コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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記憶の底にひそむもの 完


 通信機のある部屋に入るとファーがダイヤルを回しどこかに合わせようとしていた。
「どけ」
 ジョーがファーを押し退ける。山本がいるアルファードの通信機に合わせる。と 、
『・・こ・・ら・・関。誰だ?ジョーか?サントス?』
「通じた!関!ジョーだ!サントスもいる。ファーやロブも一緒だ!」
『よかった、無事で。小規模だったが土石流にやられたのかと思って─』
「・・・神宮寺」スピーカーから聞こえて来たのはまさしく神宮寺の声だった。「お前こそよく無事で。てっきり巻き込まれたと思ってたぜ」
『反対側の谷に転がり落ちたんだ。なんだよ、そんなに心配していたのか?』
「ぜ~んぜん。だけどサントスは泣いてたぜ。─あ、いて!やめろ、サントス!」
『じゃれるのは後にしろ、ジョー。今、どこだ。ファーやロブも一緒だって?』
「そうだった」ジョーは今までの経過を話し。たった1つの横道が土石に埋まって通れない事も話した。「ロブは肋骨をやられている。折れてはいないがヘタに動かせない」
『地図で確認したがそこは狭い山間の底だ。ヘリでの着陸は難しいしホイストもかなりの長さになる。準備が必要だ。時間をくれ』
「わかった。それまでゆっくり休ませてもらうさ」一度通信を切った。ジョーが振り返る。「と、いうわけだ。助けが来るまでおとなしくしていてくれよ、ファー」
「警察に助けてもらうのは趣味じゃないけどな」
 鼻の頭をコリコリと掻きファーがうそぶいた。
「そうだ。ここには武器が大量にストックされているんだろ?そいつを見せてくれ」
 ジョーの言葉に眉をしかめたファーだが、こっちだ、と先に立って歩き出した。が、廊下に出ると、“こらー!外せー!”とわめく声が響いた。
「いけね。ロブの事を忘れていた」
 サントスがロブのいる部屋へ向かう。

 ジョーはファーの案内するままに付いて行った。そこは山小屋の裏手に建つ小さな小屋だった。だが入って驚いた。小さな物は手のひらサイズの拳銃から車両用の小型バズーカまであった。
「よくこんな山奥にこれだけ集めたな」
 呆れたようにジョーがため息をついた。
「以前はあの横道ももう少し広かったんだ。それが地盤がだんだん崩れて狭くなった」
 この辺りは地盤が弱い所なのだろうか。だとしたらこれらの武器が爆発でもしたら大規模の山崩れが起こるかもしれない。
「もう行くぞ。ロブが心配だ」
「つっ!」
 ジョーを押し退け出ようとしたファーの手がジョーの胸を突いた。
 ズキッと響く痛みに一瞬気が逸れた。胸を抑えた左手をファーに捕られ、そのまま壁に押し付けられた。
 ファーの手がジョーの首元に迫る。が─
「─動くな」
「──」
 いつの間にジョーの右手に握られた銃がファーのアゴを突いていた。
 ファーがゆっくりとジョーの左手を放す。チラッとその瞳が、自分に押し当てられている銃を見た。
「偉そうな事を言っても、結局お前も武器に頼るんじゃないか」
「・・・・・」ジョーもゆっくりと銃をファーから離した。「・・・この銃に見覚えはないか」
 ファーが怪訝そうに眉をしかめた。
「親父がおれ達を撃った銃だ」ファーが目を見開き、その銀色に輝くウッズマンを見た。「親父はおれに傷を負わせたからと、この銃を封印した。今はおれが使っている。お前達のような世の中を乱す奴らだけにだ」
「・・・・・」
 ファーは、だんだんと自分から距離をおいていくジョーを見つめた。
 胸に怪我を負っているのか辛そうだ。今、強引に動けば押さえられるかもしれない。
 だがファーは動かなかった。ジョーを抑えてもサントスがいる。それ以上にロブを助けるためには彼らの仲間の手助けが必要だ。とにかくここから出なければ。
「すまなかった。戻ろう」
 両手を上げファーが小屋の外に出た。油断なくファーを見つめジョーが続く。
 外は雨になっていた。

