コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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赤と青のワルツ 完

resort02_03.jpg 

「ま、間に合ったのか・・」
 ジョーはホォと息をつきソファに座り込んだ。
 彼がいた所はラ・コンダミーヌ地区の港に近い所だった。そこから1番近い警察署というと、つい先月
に新設させたばかりの水上警察だった。
 ルイスから話を聞いたリーブル署長がそこへ連絡を入れ、パトカーでジョーを保護したのだ。
 今、彼がいるのは署内のテレビの前だ。
「OK, je serai djjà bon. Je vais à l'hôpital。(さあ、もういいでしょう。病院に行きますよ)」
 若い2人の警官がジョーに言った。
 彼を保護してくれた2人はそのまま病院へ向かおうとしたが、ジョーがF1の結果を見たいと言い張る
のでひとまず近くにある水上署に連れて来たのだ。
 相手はフランス語なのでジョーは所々しかわからなかったが、爆発が回避できれば後はどうでもよか
った。
 ガラスの破片で上半身は傷だらけだが幸い深い傷はない。弾丸は2発当たっていたが、1つはわき
腹を、もう1つは左太ももを掠っただけだった。
 ただ、なぜか脱力感が激しかった。
 動きの鈍い体を支えられ、ジョーは病院に向かうため車に乗り込もうとし─ハッと足を止めた。
 水上警察だけあって車庫の隣はボートハーバーになっていた。小さな国らしい小さな巡視艇と小型の
モーターボートが並んでいた。
 それを見たジョーは思い出したのだ。マルケスの言葉を─。
「君!」
 警官が叫んだ。ジョーは2人乗りのモーターボートに飛び乗りエンジンを掛けた。警官の制止を振り切
り港内へ飛び出した。
(まだだ。まだ終わっていない。防波堤にある爆発物をなんとかしなければ)
 デスクトップのモニタに映っていた映像。あれはカメラを使って爆発させるのとは別のシステムなのだ
ろう。難しい事はわからないが、おそらく防波堤の爆発物はまだ有効のはずだ。

 港に出て気がついたが、水上署はF1のパドックの近くにあった。
 両手で港を囲むように造られた防波堤。確か左右に仕掛けられているとマルケスは言っていた。
(どこだ!?)
 港内はGP観戦のクルーザーやボートで混んでいた。だがまだ港を出ようとする船はない。みんなが
余韻を楽しんでいるうちに、シャンパンで乾杯しているうちになんとか処理しなければ─。
 ジョーの操縦する小さなモーターボートが何十隻ものクルーザーの間を走り抜けて行く。

「あと10分で出港しますよ、じい様。そうすれば今日中にラベンナに入れます」
「忙しない奴だな」ロレンツォが呆れ顔で言った。「ほら、シャンパンファイトが始まったよ」
 彼は港の東側に設置されている大型スクリーンを指差した。港の船上からは見えないコースもあるの
で、テレビ中継が映し出されているのだ。
 アロンソが大きなボトルを振ってポンッと開ける。他の2人も次々と開けて行く。勝者による祝宴だ。
 と、ロレンツォの目がふと海上に流れた。その先にはものすごいスピードで海上を飛ばしていく小さな
モーターボートがあった。
「ほお、F1を見て自分もその気になっている輩がおるぞ。事故らなければいいがな」
 その言葉にトーニも目を向けた。ここからでは遠くてよくわからないが、かなりのスピードで港の出口
に向かっている。
 ふと、何かがトーニの脳裏を走った。

