コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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震える心の熱き思いを 9

 「つっ・・・いてェ・・」
 ジョーは草地から体を起こそうとした。が、なぜか動かない。左肩が痛いのはわかるが、後はどこがどうなっているのか自覚がなかった。
 「こっちまで巻き込まれちまうのは計算外だったな」空高く昇って行く黒い煙が見える。トラックに積んであった爆薬が横転のショックで爆発したのだ。「カイザー達・・・無事かなァ」
 ジョーはトラックが道路を飛び出したと同時に屋根から飛び降りたのだ。が、着地してすぐに爆風ですっ飛ばされた。落ちた所は草地だったので大したダメージは受けなかったはずだが、それでもしばし空を仰いだまま動けなかった。
 (このまま回収してくれねえかな・・)
 と、彼の視界の隅で何かが動いた。人間だ。手に何か持ってジョーとは反対の方へ走っていく。ポケットのリンクがしきりに反応しているのを感じる。
 「チェ、まだ休ませてはもらえねーか」
 今度はあっさりと起き上がった。手にブローニングを持っている感覚が戻ってきた。
 ジョーは人影を追って走り出した。
 ちょうどその頃、カイザーの元にはデュランや他の仲間達が集まっていた。アウトバーン上に停められているベンツに残っているのは運転していたダルクだが、彼は窪地から這い上がってきた黒髪の大きな男が中央分離帯 を乗り越えて反対車線に入り、車を1台止めて乗り込んだのを見た。
 「あれは─」と、運転席のドアが開けられた。「ジョージ」
 「降りろ」
 「─は?」
 「早く降りろ!」
 怒鳴られ腕を引っ張られダルクは車外に出された。代わりにジョーが運転席に納まる。Uターンしアウトバーンを逆走すると中央分離帯に突っ込んでいく。
 「危ない!」ダルクが叫ぶ。しかしジョーの運転するベンツのワンボックス・カーは分離帯を跳び越し、反対車線に入った。「・・な、なんて事を・・」
 日本の高速道路と違い、中央に高いゲージなどはないとはいえ幅2mほどの緩衝地帯がある。飛び越せない事はないが、ワンボックス・カーではやりたくない。
 「ダルク!」
 振り向くとカイザーやデュランが走ってくるのが見えた。

 黒髪の男がジャックしたルノーはジョーの200m先を走っている。リンクの点滅がその位置を示している。やがて8号線を降り一般道へ入った。
 「ヤロウ、どうあってもミュンヘン空港へ行くつもりだな」
 ナビにベンツの位置が映る。空港までは30キロもない。
 確か空港の手前で検問を行っているとビエリが言っていた。そこで確保しなければ。要人はもう空港に降りているだろう。
 やがて車が渋滞し始めた。検問が行われているからだ。が、前方を見てジョーは思わず舌を打った。検問が普通車と大型車に分かれているのだ。
 カイザーがビエリに伝えたのは“爆薬を積んだトラック”だ。しかし今逃げている男の乗っているルノーは普通車である。普通車の流れる方が早い。検問の時間が短いという事だ。
 ジョーは、おそらく検問所にいるビエリと連絡が取りたかったが通信機のコードがわからない。リンクとの相関性もない。
 「仕方がない」
 ジョーはブローニングの弾丸数(たまかず)を確認してベンツを降りた。停まっている車の間を縫って青いルノーを目指す。と、前方で男が一人、やはり車を降り道路から路肩に下りようとしているのが見えた。
 「あいつか」
 と、男は検問所にいた警官に呼び止められた。男が走り出し2、3人の警官が後を追う。ジョーも追おうとしたが、そのとたんピリピリ・・・と笛を吹かれた。
 「そっちの人も止まりなさい!」警官がジョーの方へ走ってくる。
 (え─)
 ジョーは一瞬止まりかけたが、男が警官を振り切って空港の方へ走っていくのを見るとそのまま突っ切ろうとした。が、警官がジョーの腕を取る。肩がビリッと痛んだ。思わず蹴りそうになったがなんとか我慢する。と
 「これは銃か」
 ジャケット越しだが警官だけにピンときたようだ。彼は自分の銃を取り出しジョーを拘束しようとする。
 (まずいな)
 ジョーの目に、応援に駆けつけてくる2、3人の警官が映った。
 「ビエリ!」その中に1人だけ私服の男がいた。ジョーはその男に賭けた。「ビエリ!」
 もう一度呼ぶ。私服の男は驚いてジョーを見た。どうやらビンゴのようだ。が、ここでジョーの正体を大声で言うわけにはいかない。ビエリ達がどのような身分を空港事務所に言っているかわからないし、日本支部所属でSメンバーでもあるジョーは、よほどの理由がない限り相手が警察であろうと自分の身分を明かしてはならないのだ。そこで 、
 「カイザーに伝えてくれ!ザーツのメンバーが空港に向かった、と─!」
 カイザーの名前を出され、ビエリは気がついたらしい。はっきりと頷く。
 ジョーは口元を歪めると、自分の腕を取っている警官の足を蹴って転ばせた。そのスキに男を追う。後はビエリがうまくやってくれるだろう。
 そして彼らの少し後方には、カイザー達の乗ったベンツの姿が見えた。