『ちーとばかりやっかいな事になってきた』
 最初の通信から2時間後に関から返信があった。
『低気圧の北上が早くなって、山形県全域に大雨洪水警報が発令された。あまり降られるとヘリは飛べなくなるし、そっちの地形では再び土石流が発生する可能性が高い。どこかへ移動できないか』
「無理だ」ジョーとサントスに見られファーが答えた。「後は裏手の谷に降りるしかないが」
 左右は高い山肌、正面の道は途中から土石で埋まっている。背後はさらに谷に続く険しい崖だ。
 サントスとジョーだけならなんとか降りられるかもしれないがロブには無理だ。また降りてもそこで行き止まりだ。
『今、神宮寺君とバートンを乗せた県警のヘリがそちらに向かっている。とりあえず状況を確認したい。もしかしたらその場で救助になるかもしれない』
「わかった、関。無理はしないように神宮寺に伝えてくれ」
「そういえばこの雨ずーと降ってるな」
 サントスの言うとおり、小雨だが2時間前から降り続いている。
 もしまた上の山道で土石流が発生したら、横道の土石を押しこの山小屋の方まで流れてくるかもしれない。彼らに逃げ場はない。ヘタすると山小屋ごと背後の谷に押し流される。
「みんな一緒にいた方がいい。ロブを連れてくる」サントスが隣の部屋に入ると─ギャ~~とロブのわめく声が聞こえた。「大丈夫っ。何もしねえよ!ちょっと抱かせろ!」
 またまたロブが騒ぐ。が、サントスの力に敵うはずもなく、ロブはサントスに抱かれ居間に連れて来られた。
「肋骨やられてるくせに、よくまあそんな声が出せるものだ。腹も蹴りやがったしよ」
「あ、あたりまえだっ。近寄るな暴力警官!」
 ロブが子どものようにファーに寄る。
『ジョー、聞こえるか』スピードマスターから神宮寺の声がした。『今、近くまで─』
「うるせえな!ちょっと抱いたからってガタガタ言うな!」
『・・・ナニしてるんだ、お前達・・・』
「ジ、ジングージ!?」サントスがヘンな声を上げた。「ち、違うんだ。ロブを連れてくるのにちょっと─」
「じゃれるのは後だ!おれ達がいる山小屋がわかるか、神宮寺」
『いや、まだ確認していない。─あ、あれはっ』神宮寺の声が一瞬切れた。が、『まずいぞ、ジョー。あの山道の上の方で小さな土砂崩れが起きている。あれ以上崩れたら─』
 ジョーが山小屋の外へ走り出た。