 モナコの小さな港を守るように左右に腕を広げたような防波堤が見える。
 ジョーはまず左側の先端近くにボートを停め潜ってみた。
 青い流れがジョーを包む。体中の切り傷が沁みたが、それがかえってジョーの気を奮い立たせた。
 透明度は思ったより良かった。先端をグルリと回り─外海に出る前に〝それ〝は見つかった。
 防波堤の先端に不自然に取りついている金属製の物。タイマーが付いている様子はなく、代わりにい
くつかの棒状の突起物が伸びている。
 マルケスの言葉を信じるなら、これと同じ物が対している右側の防波堤にも付いているはずだ。お互
いが電磁波で繋がっていて、その間を大型船が通る事によって電磁波が断ち切られると─。
 ジョーは一度海上に顔を出し再び潜った。
 電磁波を止める方法などわからない。だが機械に付いているランプが点滅している事から、こいつは
まだ有効だ、と確信した。
 ジョーは保護された時、水上署の署長にウーノ・ジェノバのアジトの場所を伝えている。正確な場所は
わからないが、窓ガラスの割れている部屋を捜せば見つかるだろう。
 もうマルケス達を確保しただろうか。彼ならこれを無効にできるはずだ。
 ジョーはボートに上がり、備え付けの無線に手を伸ばした。が、思い直しスピードマスターの通信機を
オンにした。フランス語も勉強しないとダメかな、と思いながら。
「ルイスか、ジョーだ。ウーノ・ジェノバの奴らは確保したか?」
『いえ、まだですが─。モーターボートを乗っ取ったそうですね。国外逃亡ですか?』
「できればそうしたいね。このままだとモナコ港が吹っ飛ぶぞ」ジョーはルイスに防波堤の爆発物の事を
話した。今それを確認した事も。「今すぐ港内の船に港から出ないよう連絡してくれ。特に大型のクルーザーは─」
『ジョー?どうしました?』
「まずい。何隻か動き出している」
 ジョーのいる場所からは見えないが、大型スクリーンがモナコGPの終了を映し出していた。すぐに出
港する船もあるだろう。港内なのでスピードは出ていないが防波堤から出るのは時間の問題だ。
 ジョーはボートのエンジンを掛け、こちらに向かってくる一隻の大型クルーザーに近づいた。
「Stop!」
 大声で叫ぶ。が、クルーザーのデッキにいる男はキョトンとしてジョーを見ているだけだ。
「Arrête!Holten!(止まれ!)」思いつくまま叫ぶがクルーザーは止まらない。「くそォ!」
 ジョーはモーターボートでクルーザーの進路に飛び出した。
 船も車と同じで制動を掛けても軽く何十メートルも進んでしまう。そのギリギリの距離にボートで道を塞
ぐ。
 クルーザーの制動が掛かった。ボートが進路から飛び退いた。操舵手に怒鳴られた。
 だが一隻一隻止めているのではどうしようもない。遥か反対側の船も動き出している。モーターボート
一隻ではカバーは無理だ。

 ジョーは再び防波堤の先端に戻った。
 ボート内に備え付けられている工具をいくつかズボンのウエストに突っ込み再び海に入った。なんとか
爆発物を引き剥がそうとする。接地面は多くないので大型ナイフを挟み少しづつ食い込ませていった。 慣れない海中の作業にすぐ息が苦しくなる。が、3、4回息つぎをして爆発物を引き剥がす事ができた。そっとボートに乗せ、対している防波堤へと急ぐ。
 この状態が電磁波を遮断しているのか、あるいはまだ繋がっているのかはわからない。ヘタをすると
ボートの上で爆発する。
 しかしランプの点滅の早さが先程と変わらないので大丈夫だと思った。
 確実なものは何もない。あるのはジョーのカンと行動力だけだ。

 やがて右側の防波堤の先端に着く。工具を手に飛び込んだ。やはりこちらにも同じような金属製の物体があった。
 壁との間にナイフを入れて行く。あまり振動を与えないように力を入れる。息が苦しく胸が痛んだ。だ
がコツは掴んでいたのでさっきよりは早く剥がす事ができた。
 重い体を持ち上げボートの上に上がる。荒い息使いが収まらない。
 と、一隻の大型クルーザーがボートに向かってくるのが見えた。そのデッキからは、
「ジョー!やっぱり、ジョーだ!」
「・・・トーニ?」見上げるジョーの目に黒髪と明るい笑顔のトーニが・・。そしてその横には、「シニョーレ・
・・」
「ボートを飛ばしていたのがお前だったとはな。トーニの目は確かなようだ」相変わらず不機嫌そうにロ
レンツォが言った。その横にはマルティーノもいる。「こんな所で何をしている」
「な、なにって・・」ハッと手元の金属物を見た。ランプの点滅がさっきより早くなっている。「まさか・・」
 2つの爆発物は並んでいるのだから電磁波が遮断されていないと思う。なのにこれは・・・。
 ジョーは今までの体験から、爆発する寸前だと直感した。すぐにエンジンを掛ける。
「これ以上動くな!」
 デッキに向かって怒鳴りボートがバッと飛び出した。一直線に防波堤の外側に向かう。残された3人
はアッケにとられモーターボートを見送った。
 が、トーニが操縦室に飛び込んだ。

 モーターボートは地中海に出た。あとどのくらい持つのかわからない。が、ジョーは自分のカンのまま行動した。
 点滅はわずかだが先程より早くなっている。限界だ、と思いジョーはボートの速度を最高速に設定し
自分は海に飛び込んだ。
 ガボッと体が沈んだ次の瞬間、轟音と共にボートが吹き飛んだ。
 防波堤に仕掛けられていただけあってかなりの威力だ。ボートの破片は空中に、海中に勢いよく飛び
散った。
「うっ!」
 大きな破片が浮かび上がる寸前だったジョーの左腕を切り裂いた。一瞬体が沈む。目の前の青い世
界に、赤い流れが混じる。
 ジョーは海面を目指して両足を蹴った。深い傷ではないのになぜか体が、左腕が動かない。と

