コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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闇に溶け込む黒い影 1

『ジョー、そろそろ出るよ。下で待っていてくれ』
「佐々木さん、おれ一人で行かれますよ。3課の隣でしょ」
『行くだけならね。とにかく森チーフの命令だから。車は7番のマークⅡだ』
「・・ガキじゃあるまいし」
 室内フォンを切りジョーがため息をついた。が、諦めて立ち上がる。
 イスに掛けてあったブレザーをひと振りして袖を通した。かなり機嫌が悪い。
 そんなジョーをチラッと見て、デスクの向こうの神宮寺がクク・・と肩を震わせる。
「─なんだよ」
「いや・・、あまり見慣れないもので、つい─」
「うるせぇや。おれだって好きでこんな格好してるんじゃねえや」
 ドアを開けた。と
「うわー、ジョー! なにその格好!」廊下に出たとたん、洸の大声攻撃を受けた。「これからどこかへリクルートに行くの!?」
 が、洸が驚くのも無理はない。
 いつもラフな格好をしているジョーが今日はなぜかスーツを着ている。
それもよく着ているアルマーニやベルサーチなどのブランドデザインではなく、上下紺一色のまるでビジネルマンのような地味なスーツだ。ネクタイまで無地一色で珍しくキチンと締めている。
「それ以上言わない方がいいぞ、洸」
 室内から神宮寺の声が飛んだ。

「公安委員会? なんでそんな所がジョーを呼びつけるのさ」イテ~、と後頭部を抑えた洸が訊いた。「関さんとの仲がバレた、とか」
「例のTEの残党に公安の情報が流れた件さ。詳しく聞いていないけど、なんか面倒な事になっているらしい。ジョーはロブ達と一緒にいたから事情聴取に呼ばれたんだ」
 神宮寺が洸にもコーヒーを淹れてやる。洸はミルクをたっぷり注いだ。
「もしかしたら、公安の上の方の人が関わっているかもしれない」

 土塗れで山形から帰京したのがおとといの夜。
 昨日1日は報告書を書いたり、ファー達のアメリカ移送などの打ち合わせを関達として─これで後は公安に放り投げてやる、と息をついた時、チーフを通して公安委員会からジョーに対して事情聴取のための飛び出しが入ったのだ。
 公安委員会は警察庁の隣の建物に事務室がある。
 もちろん、日本の警察と別組織である国際警察が公安委員会の呼び出しといえどそれに従う義務はない。
 それでも森は佐々木と相談してジョーを出頭させる事にした。ただし佐々木の同席が条件だ。
 これは決してジョーを子ども扱いしているわけではなく、国際警察としての身分と権利の保障、そして何より彼らの素性を口外しないという約束に対しての確認のためだ。

「佐々木さんが睨み役ってわけか。ジョーが睨み付けた方が効果的だと思うけど」
「それじゃあ〝脅し〝になっちまう」
 相棒がひどい事を言う。
「だから少しでも良く見せようとあんな格好させられてるってわけ? 逆効果だね」
「確かに・・。でもTシャツとGパンというわけにはいかないだろ」
 スーツを着たジョーを見て、佐々木は自分の判断の間違いに気付いた。地味なスーツはかえってジョーの独特な風貌を目立たせてしまう。
 しかしオレンジ色の私服というわけにもいかない。
 仕事上どこへ出向いてもよいようにスーツも用意しているが、実戦ではスーツほど動きづらいものはない。
 彼らはいつも、警視庁のSPはすごいなァと感心している。
 が、ジョーにしてみれば佐々木の監視付きで着慣れないガチガチのスーツを着せられ、かなり機嫌が悪い。
 あの調子で公安委員会の質問に答えていったらどうなるか・・・。いや、それよりもさらに機嫌が悪くなる事が待ち構えていた。
「・・そうだったな・・」
 思い出し神宮寺がため息をついた。

「おお~、いいねえ、ジョー! なかなか似合うじゃないか、リクルートスーツ」
 関の言葉にジョーは思いっきり顔をしかめた。
 佐々木が3課の課長にあいさつに行くというので付いて来たが、関と顔を会わせたくなくて廊下で待っていたのだが、
「このまま3課に就職っていうのはどうだ? いや、おれの所に永久就職というのも─」
「こんな所で男を口説いてるのを委員会が知ったら問題になるぜ」
「さあね、どこまで真相に近づいて結果を出すか─。ま、期待してるがねっ」あまりそうは聞こえないのだが。「そうか。例の件で委員会に呼ばれたのか。どうだった?」
「質問された事に答えりゃいいんだから簡単だったさ。ただ同じ事を何回も訊く奴がいてよ。頭きたから黙秘権使ってやろうかと思った」
 今はもう上着は脱ぎ、ネクタイも緩め人心地ついたように答えるジョーからは今までの険しい表情は消えていた。関が持ってきてくれたコーヒーも素直に受け取る。
 地味なスーツがかえって彼の髪や瞳の色を引き立てている。
「ファーやロブはどうしてる?」
「2人共警察病院にいる。ロブの怪我が治ったら取り調べをして、遅くとも来週にはアメリカだな」それからちょっと言いにくそうに、「TEの残りの2人・・ギィとコルツ、それから天道会の2人の遺体が土石流の中から見つかった。逃げ切れなかったんだな」
「・・そうか」
 ジョーはコーヒーに口をつけた。
 生と死はいつも隣合わせだと思う。ジョー達が助かったのは運が良かっただけかもしれない。
「関・・・おれこの仕事・・」
「待たせてすまないね、ジョー」
 3課のドアが開き佐々木が出て来た。ハッとジョーが顔を上げあわてて立ち上がる。一瞬戸惑ったような目を佐々木に向けた。
「どうした?」
「・・いえ、なんでもありません」
「ヤボですな、佐々木さん」
 関が苦笑し、佐々木が首を傾げた。
「早く戻りましょうよ、佐々木さん。おれ腹へった」
 ジョーがさっさとエレベータに向かう。では、と佐々木が関に会釈しジョーの後に続いた。
「やれやれ、また捕まえ損ねたか」
 関が肩をすくめ、閉まるエレベータに目を向けた。

