コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳   0 comments   0 trackback

闇に溶け込む黒い影 7


「そうか、君達もあのビル火災に巻き込まれたのか」
 事務所内がちょっとバタバタしているようだが、北川自ら神宮寺とジョーを迎えてくれた。 
 彼の態度から2人はなぜか気に入られているとわかる。JBクビになったらこっちでも食っていけるな、とジョーが言い神宮寺がいやがっていた。
「そうだ。君達にいいものを見せてあげよう」
 と、事務所の奥の部屋に2人を誘う。
 組長室かな、と思ったがそれよりさらに奥まった一角だ。
 相手が相手なので普通の人間ならそんな所へ行くたくないだろうが、2人には躊躇する気配すらない。それがまた北川を楽しませている。
「で、ノーマンの行方はわかったんですか?」
 神宮寺が訊いた。
「まだだが、あの男が教えてくれるだろう」そう言い北川がドアを開けた。狭く暗い室内には1人の男がイスに縛りつけられていた。「ビル放火の犯人だ」
「えっ!」
「なんだって!」
「天道会の下っ端だよ。テレビのニュースで顔写真が出たからね。すぐわかった」2人が驚く様に気を良くした北川が言った。「あのビルにはうちの若い者もいたんだ。廊下でこいつと擦れ違って─、火が出たのはそのすぐ後だったそうだ」
「・・・・・」
 2人が顔を見合わせた。
 実は彼らが北川の事務所に出向いたのは、協力を頼んでいた新宿署の特別課から連絡が入ったからだ。
 それによると、その日の夜遅くから明け方に掛けて北川組の事務所を何人もの男達が出たり入ったりといつにない慌ただしさを見せているという。
 ノーマンに関する情報を掴んだのだろうかと思ったが、放火犯を捕まえていたとは思わなかった。
 おまけにそいつは天道会の組員だという。神宮寺の推測通りになった。
「警察も行方を掴めないでいるのに、どうやって見つけ出したんです?」
「なに、警察の捜す範囲より我々が捜す範囲の方が狭いからね」
「それでこいつ口割ったんですか」男に掴み掛かりたいのを我慢するようにジョーが訊く。「なんならおれが突っついてやるぜ」
「いや、うちにも専門家がいるからね」
 男と室内にいる北川の部下に目を向ける。
 おれ達だってプロだ、とジョーが思ったがもちろん口には出さない。

 と、何やら表の事務所の方が騒がしくなった。何人もの男の怒鳴る声、イスや何かを倒す音が奥まったここまで聞こえてくる。
「何事だ」
 ドアを閉め、北川が事務所に向かった。
「社長、天道会の奴らが」走って来た男が言った。「あの男を返せと─」
「ノーマンの居所を知られるとマズイと思って取り返しに来たのか」
 と、いう事は捕らえられている男はノーマンの居所を知っているという事だ。渡すわけにはいかない。
「危ない!」
 神宮寺が北川の腕を引き壁に押し付けた。ここまで侵入してきた天道会の組員が北川に向かってナイフを突き出して来たのだ。
「ヤロウ!」
 ジョーがナイフを蹴り飛ばす。続けて男の腹を蹴り上げた。その後ろに3、4人の男が走ってくる。
 ジョーには天道会と北川組の区別がつかないので、殴りかかってくる奴はとりあえず蹴り倒した。
 だが狭い廊下では動きが制限される。
 しかしそれは襲撃者だけで、神宮寺も体の大きなジョーも壁をうまく使い次々と相手を倒していく。
 もちろん北川組の組員もおとなしくしているわけではない。奥への侵入は許したものの反撃は素早く、もう奥まで侵入してくる者は少なくなった。
 と、突然ドーン!という響きと共に建物が揺れた。爆弾か!?と思ったが、
「裏口か!?」
 身を翻し北川が奥へと走った。神宮寺が続く。ジョーは大柄の男に組みつかれていたが倒すのは時間の問題だろう。
 北川の言う裏口はドアが破られ4WD車が突っ込んでいた。車内には誰もいない。
「伏せろ!」
 神宮寺が北川に飛び付き床に腹ばいになる。
 裏口のすぐ横にある放火犯を監禁していた部屋から銃声が響く。廊下に向けられた弾が神宮寺の肩を掠った。
 そのすきに部屋から2、3人の男が飛び出し車に乗り込む。
「神宮寺!」
 ジョーの声が、だが銃声で消された。キキキ・・・と音を立て車がバックする。
 後には曲がったドアがブラブラ揺れていた。
「くそォ・・・。大丈夫か、神宮寺」
「ああ─。しかし、まんまと連れ攫われちまったな」
 血の滲んだ肩を右手で押さえてゆっくりと立ち上がる。
 床からはポカンとした顔の北川が2人を見上げていた。