 ─左腕の銃創はまだ残っているか─

「え?」誰かの声がそう言った。いや・・これは・・・。「ファー・・?」
 ああ、そうだ・・。鷲尾に抱きかかえられた時、おれは・・・。

 遠のく意識の隅にこちらに向かってくるものが見えた─。

「ジョー!」
「ジョージ!」
 デッキにいる3人が口々に叫ぶ。ジョーが乗っていたモーターボートが爆発した。が、
「あそこです!」
 マルティーノが叫ぶ。すぐさま海に飛び込んだ。続いてトーニが。その様子にオロオロしていたウォル
トも飛び込もうとするが、
「待て、ウォルト!」ロレンツォが止めた。「お前が飛び込んだら誰がジョージを引き上げるんだ!」
 言われてウォルトはウキワやロープを手にし海に投げた。

 何台ものパソコンが壊れた部屋で男達が確保された。だがあと2人、マルケスとトニーニョと名乗る男街中まちなかに様子を見に出たまま戻らないという。
 ソワルは部下を2人その部屋に残し、確保した男達をモナコ署に連行した。
 取り調べに、ウーノ・ジェノバを名乗る男達は少しづつだが淡々と答えていた。
 彼らのこの計画はかなり前から勧められていたもので、なんとモナコ署の中に彼らの仲間が監視カメ
ラ要員として勤めていたのだ。
 計画の実行により彼は他の警官達に気づかれないようにカメラのデータをウーノ・ジェノバのパソコン
に送ったり情報を流していた。例の鷲尾達のモナコ入国も泊まっているホテルもその情報の中にあった
 彼らは始めから鷲尾を狙ったわけではなく、あくまでも途中で得た情報による襲撃だった。だから一
回失敗してすぐ諦めたのだ。
 彼らに対する尋問はリーブル署長を始め国際警察の支部長の元、進められていく。

 トーニ達によって海中からクルーザーに助け上げられたジョーは、その後すぐ到着した水上警察によってモネゲッティ地区にあるグレース王妃病院へと搬送された。濡れた服を脱ぎ医師の診察を受ける。
 ガラス傷やボートが爆発した時に受けた小さな傷は無数にあった。だがそれらは大した事なく、左腕の傷も出血は多かったが深手ではなかった。
 だが右のわき腹にも爆発で飛んで来ただろう破片で裂かれた傷があり、その一部がまだ体内に残っ
ていた。医師はすぐさま手術の用意をさせた。
「ジョージ」
 手術室に向かうため処置室から廊下に出たストレッチャーを待っていたのは鷲尾とルイス、そしてロ
レンツォ達だった。
「ジョージ」
 もう一度鷲尾が呼ぶとジョーは薄っすらと目を開けた。荒い呼吸とぼんやりした目だが鷲尾の事は認
識しているようだ。
「街は大丈夫だ。洸がうまくやった」その言葉にかすかに微笑んだ。と、ストレッチャが動こうとし─だが
ジョーが鷲尾の腕を掴んだ。「ジョージ?」
「・・ファーからおれを引き剥がした時・・・親父は銃を撃ったって・・・」
「ファー?何を言っているんだ、こんな時に」
「鷲尾さんが・・おれを引き剥がす前・・親父の撃った弾丸はおれのひ・・左腕に当たって・・・。親父はや
っぱりおれを撃って・・ファーを掴まえるために・・」
 医師や看護師がストレッチャーを動かそうとした。が、ジョーは鷲尾の腕を掴んで離さなかった。
「ファーが言ってた・・。親父は本気だったって・・。本気でおれごとファーを撃つつもりだった・・」
「違う、ジョージ」鷲尾は自分の腕を掴んでいるジョーの手を自らの手で覆った。「確かにあの時アサクラ
は発砲した。君を撃つつもりなんかもちろんない。ファーの銃だけを落としたんだ。私達はファーを押さえようとした。が、その一瞬の隙にファーが君を地面に叩きつけるつもりか頭上に高く持ち上げた。そのファーの腕をアサクラは狙ったんだ。私が近くにいたので君を受け止めてくれると信じて」
 だがその時、小さなジョージの左腕を弾丸が掠ってしまった。
「少しでも君を傷つけてしまった事を後悔したアサクラは、その時使った銃をその後二度と使わなかっ
た。それがあのウッズマンだ」
「・・・親父がウッズマンを封印したのは・・そんな事があって・・」
 ズーとジョーの腕から力が抜け鷲尾の腕から離れた。ストレッチャーが再び動き出した。


                                           完

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Comment

淳 says... "覚書き"
ちょうどその年のモナコGPが終わった後に思いついた話なので、ほとんど淳の楽しみだけで書いて・・・そこに事件を被せたようなものかな。
でも楽しかった~~。
スーツ姿のジョーやGPコースを走っているジョーを想像して毎日ウキウキしていた。

実はラスト近くなって、「こりゃ、あと1週間は掛かるな」と思っていたが、突然トンネルを抜けたようにあ~っと言う間に書いてしまった。

モナコという非日常的な国(イメージ)とF1。
淳同様、ジョーも楽しんでくれたかな?
え?だったら事件起こすなって?

・・・ごもっとも。
2011.07.25 16:50 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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