コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Posted by  朝倉 淳   0 comments   0 trackback

闇に溶け込む黒い影 4


「あれ~? ジョー?」
 乱暴に肩を押され部屋に入ったとたん、間延びした男の声がした。
「なんで君が来るんだ?おれは黒髪で細身でしなやかでたおやかな日本人の男の方だと言ったのに~?」
「・・そーいう事か」
 ジョーは目の前のサントスを睨みつけた。
 自分が行方不明になれば、神宮寺達が北川組を尋ねるだろうと考えたサントスが差し向けたらしい。
「こいつのご所望はおれじゃない。黒髪の日本人の方だと言ってるぜ」
「なんだ、もう1人の方か」
 男が部下に、別の部屋に連れて行った神宮寺を呼びに向かわせた。
「で、こいつはなんで日本人の男を呼ぶように言ったんだ?」
 ちょうどそこへ、男に連れられ神宮寺が入って来た。サントスが“うわお~”と声を上げた。
「60億のヘロインの隠し場所はこの男(神宮寺)と半々に覚えていると言うんでね。さっ、2人揃ったんだ。素直に吐いてもらおうか、ノーマン。そっちの男もだ」
「・・・・・」
 やはりサントスはノーマンと間違われて連れて来られたらしい。
 しかし言うに事欠いて、神宮寺を連れてくるように言うなんて─もちろん答えられるはずがない。
 しかしそれはサントスも同様だが、自分を睨みつける神宮寺とジョーにニコニコ笑いかけている。
「お望みの男を連れて来たんだぜ。素直にしゃべらないと」
 男が部下の若い男に合図した。これ見よがしにポキポキ指を鳴らし神宮寺に迫る。と、神宮寺がスッと若い男に目を向ける。
 ジョーのような刺すような鋭さはないが、それでも若い男をビビらせるには充分の眼光だ。若い男はちょっと怯んだ。
「ビビってンじゃねえ! 2、3発殴ってヘロインの在り処を聞き出すんだ!」
「ジングーに手を出すな!」
 後ろ手に縛られて、そのまま縄でイスにグルグル巻きにされているにも関わらずサントスが暴れる。ガタガタとイスが壊れそうだ。
 ふと見るとジョーが平然と突っ立っているので、
「違う!知っているのはそっちの背の高い男だ!」
「サントス、てめェ」ジョーが詰め寄る。「今度はこっちに矛先を向けるのか!」
「ジングーを殴るなんて許せない!」
「おれはさっき殴られたぜ!」
「それならあと2発も3発も同じだ」
「お前が殴られろ!」
「ジングーが殴られてもいいのか!」
「そんなの、殴った方が気の毒だ!」
「──」
 サントスが黙った。納得したらしい。2人揃って若い男に目を向けた。
 静観されるのはかえって怖い。おまけに殴られる対象の男までじっと若い男を見つめている。これではとても手が出せない。
 と、痺れを切らせた男が神宮寺に銃口を向けた。
「うおお~!」
 サントスが吠えた。ブチブチと縄が切れて行く。
 実はジョーが近づいた時、手の中に隠し持っていた小さなナイフで縄の所々に切れ目を入れたのだ。
 後ろ手に縛られている縄はもうとうに解いていた。そのまま銃を持っている男に向かって行く。
「こいつ!」
 サントスに向けられた銃を神宮寺が蹴り飛ばした。男がサントスに潰される。銃を持たないあとの若い奴らはサントスの敵ではない。次々と床に倒されていく。
「潜入するつもりだったんだろ?」目の前で暴れるサントスを見ながらジョーが呟く。「こーいう状況でいいわけ?」
「ん・・・」頭を掻き神宮寺が唸る。「もう入れてくれないよな」

「谷本さん!」男が1人飛び込んで来た。「北川組の組長が客人を返せと乗り込んでき─」 
 が、室内の有様に言葉が途中で切れた。谷本と呼ばれた男を含めた全員が床に転がり、その真ん中にガハハ・・と笑う巨漢が立っている。
 飛び込んで来た男は思わず神宮寺とジョーに目をやり、また床に視線を戻した。と、そこへ、
「谷本! うちの客人をどうするつもりで─」
 先程会ったばかりの北川が5、6人の男達と入って来た。が、室内の有様を見てやはり口を閉じた。ふと目の前の巨漢に目をやり、
「ノーマン」
 その横で神宮寺とジョーがため息をついた。