「いない?」神宮寺の声が尖る。「そんなはずはない。ちゃんと捜したのか?」
「新宿署と池袋署が合同で捜索した。間違いないだろう」
 ジョーは、肩を負傷し経過入院している神宮寺を前に言った。入院といってもここはJBの医療部だ。
「どこか別の場所に移しちまったんだろうな」
「ジングージをこんな目に遭わせるなんて許せない!」
 わめくサントスを同席している石丸がジロリと睨んだ。自分より遥かに小柄な石丸だが医者の迫力か、さすがのサントスもゴモゴモと口を閉じた。
「だがよ、おれ達は放火犯を捕まえたいわけじゃねえんだ。何もあの男を追わなくても別の奴を捕まえて石丸さんに自白剤でも射ってもらえば─」
 ジョーも睨まれた。
「ノーマンに関しては天道会の仕業だという証拠がない。別件で攻めて行くしかない」
 国際警察といえどその国の法律を無視する事はできない。事件によっては特例も認められているが、今回の件では無理だ。
「なにが国際警察だ。やりにくいぜっ」
 吐き出すように言うジョーに眉をしかめ─しかしその思いは神宮寺もサントスも同様だろう。
『ジョー』スピードマスターから西崎の声が響く。『天道会のヤサを見つけたぞ』
「なに!」
「どこだ!」
『豊島区の南長崎だ。今、特別課のメンバーと包囲している』
「よしっ、おれが行くまで手出すンじゃねえぞ!」ジョーが立ち上がった。神宮寺もベッドから出る─が、「おい、神宮寺」
 体をふらつかせ神宮寺がジョーの体に当たる。
「ジングー!なんでおれの方に倒れてくれない!」
「うるさいぞ、サントス!無理するな、神宮寺。今回は留守番していろ」
「だ、だけど・・・」
「お前、ずいぶん長いこと休み取ってねえだろ。今日のところはおれに任せろ」
「そーだよ、ジングー。ザコはジョーに任せて君はおれがじっくりと看病して─ぐっ!」
 腹を押さえサントスがよろける。もちろん誰も受け止めてくれない。
「あー、言い忘れていたけど」石丸が口を出す。「神宮寺君はドクターストップだ。少なくとも明日まではベッドから離れてはいけない」
 キョトンと神宮寺が石丸にその顔を向ける。自分が何をいわれたのかわからないように。
 いつもは理知的な細い眼が丸くなるとSメンバーの顔は消え、子どものような表情になる。
「そーいう事だ!」ジョーが神宮寺をベッドに押し戻した。「お前が釈放されるまでには、あの男をとっ捕まえてやるぜ!」
 勢いに乗り病室を出て行くジョーを見送ると、神宮寺はぞの目をゆっくりとサントスに向けた。

「早かったな、ジョー」
 待機していた西崎が振り向いた。が、ジョーの後ろを見てギョッ!とする。そこには思いっきり不機嫌な顔のサントスがいた。
 隣の立花と顔を見合わせる。
「神宮寺の奴、おれにサントスを押し付けやがった」サントスに負けないムスッとした顔のジョーが言った。「お目付役だと?冗談じゃねえよ」
「おれだってジングージの頼みでなければ君のお守りなんかしたくない」サントスも西崎の車の後部席に入り込んだ。「せっかくジングーとベッドで・・・いや、看病出来ると思ったのに」
「あんたがベッドの世話にならないようにしろよっ」
「ゴタゴタ言ってるとベッドに埋め込んで動けなくしてやるぞっ」
「・・・・・」
 味方同士だよな、この2人・・・と思ったが、
「あの角の運送会社が天道会の関連会社だ」さっさと話を進めてやる。「この辺りを警らしていた警官が、何人かの組員と一緒に入るあの男─今井だっけ?、を見たそうだ」
「やっぱ隠してやがったな、天道会」
「ザコ相手に君が出てくる事はなかったのに」
「神宮寺が気にしているんだ。─行くぞ」
 ジョーがドアを開けた。が、
「待て、ジョー。最初に池袋署の組・対(組織犯罪対策課)が入る」
 なんだと、とジョーがその鋭い眼を西崎に向けた。慣れてはいるがやはり迫力を感じる。「捜査はあくまで放火容疑だ。それと北川組への襲撃─組・対の範囲さ」
「チェッ!」
 再び後部席に戻り舌を鳴らすジョー。サントスも不満そうだ。こういう気はよく合っている。

