コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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怒りの44マグナム 完


「また銃声だ」ジョーの横でハンドルを握っている中根が言った。「これで3発・・かなり遠いが・・・」
「急いでくれ、中根。なにやらいやな予感がする」
「傷に響くぞ」
「これぐらい我慢できる。とにかく急いでくれ」
 中根は肩をすくめるとクラクションを高く鳴らした。と、前を行く北をはじめ3人の特別課の者を乗せたジープはわずかにスピードを上げた。山地のためこれが精一杯なのだ。
「ジョー!」ややして中根が叫んだ。「見ろ、煙だ!セスナだぞ、きっと!」
 2台の車はにわかにスピードを上げた。車体が激しく揺れる。
 その弾みでジョーは背中の傷口をもろにシートにぶつけた。それでも彼は唇を噛みじっと耐えていた。
 今は自分の体だけをかまっていられる時ではない。どんな状態でセスナが落ちたか知らないが、もし・・・もしコナゴナになっていたら・・・。そう思うとジョーの心は背中の傷以上に痛んだ。
 やがて前車がセスナから約20メートルの所に止まった。後車のジョーは車が止まるか止まらないかのうちに外へ飛び出した。そしてセスナに目をやった。
 思ったよりひどく壊れてはいない。大して炎上もしていない。この分なら・・・。と、彼は反対側に人の足を見つけた。
「神宮寺!」ジョーは思わず叫んだ。「しっかりしろ!おい!」
「・・ジョー・・・」彼に頬を打たれた神宮寺は静かに目を開けた。「お前、どうして・・・」
理由わけは後で話す。それより一緒に乗っていたあの男はどうした!」
「あの男・・・そ、そうだ!」神宮寺は弾かれたように跳ね起きた。「あいつ、おれを撃って逃げやがった。ジョー、奴が・・奴があの轢き逃げの犯人だったんだ」
「・・やっぱりそうか・・。で、どっちへ逃げたんだ」
 神宮寺は矢崎の走り去った方を指差した。ジョーは頷いて立ち上がる。と、その腕を神宮寺が掴んだ。
「神宮寺・・・」
「・・おれも・・いや、おれが行く・・・」
「しかし・・」ジョーは彼の横っ腹に目をやった。「その傷では・・・」
「大丈夫、慣れているさ─。それよりおれはこの手で奴を・・・」
「フン」ジョーは肩をすくめ神宮寺に手を貸すと彼を助手席に座らせた。「おれと同じ台詞を言われちゃ聞かねえわけにはいかないからな」
 そう言うとジョーはキーを入れハンドルを握った。
「よく掴まっていろよ。振り落とされたら置いていくからな!」
 ジョーはギアを入れアクセルを踏んだ。神宮寺はあわててドアに掴まった。
 バックミラーには今までセスナの内部を調べていた北や中根が何やらわめいている姿が映った。が、それもすぐに消えた。
 ジョーは左手で神宮寺に向かって何やら放った。マグナムだ。
 神宮寺はそれを受け取りしばしじっと見つめていたが、やがてぐっと握り締めた。その手は震えている。胸は激しく上下し体全体がぐーと熱くなってきた。
 この時、隣にいるジョーはもちろん神宮寺自身も気がついてはいないだろうが、彼は初めて犯人を、矢崎を自分の愛銃でズタズタにしてやろうと思った。今、銃に入っているありったけの弾丸を矢崎の体中にぶち込んでやろうと思った。
 無意識に神宮寺は体中を震わせていた。ジョーは神宮寺の様子がいつもと違うのには気がついた。だが彼は何も言わなかった。
 彼自身、今の神宮寺とまったく同じ怒りを味わった事があるからだ。だからその神宮寺の様子に少々驚いたがあたりまえだと思っていた。