「彼らは中田組といって、うちとも付き合いがるんだが」
 組長室にしては質素な部屋のソファを3人に勧め、北川は反対側のソファに腰を下ろした。
 若い男がコーヒーをテーブルに置く。サントスの前にはケンタッキーの箱が置かれた。捕まってからロクに食事をしていないらしく、さっそく食い付いている。
 これも暴力団による接待になるのかな、と神宮寺は思った。
「君達が無理矢理車に乗せられたと聞いて来てみたが大丈夫だったな」
 ハハハ・・・と笑う北川だが、他の組が2人を連れ去ったと聞き、やはり彼らはノーマンに繋がっているとあわてて駆け付けたのだろう。が、そこにいたのはサントスだった。
「さっきも話したが、我々の仕事を手伝う気はないか。私は代替わりしたばかりで人手がほしい。君達2人はもちろん、そちらの彼もただ者ではない顔つきをしている」
「スカウトされてるぜ、神宮寺。JaでもYesでもQuiでも好きなので返事しろよ」
「・・・・・」ニヒヒ・・・と笑うジョーを横目で睨みつけ、「我々はノーマンの行方なんて知りません。サントスが無事ならそれでいいんです」
 と、サントスがおおお・・と泣き出した。こいつ大した演技だ。いや・・本物か?
「お騒がせしました。失礼します」
 神宮寺が立ち上がる。
「だがこのままノーマンが現われなければ、そっちの彼がまた危ない目に遭うんじゃないか?」
「・・・・・」
 神宮寺は動きを止めジョーと顔を見合わせる。戸惑ったふりをしている。こいつも大した演技力だぜ。
 ロブより重症だったドウラもこの一両日中には退院する。遅くとも4、5日以内にはサントス共々アメリカへ帰るだろう。そうすればもうサントスに危険が及び事はない。
「あなた方が早くノーマンとやらを捕まえてくれればいい」
「それには情報が必要だ。君達は街の情報を集めて私に知らせてくれ」
「─わかりました。ノーマンの事を聞いたら知らせます」
 神宮寺が言うと北川が頷いた。
 3人は事務所を出た。停めてあったままのカローラに乗り込む。

