コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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怒りの44マグナム 4

 
 体に軽いショックを感じ神宮寺は目を開けた。と、自分は床に転がっている事がわかった。
 彼はわずかに手足を動かした。縛られてはいない。ふと彼の視線に人の足が映った。
 神宮寺は顔を上げバッと起き上がった。そして目の前に座っている1人の男を見た。
  50前後だろうか。でっぷりと太ったなんとなく動きづらそうな感じだが目だけはまるで鷹のように鋭い。
 男はその突き刺すような目を神宮寺に向けている。が、彼はその鋭さに一瞬驚いたもののそれ以上の恐怖は感じられなかった。と、さっき神宮寺が助けてやった男が進み出て、座っている男に何やら耳打ちしをした。男は頷きその鋭い眼を再び神宮寺に向けた。そしてゆっくりと口を開いた。
「あの銃はどこで手に入れた」低くドスのある声だ。神宮寺は黙っていた。男は繰り返した。「どこで手に入れたんだ」
「・・・拾ったんだ・・道端で・・・」
「拾った?それだけか」
「他に何があるというんだ。ここはいったいどこなんだ。おれをどうしようと─」
「ボス」さっきの男だ。「こいつの銃の腕はなかなかのものでしたぜ。もしかしたらサツの─」
「お、おれは趣味でエアライフルをやっているんだ。それがいったいなんだというんだ」
「神宮寺力─フリーのパイロットか・・」
「ど、どうしてそれを・・・!」
 これにはさすがの神宮寺も驚いた。が、理由わけはすぐにわかった。
 ボスと呼ばれた男の手には神宮寺の手帳が握られていたのだ。それにはパイロットとしての身分証明書が入っている。それを見ると彼はホッと息をついた。本名を知られたところで正体がバレるわけがないからだ。
「パイロットだと、どうだと言うんだ」
「頼みたい事があるのだ」
「・・頼みたい事?」
「そうだ。ある物をセスナで運んでもらいたい。それだけだ」
「ある物・・・。なんだそれは」
「余計な事は訊くな。イエスかノーか答えればいいのだ」その言葉に神宮寺は思わず肩をすくめた。「イエスならよし。ノーならここから生きては帰れぬ」
「それじゃどっちにしろイエスと言うしかないじゃないか」
「そういうわけだ。だが報酬は望みのままだ。うまくいけばだがな」男は低く笑いながら言った。神宮寺は思わず絶句してしまった。「おい、彼を部屋へ連れて行ってやれ」
 ボスの命令に横にいた男が神宮寺の背に銃を突きつけ軽く押した。彼は何も言わずそれに従った。
 2人が行ってしまうと先ほどの男がボスに走り寄った。
「いいんですか、ボス。いくらパイロットがいないからといって素性も調べずあんな─」
「かまわんさ」ボスはシガレットケースからたばこを1本取り出し銜えた。「今回だけだ。仕事が済んだら始末してしまえばいい。矢崎・・あんな事故・・・・・さえ起こさなければ、こんな事する必要はなかったんだがな。ま、どっちにしろ今はそんな小さな事を言ってはいられない。我々東西会の運命が掛かっているのだからな」
 その言葉に男は強く頷いた。

「失礼します、チーフ」突然ドアが開き佐々木が飛び込んできた。「実はこの写真をチーフに─あ・・・」
 勢い任せにそのまで言って彼は口籠った。それもそのはず女性に縁のないチーフ・・・いや、ここ・・に髪の長い美しい少女がいるではないか。「あ、あの・・」
「おお、佐々木君。ちょうどいい、紹介しよう。広川真琴君だ」少女は佐々木の方を向きニッコリと微笑んだ。佐々木は赤くなりあわてて頭を下げた。「ご苦労だったね、広川君。後は私達がやるからもう戻っていいよ。後の2人にもよろしく」
「はい、失礼いたします」
 少女は軽く頭を下げると部屋を出て行った。その後姿を佐々木がポカンとした面持ちで見ている。そんな彼に森が声を掛けた。
「佐々木君、私の何か用ではなかったのかね」
「え?あっ、そ、そうでした」佐々木はあわててポケットから1枚の写真を取り出した。「これは昨日ある新聞に載った写真なんですが・・・」
「写真?それがどうかしたのかね」
「この・・一番端に写っている男を見てください」
「・・これは・・・ジョー・・・ジョーじゃないか」
「そうです。そしてこれが引き伸ばしたものですが」佐々木が指を指した。それは明らかにジョーであった。「休暇中の中根が伯父の新聞社に遊びに行って偶然見つけた古川組と町のチンピラの殴り合いのシーンだそうです」
「・・確かにジョーだ。間違いない」
「これだけではよくわかりませんが、ジョーは巻き込まれたというより自分から進んで暴れているように見えるんですが」
「・・そのようだな。どうやら神宮寺君は東西会、ジョーは古川組と別れたようだ」
「ハア?」
「さっきのあのだよ。彼女に古川組をマークさせておいたんだ」
 森は先ほどの少女の話を佐々木に話した─。

