コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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闇に溶け込む黒い影 3


「・・・・・」腕を組み目の前で怖い顔をしている左近を見て、ジョーとサントスはその大きな体を縮こませている。「2日と置かず国際警察を補導するとは思っていなかった」
「いや~、新宿に特別課があってホント良かった─」
 そーじゃないだろ!と怒鳴られ、ジョーがさらに体を丸める。サントスはもうムリだと諦めている。
「ノーマンかと思ったらまた君だし」
 ジロリとサントスに目をやる。
 警察官というよりは学者といった面立ちの左近だが、怒ると意外と迫力がある。
「これが始末書だ、ジョー。森チーフか佐々木サブチーフのサインを貰って提出しなさい」
「サントスと神宮寺がデートするために、なんでおれが始末書を書かされるんだよ」
 ブツブツ言うものの、これだけ迷惑をかけていれば無視する事もできず仕方なく受け取った。
「サントスは書かなくていいんですか」
「彼は公安預かりだろ。関主任に口頭注意だ」
「気の毒に。もう出世は無理だな」
 ニヒヒ・・とジョーが笑う。
「さあ、真っ直ぐJBに戻りなさい。なんならチーフに迎えに来てもらってもいいが─」
「冗談じゃねえ。帰りますよ」
 サントスを引っ張り急いで出ようとするが、
「アナタ、トテモリチテキ。コノミ。コンヤイッショニ─どあっ!」
「行くぜ、サントス!」
 キョトンとサントスを見ていた左近の前でその巨体に肘鉄を食らわし、ジョーがサントスを引っ張って特別課を出て行った。
「まったく範囲広すぎるぜ。あれでも左近さんは空手の有段者だ。あっという間に捩じ伏せられるぜ」
「おお、それもいいね」
 ムフフ・・と喜ぶサントスに呆れ、ジョーは先に立って階段を下りて行った。
 と、途中でゾロゾロと歩いて来る男達と鉢合わせした。北川組の奴らだ。双方立ち止りじっと見る。
 40代くらいの男がサントスを見て、“ノーマンか”と呟いた。
「よく見ろ。こいつは昨夜そっちの若い奴らが間違えた一般人の外国人だぜ」
「・・・よく似てるが・・確かにノーマンではない」
「わかってもらえて嬉しいよ」
 ジョーが出口に向かう。と皆ゾロゾロと付いてくる。釈放されて、年配の男が身元引受人の北川組の幹部だろう。
 銃を持っていたあの大柄の男だけはいなかった。
 この変な取り合わせの一行が新宿署から出て来た。と、
「お前達はノーマンの居所を知らないか?」
「知らねーよ、そんな奴」
「もし見かけたら連絡してくれ。私は北川組々長の北川だ」
 男がジョーに名刺を渡した。電話番号が書いてある。
「もちろん礼はする」それから2人の顔を代わる代わる見て、「いいツラ構えをしているな。なんならうちで面倒を見るよ」
 こうも続けて警察に連行されたジョーとサントスをまともな職に就いていないと見たのか、北川がサントスにも名刺を渡した。ピラピラとサントスが名刺を振る。
「考えとくよ」
 クルッと踵を返し、ジョーが背を向けた。

「北川組にスカウトされた?」神宮寺が目の前のジョーをまじまじと見て、「好きにしろ」
「そりゃねえぜ。お前の言うとおりにした結果だ。もちろんまだJaとは言ってないぜ」
「JaでもYesでもQuiでも好きなので返事してくれ」
〝はい〝の選択しかないのか?
「そうだぜ、ジョー。これを機に北川組に入り込もうぜ。ノーマンの情報が掴める」
「行くならあんた一人で行け。おれはノーマンに興味はない。チーフの命令もないし」
「チーフの命令があればいいんだな」
「待て、サントス!」ダブルJ室を出て行こうとするサントスをジョーがあわてて止めた。「おれはこれから始末書にチーフのサインを貰いに行くんだ。余計な事言うな」
『サントスはそこかい?』
 室内フォンは鳴り森の声がした。ジョーがギョッとし、サントスが返事をした。
『戻ってくれと関さんが言っている。ロブが明日退院するそうだ』
「なんだって!そりゃ大変だ。ぶん殴ってこなきゃ」
 サントスがあわてて出て行った。
「ぶん殴るって・・誰を?」
 神宮寺に訊かれたが、さあねとジョーがとぼけた。
 だが、これでノーマンの件は終わり。サントスはアメリカに帰る。と、ジョーは一人ほくそ笑んだ。
 ─が。