 突然、遥か前方から女性の叫ぶ声が響いてきた。
 ジョーはハッとしスピードを上げた。と、24、5才ぐらいの女の人が、“車どろぼう!”と叫んでいる。
「奴だ」神宮寺が低く言った。「車を奪って逃げるつもりなんだ」
「へっ!おもしれェ!このおれとカーレースをやろォってーのかっ!」変なところでジョーは粋がった。「しっかり掴まってろよ!」
 ジョーはさらにスピードを上げると山道を見事なハンドリングで登っていく。ジープなので風がもろに顔に当たるが2人共文句は言わない。と、前方に白い車が見えてきた。
「ジョー、あれだ!」立ち上がらんばかりに神宮寺が叫んだ。「矢崎の車だ!」
「直線だ、神宮寺!」
 ジョーの言葉に神宮寺はハッとした。そして右手でマグナムをぐっと握り、再び前を見た。
 やれる!今ならこいつ・・・で奴の車のタイヤを、フロントを、そして奴さえも・・・。
 神宮寺の両手は銃を半ば無意識のうちにスーと目の前まで上がってきた。両車の距離は30メートル弱、決して不可能な距離ではない。
 神宮寺は片目を閉じ狙いを合わせた。銃口は少しも狂わず矢崎の背中にあった。が、すぐに横に外れた。矢崎が動いたのではない。神宮寺がわずかに銃を下ろしたのだ。
(なぜ撃たない!今ならできる。今なら奴を殺れるんだ!お前の腕なら雑作もない事なのに、なぜ・・なぜ撃たないんだ!)
 神宮寺は自分に向かって叫んだ。そして再びマグナムを上げようとした。
 と、突然彼の目の前がパッと開けた。道を上り詰め高原に出たのだ。
「こうなりゃこっちのものだ。レーサーの腕前を見せてやるぜ!」
 ジョーは思わず唇を舐めた。
 ここは草が膝の辺りまで伸びていておまけにそのあちこちに岩が転がっている。もしぶつけたらただでは済まない。
 前方に岩を見つけたら素早くカーブに入るのだ。と、車体は遠心力で傾き、乗っている彼らにはもろに重力が加わるがさすがにジョーである。そんな重力などなんともないように車を飛ばしている。見ると矢崎も同様だ。その見事なソーイングにはさすがのジョーも驚いた。
「やっこさん、やるでないの」
「奴はパイロットだ。横Gには慣れている」
「フン!パイロットだろうとなんだろうと、地上ではレーサーの勝ちだ!」
 2車の間は相変わらず30メートルほどだ。これはジョーと矢崎の腕がほぼ同格という事だが荒っぽさではジョーの方が上だった。
 彼は矢崎を追うコースからジープを外し、面と向かうコースを取った。つまり真っ向から体当たりしようというわけだ。
「ジョー、奴と心中なんてご免だぜ」
「任しとけ!ダテにレーサーやってるんじゃないぜ」
 ジョーは矢崎に車とぶつかるその少し前にハデにハンドルを切った。と、擦れ違い様矢崎がこちらに銃口を向けた。
「うっ!」
「ジョー!」
「大丈夫、掠っただけだ。それにしてもあいつ・・味な真似しやがって!」
 ジョーはすぐさま方向転換し矢崎を追った。
 距離はわずか10メートルに縮まっていた。だが今度は神宮寺は銃を上げようとはしなかった。彼は互いに車を降りてから勝負をつけようと思ったのだ。それにもうひとつ・・・彼の心にしっくりいかない何かがあった。
(おれは浩一君達の仇を討つ・・・そうじゃないか・・・)
 神宮寺は強くそう思い続けた。と、ジョーの声が響き彼はハッとし顔を上げた。
「この時を待っていたんだ。行くぞ、神宮寺!これで最後だ!」
 その言葉と同時にジープは急に左に曲った。一方前を行く矢崎は前方が崖っぷちになっているので左に曲らずにはいられなかった。
 ジョーは矢崎が左に曲るのを見ると思わず声をあげ、またもや急激にハンドルを回した。
 矢崎の車の正面がすぐ前に見える。こういう状況には慣れているジョーはともかく、矢崎は急に自分の前に車が出て来たので驚いてしまいハンドルをメチャクチャに回し始めた。
 と、車は右滑りに向かってくる。ジョーは左にハンドルを切った。
 次の瞬間、2台の車がぶつかる物凄い轟音がこの広い高原に響いた。
 矢崎の車は右横をぶつけられ横に傾いてひっくり返った。
 一方、ジョーと神宮寺はまともに正面からショックを受けたので、神宮寺は草の上に放り出されてしまった。ジョーはハンドルに俯している。と、2台の車が突然燃え上がった。
「ジョー!」
 神宮寺はジョーを助けようと車に近づいた。と、彼の視野の隅を誰かが走って行く。矢崎だった。
 神宮寺はハッとして反射的にその方に足を向けた。が、矢崎の車が轟音を上げて爆発するのを見ると彼はジープに飛び込みジョーの体を引き摺り、転がった。と、ジープは完全に炎に包まれた。
「ジョー!しっかりしろ!」
「・・じ・・神宮寺・・無事か・・・」
 神宮寺は頷いた。
「・・奴は・・奴はどうした・・・」ジョーは上半身を起こした。と、遥か前方を矢崎が走っていくのが見えた。「奴が逃げる!何をしているんだ、神宮寺!早く追え!」
「しかしお前をこのまま・・・」
「ばかやろう!おれは奴を逃がすために車をぶつけたんじゃないぞ!」
 その言葉に神宮寺はビクッとしジョーを見た。そして強く頷くと右手にマグナムを握り締め矢崎の後を追った。
「そうだ・・行け、神宮寺・・おれも後から行く・・そして・・・」
 ジョーはヨロッと立ち上がった。その後ろから車の音が聞こえてきた。