 男は一瞬考えた。途中思わぬ邪魔が入り、要人の到着までに空港に入るのは間に合わなかった。要人はSPに守られ、すでに空港外に出ているだろう。そうなると自分一人では荷が勝ちすぎる。次の段階に進んだ方がいい。
 男はバッグから小さな塊を3つ取り出した。トラックが爆発するわずかの間にこれだけしか持ち出せなかった。しかしこれを使って混乱している間に─。

 ジョーは確実に男の後を追っていた。男にくっついているタイピンからの電波がジョーの持つリンクに送られてくる。しかし試作品で電池の容量も小さいので、ヘタするともう切れるかもしれない。それまでに男を見つけなければ。
 ジョーは空港1階の中央棟に入ったとたん眩しさを感じ、一瞬動きを止めた。
 写真で見た事はあるが、実際に来たのは今回が始めてだ。本当に全部ガラス張りで外から見ても中から見ても透き通って見える。綺麗だが、もしこの強化ガラスが割れ人々の頭上に落ちてきたらと思うとゾッとする。
 シーズンオフのせいか利用者はそう多くないが、レストランやカフェにはやはり人の出入りがある。と、ジョーの目が一点に止まった。エスカレータを2階へ上がっていく男と目が合う。奴だ!エスカレータ目ざし走る。
 男もジョーの顔は知らないものの気がついたのだろう。エスカレータを駆け上がる。2階はAからEまでの各ターミナルが細長い建物に一直線に並んでいる。男はチェックインカウンタの前を真っ直ぐに走り抜ける。
 出国審査を待つ人が並ぶそこで銃を出すわけにもいかず、ジョーは後を追うしかない。と、男の行く手から警官がこちらに走ってくる。その先頭にいるのは─。
 「カイザー!」ジョーが叫ぶ。
 「こいつか!」カイザーも気がつき男を確保しようとする。が、それより早く男は1階に降りるエスカレータに再び飛び乗った。「あ、こら!」
 怒鳴っても止まるわけはない。カイザーとジョーはほぼ同時にエスカレータを駆け下りようとした。
 突然、空気が震えた。どこかで小さな爆発音が聞こえた。悲鳴が上がる。
 「な、なんだ─」2人は一瞬、動きを止めた。
 「奴はバッグを持っていない。あの中には時限爆弾が入っていたんだろう」2人は1階に下りた。ビエリやラーションも2人の後に続く。「大きさからいって、数はせいぜい2、3個だろう。ビエリは爆弾を見つけ出して処理してくれ。おれは奴を追う」
 ジョーに言われたビエリがカイザーを見た。カイザーが頷く。ビエリは警官と、さらに合流したトーレスやディランに指示して空港内に散った。
 「ベルリンには指揮のできる奴が多いな」走りながらジョーが言う。「訓練に女の子のナンパっていうのがあるのか?」
 「今頃そんな訓練してどうするんだよ」ジョーに続くカイザーだ。「そーいうのはもっと若いうちに覚えるものだ。この事件が片付いたらおれが教えてやる」
 そうなったら替わりに神宮寺を行かせよう、とジョーは思った。
 リンクの点滅が弱くなってきた。そろそろタイピンの電池が切れる頃だ。
 2人は中央棟から外へ出た。確かにこっちのはずだが─。 「ジョージ!見ろ!」カイザーが指を指す。見ると黒髪のあの男が滑走路内を走っていた。「あいつ、いったいどこから入ったんだ?」
 「地方の空港にはまだまだセキュリティホールがあるって事か」
 ジョーは高いゲートで遮られている滑走路敷地内との間の道を壁に沿って走った。と、一ヶ所、隣の壁とをうまく使えばゲートを登れそうな所を見つけた。
 「上がるぞ」
 ジョーが壁のヘコミに手を掛け登ろうとしたが、左肩に力が入らない。ズッと体が滑る─が、急に持ち上がった。
 「ひゃっ!」一気に壁の上に押し上げられた。カイザーが下から持ち上げてくれたのだ。「ああ、びっくりした」
 壁の上からカイザーを見下ろす。
 「変な声を出すな。それより引っ張り上げてくれ」
 「チェッ、こっちの方がしんどいぜ」
 差し出されたカイザーの大きな手を握り、思いっきり引っ張る。カイザーが足場を蹴った。勢いがつく。
