コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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絆 完

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 夜が明けてジョーを迎えにジーンとデニスが再び訪れた。
 ジョーは左腕の出血がなかなか止まらず、また今までの怪我の経過もあり体力に限界がきているのか床に横たわったまま2人が入ってきても動かなかった。
 デニスがジョーの腕を取り立たせた。
「こいつはもう少し利用できそうだから連れて行くよ」
 そう言うジーンを鷲尾が睨みつけた。何に利用するのか知らないが、ジョーに協力させるためには幸子や健が必要となる。
 一か八かの作戦が始まる。鷲尾としては幸子達を巻き込みたくないのだが・・。
 と、デニスに腕を掴まれたままのジョーが自分を見ているのに気がついた。弱気になってはいけない。チャンスは今しかないのだ─。
 ジョーがかすかに口元を歪め、鷲尾も小さく頷く。

 3人が部屋を出て1分後、鷲尾が行動を開始した。

 一方、ジョーはジーンとデニスに連れられ外へ出た。昨日乗ってきたワンボックスカーが見える。
運転席にはバドが着いており、その後部座席にジョーは押し込められた。と、
「ジョージ」
「兄さん」
 幸子が、ぐったりしているジョーの体を抱くように、そして健が縋りついてきた。やはりこの2人を同行させる気だ。後の4人の人質は残されるのか─。
「ジョージ、どうしたの?しっかりして」
 幸子の声にジョーが薄っすらと目を開け─パチンとウインクしてみせた。そして小声で何か言っている。幸子がジョーの様子を見るように口元に耳を近づけた。
 と、“健を抱いて、じっとしてて。誰かが向こう側のドアを叩いたら車外へ出て”
「──」
 詳細はわからないが幸子は頷き健を抱き寄せた。

「ヘンリーの奴、見送りにも来てくれねえな。ま、その方が手間が省けていいが」
 笑いながらジーンはデニスと2人で山小屋の周りに黒く四角い物を置いて行く。そして少し離れた所に停めてあるワンボックッスカーの横に戻ると、手にしているリモコンのスイッチを入れた。が─。
「な、なんだっ。どうしたんだ」何度もカチカチ鳴らすがなんの変化も起きない。と、その山小屋のドアが開いて─。「・・マーク?」
「その爆弾は昨夜のうちに線を切っておいたよ」金髪の大きな男がゆっくりと出て来た。すぐ後ろには弟のヘンリーの顔も見える。「人質ごとおれやヘンリーを始末する気だったんだな。
あいつ・・・から聞いた時はすぐには信じられなかったが」
「な、なに?あいつ?」
「おれだよ」
 ワンボックスカーから声と共にジョーが出て来た。それまでは力なくぐったりとしていた体が、今は力強く伸び上がる。
 ブルーグレイの瞳はただそこにあるだけで相手に威圧感を与え、その動きを押さえる。
「おれがマークの部屋に行ったのは奴を殺すためじゃない。あんたの企みを伝え協力するよう話すためだ」
「なっ─、マーク!お前、仲間を裏切ってこいつと─!」
「それはお前もだろう、ジーン。おれのこの怪我だってお前らが仕組んだものだとわかっているんだ。思ったほど大怪我にはならなかったがな」
「くそォ」ジーンが銃を手にした。ジョー達は全員素手だ。「それ以上近づくな!車の中の人質を無事に帰したいんだったらな」
「あんたこそ、ヘタに動かない方がいーぜ」後部席のドアを閉めながらジョーが言った。この時、バドはすでにジョーによって気絶させられていた。「気がつかないのか?この周りは警察に囲まれている。強行突破は無理だぜ」
 ジョーの言葉通り、鷲尾の例のタイピン型超小型通信機でヴェズレーに待機するミュゼに連絡をとったのは夜明け前だった。
 彼らは鷲尾の指示通り姿を見せず山小屋の周りを固めた。
「山小屋の中の人質も、もう保護しているはずだぜ」
 ジョーがチラッとワンボックスカーに目を走らせた。
 実はこの時、彼らがいる反対側から近づいた鷲尾が車の後部席から幸子と健を助け出している最中だった。
 3人が安全な所に逃げるまで、ジョーはジーン達の気を引いていなければならない。もしかしたら車にも爆弾が仕掛けられているかもしれないからだ。
 が、ここでひとつ誤算があった。