「サントスが行方不明?」
 神宮寺がデスクの向こうの森に目を向けた。
「うむ。昨日JBを出てから後、誰も彼に会っていない。霞が関にもホテルにも戻っていない」つまり病院にも行っていないという事か。「JBの正面ゲートを出たまでは確かだ。その後は代々木駅に向かったと思われるが」
 サントスは車ではなかった。霞が関に戻るとしたらJRから途中地下鉄に乗り換える。
 榊原病院のある中野坂上に行くにしてもやはり代々木駅からだが、サントスは電車で行った事はない。東京の公共交通にあまり明るくはないはずだ。
「どこかでノーマンを狙う奴らに遭遇したか・・・。まさか一人で北川組に潜入したとは思えないが」
「弾丸(たま)食らってどこかで伸びてるかもしれねーな」
 ジョーが言うのを森と神宮寺が顔をしかめて彼を見た。だが、あり得る事だ。
「そこで君達にサントスの行方を追ってほしい」
 ジョーが不満そうに森を見たが、
「今彼は公安預かりだが、実は例のTEの件でゴタついていてね。どうやら公安2課の堂本とその上司が関わっているらしい。今その上司とTEの繋がりを調査している」
「やはりあの人が・・」
 神宮寺が呟いた。
 当日現場にいた人間なら情報をリアルタイムに流す事ができる。さらに公安内部からの情報も盗る事ができる。
「そいつで忙しいから、勝手な行動をとった国際警察の面倒を見てるひまはない。仲間がなんとかしろ─という事ですか」
「身も蓋もない言い方だが、ま、そうだ」
 森が苦笑いし2人にソファを勧めた。
「だがそれだけではない。実はここ1ヶ月間ヘロインに関する犯罪が急増している。ノーマンが持ち逃げしたヘロインが街中に流れ始めたのかどうかわからないが放ってもおけない。ヘロインを買う金欲しさに凶行に及ぶ者も出ている」
「あんな物、一時の歓楽に過ぎないのに・・」

 ジョーは以前、潜入捜査のために自らの体にヘロインを射った事がある。
 森にも神宮寺にも相談せず自分一人で勝手にした事だが、実際に手を下した榊原と共に処分を受けた。
 そのヘロインは医療用の物だったのでその後依存症も後遺症も出なかったが、それでも体からヘロインの痕跡を完全に消すまでには長い時間を要した。
 あの時はほとんど意識がなかったにも拘わらず、その苦しさをジョーの体が覚えている。 
 本当はそんな物に関わりたくないのだが。

「我々の任務はサントスとノーマン、あるいはヘロインの行方と押収ですね」
 黙ってしまったジョーの代わりに神宮寺が訊いた。
「ノーマンの件は警視庁の仕事だが、サントスが関わっている可能性が高い。彼を追えば必ずノーマンや60億のヘロインに行き当たるだろう。頼むよ」
「はい」
 神宮寺が、少し遅れてジョーがソファから立ち上がった。