がけ 

 小雨だった雨がかなりの勢いに変わっていた。ヘリの機影は確認できないがバラバラ・・・と  かすかにブレード音が聞こえる。そしてそれらの音に混じって周りの山全体が低く鳴り響いている音も─。
(ここにヘリが降りるにしてもホイストで上がるにしても時間が掛かる。それまで持ってくれればいいが)
 ジョーがくうを仰いだ。雨と少しづつ強くなってきた風が彼の顔に当たる。
『ジョー!だめだ!山の斜面が崩れ出した!かなり広い!』
「ジョー、山を登ろう。ロブはおれが担ぐ」
 サントスが言ったが、
「無理だ。昨日より大きな規模の土石流だったら逃げ切れない。それより上の崖を崩して道を塞ごう」
 と、指差したのは横道の上に出っ張っている崖の先端だ。
「崖を崩すってどうやって?」サントスが訊くが、それより早くジョーが身を翻し山小屋裏手の小屋に向かう。武器庫だ。「そうか、爆薬を崖に仕掛けて─」
「そんな悠長な事はしてられねえ!」ジョーが何機か置いてあるバズーカを見回す。そのうちの一機を持ち上げた。「サントス、後ろを持て!」
「無茶だぜ、ジョー。こりゃあ担ぎ型発射方式じゃない。トラックの荷台に乗せて撃つやつで─」
 バズーカと共にジョーに引っ張られサントスがわめく。
「これでなければあの崖を崩すのは無理だ。小型のバズーカじゃ届かない。一発必中でなければ─。神宮寺!そっちはどうなっている!」
『かなり大きな土砂崩れだ。土石が道いっぱいに広がって押し流されていく。ここからではそこへ入る横道は見えないが、到着するまでそう時間は掛からないだろう』
「これからバズーカで横道の上に張り出している崖を崩して土石流を止める」
『なんだとっ。ジョー、サントスと心中するつもりかっ』
「それはご免だ!だから成功させるさ!」
 ジョーがバズーカを担いだ。

 基本的にバズーカは人が担ぐ担ぎ型発射方式が主流だが、もう少し大きくなるとトラックなどの荷台に設置して発射するものもある。
 今、ジョーが担いでいるのもそのタイプだ。だから、
「くそォ、発射角度がとれない。高さが足りねえ」
 車両に積んで充分な高さを取るように作られた物だ。目標である崖の高さに合わせるとバズーカの後部が地面に着いてしまう。反動式なのでその煽りと衝撃をモロに食らう事になる。
 やがてジョーやサントスの耳にも木が倒れる音や、ゴゴ・・・と土石が流れる音が聞こえて来た。
『ジョー!土石が横道に入った!止まっていた土石が動き始めたぞ!』
「バズーカ台がある」ファーだ。「それを組み立たれば」
「そんなひまはねえ!」
 叫んだジョーの体がくうに持ち上がった。サントスがバズーカごとジョーを自分の肩の上に乗せた。大きな手でガシッとジョーの腰を掴む。
 ファーもジョーの足を掴み、少しよろけるサントスの体を支えた。
 ジョーがスコープを崖の出っ張っている付け根の部分に合わせる。足場が不安定のためスコープの中の目標が揺れる。が、ほんの一瞬、目標がピタリと止まった。
「いくぜ!」
 ジョーが発射ボタンを押した。

 ボンッ!!

 大きな音と振動がジョーを襲う。その衝撃を支えきれずサントスの体が崩れた。が、その一瞬前、彼はジョーを大きく後ろに放り投げた。
 バズーカを手放したジョーは一回転し着地する。その彼の目に、砲弾を受けた崖が崩れて行くのが見えた。
 大きな岩や木がその下の道へと真っ直ぐに落ちて行く。押し出されこちらに流れてこようとしている土石の上に音を立てて積み重なっていった。
 モウモウと土煙が3人を襲い、彼らはしばらく動けなかった。が、
「・・やったか」
 ジョーが地面から顔を上げ前方を見る。崩れ落ちた岩や木が土石流の流れを止めていた。
「・・止まってる・・・。すげえ・・・」
 目を見張りサントスが呟いた。
「ファー、サントス、無事か」
 ジョーが立ち上がった。左足首がズキンと痛んだ。バズーカは成功したが着陸は失敗したらしい。が、大した事はない。
「大丈夫」
「なんとか無事だ」
 土塗れになりながらサントスとファーが返事をする。とりあえずみんな生きててよかった、とジョーは思った。