 一方、矢崎は神宮寺のすぐ目の前を走っていた。衝突の時、足を痛めたのか矢崎の走り方はぎこちない。神宮寺は肩の傷も忘れメチャクチャに体を動かしていた。
「止まれ、矢崎!止まらないと撃つぞ!」
 神宮寺は叫んだ。もちろん矢崎は止まらない。神宮寺はさらにスピードを上げた。と、前方の矢崎が石に足をとられよろけた。その矢崎目掛けて神宮寺は後ろから組み付いた。
 矢崎は上半身を激しく動かし右足で神宮寺の膝を蹴っ飛ばした。だが神宮寺は組み付いた手を離そうとはしなかった。
 彼は矢崎の首に手を回すとぐっと締めた。矢崎は声にならない声を上げ右手を後ろに回し神宮寺の首を掴むと前方に投げ飛ばした。そしてすぐさま銃を抜く。
 神宮寺は一回転して降りた所を右足を撃たれ再びひっくり返った。矢崎は一歩前進した。と、そのわずかな隙をついて神宮寺はベルトに挟んでいたマグナムを抜くと、矢崎に向かって発砲した。
 矢崎は右肩を撃ち抜かれ後ろに倒れた。続いて左足、右腕・・・神宮寺はゆっくりと立ち上がり、愛銃マグナムを改めて握り直すとその銃口を矢崎に向けた。
「・・決まったな」神宮寺は右足を引き摺るようにしてわずかに前に進んだ。「待っていたよ・・。この時を・・・おれはずっと待っていたんだよ・・・」
「た、助けてくれ・・おれが悪かった・・・だから・・・」
「今さら何を言っても無駄だ!」神宮寺は再び発砲した。弾は矢崎の少し前で跳ね返った。「なんの罪もないあの2人を撥ね、そして逃げておきながら!あの時のトラックにお前は何を積んでいた!あの銃も古川組と交える時に使うのか!そんな事をしたらまた関係ない人達が巻き添いを食う!そんな事がどうしてわからない!」
 弾が肩を掠り矢崎は思わず声を上げた。
「苦しいか・・痛いか・・だがあの子達はもっと苦しんで死んでいったんだぞ。お前にもその痛みを味合わせてやる!」
 残された弾はあと1発だ。神宮寺はその1発を奴の心臓に狙いをつけた。

 そこへジョーと、あとからようやく追いついた北らがやってきた。
 ジョーは2人から20メートルほど離れた所で足を止めた。どうやってもそれ以上先へ行く事ができなかった。
「い、いけない」北が叫んだ。「早く彼を止めないと!」
「手を出すな!」
「し、しかし・・」
「口も出すな!おれは・・あいつが次にどんな行動に出るか・・・見たいんだ・・」
 ジョーは神宮寺を見た。彼はもうとうに矢崎に狙いをつけている。だがいつまでたっても撃たない。
「・・・・・」
 ジョーは自分の体が硬くなってるのに気がついた。そして頭の中がゴチャゴチャしている。
 矢崎を追い詰める事を勧めたのは自分なのに、ともすれば自分の手が足が神宮寺の次の行動を止めようとしている。
「じ、神宮寺!」
 ジョーは耐え切れなくなって叫んだ。もちろんどういう意味で叫んだのかわからない。
 だが神宮寺は、そのジョーの声を聞くとこちらに振り向いた。
 2人の目が合った。互いに何かを言っている目だ。だがその内容ははっきりしない。
 2人共口元を震わせているのがよく見える。
「くそォ!」
 突然、神宮寺は引き金を引いた。弾は矢崎のすぐわきを飛んで行った。
 ジョーの合図で北達が矢崎を押さえた。それを見ると神宮寺はその場に崩れるように座り込んだ。
 ジョーが近づき膝をつく。神宮寺は彼を見上げた。
「・・ジョー・・・、お前があの時カルディを撃ち殺したかった気持ち、今さらながらよくわかる・・・。だが撃ってはいけないんだ・・。おれ達がダブルJである以上はな・・・」
(神宮寺・・・)2人の横を矢崎が引っ張られていった。(こいつは冷静沈着なんかじゃない・・。それよりかいざとなったらおれより燃え上がる・・・)
 ジョーは神宮寺に手を貸した。と、彼の頬を一筋の光るものが流れて行くのが目に入った。


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                                          完






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