コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳   0 comments   0 trackback

It's my life 4

 「公安3課の関といいます。任務はテロ活動組織への潜入捜査。今回は私の手違いからみなさんに迷惑をかけて申し訳ない」
 カージャックの男─いや、公安3課の関は頭を下げた。
 「本物の公安さんか」ジョーが呟くように言う。
 「手違いというのはどういう事です?」神宮寺が訊いた。
 ここはJBの2階の小会議室だ。室内には森チーフ、山田捜査課々長、井上情報課々長、神宮寺、一平、右腕を包帯でグルグルにされているジョー、そして関。
 「3週間ほど前になりますが、一人の科学者が行方不明になり、あるテロ組織で働いているという情報を得ました。彼は飛行機や自動車を第3者が外部からコントロールできる装置の研究をしていまして、完成間近だったそうです」
 「しかしそんな装置は珍しくないでしょ」一平が言った。
 「確かに。しかしその装置のすごい所は、本体が平べったい─そうセロハンテープのような形をしている事です」?セロハンテープ??と何人かが反応する。「はい。そこに情報が書き込まれ、車などに文字どおり?貼られ?ます。探知機には引っかからないし持ち運びも容易です。そんな物がもし搭乗者の手荷物にでも貼られ、機内持ち込みにでもされたら」
 「なるほど、乗らずしてハイジャックが可能ってわけだ」井上の言葉に皆が頷く。
 「ただまだ試作段階らしいので、時々コントロールができなくなるようですが」
 「おれのトラックに仕掛けられたのも、それか」
 「おそらく」
 関がジョーに目をやり頷く。そして話は続く。
 関はその科学者のいるテロ組織に潜入してデータの一部が入ったデータカードを持ち出す事に成功した。そして以前からの打ち合わせどおり、公安から国際警察へと協力の要請が入った。
 森は関からデータカードを受け取るため6台の大型車を用意し、目くらましのために中央道や東名を走らせた。と、いうのも、そのデータを他のテロ組織が狙っているという情報が入ったからだ。手の平に握りこんでしまえるカードをまさか大型車で取りに行くとは思わないだろう。
 関がカードを渡すトラックを決めたのは、接触するわずか30分前だった。その受け取り役は東北自動車道を行く立花と高浜だった。が、ここでひとつ手違いが起きた。関と立花が落ち合う大谷PAに、ジョーが先に入ってしまったのだ。
 ブロフィアを指定したのは関だ。あの車に間違いない、と思いドアを開けたら運転手は外国人だった。間違えた?と思ったが、追っ手がもうそこまで来ているのはわかったし、自分は科学者を救出するためにもう一度那須のアジトに戻らなければならない。
 仕方なくジョーの車に乗り込んだ。が、追っ手が銃を持ち出すという強行手段に出たので、一般市民(ジョー)を守るため鏡石PAで降りた。
?日本支部?というのが頭にあるためか、外国人のジョーがメンバーだとは考えていなかったそうだ。
 それでもデータカードをこのまま持っているわけにもいかないので、トラックの助手席のスキマに隠したという。しかしトラックは那須のアジトの近くに置いてきてしまった。
 「チェッ、ほんとドジな話だぜ」聞こえよがしにジョーが舌を打つ。ジョー、と山田が咎めたが、「だってそうじゃねえか。受け渡しの相手を間違え、データカードとやらは手に入らず、おまけに洸まで取られた。これがドジじゃなくていったいなんなんだよ!」
 「ボウズの言うとおりだ。返す言葉もない」
 「だからボウズって言うな!おれにはジョージ・アサクラという名前がある」
 「ジョージ・・アサクラ・・?アサクラってまさか─」関が山田に目を向けた。
 「そうだ、関。彼はジュゼッペ・アサクラ氏の息子だ」