 と、西崎の車の前に停まっていたカローラから4人、アリオンから2人の男達が降り、短い打ち合わせをして運送会社に向かう。
 アリオンの2人が新宿署の特別課だ。後の4人が池袋署の組織犯罪対策課のメンバーだろう。
「ところで神宮寺は? 別行動なのか?」
「石丸さんのドクターストップが掛かっておとなしくネンネしてるよ」
「ヘェ、珍しい事もあるもんだな。あの神宮寺が─。まさか今頃抜け出していたりして」
「JBの医療部だぜ。おまけにあの後石丸さんと交代するのは榊原さんだ」
「そりゃ絶対逃げ出せないな」
 西崎が笑う。が、目は会社の建物に向けたままだ。
「JBは人使いが荒いからな。ジングーが気の毒だ」イライラと膝を揺らしながらサントスが言う。「ニューヨークに来ればおれが全部解決して、ジングーの仕事の量を減らしてあげるの
に」
 それも気の毒だ、と3人は思った。
 その分〝他の仕事〝が増えるんじゃねえか? サントスとコンビを組んで見みろ。神宮寺は精神的にも肉体的にもあっという間にピークに達して爆発するぞ。ニューヨーク支部崩壊だ。─なぜか可笑しくなり、クック・・・とジョーが笑う。横のサントスが気味悪げにジョーに目を向けた。
 その時、目の前の建物から銃声が響いた。西崎が反射的にドアを開けた。
「言わんこっちゃねえ」
 後席のジョーがため息をつき、ウンウンとサントスが頷く。
「高桑さん!加地さん!」通信機で特別課の2人を呼ぶ。「どうしました!」
 だが応答はない。銃声は最初の1発だけだったが、
「ジョー」
「組・対が困ってから出ようと思っていたが」スッと長身が車外に伸びる。「そうも言っていられねーな」
 反対側に立つサントスと一瞬目を合わせ、運送会社の敷地に走り込む。サントスと西崎が続いた。立花は引き続き2人を呼んでいる。

 運送会社なので従業員も多いと思ったが、3人が入った事務所には誰もいなかった。
 奥のドアを開けると廊下が左右に伸びていた。
 立花が追いついて来たので、ジョーは二手に分かれて人の気配のするさらに奥へと向かうよう指示した。
 右側の廊下をジョーとサントスが走る。ふいに並んでいるドアが開いた。
「ノーマン!?」出て来た男が叫んだ。「どうしてここに! お前は富士にいるはず─」
「フジだと?」ジョーが男の胸倉をつかむ。「それはどこだ!」
「言え、こいつ!」サントスが男の首をガツッと掴み、壁に押し付けて持ち上げた。「おれは早く戻りたいんだ! さっさと吐け!」
 が、見ると男は白目を剥いていた。
「バカヤロウ! 口を利けなくしてどうするんだ!」
 ジョーがサントスの手から男を取り戻し床に横たわせた。呼吸(いき)はあるがしっかり気絶している。
「起きろ!」
 ジョーが男の頬をピシャピシャ叩いた。と、奥から再び銃声が聞こえた。仕方なく男は諦め2人は再び奥へと向かった。
 急に視界が開けた。荷物を積み込む作業場だ。
「アサクラ君!」呼ばれて顔を向けると、腕から血を流した高桑がいた。が、「ノ、ノーマン?」 
 サントスを見て驚いた。が、説明しているひまはない。
「加地さんや組・対の連中はどうしたんです」
「そこのドアから裏庭に逃げた奴を追って行った。今井も一緒だ」
「わかりました。─西崎!高桑さんを頼む!」
 別のドアから辿り着いた西崎達に声を掛け、ジョーとサントスは高桑の言ったドアへと走った。

 裏の駐車場には何台ものトラックやダンプカーが置かれていた。人の走る音やざわめきは聞こえるが姿は見えない。
 ジョーとサントスは左右に分かれた。と、ジョーの前に男が3人飛び出して来た。1人は逃げ出したビル放火犯の今井という下っ端だ。
「いるじゃねえか」
 ニッと口元を歪め今井を睨め付ける。サントスもこちらに引き返して来た。
「ノーマン!」
「なんで奴がここに!」
 男達が叫んだが訂正する気はもうない。ジョーもサントスも今井を確保に向かう。
 と、1人が銃を出しジョーに向かって発砲した。ジョーはスッと体をスライドさせ弾を避けると、両手で握ったウッズマンを男に向けた。
 快音と共に男の銃が弾き飛ばされた。
 その隙に今井ともう1人の年配の男が近くにあったダンプカーに乗り込んだ。荷台には土砂が積まれている大型車だ。真っ直ぐにジョーに向かってくる。
 ギリギリのところを横っ跳びで避け地面に転がる。
 ダンプカーはそのままの勢いでジョーの横を走り抜けた。


                             8へつづく

           
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