コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳   0 comments   0 trackback

一緒に歩こう この道を 8


「西崎、応答してくれ! 樋口!─ だめか」この事を早く知らせて、ここから脱出しなければ。「仕方がない。先に出よう。外からなら通じるかもしれない」
「よし、二手に分かれよう。お前は外へ、おれはこの中を行ってみる」
「それは危険だぞ、ジョー」
「彼らだって同じだ。それにこの方が効率がいい」ジョーが早くも廊下に飛び出す。「もしリンクが通じなかったらエルグランドの通信機を使え」
 エルグランドの通信機は妨害電波を突き破るほどの高出力を備えている。
「気をつけて行け」
 神宮寺の言葉にジョーの貌がふと緩んだ。今1人にしてもこいつは大丈夫だと思った。 身を躱しジョーが奥へと走って行く。神宮寺もすぐさま今来た廊下を引き返した。妨害もなく正面のドアに辿り着く。何発かマグナム弾を撃ち込んでドアを壊した。
「黒田!通信機をセットして皆を呼べ!あの建物から早く出るよう伝えろ!」
 爆発が聞こえたのだろう。門のすぐそばまで来ていた黒田が急いで引き返し、エルグランドに飛び込んだ。
「だめだ、応答がない!」
 すぐ後から乗り込んで来た神宮寺を振り返った。
「呼び続けるんだ。兵道! 現状を眉村さんに知らせてくれ!」
 前方から、ラジャ! と兵道の声が上がる。状況を聞いた眉村が後々の手を打ってくれるだろう。
 と、突然ドーン! という轟音が響いた。車外へ飛び出し建物に目をやる。右側半分が吹き飛び、真っ黒な煙が吹き上がった。
「ジョー! 西崎!」
「危ない、ミスター!」
 現場に走ろうとする神宮寺を黒田が止めた。

 神宮寺と別れたジョーは建物の奥へと向かった。こういう時は自分のカンが1番信じられる。
 と、前方のドアが開き、男が2人ジョーに向かって発砲してきた。
「チッ!」
 ジョーが床に逃れる。その位置で1人の肩を撃ち抜いた。
 ジョーのすぐ横で弾丸が跳ねた。クルッと体を半回転させ仰向けでもう1人の男を狙う。が─、
 「うっ!?」
 ボンッと爆発音がして天井が崩れて来た。あわてて立ち上がり壁に身を寄せた。
 しかし爆発の規模は小さく、気がつくともう1人の男が瓦礫に埋まってのびていた。
 ジョーがホッと息をつく。
「あまり銃を使わせないでくれ」
 ホルスタをしているのでウッズマンを抜くたびに火傷に擦れて痛いのだ。と、
“ジョー!”
 と、自分を呼ぶ声がした。その方へ走ると樋口がドアを叩いて叫んでいた。
「どうした!」
「やっぱりウッズマンの銃声だったんだ」樋口がちょっとホッとした顔になる。だが、「今の爆発でドアが歪んで開かなくなった。白鳥が閉じ込められ返事がない」
「なんだって」
 ジョーもドアを叩いて白鳥を呼ぶ。しかしドアの向こうからは何も聞こえなかった。ドアも人間の力では開きそうにない。
 ジョーは小型の爆薬玉を持っている。しかし白鳥が室内のどこにいるのかわからないまま使うのは危険だ。だが、
『─ 全メン─ 建物─ 脱出せよ─』2人の通信機が鳴った。『崩壊の恐れが─』
「仕方がねえ。─ 白鳥! 聞こえてたらドアから離れろ!」
 ジョーはドアの下にケースから取り出した爆薬玉を3つ並べスッと下がった。
 ウッズマンで一気に撃ち抜く。熱い鉄のドアがさらに大きく歪み壁との隙間ができた。強引に指を捩じ込み思いっきり引き剥がした。
「白鳥!」
 ジョーに続き樋口も飛び込む。と、 次の瞬間、ドーン! と今までにはない大きな爆発が起こった。

「君達が見たのはやはりMOXシステムの実験車両(スカイライン)で、エンジンと燃料タンクまどが無くなっていたそうだ」
 森が報告書を神宮寺に手渡した。
「相手はやはりザーツでしょうか」
 目を通した書類をジョーに渡した。漢字ばかりの書面に顔をしかめたが、神宮寺が内容を説明してくれそうにないので観念して読み始めた。
「MOXシステムを手に入れて、いったいどうしようというのか─」

 最初の爆発で今までいた廊下は落下物で埋まってしまった。もし部屋に入るのが遅れていたら、ジョーと樋口は下敷きになっていただろう。
 幸い室内には被害はなく、しかしその前の爆発で白鳥が大怪我を負って倒れていた。 ジョーは爆薬玉で鉄格子のはまっている窓を壊し、白鳥を担ぎ樋口と脱出した。他のメンバーはすでに外へ出ていた。
 やがてJBの医療ヘリが到着し、重傷の白鳥と軽傷だがあちこち焦げたジョーと樋口を乗せ病院へと飛び立った。
 残ったメンバーは煙の収まるのを待って研究所内の捜査に入り、車の残骸と外国人らしい2人の遺体を確認した。