「せっかくスカウトしてくれたんだから、このまま入り込んだ方がいいんじゃねえの」
「だがサントスは公安に戻らばければならない。明日にもドウラが退院する」
 そんなァ、ミスタ~と抵抗するサントスへ、
「だめだ。君には君の任務がある。関さんに従うんだ」
「そうだな。あんたにウロつかれるとまたややこしい事になる」バックミラーに映るサントスに向かってジョーが言った。ゆっくりとカローラを出した。「じゃあ、おれ達だけでも入れてもらおうか」
「だが北川組にはノーマンはいない。それにひとつ気になる事がある」
 真っ直ぐに前を見ながら神宮寺が言う。
「彼が北川組を裏切ってヘロインを持ち逃げしたのが3ヶ月前。ここ何日かでノーマンの目撃者が出て来たが、彼はそれまでどこにいたんだ? あの世界は閉鎖的だし噂が広がるのも早い。ノーマンがこの辺りをウロついていれば多くの目撃者が出るはずだ。それを北川組がわからないはずがない。彼らは裏切り者は許さない。ノーマンはとっくに発見され捕まっているはずだ」
「日本にいなかったんじゃないのか。外国まではさすがに目が届かないだろう」
「いや、出国者名簿を調べたがノーマンの名前はなかった。偽造パスポートで出国したかもしれないがあの風貌だ。そう誤魔化せるものでもない」
「そうだな・・・。サントス、気をつけないとあんた成田で空港警察に捕まるぜ」
 バックミラーの中のサントスがジョーを睨みつけている。そのジョーはゆっくりステアリングを繰る。ゴチャゴチャした新宿の街からなかなか出ようとしない。
「ノーマンが3ヶ月も無事だったのは、北川組以外のどこかの組が匿っていたから・・・」
「うん、洸が言っていただろ。ノーマンを押さえている組があるって。そして2ヶ月が経ち街にヘロインが流れ始めた。それがノーマンが持ち逃げした物かどうかはわからないが」
「なあ、おれ本当に公安に戻らないとダメ? 明日まで行方不明という事で・・」
「無理を言うなよ、サントス。しっかり職務違反だぜ」バックミラーに映るサントスの情けない顔に神宮寺が苦笑する。「チーフかニューヨークの指令でもあればともかく・・・。職務違反の面倒をみるのはジョーだけで手一杯だ」
「ぬかしてろっ」ジョーがフロントに映る副都心のビル郡を目にし鼻を鳴らした。「だがよ、このまま真っ直ぐに霞が関には行かれなくなったぜ」
「・・ん」
 チロッと自分に向けられた青い瞳を受け、神宮寺もドアミラーに目を移す。頭だけ少し動かしサントスも後方を窺った。
「アコードは北川組、レガシーは中田組かな。おれ達がノーマンと繋がっていると思っているんだな」
 これでは霞が関や千駄ヶ谷はもちろん、サントスの泊るホテルや自宅マンションにも戻れない。
「仕方がねえ。3人共しばらく行方不明になるか」その前に、とジョーが車を歩道にゆっくり寄せた。スルスルと窓を下ろす。「君達、ドライブしない?」
 歩道を歩く女子大生風の2人連れに声を掛けた。
 2人は見てくれの良いジョーとその隣に座る端整な神宮寺に興味を引かれたようだが、後席でニッと白い歯を見せているサントスを見ると、“きゃっ”と足早に行ってしまった。
「あ~あ、お前のせいで女の子が寄ってこないぜ」
「なに言ってンだ。君だって男(ママ)にモテてたじゃないか。男に声掛けた方がいいんじゃねーの」
「よせ、サントス。運転中にそんな事言うなっ」
 が、時すでに遅くジョーがステアリングを握るカローラはガタ、ドタと踊りながら新宿の雑踏に消えて行った。

『神宮寺!』リンクが鳴った。一平だ。『昨夜、榊原病院のメサドンに入った男がノーマンの事を知っているそうだ。早くしないと10時には専門の病院に送られるぞ』
「ありがとう、一平。ジョーと中野坂上に向かう」
 神宮寺はベッドから飛び出すと、何も着けていない上半身にシャツを着た。そして向かい側のジョーの寝室のドアをノックもなしに開けた。
「起きろ、ジョー! 榊原病院に行くぞ!」
「おれ、パス。朝メシもいらねえ。飲み過ぎた」
「そりゃよかった。食ってるひまないんだ」
 せめてコーヒーの一杯もと思うが時刻はすでに8時に近い。話を聞く時間を入れればあまりのんびりしてもいられない。
 神宮寺はベッドに懐いているジョー目掛けて、脱ぎ捨てられていたシャツやパンツを放った。

 昨夜、2台の追跡車を躱した3人は千駄ヶ谷近くのホテルにサントスを落とし、神宮寺とジョーは新宿から離れているジョーのマンションに向かった。
 その間、道行く女の子に声を掛け─もっとも一度も成功しなかったが─2、3軒はしごして元麻布に着いたのは夜中を過ぎていた。
 運転があるので酒を飲めなかったジョーが、寝る前にと飲んだ一杯のウイスキーが効いたようだ。
 シャワーを使わず寝てしまったジョーは放って、勝手知ったるなんとやらと神宮寺はシャワーを借り客用のベッドに潜り込んだのが2時過ぎだった。

 寝室からボクサーブリーフひとつで出てシャワーを浴びたジョーは、まだ濡れている髪をタオルでカシカシしながら先に地下駐車場に降りた神宮寺の後を追った。
「う~、まだ酒が残ってるし寝足りねえ」
 助手席に収まったジョーがぼやく。
「すぐ目が覚める。行き先は榊原病院のメサドンセンターだ」
 その言葉にタオルを動かしていたジョーの手がピタリと止まった。
 カローラがゆっくりと動き出す。



                            5 へ


スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://junstory.blog63.fc2.com/tb.php/310-cdb58093
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。