする。間抜けな者はそのままチョップを食らうが、避けた者にはジュンが足を引っ掛け倒してから腹部を打つ。小回りの利く2人には打って付けの作戦だ。

 だが奴らは後から後から出てくる。これでは明らかにこちらの不利だ。
 ジョーは口笛を高く吹いた。一ヶ所に集まれ、という合図だ。それを知らないルカはマコに引っ張られ皆はジョーの周りに集まった。
「このままではいつかやられる。なんとかしなければ」
 さすがのジョーも息を弾ませている。
「くそォ、映画みたいだと思ったけどそれどころじゃないな」ルカが言った。「映画ならそろそろクライマックスだ。スーパーマンが現われて終わりになるはずだよ。ノートもうない事だし」
「スーパーマンが私では不満かね」
 その時、壁の一方が開き1人の男が姿を現した。
「チーフ!?」始めにジュンが声を上げた。それからルカを抜かした4人が、「森チーフ!」
 それはまさしく国際秘密警察日本支部長、森高成だった。
「諸君ご苦労さま。これだけの人数相手にここまで戦えたのはさすがだな」
「チーフ・・」コトが呟くように言った。「どうしてここへ・・」
「うん。私も今度の催しに賛成した1人でな。この役を買って出たのだよ」
「催し?なんの事、ジョー?」
「うん・・・つまりさ」ジョーがニヤリと笑った。「これはみ~んな、うそって事さ!」
「うそォ!?」ルカ、ジュン、コト、マコは一斉に声を上げた。「今までの事、すべてェ!?」
「おれと神宮寺で仕組んだんだ。ルカの歓迎会のお遊びさ」
「力さんも!?」コトが叫んだ。「あなたもいたずら坊主の1人!?」
「いや・・・おれはあまり気が進まなかったんだけど・・・」
「今さら言い訳は見苦しいぜ、神宮寺。ところで、ルカ。どうだいおれ達の歓迎の仕方は」
「ああ─」
 ルカはしばらく黙っていたが、やがて少しづつ口を開き始めた。
「今までの事がみんなお芝居だとは・・・。いや、驚いたよ」そしてルカはニッコリとした。「でも楽しかったぜ」
「そう言ってくれると思ってたよ。なっ、神宮寺。大丈夫だっただろ?」
「ところが大丈夫でもないわよ!」彼らが振り向くとジュン、コト、マコが牙(歯ともいう)を剥き出し男達を睨みつけていた。「なによ!よりによって私達まで騙すなんて!」
「え、だ、だってよ。敵を騙すにはまず味方からって・・・」それからコトに、「それにしてもコト。君のカンはすばらしいな。神宮寺は幸せ者だぜ」
 ジョーは神宮寺を突っついた。
「だが物は考えようだな。こんなと一緒になったら、うっかり浮気も─」
「ジョー!ミスター!」ジュンとコトが同時に声を上げた。「あんた達、蹴っ飛ばしてやるから!」
「ふわっ!★」
 ジョーと神宮寺は揃って逃げ始めた。もちろん女子2人はあとを追う。
「マコォ!」今まで茫然と見ていたルカがマコの顔を見て突然大声を上げた。「ぼく達半年ぶりに会ったんだよね!」
「そうよ」
「会いたかったよ、マコ!久しぶりだね~。元気だったかい!」
 そう叫ぶとルカはマコに飛び付きその頬に唇を押し付けた。
 かくして広い体育館を─いや、新しくできた訓練場の中は中央でルカとマコがいちゃつき、その周りをジョーと神宮寺の逃げ回る音と、ジュンとコトが2人を追いかける音とが響き広がって行った。


                                                  完


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淳 says... "覚書き"
お~、やっとアップし終わった・・・。
深く考えず勢いでアップし始めたので、途中気が抜けて苦労した。

これはまだハタチ前の学生の時に書いたもので、2人の友人(コトとマコ)にのみ見せていた。
だから楽屋落ちの台詞などもある。今回は削除せず載せた。

また、「公平に(良い思いさせて)してよ」と言う2人の攻撃がすさまじかったので、ノートの最後に、「私(淳)は公平ですよ~」という落書きも残っている。
さらに─ラストのルカの台詞のあと、「本当はマコにキスした、と書こうと思ったが、その日(当時)マコが淳をいぢめたからやめたー」なんて事も書いてある。

ま、内容はともかく懐かしい一話ではある。

最後にひとつ訂正を。
ルカは「ニューヨークのスワット」と書かれているが、本当は(ドラマ)ではアハイオ州のスワットだった。
あとでわかった事だが、ニューヨーク州ではスワットではなくESUと呼んでいる。
淳の記憶違いだった。
2011.07.21 15:22 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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