「これって結局なんだったんだ? おれ達を誘き出すワナか? なんのために?」
「そんな事をする意味はない。おそらく車が電波を発信した事に気がつき、すぐに警察が来ると思い場所を移動したのだろう。そのついでにやっつけてやろうと思ったか─」
「チェッ、ついでかよ。甘く見られたものだ」
 バンッ! とジョーが報告書ごとデスクを叩いた。
「だが興味深い物を見つけたよ」森がパソコンのモニタを2人の方へ向けた。「何枚かあったCD─ROMの1枚が読み取り可能だった。これがその内容だが」
 モニタには日本地図が表示されている。茨城や福井など50ヶ所程に○がつけられていた。
「まさか奴らのアジトの場所じゃねえだろうな。多すぎるぜ」
「いや、これは─」神宮寺の眉が寄る。「原子力発電所の─」
「その通り。東海、敦賀、泊─ 全部、原子力発電所がある場所だ」森の言葉に2人は顔を見合わせた。「このうちの二重丸の所が現在稼働中だ」
「奴らの狙いは原子力発電所?」
 神宮寺が呟く。どうもピンとこない。
「まさかMOXを貰いに行くとかじゃねーよな」
 ジョーが前髪を掻き上げた。
 右手の甲に包帯が見える。爆発による火傷だ。あと2、3ヶ所あるが大した事はない。と、通信課が江古田にある研究機関から電話が入っていると伝えて来た。
「セキュリティレベルを5に上げて繋いでくれ」少し間を置き森が受話器を取った。「はい、森です。植田さんですか。─ はい─ え、ザーツですか」
 神宮寺とジョーが森のそばまで来た。
「はい─ はい」
 森が植田の話をメモに取って行く。チラッと覗き込み、神宮寺が眉をしかめた。
「わかりました。ええ─ はい、では」カチャと受話器を置く。2人に向き直り、「10分程前だが、江古田の研究所にザーツと名乗る組織から連絡が入った。MOX燃料システムの設計図や研究データを要求してきたそうだ。もし拒否すれば日本のどこかで大事故が起こるだろうと」
「データを?」
「なんてずうずうしい奴らだ!」
 2人の脳裏にブラジルで起こった列車爆発テロの映像が浮かんだ。もし日本であんな事が起こったら─。
「今から内閣府に行って協議に入る」
 森があわただしく外出の用意を始めた。「君達は待機していてくれ。それとこの事は当分他言しないように、それから─」ちょっと言葉を切ったが、「やはり研究所員にザーツのスパイがいたそうだ。もう10年も勤めている人物なのでまさかと思ったようだが」
 その言葉に神宮寺の口元がキュッと結ばれた。ギリリ・・・と歯ぎしりが聞こえてくるようだ。
「三神の時もそうだが、ザーツは何年も掛けて国や組織の中に潜り込むようだな。─ あ、山田さん、今から一緒に─」
 森が室内フォンで話し始めたのを見た神宮寺がチーフ室から出て行った。ジョーも続き1階下のダブルJ室に戻る。
 室内は急に出動した時のままでコーヒーも冷たくなっていた。
「やはりザーツだったか」バンッと自分のデスクに手をつき吐き出すような口調で神宮寺が言った。「国際テロ法ができてもテロリスト集団は依然として存在する。叩いても潰しても復活する。奴らはそれだけの組織力と資金を持っているんだ」
「神宮寺・・・」
「おれ達がいくら潰してもその倍の速さで復活する。これでは追いつくわけがない」
「お前、まだそんな事言っているのか。それでもおれ達は─」
「勘違いするな、ジョー。おれは気弱で言ってるんじゃない」
 スッと神宮寺の瞳がジョーに向けられた。
「奴らにどんな考えや主張があるのか知らない。腐敗した政府に立ち向かっているテロ集団もあるだろう。だがその主張がたとえ正しくても、テロというやり方で認めさせようとするのはやはり許せない。ましてや普通に暮らしている人達を巻き込み、仲間や相棒に怪我を負わせた奴らを」
「神宮寺」
 彼の双瞳に再び強い意志の光が灯るのをジョーは見た。
 端整な顔立ちの、しかしその底にある彼の怒りとそれに向かおうとする強さと優しさ─ 神宮寺力という1人の人間としての想いを─、
「そうだよな。何度復活してもおれ達が叩き潰してやろうぜ。へっ、お前がその気になってくれれば強いぜ!」
「だから関さんに余計な事を言うな」
 うっ、とジョーが詰まる。チラと上目づかいで相棒を見て、復活したこいつの方が怖いと思った。と、
「そういえば眠いって・・・。ベッドに入れよ。少し寝ておいた方がいいぜ」
「・・・誘ってるのか?」
「誰がだ!」
 真っ赤になって怒鳴るジョーに神宮寺がとびきりの笑顔を見せた。やっぱテロより怖い・・・と改めて思った。