 ひとしきり降り続いた雨も午後には止み、その中を山形県警のヘリコプター〝がっさん〝がゆっくりと降りてくる。
 上空を木々で覆われ、狭い山小屋前に下ろすのは時間が掛かった。
 やがてスキッドが地面に着く。と、
「ジョー!サントス!」
 ドアが開き神宮寺とバートンが飛び降りて来た。
「おー、神宮寺!本当に無事だったんだな!」
「なに言ってる。そっちこそ無茶しやがって」神宮寺が崩れた崖跡にチラッと目をやった。と、ジョーがいてっ!とコケそうになった。「どうした?」
「足首をちょっとひねっちまったようだ。最後の最後で格好悪いぜ」
 ジョーは、支えてくれた神宮寺の手をそっと押し返した。歩けないほどの怪我ではなさそうだ。
「いいなぁ・・」ふと後ろを見ると、サントスがじっとその様子を見ていた。「ジングー、もしおれがよろけたら受け止めてくれるかい?」
「・・・・・」
 ─まず無理だろう。と、
「おれが受け止めてやるぜ、サントス」ジョーが言った。「そのまま後ろに放り投げてやる。さっきあんたがおれを放り投げたようにな」
「よーし、やってみろ!」
 サントスが迫る。
「あ、やめろ、冗談だ!重い!」
 サントスに伸し掛かられてジョーが悲鳴を上げた。
「・・ここでナニやってたんだ、こいつら・・・」
 眉をひそめる神宮寺の前をバートンに腕を取られたファーが通った。神宮寺を見ると少し口元を歪めジョーに目を移す。
「手間掛けたな、ぼうや。だがもう会う事もないだろう」
「いいかげんにぼうやはやめてくれ。おれには─」
 ふっと言葉を切り、そのブルーグレイの瞳をファーに向けた。
 初めて顔を合わせてからそのくらい経ったのだろう。その時の鋭さが今は影をひそめて見えるのは気のせいか。
「ま、もう会う事もねえだろうし・・・いいや」
 ジョーがニッと口元を歪めファーを見送る。その後ろから担架に乗せられたロブが続いた。その横に付いたサントスに、寄るな!触るな!とわめいている。怪我はともかく元気だ。
 ジョーは自分の胸がズキズキといているのに気が付いた。
「どうした?どこか痛めたのか」
 神宮寺が訊いた。さすがにこいつはすぐわかるな、とジョーは思った。頼りになるが油断できねえ・・・。
「大丈夫さ。さあ、早く東京に戻ろうぜ。そしたら3、4日ゆっくり休んでやる」
「そういうわけにもいかないぜ。ロブ達に情報を流した奴の捜査がまだ済んでいない。事件の報告書も始末書も書かないといけないし」
「始末書?」
 ・・なんかやったっけ・・・。
「それにここの武器の処理もあるしな」2人はゆっくりとヘリコプターに向かう。「どうせなら全部使っちまえばよかったのに」
「後始末なんか関にやらせればいいだろ。それにここにあるのを全部使ったら、こっちがふっ飛ばされているさっ」
 神宮寺に続きジョーがヘリに乗り込む。胸も足首も痛んだが気分は良かった。
「関といえば・・・新宿や六本木ってなんだ?なにかあるのか?」
 うっ、と神宮寺が黙る。
「そーなんだ、ジョー!シンジュクとロッポンギにナニかがあるのさ!」突然サントスが大声を上げた。「よーし、このままシンジュクにまっしぐらだ!」
「??」
 眉をしかめるジョー。黙ってしまった神宮寺。そしてわめくサントス達を乗せた〝がっさん〝は重たそうに空中に浮き上がった。


                                                 完

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Comment

淳 says... "覚書き"
いつかどこかで使ってみたいと思っていた、「肩の上乗り2段活用」
そう、元(?)はガッチャマン24話のリュウの上に乗るジョー。

実はラストはいくつかのパターンをつくってあったが、やはりこれ↑が捨てがたくて。

動きのあるシーンは書いていても楽しいので、あっという間に書き飛ばしてしまった。
もう少しゆっくり書いて、それ自体を楽しみたいのだが、あまりのんびりしてるとその時の勢いがなくなってしまうので書ける時に書く!

気に入っている話のひとつ。
2012.04.18 17:32 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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