コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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北海道の旅はいそがしく 完

 一方、こちらはジョーと一平である。
 神宮寺と洸のおかげでこちらは今井を含め5人に減ったが、ケガを負っている一平を抱えたジョーにこの人数は重かった。おまけにこちらには一丁の銃もないのだ。
 ジョーはまず一平の安全を考え、できるだけ奴らから離れようとしたが、それを見逃す奴らではない。男達は2人の姿を見つけると早速発砲してきた。
 「くそォ、奴らルートを聞き出すのを諦めたのかな。それなら尚更始末が悪い」
 ジョーは一平の体を抱え岩から岩へと移動した。が、口では強がりを言っている一平だが、そのジョーの動きに付いて行くのはつらそうだ。1分もしないうちに一平が岩に足を取られ2人は固い岩場に体を打ち付けてしまった。
 「だ、大丈夫か、一平」
 「ああ・・・」一平は肩でハアハアと息をしながら言った。「先に行ってくれ、ジョー。このままでは─」
 「バカヤロウ!おれがそんな奴だと思っているのか!」
 「しかし、このままではすぐに追いつかれてしまう!君一人なら─」
 「追いつかれたら追いつかれたまでの事さ」ジョーは再び一平を抱えた。「養成所のおじさん達がしつこいほどに言っていただろう。仲間は自分だ、ってな─」
 「・・・・・」もはや一平は何も言わなかった。
 銃声が響き、その距離がしだいに縮まってきた。
 「くそ、うるさいヤロウ共だ─。一平、ここを動くなよ」
 ジョーは彼を大きな岩と岩の間に押し込むと不意に飛び出し、1人の男にチョップを、もう1人に足蹴りを食らわした。
 「撃てっ!構わないから撃ち殺せ!」今井がわめいた。
 ジョーは足元の石を拾うと彼に投げつけた。今井はそれをまともに受けひっくり返った。
 「フン、しばらく寝てやがれ」ジョーはパンパンと手を叩いた。その時だ。
 「ジョー!後ろ!」その声と共に、ジョーの左肩に激しいショックが貫いた。
 「うわあっ!」ジョー体をよろけさせ、その弾みで足元の岩が崩れた。「うっ!」
 「ジョー!」
 一平が、伸ばされたジョーの右手をガシッ!と掴んだ。噴煙と熱気がムッと一平に襲い掛かる。ジョーの足の少し下は熱湯の川だ。
 「ジョー、しっかりしろ」
 「む、無理だ一平。そのキズでは・・・お前まで引きずり込まれちまうぞ!」目の前の岩がさらに崩れ、その欠片が熱湯の川に落ちた。「手を放すんだ!」
 「バカな!そんな事ができるはずないだろう!」
 「だ、だが・・・」
 「おれもお前もおなじ仲間じゃないか!」一平の言葉にジョーはハッと彼を見た。「とにかくジョー、どこか足を掛けられそうな所を探して─」
 ジョーは一生懸命足場を探ったが、そのほとんどが崩れてしまう。左肩からは血が噴き出し腕 を伝わり滴り落ちていく。おまけに熱気で頭がボウッとなりそうだ。
 「しっかりしろジョー。気をはっきりさせるんだ!」
 そう叫んで一平はハッと顔を強張らせた。後ろに数人の気配を感じたからだ。
 「フフフ・・・、運が悪いな。噴気孔に落ちるとは・・」案の定、気配は今井を始めとする4人の男達だった。「だから我々がここを選んだのだがな」
 「くそォ・・」ジョーの手を掴んだまま、一平は唇を噛んだ。
 「お前達からルートを聞き出せないとしたら仕方がない。あとはお前達を消して他の組織にルートが知られるのを防ぐしかない」今井の言葉と同時に、男達は手にしている銃を2人に向けた。「散々手こずらせてくれたんだ。そう簡単にはラクにしないぞ」
 今井の銃が火を吹いた。
 「うあっ!」
 弾丸はジョーの右腕に当たった。一平に掴まれ右手のみで全体重を支えているジョーは、半ば意識を失いかけた。
 「な、なんて事するんだ!」一平が叫んだ。「貴様らそれでも人間か!」
 「まあまあ、そう騒ぐな。次はお前の番だ」今井は一平に銃口を向けた。「さあ、これは見ものだぞ。その右手をぶち抜いたらお前はどうする。そいつの手を放すか?それとも一緒にドボンか?まあいい、どっちでも我々は構わないさ」
 「ちきしょう─」一平は歯軋りをし、たとえどんな事があってもジョーの右手を放さないようにとさらに強く握った。
 「美しき仲間愛か。それなら仲良く2人で地獄谷に落ちるがいい!」
 今井の指が引き金に掛かった。一平は思わず目を瞑った。と、周り中に激しい弾丸の雨の音が響いた。
 「う・・うう・・」
 ドサッという音に一平は目を開けた。と、今井はもちろん銃を構えていた男達も皆、腕を押さえ倒れている。
 「うわっ」
 だが一平はその理由を確かめているヒマはなかった。自分の体を支えている前の岩が崩れ始めたのだ。このままでは2人共落ちてしまう。
 一平は左手で横の大岩を掴んだ。が、到底ジョーを引き上げる事はできない。
 「だ・・だめか・・・」
 一平は唸った。と、その時、ふいにジョーの体が軽く感じられた。見るともう1人、誰かがジョーの右腕を掴んでいる。
 「あ、あなたは・・」
 「特別課の小林だ。さっ、一気に引き上げるぞ」2人は力を合わせ、ようやくジョーを噴気孔の上に引きずり上げた。「ジョージ君」
 「目を開けろよ、こいつ!」一平がジョーの頬を引っ叩いた。
 「てっ!」ジョーはすぐさま目を開け2人を見た。「一平・・、小林さん!」
 「良かったよ、間に合って・・・」
 「どうして、ここが─」
 「君達が奪ったのは警察の車だよ。突き止めるのは簡単だ」その言葉にジョーは思わず肩をすくめた。「まっ、松前組の連中を全員現行犯で挙げられたんだ。差し引きゼロにしておくがね」
 「しかし・・松前組はなぜおれ達と本物とを間違えたりしなんだろう・・」
 「答えは簡単だ。本物の密輸ルートの幹部は君達と同じ船で着く事になっていたんだ。しかし青森でドジをやって捕まった。幹部の1人はイギリス人だったので、てっきり君達だと思ったんだよ」
 「チッ、とんだ人違いってわけか」
 「ホント。よりによっておれ達を密輸ルートの幹部に間違えるなんて」
 「とにかくこの事件(ヤマ)はこれで片が付いたんだ。まっ、君達には気の毒だったがね」
 「くそ?、チーフに言ってもう1週間休み貰ってやるっ」
 「さっ、2人共行こう。向こうで神宮寺君も待ってるよ」小林が2人に手を貸した。
 「ジョー!一平!」神宮寺だ。「2人共、無事だったか」
 「あたり前さ。ここくらいでやられるような─てっ!」
 「無理しちゃって」一平が呟いた。と、ジョーに足を蹴られ飛び上がった。
 「ところで洸は?」
 「あそこ」神宮寺が後ろを指差した。
 「こら???!私の銃を返したまえ??!」見ると辻が大声を上げて洸を追いかけている。「でないと、不法所持でタイホするぞ?!」
 「うひ?!ぼく持ってないってば?!」
 足場も悪いし、これはどう見ても洸の方が有利である。
 しかし辻も現職マル暴刑事。そのファイトとしつこさにさすがの洸も驚いた。
 「あ?ん!黙って見てないでナンとか言ってよ?!」
 そう叫ぶと洸は神宮寺達の目の前を素っ飛んでいった。そのあとに辻が続く。
 皆はしばらくポカンと見ていたが、そのうち小林が吹き出すと続いて一平、ジョーという具合に、1分も経たないうちにその笑いの渦は神宮寺をも巻き込みマル暴課の刑事達にまで広がっていった。