 JBに帰ったジョーはあっという間にスーツを脱ぎ、いつのも薄いオレンジ色のシャツと綿パンツというラフなスタイルに戻った。
 土石流に巻き込まれた時に打った胸のアザは、もうほとんどわからないほど薄くなっている。幸いにも肋骨に異常はなかった。
 もう榊原の診察を受けなくてもいいだろうと勝手に判断して、昼食を摂るために食堂に向かった。
「あれー? ジョー」
「もう着替えちまったのか、リクルートスーツ」
 さっそく声を掛けてきたのはチーム1のいつもの面々だ。
「見たかったな。ジョーの就職活動」
「てめえら、おれをJBから追い出すつもりだな」相手が年上だろうが先輩だろうが気にせず、その鋭い瞳で睨み付ける。「ずーといてやるから覚悟しておけ」
 目の前にパスタセットのトレイを持ち、いつもよりは迫力に欠けるがそれでもみんな何も言わず引きつって見送る。
 ジョーはお気に入りの窓際の席に行き、そこに1人座っている神宮寺の前にトレイを置き席に着いた。ジロリと相棒を見る。
「言っとくけど、情報源はおれじゃないぜ」
「わかってる」ジョーの脳裏に、ニヘニヘと笑いながらしゃべっている洸の顔が浮かんだ。「あのヤロウ、今度会ったらリクルートスーツ絞めにしてやる」
 勢いよくパスタにフォークを突っ込んだ。どんな技だ?と思った神宮寺だったが
「それで公安委員会はどうだった? 何かわかったか?」
「どうだと言われてもこっちからの質問は一切できねえし、捜査内容を詳しく説明してくれたわけじゃねえし」
 ひとくち食べパルメザンチーズを振りかける。
「だが質問の内容から察すると、やはり当日ファーの移送に関わった人間に目を付けているらしい」
「じゃあ関さんやサントス・・・おれも呼ばれるかな」
「いや、お前たちじゃない」
 付け合わせは杉本さん得意のポテトサラダだ。フォークですくって口に入れるジョーに神宮寺が怪訝な目を向けた。
「もう1人いただろ。途中から」
「─まさか。あの人は2課の─」
 だから公安委員会と公安部長が動いているのだ。
 神宮寺は口を閉じると冷めてしまったコーヒーを一口飲んだ。
「ま、どっちにしろおれ達の仕事じゃねーしよ。今後のためにも徹底的に叩いてもらった方がいいんじゃねーの」
 スルッと最後の1本がジョーの口に収まる。
「そうだな・・・」ふと思いついて、「明日オフだろ。午後から予定あるか?」
「別にねーよ。久々に洗濯でもしようかと思ってるけど」
 ほとんどクリーニングに出しているが、仕事が入ると持って行くのはもちろん取りに行く事もできなくなる。
 これは神宮寺も同様で、自宅に干してあればなんとかなる。
「午前中に済ませろ。午後は4人で・・その・・なんというか・・」
「4人? ダブルデートか? それっておれの女の子もいるの?」
「女の子というにはちょっと年令が上なんだけど・・」
「いーね、年上の女(ひと)か。お前がセッティングしたの? 珍しいな。ヤリの雨が降るんじゃないか」
 1人で勝手に決めて盛り上がるジョーに神宮寺はもう何も言えず、眉を八の字にしてナハハ・・・とジョーに合わせて笑うばかりだった。