 ガーン!
 銃声が響いた。
“あなた!”
“パパ!”
 叫びが聞こえた。

「鷲尾さん!?」
 振り向いたジョーの目に、右腕を押さえている鷲尾が見えた。その彼ら目指して1人の男が走ってくる。人質の部屋で見張りをしていた金髪の男だ。マークと話をした時には
こちら側・・・・ だと思っていたが、実はジーン派だったようだ。
「くっ!」ジョーが車を回り込み3人の所へ走り寄ろうとした。─が、それより早く男が着き、左腕で健を抱え上げた。「放せ!」
 ジョーが跳びつく。
 バンッ!と弾ける音と共にジョーが地面に転がった。
「ジョージ!」鷲尾と幸子の悲鳴が重なる。そのスキに健を抱えた男が走り出した。「待て!」
 鷲尾が後を追う。幸子はジョーの横に跪いた。と、
「ジョージ!」
 マーロンが走って来た。その手にはジョーのウッズマンが握られている。
 それを見たとたん、ジョーは体を起こしマーロンの手から愛銃を取り上げ走り出した。鷲尾の後を追う。地面に体を倒していても彼の行く方はしっかりと見ていたのだ。
 そのジョーをマーロンと警官達が追ってくる。残りは人質を保護したりマーク達を抑えている。
 だがその中にジーンの姿はなかった。
「鷲尾さん!健!」
 山小屋を回り込み裏側に出た。開いている前庭とは反対に裏側は樹木が迫っている。それが邪魔をして鷲尾の姿が見えない。
 と、樹木の奥で銃声がした。その方へと走る。
 体のどこかに貫通しなかった弾が入っているらしく激痛が襲ってくる。が、今は連れ去られた健の事で頭がいっぱいだった。
 少しも行かないうちに目の前がパッと開けた。樹木のない、ちょっとした広場とその隅に建っている小さな作業小屋が目に入った。そしてその前には健を抱えた男とジーン、そして対峙している鷲尾の後ろ姿─。
「それ以上近づくな!」ジーンが言った。「この小屋の中にも爆薬を隠してある。近づいたら爆発させるぞ!」
 鷲尾が目の前の2人を睨み、ジョーは彼から少し離れた所に移動した。
「取引のやり直しだ。金を積んだワンボックスカーをここへ持ってこい。10分以内にだ。急げ!」
 だが鷲尾もジョーも動かなかった。と、ジーンが手にしていた銃をスッと上げ、ジョーに向かって発砲した。が、弾丸は当たらなかった。
「わざと外したんだ。言う事を聞かないと、息子を2人も危険に晒す事になるぞ」
「──」
 鷲尾の全身から怒りの炎が噴き上がる。健はもちろん、血の繋がりはなくともジョーも大事な息子だ。その2人を脅しに使われた事でこれまでにはない怒り憎しみを感じた。
 こんな奴らに屈する事は出来ない。国際警察の長官としてではなく、
2人・・ の父親として─。
 だが、そんな鷲尾をジョーは冷静に見ていた。健に銃口を向けられるより自分に向けられる方がいい。正直言って怖さは感じない。
 そのジョーの目は、ジーン達の後ろで動く影のようなものも捉えていた。マーロン達だろうか。今は鷲尾やジョーに任せているが、このまま膠着状態が続けば周りを固めつつある警官達が一気に動き出すかもしれない。
 が、先に動いたのはジーンだった。このままでは埒(らち)が明かないと思ったのか、ジーンは男から健を抱き取りその頭に銃口を押し当てさっきと同じ要求を伝えた。その背後にマーロンと2、3人の警官が迫る。
(健─ジョージ!)
 目の前の光景に鷲尾が息を呑む。
 あの時と─ファーにジョージを盾に取られたあの時のアサクラと─いや、
彼自身・・・がジョージを人質に取られた10年前の事件の時と─。
 鷲尾は一瞬混乱し、だがすぐに山小屋で手に入れていた小型の銃を取り出すと真っ直ぐにジーンに向けた。
(鷲尾さん!)
 ジョーが驚いて目を見張る。これは以前に聞いた20年前のファーの事件とそっくりだ。
 あの時、ジョーが盾にされていると知りつつアサクラは怯まず対立する覚悟を決めていた。今の鷲尾もそのつもりか。だが─。

 ジョーは、今まで一言も発しない健に目を向けた。
 健は6才だが賢い子どもだ。バタバタ暴れたらかえって危ないと悟っているのだろう。父が自分達に銃口を向けた時も、ちょっとびっくりしたようだが黙っていた。きっと大きな声で父を呼び、泣きたいだろうに─。
(だめだ。鷲尾さんに撃たせてはいけない)
 ジョーがウッズマンのセイフティを解除した。
 ファーの事件の時、ジョーはまだ1才にもならなかった。したがって事件の記憶はない。
 だが6才になっている健にはしっかりと記憶として残るだろう。これが後々健を苦しめる事になりかねない。
 父親が自分に銃口を向け、撃ったとしたら─。
「鷲尾さん!」
 ジョーが鷲尾の銃口の前に立ちはだかる。
「ジ、ジョージ!」銃口が一瞬ピクリと震えた。「どきなさい、ジョージ!」
 だがジョーは首を振りその場をどかない。が、その目が、あっ!というように見開かれた。ジーンの撃った弾丸がジョーの背中に着弾したのだ。
 ジョーはそのまま鷲尾の銃を体で抱き込むようにして倒れ掛かった。
「ジョージ!─貴様!」鷲尾が銃を引き抜きジーンへと向ける。その手をジョーが掴んだ。互いの眼が合う。「な、なぜ─」
 が、それも一瞬の事でジョーが思いきり鷲尾を押し倒した。
 その時、前方からいくつもの声が響いた。マーロンを始め警官達が背後からジーンと男に跳びついたのだ。
 鷲尾とジョーのやり取りに気をとられていたジーン達は背後まで気がまわらなかったらしい。
 マーロンがジーンの手から健を奪い戻そうとする。が、ジーンが健に銃口を向けた。トリガーに指が掛かる。
「健!」
 両手で握るウッズマンがスッと上がった。フロントサイトがジョーの瞳と重なる。トリガーを引いた。
 ジーンの右手から血が吹き出し銃が落ちて行く。マーロンの大きな手が健の体に掛かり、胸に抱え込んだ。こちらに走ってくる。鷲尾が立ち上がり、マーロンから健を抱き取り抱きしめた。健の泣き声が響いた─。
 しかしジョーはそれを最後まで見届ける事はできなかった。

