コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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怒りの44マグナム 3



 その夜、神宮寺はなかなか寝られずにいた。昼間のジョーの言葉が耳にこびりついているのか、目を瞑るとその事ばかり浮かび上がってくる。
 ジョーの怒鳴る姿、母の心配そうな顔、挙句の果てには浩一達の姿まで見えてくる。
 神宮寺はソッと起き上がると枕元の机に置いてあるラジオのスイッチを入れた。これはジョーが持ってきたスーツケースの中に服と一緒に入っていた物だ。
 ボリュームを最小限にしメチャクチャに局番のスイッチを回した。と、彼の手は止まりわずかにボリュームを上げた。どうやらニュースのようだ。
『─麹町で起きたこの事件を捜査していた麹町署では、この時やはり軽症を負った男の人の服に付いていた塗料から─』神宮寺はラジオを耳に押し当てた。『─荒川建設側では事件当日このトラックは盗まれた物だと言っておりますが、同社は裏で暴力団東西会と繋がっている疑いが強く、警察側では─』
(東西会・・・。大阪と東京に幅を利かせているというあの暴力団か・・・)
 2、3日前、この東西会とやはり関東で幅を利かせている古川組との小さな争いが新聞に載っていたので神宮寺の記憶も新しい。
(荒川建設はその仕事のためによく東西会の力を借りていると聞くが・・・今度の事はまさか・・・) 神宮寺の天才的なカンが騒ぎ出した。これは彼の持って生まれたカンの強さと、今までの仕事で作り出されたものである。彼のカンの強さはJBでも有名だ。
(もしこのふたつが繋がっているとすれば・・・)
 深い沈黙の後、神宮寺は傍らのスーツケースに目をやった。

 耳元で連続音がした。
 ジョーは寝返りを打つと毛布を頭からひっ被った。そんな事をしても止まるわけがない。音はしつこく続いている。
「うるせェ!おれは今日休みなんだ!」
 ジョーは電話に向かって怒鳴った。と、頭がズキッとする。彼は思わず頭を押さえた。
 電話はまだ鳴り続けている。ジョーは舌打ちをすると乱暴に受話器を取った。
「はい・・・えっ、なんだ、チーフですか」彼はチラリと時計を見た。まだ8時だ。「おれ今日は休みですよ。それに昨日飲みすぎて目の前に星が・・・えっ、神宮寺がいなくなったア!?」
『朝の回診の時にはもうベッドは冷たかったそうだ』
「そうか・・・。くそ、あいつナンダカンダ言って結局やりやがった」
『なんの事かね?』
「えっ、い、いや別になんにも・・・」
『・・どうも怪しいな・・。いつもと反対なだけに・・・』
「チーフ!自分の部下が信じられないンですか!
『・・まあいい。休日のところ悪いが彼を捜してみてくれ。もし1人で手を出すつもりならやめさせてほしい。わかったか』
「はい、わかりません。おやすみなさい」
『ジョー!』
 受話器は音を立てて元の位置に置かれた。ジョーはフッと息をつくと再びベッドに寝っ転がった。
「やりたい者はやらせておけばいい。それを勧めたのはおれだもんな・・・。まっ、あいつの事だ。今日中にでも犯人をとっ捕まえて・・・が、まてよ・・」ジョーは再び体を起こした。「指名手配中ってのはあまりハデに動けないんだよなァ・・うん・・・」
 実感を込めて頷くとジョーはベッドから飛び出しロッカーを開けた。