 「アサクラさんの!?おー、そういえば見たような風貌だ。目の色が違うからわからなかったが、よくよく見ればアサクラさんそっくりじゃないか!」
 「な、な、なん─」ジョーは関に肩を掴まれ、ガクガクと揺すられながら山田に問い質した。「こ、こ、こいつ、いったい誰─」
 「私の警察学校の同期生でね。関は最初から公安だったが、アサクラさんがJBに就任した当時はよく射撃訓練でJBに来ていたんだ」
 「君には1回だけ会った事がある。合同捜査中に君の家にアサクラさんを迎えに行ったら、君がベソをかきながら父親の後を追ってきた。あれは遊園地かどこかへ行く約束をしていたのか?」
 「知るか!」ジョーは関の手を振り払いそっぽを向いた。どうも親父の昔の知り合いに会うとロクな事がない。「それにしてもあいつら、よくも人の体や車で実験してくれたぜ。神宮寺、洸を貰いに行こうぜ」
 「だがボウ─いや、アサクラ君。そのケガでは─」
 「ジョーで結構。それに手の平は包帯を巻かないようにしてもらったから大丈夫。銃も車も扱えるぜ」
 ジョーは関に右手をかざして見せた。
 「そういう意味ではないのだが─」
 「それにあいつには命を救われた。JBに戻る切っ掛けも作ってもらった。借りがある」関を真っ直ぐに見る。「おれが行きたい」
 「・・・・・」
 関もジョーを見つめた。
 仲間を信じ、自分(関)を抱えて崖から飛び降りたこの男─。ワイヤーで腕を切られかなりの苦痛のはずだが、ヘリが東京に着くまで顔をしかめながらも黙って耐えていた。
 腕のキズは今でも痛いはずだ。なのに泣き言ひとつ言わない。そして仲間を救うために再び現場に戻ろうとしている。
 「本当にアサクラさんの息子なんだな・・・」一瞬、目を閉じる。が、「那須のアジトには小規模だが製造工場や研究施設がある。1日や2日で他に移すのはムリだろう」
 「あそこは立花君達が監視している」山田が言った。「動きがわかれば連絡してくるはずだ。また周囲も調べているが、今のところ移動した形跡はない」
 「そっちの施設諸々は公安さんに任せる。おれは洸だけ救えればいい」
 ジョーは立ち上がると、踵を返してドアに向かった。
 「そうだな。ヘリを栃木県警に返さなければいけないし」神宮寺が続く。
 「いないと不便だしなあ。新しい相棒とイチからやり直すのも面倒だし」一平も立ち上がる。「相棒が受けた分、しっかし奴らにお返ししなきゃ」
 「第1、第2捜査隊を先行させている」森が言った。「先方は我々が出てくる事を承知しているだろう。油断するな」
 “了解”と3人が答えた。
 「それと、ジョーはもう1度パッチテストを受けてから行け。薬物が体に残ってると後々面倒だ」ジョーは一瞬、森に鋭い視線を向けたが何も言わなかった。「山田さん、第3部隊を3人に付けてくれ。突入組みになる」
 「わかりました。一平君、我々の通信機を持っていってくれ」
 「了解」一平が山田から小型の通信機を受け取る。4人の腕時計型通信機と捜査隊の使う物とは交換性がないのだ。「早く両方使えるようにしてほしいですね」
 「あまり色々機能を詰め込むと、時計がこぶし大になるぞ」
 「それはいやだ」一平が自慢のスイスミリタリー・クロノグラフを掲げた。「行こうぜ」
 「公安さん、おれ達の邪魔はするなよ」
 ジョーが言い、3人は出て行った。
 「扱いづらそうなボウズだ」関が山田を見て言った。
 「そうでもないよ」山田が苦笑した。「あれでも丸くなった方さ。10代の頃はもっとガンガンに跳ばしてた。危なくて誰も近づけないくらいにね」
 「おれ達みたいにか?」
 関の言葉に山田は、“それはお前だけだ”と笑った。


 「ジョー、パッチテストはどうだったんだ?」
 ヘリの操縦桿を握る神宮寺が訊いた。
 「あー、激しい運動をしなければ大丈夫だってさ」
 「・・・お前、おれ達が出動前だって石丸さんに言ったか?」