 拘束されたマークはすぐに病院へと搬送された。ヘンリーも一緒だ。
 マークの怪我は思ったより悪く、あれが精一杯の演技だったようだ。
 今朝、ジョーがジーンに連れて行かれた後、鷲尾はマーク達に会いに行った。
 ジョーの作戦は夜明け前に聞いていた。後は鷲尾がマークの病院搬送とヘンリーと2人の身の安全の保障について話し協力を頼んだのだ。
 マークは以前からいつかジーンが自分達を危機に陥れると考えていたし、人質を取るようなまねはよしとしなかった。悪人だが自分自身の信念を曲げる事はなかった。
 マークは協力を約束しジーンや見張りの男が山小屋を出た後、残された人質達を安全な森の中に隠したのだ。
 もちろんマークの怪我が治り次第2人は逮捕される事になる。

「2発も食らったままでよくあれだけ動けるものだ」ジョーと2人で使っていたホテルの部屋で荷物の整理をしながら鷲尾が何度目かの息をついた。「・・彼にとってはいつもの事で、大した事ではないのかもしれないな・・」
 と、力なく呟いた。
 その横では手伝っていた幸子がその手を止め鷲尾に目を向ける。彼女は健が救出された場面は見ていないがマーロンから話は聞いている。
 健は今は他の子ども達と一緒に隣室で遊んでいる。
「昔の・・20年前のファーの事件のようだった・・・。だが私はアサクラのように冷静にはなれなかった。もしあのままジーンを撃っていたら・・そばにいた健に当たっていたかもしれない。ジョージにはそれがわかったのだろう。万一の場合、私や健を傷つけないために彼は敵前で背中を晒すという禁じ手に出た。そして撃たれた・・・」
「あなた」
 幸子が鷲尾の手を握る。フワッと暖かいぬくもりが鷲尾を包む。
「私は彼に、あの時のアサクラのように冷静になれと言った。なのに私は・・」
「手術は成功して命に別条はないのだから大丈夫よ。ジョージは強い子だわ」
「もう1つあるんだ、幸子。私は─」
 ちょっと言葉を切った。が、幸子の黒い瞳に鷲尾が話し出す。
「ジーンが私に・・・ジョージがマークを撃ち殺したと言った時、まさかと思いながらも信じてしまったんだ。君や健を助けるためなら彼はなんでもする。自分の命を賭けてどんな事でもするだろう・・。だから─」
 鷲尾が自分の手を覆っている幸子の手をさらに覆う。
「だからきっと・・と、ジーンの言う事を信じてしまった。なぜジョージの事を信じてやれなかったのか。なぜ・・」
「ジョージはあなたをも騙そうとしたのでしょ?ジーンに信じ込ませるために。だったらきっと、“うまくいった”とほくそ笑んでいるわ。大丈夫。こんな事で私達の親子としての絆が切れるはずはないわ」
 ゆったりと、まるで聖女のような微笑みに鷲尾は幸子を見つめた。この微笑みに何度救われた事か。
「さあ、早くオーセールのジョージの所に行ってあげましょう。あの子の荷物はこのバッグだけなの?」小さなジムバッグを持ち上げた。「男の子ねえ、考えられないわ」
 と、その時、口ひもが緩んでいたのか中味がバサバサと床に落ちた。幸子があわてて拾う。
「薬?」
「ああ、モナコで貰ったものだろう。マルティーノに─」
 が、ふと違和感を感じ幸子の手から薬袋を取った。袋は2つ、痛み止めと化膿どめだ。だが両方共口が塞がれたまま開封された様子はない。昨夜ジョーは化膿止めだと薬を飲んでいたはずだが─。
 と、ジムバッグの底から昨夜見たピルケースが出て来た。白く小さな特徴ある2つのツノが出ている錠剤がいくつか入っていた。


                                             完



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Comment

淳 says... "覚書き"
ラストあと1行(ノート)ほしかった!
しかしこのラストはもっとハデなアクションになるはずだったのに??
そう、ジョーが颯爽と健を救出するはずだったのが・・・なんでかこうなった。

     ↑ その理由は・・・

この話を書いている時は精神的にも体的にもきつかった時。
そのせいか初めに考えていたストーリーとは、ちと違う方向に行ってしまった。

伏線いっぱいで・・・あとどうする?
2011.09.28 12:40 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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