  アルタ前


 「・・・神宮寺」ブルブルと体が震える。しかし決して寒いわけではない。それどころか全身から熱気が湧き立つ。「ダブルデートの中身がこれか? 年上過ぎるし女の子でもねえ」
 2人の目の前には、ちょっと着飾った関とサントスがニッコニッコしている。
「デートだとも、相手が女の子だとも言った覚えはないが」
「ヤロウ! ヤリの雨どころか、おれに血の雨を降らせてーのか!」
 新宿アルタの前は待ち合わせの人が多い。
 褐色の肌に2メートルを優に超す巨体の男も、枯葉色の髪の間から光る、あまり見ない灰色がかった青い瞳の男も、細身だが服の上からでもその鍛え抜いた肉体が想像できる男も、どこにでもいる中年だが時々鋭く向けられる瞳がただ者ではないと思わせる男も、この万人の中でも充分に目立つ。4人固まっていればそこだけ別の世界だ。
「帰るぜ」
「まあ、そう言うな、ジョー」関が言った。「サントスと2人で午後からオフを取るのに、それはもー苦労したんだぜ。午前中はいつもの2倍仕事して─」
「そんなの知らねーよ」
「いーじゃないか、ジョーは帰れば」ニッとサントスが笑う。「ジングーはつき合ってくれるよな。おれはそれで充分だぜ。明日は休みじゃないのが残念だが、少しくらい遅くなっても─」
「・・・・・」
 ムフフ・・・と笑うサントスをジョーは睨めつける。
「なあ、ジョー」神宮寺だ。「メシ食って、ちょっと呑むだけだからさ」
「ええー!そんだけー!?」
 と、声を合わせる関とサントスに、
「他に何があるっ!」
 と、やはり声を揃えるところなど、さすが最強コンビである。
 ふと気が付くと彼らの周りだけ不自然な空間ができていた。
「行こうぜ」
 先に立ち神宮寺が歩き出すとイソイソとサントスが続く。なかなか歩き出さないジョーの腕を関が取り2人に続いた。

 デートだと思っていたジョーは普段より少しいい格好をしてきた。
 アルマーニの新作のジャケットに、そのVゾーンを飾るのはオーストリアのブランド、スワロフスキーのラペルピンだ。
 だがその手をとるのが関だと思うと、もう抵抗する気もなくなった。
「だけどこんな時に当事者2人が、半日とはいえよくオフが貰えたな」
「ずっと休みがなかったんだ。それに上がドタバタしているしな。その合間を狙った」
「ふうん・・」
 例の件の事だろう。ジョー達には直接関係ないが少し気になる。が、
「お、新型のシューティングマシンだってさ」ゲームセンターの前の張り紙が目に留まる。「ちょっとやっていこうぜ。夕飯か呑み代賭けてさ。1番負けた奴が払うっていうのはどうだ」
「やだ」関が即答する。「そんなの君が勝つに決まってるじゃないか。絶対やだ」
「ライフルタイプだったら神宮寺の方がおれより上だぜ」
「どっちにしたって勝つのは君達だ。ビリはおれだろう。絶対にやらないからな」
「・・ガキかよ」
 ジョーが鼻を鳴らす。が、なんだかんだ文句を言ってもジョーもまだ遊びたい年頃だ。めったに来ないゲームセンターに目が行ってしまう。
「日本のカジノは子どもでも入れるんだな」サントスが言った。「アメリカじゃあカジノは21才からだし、店によっては25才以下は入れない所もある。おれもつい最近入れるようになったが」
「ここはカジノじゃねえよ。ただのゲームセンターで─え?今なんて言った、サントス? 最近入れるようになったって・・・あんたいくつだ?」
「3ヶ月前に25才になった」
 えええー!?と他の3人が声を上げた。擦れ違う人達が驚いて彼らを見る。が、当の3人はもっと驚いてサントスを見上げた。
「25? まだ?」
「こりゃ驚いた」
「関と同じくらいかと思ってたぜ」
「セキ? そりゃねえだろう、ジョー」
「で、カジノは何回も行ってるから任せておけだと?」そういえばラスベガスでサントスが言っていた。「いいかげんなヤロウだぜ。だからおれ損ばかりしてたんだ」
「それはおれのせいじゃない。25才以下でも入れる店の方が多いし嘘は言ってない」
 シラッと言い放ち、再び神宮寺の横に付くサントスをジョーがブスッとした顔で見送る。
 しかしその時、擦れ違った1人の若者がサントスを見上げ驚いている姿が目に入った。
 男はしばし立ち止りサントスを見ていたが、やがてすぐ後ろに続くジョーと関に気が付くとあわてて去って行った。
 2人は胡乱な目を男に向けたが、サントス相手ではわかるな、と互いに納得してしまった。

「ノーマンが歌舞伎町に?」大柄の男が言った。「奴は故国(くに)に帰ったと聞いているが」
「本当です。この男だ」若い男が目の前の写真を指差して言う。「こんな特徴のある奴2人もいないですよ。一緒にいた男達も目つきが悪かったし、間違いないっすよ」
「ノーマンが日本に・・・」
 もし本当だとしたら、チャンスだと大柄の男は思った。


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Comment

淳 says... "覚書き"
1年と2ヶ月ぶりの更新。
話がわからなくなった人は・・・ま、いいか。

のって書いていた平成19年の終わりの方の話です。

さあ、ダブルデートはうまくいくのか? ← そこ?
どういう組み合わせになるのか? ← だからそこか?
つづく! 

しかしジョーが洗濯なんてなぁ・・・。
昭和編では考えられない生活感だわ。

これも書き手が年をとったからか?
2013.06.22 23:43 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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