 真琴は密かに古川組を張っていた。もちろんチーフの命令である。古川組の前にはカフェがあるので彼女はそこでバイトをしながら見張る事にしたのだ。
 2日ほどは別にこれといって変わった事がなかった。そして3日目の夕方─この日は神宮寺が東西会に連れさらわれた翌日であるが─彼女はバイトを終えカフェを出た。と、古川組から3、4人の男達が出て来た。その連中を見た真琴は驚いた。その中にはなんとSメンバーダブルJで名高いジョーの姿があったからだ。が、彼女はそれ以上あわてなかった。ある程度チーフから事情を聞いている彼女はジョーは古川組に潜入したのだろうと解釈したからだ。
 真琴は試しに胸のペンダントに手をやった。と、ジョーの動きが止まりこちらを見た。このペンダント型通信機はSメンバーしか持っておらず、声を出して通信するほか弱い電波を出して音を立てずに相手に自分の存在を知らせる事ができる。
 ジョーと真琴の目が合った。と、彼の後ろから古川組の1人が彼女を見て口笛を吹いた。
「見ろよ、すげェ美人だぜ」後の2人も彼女の方を向いた。「ホントだ。いかす~」
「誰かモノにする奴はいねェか」
「よーし、おれに任せろ」
 そう言うとジョーはハリキって真琴に近づき、その腕を取ると耳元に顔を近づけた。 真琴は最初驚いたが口早なジョーの言葉を聴くと頷いた。そして彼の頬を思いっきりひっぱたいた。
「なによ!やーらしいわね!」
 そう叫ぶと真琴はあわててその場を立ち去った。
 チラッと振り返るとそこには頬を押さえ顔をしかめるジョーとそんな彼をヤジる3人の男達の姿が目に入った─。

「その時ジョーが彼女に言った言葉は暗号だったので彼女はわからなかったがついさっき解読できた。それによると」森は引き出しから1枚の紙を出した。「T 東西会 我々は明日大阪へ行く と、まあこんな内容だった」
「どういう意味でしょうか」
「さあな・・。とにかく一応大阪の方にも連絡をしておこう。暴力団同士の争いは一般警察の仕事だが、あの2人が関わった以上大阪府警だけでは手に負えない事にもなりかねないからな。ええっと、大阪の特別課は浪速署か」
 そう言うと森は卓上電話を取った。

 ちょうどその頃、東京の私設飛行場から大阪に向かって飛び立った1機のセスナがあった。操縦桿を握っているのは他ならぬ神宮寺。その横に1人の男が座っている。
 男は左腕に包帯をしている。ある事故で痛めたそうだ。だが右手には銃が握られておりその銃口は神宮寺に向けられている。本当はこの男がセスナを操縦するはずだったのだ。
(奴らおれにいったい何を運ばせようというんだ)神宮寺はこの事について男にもう一度尋ねたが男は口を開かなかった。(こんな事している間に浩一君達を轢いた犯人が逃げてしまったら・・・)
 神宮寺は少々焦っていた。が、せっかく東西会に潜り込んだ今の立場を失いたくはなかった。
 やがて眼下に琵琶湖が見えてきた。

 一方その頃ジョーもやはり大阪に向かう列車の中にいた。窓側に座っているジョーを含め全部で6人。しかしどうやら正式な組員ではないらしい。それが証拠に目的は誰1人として知らない。ただ大阪に向かって向こうの指示を仰げと命ぜられただけなのだ。
(どう考えてもおかしい。古川組は大阪にはシマはないはずだ。大阪の東西会に殴りこみをかけるにしてもどうも腑に落ちないし・・・)
 ジョーは目を瞑り今までの事を思い出していた─。

 神宮寺が東西会に連れていかれたのは3日前だた。その後残されたジョーの横に1台の車が止まった。そして降りてきた男を見たジョーは思わず声を上げた。
 50ぐらいの白髪混じりのその男はなんと古川組の組長だったのだ。
 ジョーは神宮寺と同様車に押し込められ組事務所に連れていかれた。そして組長は札束を彼に放り、組に入ってひと暴れする気はないかと持ちかけられた。
 ジョーはしめたと思ったものの、一応迷う振りをしてから首を縦に振った。
 こうして連れてこられたのはジョーだけではない。この日新たに組に入ったのは彼を含め8人だった。
 手にした札束で遊びながらジョーは思った。
(よく素性を調べず簡単に組に入れる理由は人手が欲しいからだ。とすれば答えはひとつ。どこかの組とけんかをおっ始める以外にない)
 もちろん相手は東西会だという事は言うまでもない。変な事になったなァ、と思いながらジョーはこのスリルをしばらく味わう事にしたのだ─。