 「わっ!」そのまま2人は壁の向こう側に転がり落ちた。「いってぇ?。あんたSメンバーにはなれないぜ」
 「そりゃあ嬉しいね」軽口を叩くカイザーの目が男を捕らえた。男は荷物を積み込んでいる中型の貨物機のタラップを上がっていく。「あいつめ、貨物機を奪うつもりか」
 「いや、あれはたぶん─」
 ジョーが走り出す。目も前の貨物機は男が乗り込んだと同時に荷物の搬入をやめエンジンを掛けた。カーゴ口が閉まる一瞬のスキを見て、ジョーが滑り込む。ガシャン!とカイザーのすぐ後ろで閉まった。
 「あんたは来なくてもいいのに。これはたぶん奴らの機だぜ」
 「もう乗っちゃったんだから仕方ないだろ。まさか降りろ、と─?」
 「降りた方が良かったと後悔するかもしれないぜ」ジョーはリンクを見たがトレーサー画面は何も映っていない。タイピンの電池が切れたのだ。「このまま奴らの本部にでも行ってくれればいいが」
 「南に向かってるな」カイザーが磁石を取り出した。「スイスにでも行くのかな」
 「スイス?」何かが引っ掛かった。「・・・あまり考えたくないなあ・・・」
 ふと後ろの積荷を見た。
 「・・思った通りだ」
 「なんだ?」ヒョイと、ジョーの後ろからカイザーが顔を出した。「また爆薬かあ。こんな物騒な物を積んで、どこへ行こうというんだ?」
 「・・・・・」
 ジョーはちょっと気に毒そうにカイザーを見た。
 国際警察に入りSメンバーになった時から、ジョーは仕事上で自分に振り掛かる最悪の場合を考え覚悟を決めている。ただまだ若いので、自分がいなくなった後の準備まではしていない。せいぜい身の回りの物は必要最小限にしているくらいだ。それは神宮寺も同様だろう。
 では、この男は?彼はどのくらい考えている?もちろんこの仕事の危険さはわかっているからある程度の覚悟はあるだろう。だが─。
 ジョーは、Sメンバーでもないのに自分と行動を共にするはめになったカイザーに同情した。神宮寺にはそんな感情はない。彼は自分と同じ心を持っている。そして同じ決意と覚悟を─。
 とにかく今は事態を把握し対処しなければならない。それがカイザーを、そして自分をも救う事に繋がる。
 「この機を抑える」ジョーが立ち上がった。「ここを出よう」
 「このままアジトに連れてってもらった方がいいんじゃないか?」
 「その前にドカンだぜ」
 え?とカイザーが訊いた。が、ジョーは慎重にカーゴ室のドアを開けた。
 この機にはあの男以外何人が乗っているのかわからない。また奴らがジョーやカイザーが乗り込んでいるのを知っているのかどうかさえも─。
 しかしもしわかっているのなら、なんらかのアプローチがあってもいい。それがないというのは。
 「気がついてないのか・・、それともアプローチする必要がねえって事だな」
 2人は狭い通路を機首へ向かう。旅客機ではないので無駄な飾りは一切なく寒々しい感じを受ける。
 いきなり男が1人横切った。2人に気がついた。声を上げられないうちにジョーが蹴り倒す。さらに顔を出した金髪の男をカイザーが殴り倒した。
 やがて機首が少し西に傾いたのがわかる。やっぱりそうか、とジョーが舌を打った。
 通路が終わりシートがいくつか設置されている空間に入る前に、そこにいた奴らが発砲してきた。あのザーツらしき黒髪の男を含め3人だ。操縦席に少なくともあと3人はいるだろう。
 「機内で銃を使うなんて、どういうつもりだ!」カイザーが唸る。
 「奴ら死ぬ気だ」
 ジョーが右手1本で銃を向ける。できれば銃は使いたくないが、相手は死にもの狂いで撃って来る。素手では無理だ。
 ジョーとカイザーはまず1人づつ相手の右腕を撃った。銃が落ちる。ジョーがシートの陰から飛び出し、撃たれた2人がそれ以上抵抗できないように倒す。カイザーが援護する。残りはタイピンをくっつけている黒髪の男だ。