 空には一面に星が広がりその輝きを競い合っている。その輝きがすぐ下の湖にも映り光る。
 北海道最後の夜、宿泊地の洞爺湖である。
 北海道を代表する周囲43キロの大きな湖で、その周囲には噴煙を上げる昭和新山や有珠山などが聳え、湖面には中ノ島が浮かぶ。
 彼らの泊まったホテルは1階のベランダから出ればもう湖畔である。4人は夕食を終え星空の美しいここ洞爺湖畔に立っている。彼らはしばし水面輝く湖や星空を眺めていた。
 「早いものだなァ・・。明日はもう東京か・・」しばらくして神宮寺が呟いた。
 「まったくだ。そもそも1週間で北海道を回ろうなんて、とかくムリなんだよな」
 「そーだよ!」洸がわめいた。「誰だい、計画したのは!」
 「─自分もその1人のくせに・・」一平が洸を突っついた。「前にも言ったな。この台詞・・」
 「しかし、まっ、それでもけっこう楽しめたんだ。まずまずってところだよ」
 「あ?あ。とんでもないおまけまで付いていたがねっ!」
 「だけどもし奴らがおれ達じゃなく、ごく一般の観光客を幹部と間違えて追っていたら、もっと大変な事になっていただろうな・・」
 「そうだなァ・・」一平の言葉に神宮寺が深く頷いた。「おれ達だから、これくらいで収める事ができたのだからな」
 「チェッ!それにしても何も休暇の時に間違えなくてもよかろうに、よ!おかげで時間外労働だ。─うひィ、冷てェ!」
 ジョーは湖に突っ込んだ足を引っ込めた。
 「いいさ。また休みを貰えば」
 一平が言った。が、神宮寺は口を閉じたまま何とも言えぬ目で一平を見つめた。
 「さあて、と。もう寝るかな」ジョーが両手を上げかけてフッと止めた。「今日はさすがにまいったよ。まだズキズキしやがる」
 「そうだな、それじゃ部屋に戻るか」
 「ところでさあ」洸の声に3人は振り向いた。「明日は千歳からパーと東京へ行っちゃうんだろ。昭和新山に寄るひまあるかな?」
 「登るのか?」
 「ううん。ふもとのアイヌコタンに寄りたいんだ」
 「どうかな!またなンかの邪魔が入って、今度は箱詰めにされてアフリカへでも送られるかもしれねえぜ」
 「そンなあ!ぼくまだアイヌの織りベルト買ってないのに?!」洸がわめいた。「でもアフリカもいいな・・。巻き込まれてアフリカに送られれば、それを口実にまた1週間遊べるかも」
 「その前にライオンのえささ」
 そう言うと一平は少し先に行っている神宮寺とジョーのところまで走っていった。
 「あっ、待ってよ!」洸もあわてて追いついた。
 その声に3人が振り向く。が、見ている方向は3人共バラバラであった。それを見ると洸もふと振り返った。
 彼の目に映ったのは、天の中央を横切る天の川の美しく輝く姿であった。


                                         完

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