 ?え?と・・・?と誤魔化すジョーに、言ってないなと呆れた。
 「無茶苦茶するのは、運転だけじゃないんだな、ジョー」
 「─って、なんであんたが乗ってンだ!」
 ジョーは後ろのシートに座っている関に怒鳴った。
 「ひびき君とやらを助けたいんだろ。おれは科学者を助けたい。目的は一緒だ。それにあの建物内をよく知っているのはおれだけだ」ジョーがフンッと前を向く。「君達がいた部屋は1階の1番奥だ。その向こうに階段があって地下室へ行ける。その地下に工場や実験室がある。先生方はそこにいるというわけさ」
 「地下にそんなものが・・・。随分以前からあったのでしょうね」
 「たぶんな。あそこは地元の人間でもほとんど行かない。気がつかないだろう」
 「防備施設がどうなっているかわかりますか?」
 「戦うためのアジトじゃないから、ミサイルとかレーザーとかは備えてないよ。ただ大量の銃や爆薬はあった。なにせ武器密輸団とお友達だからな」
 関の言葉にジョーが彼を睨む。だが関には睨まれた意味がわからない。
 「密輸団とは違う組織なんですね?」再び神宮寺が訊いた。
 「おそらくな。だが奴らは裏で繋がっている場合が多いからな。現に密輸団の奴が今回の組織に入り込んでいるし─。おっ、もうすぐだな」
 眼下に見覚えのある風景が見えてきた。もっともこのヘリはアジトの近くまでは行かない。2、3キロほど手前で降りて、第1、2部隊が陽動作戦を始めるまで待機するのだ。
 神宮寺の操縦するヘリと第3部隊の5人を乗せたヘリが降下する。
 操縦桿をゆっくりと引いて減速し、同時にコレクティブ・スティックも徐々に下げていく。ホバリングと降下を1、2回繰り返し、やがてスキッドが地面に着いた。
 2機はローターを止め待機する。
 時を措かずして一平の持っている通信機がピー!と鳴った。第1、2部隊が正面から突入したのだ。彼らが掻き回しているうちに神宮寺達が潜入する作戦だ。
 「出るぞ」
 神宮寺の言葉に9人の男達が移動を開始した。先頭は地の利を知っている関だ。
 山地の移動なので木々を払いながら起伏のある地を走るのは容易ではないが、国際警察組は慣れているのか足元も安定しているし、関も潜入捜査を長くしてるからか年齢にしてはしっかりした足取りだ。
 途中、山道に乗り置かれたままになっているジョーのブロフィアをみつけた。が、データカードはシートの下になかった。奴らが回収したのだろう。
 「これはどうあっても製造工場を破壊しなければならないな」神宮寺が呟く。
 やがてアジトであるホテルの廃屋が見えてきた。裏側に回る。
 神宮寺は9人の男達をジョー率いる4人と、自分が率いる5人に分けた。ジョーは洸を、神宮寺は関と共に科学者を助け出し、工場やデータを破壊する。
 「おれと一平だけで充分だ。そっちの方が手がいるだろう」
 「洸が動けない事も考えろ」神宮寺が言い放ち、関に教えられた裏口をショットガンで破壊する。ドアに大きな穴が開いた。「行くぞ」
 ショットガンを構えた男達が突入した。入り口方向から銃撃の音は聞こえてくるものの、建物の奥のこの辺りは特別な動きはない。奴らは入り口を守るのに精一杯なのだろう。
 「今にうちだ。関さん、案内してください。ジョー、洸を頼むぞ」
 「Ja!」ジョー達4人は関が指差す方へ走り出した。角を曲がると見覚えのある廊下が現れた。「この辺りだが・・・。片っ端から開けろ!」
 ジョーと一平、江川と伊藤が並ぶドアを次々と開けていく。だが洸の姿はない。
 「くそォ、どこかへ移動したのか」この建物の中にいるうちは、彼らの通信機のトレーサー機能を使う事はできない。「一平、電波を邪魔しているものがどこにあるかわかるか?」
 「・・・たぶん地下だな」グロノグラフを見ながら一平が言った。「そいつを壊せばトレーサーで洸の場所がわかる」
