コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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北海道の旅はいそがしく 7

 「♪おれは?洸だ?。みんな仲間だあ?♪」裏通りいっぱいに洸の美声が響いた。「それにしても君達の話はおもしろい。そんな銃のネタどこから仕入れるんだい?」
 「あ?、商売柄ねっ、ヒハハハ・・・!」
 「そーかそーか。ヒハハハ・・・!」洸と男達の笑い声に一平は肩をすくめた。洸は相手の正体も知らず答えているのだ。「ろーした、一平。ちっとも酔ってないんだね。お酒飲んで酔わなきゃ男の子じゃありまへんよ?ォ。キャハハ・・」
 洸と3人の男達は、後ろから付いてくる一平を見て笑った。一平は思わず口をへの字に曲げた。
 (それにしても洸が暴力団の連中と仲良くしているのをチーフが見たら、どう思うかねぇ・・)
 確かに暴力団ごときJBの相手ではないが、一平の考えはもっともだ。と、そんな彼らを物陰から見ている目があった。2人の男で、一癖も二癖もありそうだ。
 「やはり奴らは南山組と手を組むつもりなんだ」メガネを掛けた男が言った。
 「だがあの2人ではなく、本命はもう一方の2人だぞ」
 「いや、おれ達にはそう思わせておいて、本当はあの2人かもしれない。でなければ4人で来る必要なんかないだろう」
 「それもそうだ─。こうなったら今井さんの命令どおり・・」
 その言葉にメガネの男は頷いた。

 時計を見ると夜中の1時を過ぎていた。
 神宮寺とジョーはホテルに戻るため店を出ると、人通りの少ない裏道を歩いていた。と、少しも行かないうちに2人の前に数人の男が立ち塞がった。2人は立ち止まると男達を睨んだ。
 「─何か用か」しばらくして神宮寺が口を開いた。
 「おれ達は松前組の者だ。お前らよくも裏切りやがって─」
 「まつまえぐみ?」2人は同時に口を開いた。「裏切ったって・・どういう意味だ」
 「しらばっくれるな!それ!」6人の男達が2人に襲いかかった。
 「へっ!ここじゃ理由もなくケンカができるのかっ。気に入った!」1人を殴り、ジョーが叫んだ。
 「何がなんだかわからないが、その理由(わけ)を聞いているひまもなさそうだ!」
 神宮寺も手刀を食らわしながら言った。が、この勝負、わずか1分で決着がついてしまった。
 「物足りねっ」パンパンと手を叩きながらジョーが言った。「ケンカOKの所なら、どうせのこともっと強い奴を出せばいいのに」
 「それにしても、こりゃいったいどういう事だ。裏切ったのなんのって・・」
 「昼間の事といい・・どうやらおれ達は誰かに間違えられているようだな」
 「・・それしか説明がつかないな・・・」
 そう呟くながら2人は転がっている男達を踏んずけホテルへと向かい始めた。