「これがノーマン目撃証言の場所だよ」自分のノートパソコンをダブルJ室に持ち込み、洸がモニタを2人に向けた。「もっともこのうちの何件かはサントスだろうけど」
「新宿周辺に集中してるな」
 モニタには新宿や渋谷周辺の地図が表示され、その所々に黒い点が打ってある。全部で15程か。
「これで全部か?」
「警察に寄せられたのはね。これにあっち関係の情報をプラスすると」
「うわっ」モニタが真っ黒になった。「なんだよ、これ─。絶対礼、目当てのガセだな」
「この中から信憑性の高いのだけを表示すると」モニタに地図が戻り、黒い点は30程になった。「やっぱり新宿に集中しているね」
「だけど、男が一晩戻らなかっただけで騒がれたらいい迷惑だよな」
 確かに何もない時なら放っておくが、ロブが今日、ドウラもこの2、3日中には退院するという今、公安になんの連絡もせずサントスが遊び歩いているとも思えない。
 彼はこれからバートンや関と共に、ロブ達の取り調べやアメリカへの移送準備をしなければならないのだ。
「仕方ねえな。北川組に行って、でかいのが邪魔してねえか訊いてみるか」
「最近の暴力団って名刺なんてくれるんだね」
「北川組は表向きは建設業だ。ヘロインの持ち逃げ騒動を起こしたのは先代の時で、今の組長は1ヶ月くらい前に襲名したばかりだ」
「どうりで半分シロートみたいなツラしてたぜ」
 ジョーが名刺をピラピラさせる。
「ジョー、この前のリクルートスーツ着て行ったら?ついでにサングラスして銃をかまえればヒットマンとして雇ってくれるぜ。いてっ!」
 洸の後頭部がゴンッ!と鳴った。
「そしたら一番最初にお前を始末してやる」
 ジョーが胸のポケットに名刺を入れ、その下のウッズマンを叩いた。顔は笑っているが冗談に聞こえないところが怖い。
「どっちがあっち関係かわからないや。─あ、待ってよ」出て行こうとする2人を洸が止めた。「未確認だけど、どこかの組がノーマンを押さえているという情報もあるよ」
「・・・洸」2人がジロリと睨む。「どこからそんな情報を掴んで来るんだ」
「え?まあ、洸様のカン、という事で」
 ヘヘヘと誤魔化す洸に、2人はまたあのソフトか、と思う。
 当たればすごいが、時々とんでもない事に巻き込まれる。最大の被害者はジョーだ。
 彼は思いっきり顔をしかめ神宮寺を見た。と、神宮寺はちょっと考えて胸のオートマグをダブルJ室のセキュリティボックスに入れた。
「ミスター?」
「日本国内だし、持ち歩かない方がいいだろう。何かあったら洸、頼むよ」
 OKと返事をする洸を横目にジョーもウッズマンをボックスに入れた。
 身を守る術は心得ている。しかし銃には敵わない。
 だが一般人の銃所持が許されていない日本は、正直言ってやりにくかった。
「北川組に行ってみるか」
 のんびりと神宮寺が言った。

 北川組のビルは歌舞伎町2丁目のほとんど大久保寄りにあった。
 表向きの職業は建設業なので1階は事務所になっている。
 JB車両の目立たないカローラでそのビルの前に降りた神宮寺とジョーは正攻法で、つまり真正面から乗り込んだ。
「組長さんを呼んでくれ」
 事務所内には2、3人の若いのしかいなかったせいか、ジョーの低い声がよく響いた。
 そのあまりにストレートな言い方に皆一瞬ポカンと彼らを見た。
「聞こえねえのか。組長さんに訊きたい事があるんだ」
 と、ジョーが1人の若い男に、“よおっ”と声をかけた。あの夜サントスが襲われた時にいた奴だ。
 男も気が付き組長を呼びに奥へと走って行った。
 と、誰が知らせたのか入口から目つきの鋭い男が2人入って来た。そちらは神宮寺が牽制する。