 と、前方から銃を手にした男達が現れた。4人に向かって発砲してくる。
 「一平と伊藤は地下に行ってそいつを破壊しろ!江川、ここを食い止めるぞ!」
 一平と伊藤は身を翻し地下へと向かう。ジョーと江川はドアの陰に身を置きながら発砲してくる男達に向かって、ショットガンをばら蒔いた。と
 「ジョー!」江川が叫んだ。
 男達が何かを投げてきた。手榴弾だ。2人は部屋の中に転がり込んだ。轟音と共にバラバラと壊れた建物の破片が落ちてくる。
 「奴ら、このアジトを壊すつもりかっ」
 「戦い方を知らねえのさ」すぐさま立ち上がりドアの横に立つ。「だがそういう連中の方が怖いぜ」
 江川もジョーの横に付いた。
 「こうなったら強行突破しておれ達も地下へ行こう。奴らを1、2部隊が制圧するのは時間の問題だろうし」江川が頷く。ジョーは小さく息を吸い、「行くぞ!」
 ショットガンを腰溜めに廊下へ飛び出した。掃射し江川と共に地下室への階段目掛けて走った。
 銃弾がジョーの、江川の体を掠る。だが強化された生地で作られているJBのジャンプスーツだ。掠ったくらいではなんともない。しかしショックまで吸収してくれないので、右腕のキズを掠るたびに激しい痛みがジョーを唸らせる。
 本当は石丸医師はジョーの出動を止めたのだ。薬物はわずかだがジョーの体に残っていた。おとなしくしていればどうという事はない量だが、激しい銃撃戦が予想される現場に出るのは許可できない、と。どのような影響がジョーに起こるか石丸にもわからなかった。
 だがジョーは出た。
 もしあの時、洸が助けてくれなければ自分はここで死んでいた。あの時はそうするしか方法がないと思ったが、今考えてみるとあまりにも短絡的な行動で自らに怖さを感じた。
 そんな自分だが、この世に繋ぎ止めてくれた洸。
 ジョーはなんとしてでもこの手で救出したかった。と、その時、前方から足音が響いてきた。
 「ジョー!」神宮寺だ。「来てくれ!」
 有無を言わさずジョーの腕を取り走り出した。
 「江川は地下に行って、関さんの指示に従ってくれ!」
 「な、なんだよ、神宮寺」階段を駆け上がりながらジョーが訊いた。
 「奴ら洸をヘリに乗せて飛ばしたらしい。行き先は那須岳だ」
 「那須岳?なんだってそんな所に─」
 「例の、外部からコントロールできるテープをヘリに貼りそれに洸を乗せたんだ。おれ達が攻撃を仕掛けてきたらヘリを飛ばせて洸を盾におれ達を脅すつもりだったらしい。ところがおれ達の侵入が思ったより早くて、脅す前に捕らえられてしまったんだが─」
 「ヘリは飛んで行ったままって事かい」ジョーが舌を打つ。
 「地下の制御装置を壊されたのでどうしようもない。とにかく追うしかない」
 「追って、どうするんだ?」
 「それはその時考える」2人は屋上に出た。小型のヘリが1機置いてある。「攻撃用ヘリだ。ちょうどいい」
 操縦を担当する神宮寺が右側に座る。コレクティブ・スティックのエンジンスロットルをオープンにし回転数をグリーンアークの中央まで持っていく。そして静かに引き上げる。同時にフットベダルでテイルローターのブレード面を変えて機首の修正をする。右手は操縦桿を操作し、機体が前後左右に移動しないように抑える。
 スキッドが地面を離れ、ヘリは垂直に上昇していく。─と
 「どうした、ジョー」
 見るとジョーが目に手を当てて唸っていた。
 「いや、ちょっと・・・」顔を上げ、前に目をやる。「クラッときて・・だがもう大丈夫だ」
 「急速上昇だったからな」
 ちょっと気遣わし気にジョーを見た。が、
 「洸だ」遥か前方に洸の乗っている小型ヘリが見えた。「良かった。そう離されていないぞ」
 神宮寺は操縦桿を前に倒し、前方の青いヘリを追った。

 


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