 ジョーはゆっくり振り返り男と対峙した。こいつが健を連れ去った男かと思うと全身に怒りが沸き上る。一気に撃ってしまいたい衝動を覚え銃口が上がった。
 目の前に健の怯えた顔が、幸子の悲しむ姿が、そして自分のミスで撃たれた神宮寺の姿が浮かび上がる。
 銃口は男の胸に狙いをつけている。こいつは撃っていい─。トリガーに指が掛かる。が
 「ジョージ!」
 後ろからカイザーが呼ぶ。ハッと我に返り思わず振り返ってしまった。男が発砲した。カイザーが飛んでくる。ジョーはカイザーに覆われ彼諸共床に転がった。左肩を打ち、一瞬気が遠くなる。が、
 「・・・う」
 「カイザー!」
 ジョーの上でカイザーが肩を押さえ呻いた。
 「掠っただけだ」カイザーがニヤリと笑う。「あいつ、あまりうまくないぞ」
 「!」
 ジョーがカイザーの体に手を回し、2人一緒に横に転がった。2人がいた場所に弾丸が跳ねた。カイザーの上になり自由になったジョーが男の持っている銃を撃った。銃は暴発してバラバラに飛ぶ。そのショックで男は壁に頭を打ち呆気なく気を失った。
 操縦席にいた2人もジョーの敵ではない。向かってきたので仕方なく眠らせた。と、そのとたん機体がガクンと下がり、降下し始めた。キャノピーに大きな湖が映る。その中に浮かぶ大きな島─あとで知った事だが、そこは“バーデン公フリードリヒ1世緑のマイナウ島”という熱帯植物の島として知られているらしい─に向かって下りて・・いや、落ちていく。
 ジョーは操縦席に着くと操縦桿を思いっきり引いた。機首が少し上を向く。
 「なんで湖になんか下りるんだよ!」カイザーがわめいた。
 「下りるんじゃない、落ちるんだ!奴らこの機を国際平和会議の行われるバーデン湖の町に落とそうとしたのさ!」
 ヒェェ!とカイザーが飛び上がった。とりあえず機は墜落は免れ、湖上を平行に飛んでいる 。
 「どこか下ろす所は─」
 ジョーがキャノピー越しに下を見る。が、バーデン湖畔というばドイツとスイスの国境にある有名な観光地だ。本当はマイナウ島から東に30キロくらいの所に地方の飛行場があるのだがジョーは知らない。機も西に向かって飛んでいる。
 スイス方面に向かうと山岳地帯になってしまうのでとりあえず北西に、ドイツ側に向かう。
 「カイザー、あんた操縦は?」
 「シミュレーションだけで本番はない。─君は?」
 「・・・以前、ジャンボを下ろした事があるけど・・」
 「それなら君の方がずーとマシだ」
 「・・・・・」
 しかしあの時は横に神宮寺がいて指示してくれた。この機は大量の爆薬を積んでいる。落ちるのは簡単だが下りるのは難しい。
 「とにかくどこかに下ろさないと燃料が─そうだ!神宮寺に!」
 ジョーはリンクを取り出した。


                   8 へ       ⇔        完 へ
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Comment

淳 says... "覚書き"
ジョーが飛行機を操縦するシーンはあまりないが、昭和篇で1回(ジャンボ機)あった。
その時はコ・パイ席の神宮寺のサポートがあったのでナントカなったが、本当は無謀な試みだ。(わかってます)

もう20年以上前だがゲームセンターに飛行機の着陸を体験できるゲームがあった。(今もあったらごめんなさい)
ブースの中のコックピットは本格的な作りで、訓練用のシミュレーションに近かったのかもしれない。
1分にも満たないゲームは他のゲームより高額だったが、ただ(?)滑走路に降ろすだけなのにこれがかなり難しく3回に2回は失敗するのだ。

JBにも導入した方がいいかな、と本気で思った。(そんな事しなくても彼らは本物で練習してます。・・・ある意味怖い・・・)
2011.04.21 15:25 | URL | #vDtZmC8A [edit]

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