(それにしても急に大阪に行けとは驚いたなァ。奴ら大阪で一戦交えるつもりなのかね)
 しかし列車に乗ってしまった今そんな事を考えても仕方がない。ジョーはこの偶然というにはあまりにも偶然過ぎる事の流れに身を任すしかなかった。
 もちろんそれは今空を飛んでいる神宮寺にも言える事だ。
 2人は互いに知らぬうちに大阪へと集まっていくのだった。

 翌日はとてもよい天気だ。
 昨夜、府内の安ホテルに泊まった神宮寺とセスナで同乗してきた矢崎という男は朝食もソコソコに郊外にある小さな飛行場に向かった。
 そこには昨日の夕方2人が着陸した所で、滑走路の隅の方に置かれているセスナには数人の男達がいくつかの箱を押し込めていた。どうやらこれが運んで欲しい荷物らしい。もちろん神宮寺はその中味は知らない。彼の仕事はただ運ぶだけなのだ。
(運ぶだけ運んだら後はズドンのアーメンか。これじゃ殺されに東京に帰るようなものだな)神宮寺は思わず苦笑した。(しかしあの中にはいったい何が入っているんだろう)
 矢崎に訊いても教えてくれるはずがない。神宮寺はただその光景を見ていた。
 やがて積み込みが終わると矢崎が神宮寺を呼んだ。そしてそ男達と話を始めた。 内容は輸送中の注意などだが、そんな事はフリーながら一流のパイロットである神宮寺には子守唄のように聞こえた。それでも彼は黙って聞いていた。
 と、そのわずかな隙をついてセスナに近づく数個の影があった。
 彼らは草むらの中を相手に悟られないよう進みセスナに近づくと、いくつかの小さな四角い物をその下部に設置した。そして再び草むらへと潜り込んだ。
 ほんの数秒の出来事だった。もちろん矢崎も神宮寺も気づいていない。それが証拠に2人はもう1人おまけを加えセスナに乗り込んだ。
こいつら・・・・が無事本部に着くまではワイの責任やからな」
 新たに同乗した─村井といったが─矢崎と顔を見合わせ口元を歪めた。矢崎も鼻を鳴らすと神宮寺の横っ腹に銃口を押し付けた。
 神宮寺は歯を強く噛み合せるとややしてエンジンを入れた。

 一方草むらに潜んでいる男達のうちの1人はこの光景をポカンとして見ていた。
(じ、神宮寺がなぜ大阪に・・。それもセスナなんかに・・・)
 それは古川組に潜入しやはり大阪に来ているジョーであった。その他は彼と一緒に東京から来た男達と大阪に潜む2人の正式な組員だった。その2人の会話がジョーの耳に入った。
「これで東西会もおしまいさ。あれ・・がみんなパーになるんだもんな」
「ああ、奴らも武器と同時にハッパを運ぶとは思うまい」
(ハッパ!?それじゃさっきのあれは!)
 あまりの事にジョーは周りを、自分の立場も忘れパッと飛び出した。
「戻れ、神宮寺!」ジョーは声の限り叫んだ。セスナはすでに滑走に入っている。「戻るんだ、神宮寺!そいつには爆弾がくっついているんだぞ!」
 そんな彼の行動に古川組の連中は驚いた。しかしもっと驚いたのは東西会の連中だ。
 彼らはジョーが古川組の者だと知るとてんで・・・に押さえつけようとした。ジョーはその男達を蹴っ飛ばした。古川組の奴らは何がなんだかわからず始めポカンとしていたが、東西会が彼らを見つけると大乱闘になった。
 その隙にジョーは駆け出そうとしたところを誰かが足に組み付いたので前のりに倒れ込んだ。
「くそォ、貴様ら!神宮寺に何を運ばせた!」
 ジョーは自分の足を取った男に膝蹴りを食らわした。男は声もなくひっくり返った。が、よく見るとそれは古川組の奴だった。
 ジョーはアレッと思い周りを見た。と、その時、彼は背中に強烈なショックを受けた。
 ゆっくり後ろを向くと男が自分に銃口を向けて立っていた。
 ジョーは再び空を見た。神宮寺を乗せたセスナはその機影を光の中に溶け込ませやがて見えなくなった。
 ジョーはガクンと膝をついた。そして遠くにサイレンの音を聞き彼は気を失った。



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