 翌日はいよいよ待望の襟裳岬へと向かう。
 しかし釧路から襟裳へは7時間くらい掛かるので、今回ジョーは後ろの席で休む事にした。北海道の半分を3日間で飛ばしたのだから無理もない。おまけに右腕がまだ完治していないのだ。
 「チェッ!ぼくもミスター達と行けばよかったな!そうしたら暴れられたのに!」
 「洸!ドサクサに紛れて蹴っ飛ばすな!」隣のジョーが大声を上げた。
 「それにしてもそいつら・・いったい誰とおれ達を間違えているのだろう・・」
 「まっ、あまり良い人と間違えてないのは確かだね」助手席の一平が答えた。
 「そりゃそうさ!ジョーのツラ見りゃ誰だっ─テッ!!」洸が足を押さえ飛び上がった。
 「フン、お前こそ南トカいう暴力団と酒食らってたくせに」
 「知らなかったンだもん?!一平が教えてくれなかったのが悪いんだ!」
 「あの場合、たとえ教えたってムリだと思うけどね」
 「ガキのくせに酒なんか飲むからさ─いて!右腕に触るな!」
 「そっちこそ、ぼくの足の上から足退けろ!」ジョーの大声に洸も負けずと怒鳴った。
 「後ろで騒ぐなよなァ」一平が振り向いて言った。その耳に洸の大声が飛びこむ。
 「なに言ってンだい!君だって1枚かんでるんだぞ!」
 「どーしてさ!」
 大草原育ちの一平の声もまた見事なものだ。洸は耳に手を当てた。しかし怒鳴り声はやまない。
 コスモの中は色々な言葉があっちこっちに飛び散った。
 「うるさーい!!これ以上騒いだら太平洋に向かって行くぞォ!!」
 怒鳴る声がピタッとやんだ。今日のステアリングは神宮寺が握っている。彼もジョーと同じく本当にやりかねないところがある。
 3人は口を閉じ、無理矢理周りの景色に目をやった。
 さらに数時間、車は走り続けやっと広尾に入ったのは2時を回った頃だった。
 彼らは百人浜で一休みすると一路襟裳へと向かった。
 この百人浜も、おととい網走へ行く途中に休んだ浜とよく似ている。が、海の青さはこちらの方がさらに美しい。ドライブインのそばに牧場があるのも変わらない。この形は北海道では珍しくない事もわかった。
 もっとも今回は馬に乗っているひまはない。そんな事をしていたら宿泊地である様似(さまに)に着くのが予定より遅くなってしまう。車を整備に出すため、遅くとも7時までには街に入りたい。
 「それにしてもこの車、よく持つねぇ」
 「運転手がよかったからさ。おい、神宮寺、ちゃんと運転しろよ」
 返事の代わりに彼はスピードをさらに上げた。
 それから1時間半、彼らの前方にようやく襟裳の白い灯台が見えてきた。
 4人は車を降りるとその灯台の前を通りさらに坂道を降り、遊歩道を通り木の柵のある岬の崖っぷちに立った。
 日高山脈が海になだれ落ちる所がここ襟裳岬である。
 その崖っぷちに立つと、海上に岩礁が点々と7、8キロ続きやがて消えていくのが見える。風が強く吹くので高い木はない。が、人が行けるのはここまでではない。その崖の横に遊歩道は続き、かなり下まで降りられる。その途中に昆布などを売っている小屋があるのもさすがに海辺らしい。ここも霧の出る日が多いが今日はよく晴れている。
 この世のものとは思えないウルトラマリンの海に時々白い波が走り、海上は輝く太陽のキスを受け銀色に輝いている。まるで海の上にたくさんのラメを撒いたようだ。その美しさはとても口では言い表せない。
 この崖の上に立った者は、決まって何か寂寥とした気持ちに捉われると言われるのも、背後の日高山脈と目の前の太平洋があまりにも荒涼としているためかもしれない。話には聞いていたが、この目で見て初めて4人はその気持ちがわかるような気がした。彼らは岬のそばのレストハウスで休みながらそれぞれの思いで襟裳の海を見つめていた。

 「ヘェ、マル暴の千さん達、辻さんと襟裳へ行ったのか。道理で静かだと思ったよ」釧路署特別課々長の小林が言った。「暴力団相手もたいへんだなァ。あっちへ飛んだりこっちへ行ったり」
 「まったくです」小林の向こうで、部下の青山が答えた。「しかしいざという時、1番大変なのはJB直属の我々ですよ。大物は暴力団どころじゃない」
 「それもそうだ」小林が苦笑まじりに言った。「千さん達、ケガしなきゃいいけど・・」