 この日のうちに政府の担当者や植田、森など10名からなる対策協議会がザーツの要求に対する話し合いを行った。
 その最中にザーツからの2回目の連絡が入った。
 先の事項と共に研究責任者をも要求してきた。本より受け入れる事はできない。
 テロ組織にも色々なタイプがあり、テロを起こして声明を発表し自分達のしたことを誇示するものもあれば、あまり公けにはせずその国の最高機関にのみ要求を突き付けてくるものもある。
 ザーツは後者だった。国としては極秘に片を付けやすい。
 協議会は満場一致でザーツの要求を拒否する事に決定し、捜査については国際秘密警察パリ本部を介してJBに一任された。

「ザーツって鉄道マニアなのかな」ポツリと呟く洸に神宮寺とジョー、一平が目を向ける。「例のCD─ROMの最後に線路の映像が何枚もあるんだ。どこかはわからないけど・・・でも電車の映像はないから、線路マニア?」
「そんなマニアいるのか?」
 一平が洸のノートパソコンもモニタを覗く。なるほど、ずーと伸びている線路と遥か遠くに海か湖が映っている。日本の風景だと思うが都心ではない。「「これ駅だよな。たこじま?どこだ?」さっそく自分のノートパソコンで検索する。いくつもヒットしたが、その中で鉄道に関係するものは─。「のと鉄道? 能登半島だ」
「ああ」思い出したように神宮寺が声を上げた。「和倉から輪島や珠洲市方面へ出ている第3セクターだ。しかし何年か前に一部廃線になったはずだが」
「そんな所に奴らのアジトでもあるのかねっ」苛立だしげにジョーが言う。「こんな所でパソコン相手にしてたってラチがあかねえ。その能登半島に行ってみるかっ」
「おちつけ、ジョー。闇雲に動いても仕方がない」見ると神宮寺がグーグルを呼び出していた。石川県へ進む。「政府はザーツの要求をきっぱりと跳ねたんだ。そろそろ何か言ってくると─」
 ふいに神宮寺の声が途切れた。モニタには廃線になったのと鉄道の線路が映し出されている。
「使ってないわりには綺麗だな。雑草もサビも少ないし」
『石丸だが、ジョーはいるか』室内フォンのモニタに石丸医師が映った。“やべっ” とジョーがあわてて死角へと逃れる。『火傷の処置に来ていないじゃないか。今から10分以内に来ないと医療部全員でダブルJ室に押し掛けるぞ』
「今、それどころじゃないんです。ザーツのアジトを捜してるんだ」
「ジョーは何もしてないけどね~」
 洸が言いジョーに睨まれた。
「行ってこい、ジョー」神宮寺だ。「でないと出動命令が下っても連れていかないぞ」
 まるで、“早く寝ないと明日遊園地に連れて行かないぞ” と言われている子どものようだ。
 ジョーは思いっきり口元を曲げ神宮寺を睨みつけた。が、仕方なくドアへと向かう。
「神宮寺パパだね。─ あっ、痛い!ダブルJ攻撃だあ!」洸の頭がポカポカ鳴った。彼はパソコンの前から逃げ出した。「息の合ったコンビだことで!」
 と、
『ダブルJ、JB2、すぐに7階へ来てくれ』
 フォンから森の声が響く。
「ラージャ!」真っ先にジョーが叫ぶ。「チーフの命令が最優先だな」
「いつもはそんな事、思っていないくせに」
 ダブルJ室から飛び出すジョーを見て神宮寺が苦笑した。が、自分達も7階のチーフ室へと向かう。

「奴らからの発信元がわかったぜ!」3人が部屋に入ったとたんジョーの声が飛んできた。声が大きいとチーフが諌めるが、「北陸方面だ!」
「北陸?」
「能登って北陸だよな」
 偶然の符合か、と3人が顔を見合わせた。
「なんだね?」
 チーフが訊くのへ、洸が先程まで見ていたCD─ROMの映像の話をした。う~ん、と森が唸る。
「江古田に入る奴らからの通信を張っていたのだが、その発信元は確かに能登半島の穴水町周辺だ。君達4人はすぐに捜査に行ってもらいたい。穴水まではAS355を使い、穴水署のヘリポートを使用、捜査用の車両は向こうが用意してくれる。だが内容に関して説明する必要はない。君達4人のみで動く極秘任務だ。情報提供は私からのもののみ有効とする」
 はい、と4人が頷く。
「MOX燃料システムはまだ研究途中のもので改良点も多い。取り扱いを間違えると惨事になるだろう。なんとしてでも取り戻さなければならない。それも君達だけでだ」
「わかりました、チーフ。ただちに穴水に向かいます」
 出て行こうとする4人へ、
「ジョーは医療部に行ってからだ。石丸さんからの出頭命令が出ているはずだが」
「えっ、でももう大丈夫─」
「チーフの命令が最優先なんだろ?」ニコッと笑みを浮かべ神宮寺が言う。「言う事を聞かないとおルス番になるよ」
 優しげに言う相棒は怖い。ジョーはため息をついた。


                                        9へつづく

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