 その頃、神宮寺は浩一兄弟がひき逃げされた麹町の現場に立っていた。
 彼は自分の記憶プラス目撃者の話を聞こうと、あの時現場にいた人達の顔を必死に思い出し数人を尋ねた。が、誰も彼もが口をごもす。
 神宮寺は4人目を当たった後、もうこれ以上まわっても無駄だと思い事故現場に足を向けたのだ。
 もちろん彼の心は晴れない。警察にも証言した彼らがなぜ急に口を閉じたのだろう。まして神宮寺はいわば被害者であり近所である。どちらかというと警察より顔なじみの彼に協力する方が常ではないだろうか。
(もしかしたらおれが寝ている間に荒川建設の者が手を・・・)が、彼はすぐに思い直した。(・・いや・・奴らは犯行を否認しているんだ。もしそんな事をすれば自ら白状するようなものだからな・・・)
 神宮寺は当てもなく歩き始めた。
 この道は彼が学校に行くのに近道した所なのでよくわかる。
 車の往来も比較的少ないこの道は、よく子ども達の遊び場にもなる。そこで浩一兄弟は轢き逃げされたのだ。それもちゃんと歩道線内を歩いていたのに・・・。
 神宮寺は唇を噛みしめ、やがてハッとしたように顔を上げた。
(そうだ。荒川建設が手を出さなくてもそのバックの東西会の奴らが乗り出せば当然・・・)
 と、彼の目の前を2人の男の子がピストルを片手に走っていく。神宮寺は複雑な気分でそれを見ていたが、1人の男の子が彼のすぐ横を銃を振り回し走り抜けた時思わずドキッ!とした。
「ち、ちょっと待って!」神宮寺は2人を呼び止めた。「君、そのピストルをちょっと見せてくれないか」
 言われた少年は銃を後ろに隠した。
「少しでいいんだ。頼むよ」
 神宮寺は少年を怖がらせないようにやさしく、必死に頼んだ。
 ややして少年は後ろに隠した銃を渋々と出して見せた。神宮寺は丁寧にそれを受け取るとじっと見つめた。
(ミニコルト・・・間違いない、本物・・ だ)
 彼はすごさま少年に尋ねた。
「これ、どこで手に入れたの?」
「・・ぼくンだよ・・・」少年は小声で言った。「ぼくが拾ったんだもの。ぼくンだよ」
「拾った?どこで」少年は黙ってしまった。「お願いだから教えてくれ。別に君をどうこうしようってわけじゃないんだから、ねっ」
「・・・この少し先・・コーちゃん達が轢かれた日に草むらで見つけたんだィ・・・」
「コーちゃん・・・浩一君達の・・あの日、あの場所で・・・」
 神宮寺はそう呟くとしばらくの間銃を見つめたまま黙ってしまった。少年2人は互いに顔を見合わせている。
「ねっ、君」ふいに神宮寺が言った。「このピストルお兄ちゃんに譲ってくれないかい。もちろん代わりのピストルを買ってあげるよ」
 少年はやはり互いに見合わせたまま黙っている。そこで神宮寺は2人の手を取り半ば強引に近くのおもちゃ屋に連れて行くと、そこで1番大きくて格好いい銃を2人に与えた。
 2人は驚いた。が、やはり子どもである。もうあの小さなピストルの事などどうでもよくなってしまったようだ。
 2人は神宮寺に礼を言うと銃を抱えて行ってしまった。
 後に残された神宮寺はポケットから例のミニコルトを取り出すとあちこち調べ始めた。
(普通のミニコルトじゃない。少し手が加えられている。特にセーフティロックなどはかなり改造されていて、ちょっとやそっとでは解除されないようになっている。だからあの子達が乱暴に扱っても外れなかったんだ・・・。と、いう事はかなり遠くから運ばれてきたという事か。しかし誰が・・いったいなんのために・・・)
 またもや彼の考えながら歩く癖が始まった。車が来ないのが幸いである。
 が、ここが道である以上その考えは甘かった。
 突然、真っ赤な車が神宮寺の背後に迫り、凄まじいエンジン音を上げたのだ。神宮寺はハッとして素早く端に避けた。車は彼のすぐ横を通り止まった。そして中から1人の男が出て来た。
「ジョー!」赤い車はカウンタック、降りてきた男はまさしくジョーだった。「どうしてここへ・・」
「お前の事が心配だったからさ。そしたら案の定、道の真ン中を歩いて・・・。おれじゃなかったら完全に轢いていたぜ」
「・・手助けだったら断る。これだけはおれ1人でやりたいんだ」
「まあ、そう言うなって」ジョーはあわてて神宮寺を引き止めた。「実を言うとチーフに頼まれたんだ。お前を捜して連れ戻せって」
「・・それで・・おれを連れ戻すつもりなのか」
「まっさかァ!おれはそんなにヤボじゃねェぜ!」その言葉に神宮寺は足を止めた。「だがお前は指名手配中なんだ。1人では動きずらいし情報も入りずらいだろう。だからおれが来たんだ」