 「5時ちょっと過ぎか・・。ここから様似まで1時間少しだから6時には街に入れるな」助手席で地図を見ながら一平が言った。「街までずーと海が見られるのは嬉しいね」
 「一平は海が好きだなァ」隣で神宮寺が言った。
 「ミネアポリスは海がなかったし、それに正直言って東京の海はね・・」
 その言葉に神宮寺は苦笑して頷いた。と、後ろのジョーが一平の頭を小突いた。
 「おい、見ろよ」
 一平が振り向いた。と、洸がコックリコクリとフネを漕いでいた。
 「さっきから静かだと思ったら・・こうだもんね」
 「寝てるのか?」後ろを向けない神宮寺が訊いた。「あの遊歩道の坂道を3往復すれば、さすがの洸も疲れるだろうさ」
 「羨ましい奴だぜ、車の中で寝られるなんてよ。おれなんかこのシートに座ると気が張っちまって、ウトッともできないぜ」
 ジョーが洸の頬っぺたを突っつきながら言った。
 「だからおれ達、今までナントカ無事だったんだな」
 「!?」一平の言葉にジョーはヘンな顔をして彼の方を向いた。「・・よお、なんだったらおれがまたステアリング握ろうか?そして一平よォ、よかったら隣に来いよ」
 一平はタラ・・とした面持ちで振りむけずにいた。
 「そのうちよ、助手席のドアが自然に開いて、お前は青く美しい海の底─って事になるかもしれないが、なに大丈夫。おれ達はそんな事ぐらいで驚きゃしない。この旅は続けるから心配するな」
 「あまいな・・・」
 「えっ!」神宮寺の言葉に一平は驚いた。「そ、そんないくらコンビだからってミスターまで─!」   
 「えっ?」神宮寺は横目で、恐れ戦く一平を見た。「なに言ってんだ。ブレーキの事だよ」
 「ブレーキ?」
 「なんだよかった。まったくダブルJはなんでもやると言うから・・えっ、ブレーキ?」
 「掛かりがあまいんだ。さっきはそんなでもなかったんだけど・・」
 「網走で1度整備に出しているんだ。こんなに早く故障するはずねェよ」
 「しかし・・掛かりが悪い事は確かだ。止めて調べた方がいい」
 神宮寺は強めにブレーキを踏んだ。しかし手ごたえがない。彼はさらに強く踏んだ。が、同じだ。
 「だ、だめだ、止まらない」
 「ええっ!」2人は同時に叫んだ。速度計は90を指している。「サイドブレーキは!?」
 「坂道だ。とてもじゃないが間に合わない」
 「神宮寺!ここら辺はカーブばかりだ。ヘタするとさっきに話じゃねえが─」
 ジョーは最後の言葉が言えなかった。ふいに車が曲がったのだ。時速90、坂道が多くデコボコでおまけにブレーキが効かないときている。さすがのジョーも青くなった。
 「2人共シートベルトをきつく締めろ!昨日と同じ事になりそうだ」
 再びものすごい勢いでカーブし、ベルトを締めようとしていたジョーは横にすっ跳び、洸を押し潰した。
 「ぷぎゃあっ!!」洸が飛び起きた。「誰だよもう!─わっ、なに!すごいスピード!」 「なんでもいいから、ベルトを締めろ!」
 ジョーは洸の体にベルトを回しギュッと締めた。
 カーブだ!
 神宮寺は見事なソーイングを見せた。横では一平が前方を睨んでいる。速度計の針がいつの間にか100を指している。おまけに緩やかな道を選んでいるので予定のコースから外れ、方向もわからなくなってきた。
 「くそォ、この車に方向計が付いていないのが不満だぜ!」珍しく神宮寺がぐちった。
 「ねえ!いったいどうなっちゃってんのォ!」洸が叫んだ。「メチャクチャな運転はジョーだけでたくさんだよ?!」
 「したくなくても、しょうがないんだよ!」
 「神宮寺!前を見ろ!」ジョーの指さす前方には小型のトラックが同じくらいの速度で走っていた。「これしかしょうがないぜ!」
 「よしっ!」
 迷う間もなく神宮寺は頷いた。
 彼はコスモをトラックのすぐ後ろに付け、タイミングを見てそのテールにコスモのフロントをピタッとくっつけた。驚いたのはトラックの運転手だ。彼はクラクションを鳴らし逃れようとした。が、その速度に合わせコスモは付いてくるので離れる事はできない。
 トラックは再び強くクラクションを鳴らした。と、それと同じように神宮寺もクラクションを鳴らす。両車はしばらくこんな事をやっていたが、やがて何かを感じたのかトラックは少しづつスピードを落していった。
 「よし・・その調子で頼む」
 神宮寺は喉を鳴らすとトラックに合わせ徐々にサイドブレーキを引いていった。そしてさらに200mも行った所でトラックはようやく止まった。
 「ハア・・・」神宮寺は深く息をつくと、シートに体を沈めた。

 「バカヤロウ!そんな簡単な方法で片付く相手じゃない!」今井は思わず怒鳴った。「もういい。こうなったら松前組の総力をあげて奴らを片づけてやる!」
 今井は十数人の部下を呼びよせ部屋を出て行った。


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