「おお、君か」北川だ。「ノーマンに関する情報でも持ってきたか」
「すまない、情報はないんだ」
 会ってまだ2回目だと言うのに同等の口調で話すジョーを、しかし北川は気を悪くした様子はない。かえって周りにいる組員の方がピリッと気を立てた。
「実はノーマンに似たあの男が行方不明なんだ。こっちに来てないか?」
「いや、新宿署で見たきりだ」
 北川が首を傾げ周りの男達に目をやる。やはり首を振っている。うそをついているようには見えない。
 神宮寺が頷いた。
「そうか─。それからもうひとつ。ノーマンを押さえた組があるって本当か?」
「君はどこからそんな事を聞いたんだ?」
「そんな事、そこら辺りを歩いているチンピラを突っつけばすぐわかるさ。あの男がノーマンに間違えられている可能性もあるからな」
 ジョーの言葉に、だが北川は答えなかった。
「邪魔したな」
 サントスがここにいないのは確かなようだ。ジョーは踵を返した。
「君達」北川が止めた。「いい体しているな。我々の仕事を手伝う気はないか?」
「建設業をか?おれ達、色男だから力はねえんだ」
 ニッと口元歪め、そのまま神宮寺と事務所から外へ出る。

「潜入してるんじゃねえとすると、やっぱり・・・」
「別の組に捕まっているか、それこそどこか人知れずの場所に転がっているか・・・」
「お前のコレだろ。もうちっと心配しろよ」親指を立てたが、「あれ?どっちだ?」
 続いて小指を立てるジョーを睨みつけ、さっさと来た道を戻ろうとした。と
「お前ら、北川組になんの用があるんだ」
 あいさつ抜きで言う4、5人の男達は、どう見ても通りすがりの通行人には見えない。神宮寺とジョーを取り囲むようにする動きもケンカ慣れしているようだ。
 ふと周りを見ると、2人と男達の他には誰もいなかった。
 この辺りは夜の店が多い。しかし人通りがまったくないわけはないのだが、この不穏な空気を察した人々が近づかないのかもしれない。と、
「こいつだ。こいつがノーマンと新宿を歩いていたぜ」
 男の1人がジョーを指差して言った。
「人違いだ。奴はノーマンじゃない」
 げんなりとジョーが言う。が、聞く耳を持たない男達がジョーの腕を掴む。
「放せ!」
 両手同時に裏拳を入れてやる。2人ひっくり返った。
 残る男達が詰める。が、それを待たずにジョーのパンチが飛んだ。1人が左頬を、もう1人がアゴを押さえて地面に転がる。
 あと1人─ジョーが振り向く。が、
「動くな。それ以上動くと」
 残った男が神宮寺の胸に銃を押し当てていた。
「・・・・・」
 動きを止めジョーが神宮寺を見る。
 銃の1丁や2丁で動けなくなるような奴ではない。なにやってやがる、このやろう─。
 と、地面から起きた男がジョーに殴りかかった。
 右頬に受け体が揺れた。と、あとの男達もジョーを押さえようとする。
「神宮寺!」
 男達に殴られるジョーを神宮寺が見つめる。その目がジョーに、“捕まれ”と言っていた。彼はジョー共々、この手掛かりに自分の身を投じようとしているのだ。
 それがわかったジョーは抵抗をやめた。おとなしく殴られてやる。

「素直に言う事を聞いていればいいものを」銃を持った男が、仲間達に引き上げられたジョーに向かって言った。「ちょっとつき合ってもらおう。なに、教えてくれればすぐに帰れるさ」
 男達のそばに車が止まり2人は後部席に押し込まれた。
「大丈夫か」
 神宮寺が隣に座ったジョーに声を掛けた。
「なんだ今頃。おれが殴られるのを見てたくせに」
「ある程度抵抗しないとな。あまりあっさり捕まったらかえって怪しまれる」
「その役がおれか!」
 ジョーが神宮寺に向かって拳(こぶし)を飛ばす。パンッ!と顔の前で止められた。握られた拳共々座席に押し戻される。
「ヤロウ!」
「おとなしくしてろ!」先程の男が振り返り怒鳴った。「こーいう男が趣味なのか、あいつは・・・」
 男の呟きに神宮寺とジョーは顔を見合わせた。



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