「チーフの命令を破るつもりか」
「おれは今日休みでね。ま、朝にちょっと変な電話が掛かってきたが何を言っているのか全然わからなかったしおれは暇だからね。ちょっとお前に付き合うだけさ」
 そう言うとジョーは口元を歪めた。神宮寺も苦笑したがそれ以上何も言わなかった。
 ふとジョーは神宮寺の手に握られている見慣れない銃に気がついた。神宮寺は先ほどの経緯を簡単に説明した。
「・・・というわけで手に入れたんだが、おれはこの銃はどうもこの事件ヤマと関係があるような気がしてならないんだ」
「2人を轢いたのは荒川建設のトラック・・・荒川建設は裏で東西会と繋がっている。その東西会は近々古川組とハデに交えるらしい。そして現場に落ちていた銃・・か・・・」
「え、な、なんだって?」神宮寺が訊き返した。「東西会と古川組がどうしたって」
「3日ぐらい前の騒ぎを知っているだろ。お互いわずかな縄張りを求めて争っている。それがその前の争いで火が点いて近々本格的に相手を叩き潰すそうだ」
「なぜお前がそんな事を知っているんだ」
「な、なンだよ、ヘンな目で見るなィ」ジョーは頬を膨らませた。「金だよ。金でいくらでも情報を提供してくれる奴はいるさ。あんまり気持ちのいいやり方じゃねえが相手が相手だからな─。あっ、後で請求書を送るぜ」
 神宮寺は絶句した。と、ふと気がついて着ている服に目をやった。
「もちろんそいつもだ。締めて3万2千円。内訳は─」
 神宮寺は諦めて息をついた。その時だった。少し先の横道から銃声が聞こえてきたのだ。
 2人は揃って走り出した。角の所で一度止まり、スッと覗いてみた。と、6、7人の男達が殴り合いをしている。そのうちの1人が銃を手にしてなかなか着かぬ狙いを定めている。
「神宮寺、あの男をみろ!」男とはその銃を手にしている男の事だ。「あいつは東西会の奴だ。新聞に載っていた─」
「とすると相手は古川組の奴らか」
 神宮寺の台詞が終わるか否か2人はバッと走り出しその殴り合いに加わった。
 別に相談をしたわけではない。だが2人はこの争いが事件解決への入り口だと感じたのである。
 銃を持っている男以外は誰が東西会の者か古川組の者かわからない。2人は手当たり次第殴り飛ばした。
 男の銃が神宮寺の背中を狙った。それに気がついたジョーは男の手から銃を蹴り飛ばした。男はひっくり返った。と、銃はそばにいた長髪の男の手に渡った。長髪男はまだひっくり返っている男に銃口を向けた。それを見ると神宮寺はさっき手に入れたミニコルトを抜き銃を撃ち落した。
「そ、その銃は!」
 ひっくり返った男が叫んだ。神宮寺はあわてて銃を隠した。男が手を大きく振った。と、突然神宮寺は肩に激しいショックを感じた。右肩はともかく左はまだ傷が治っていないからたまらない。彼は声もなく倒れた。
「神宮寺!」
 ジョーは最後の1人を殴り倒すと男に向かった。と、再び銃声が響き彼は電柱に叩きつけられた。
 男はようやく立ち上がり始めた2、3人の仲間に合図すると、車を持って来させ神宮寺を後席に押し込むとその場を走り去った。
 一瞬辺りがシーンとした。と、ゆっくりと体を動かしジョーが目を開けた。
いてえなァ・・・」彼は胸を押さえてからジャケットを開いた。「いくらなんでもあんな小さな銃じゃこの特殊ショルダーは突き抜けないよな」
 ジョーは先端がショルダーに食い込んでいる弾丸をグイッと抜くとハンカチに包みポケットにねじり込んだ。そして車が走り去った方を見るとフッと息をついた。
(お前じゃないが、おれもあの銃は東西会の物だと思う。偶然にもうまく奴らに誘拐されたがそれをよく持っていくか悪い方へ持っていくかは・・お前次第だぜ)
 その時彼の横に1台の車が止まった。



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Comment

淳 says... "覚書き"
「昭和編」のほとんどはもう30年ほど前に書かれたものなので、本人も細かい描写やストーリー運びを忘れている事がある。
タイプしながら、「え、どうなるの」「あっ、そうだっけ」がよくある。
2011.12.16 14:55 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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