コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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It's my life 完

 「洸!応答しろ!」ジョーが洸のGショックに呼びかける。「洸!─だめだ。眠らされてるのかもしれないな」
 「通信はオープンにしておけ。いつ洸から連絡が入ってもいいように─」
 『ミスター!』その神宮寺のリンクから一平の声が響いた。『洸は!?』
 「今、視認した。後を追っている」
 『関さんから聞いた。奴ら制御装置を壊しただろ。ヘリの行き先は予めデータテープにインプットしておいたらしい。このまま那須岳まで飛んで激突するようにセットされているらしい!』
  「なんだって!」「あの野郎?!」
 『こっちは工場を破壊して捕らわれていた人達は保護した。洸を頼む!』
 「洸!洸!」
 ジョーが必死に呼びかける。が、やはり応答はない。
 「ヘリに接近!」
 凛と響く神宮寺の声にジョーが顔を上げた。
 洸の乗る青いヘリは左斜め前方に位置している。見ると洸は操縦席に座らされている。もっとも意識はなく、ぐったりしている。
 「どうする、神宮寺」
 2機がこれ以上接近するのは無理だ。眼下が水面だったら最後の手段として相手に機体をぶつけて共に着水する事も考えられるが、山地ではまさしく自殺行為だ。
 神宮寺は青いヘリを睨んでいたが、
 「ジョー、データテープが貼られている場所がわかるか?」
 「え?機体にか?」
 「おそらく─。機外ならいいんだが・・・」神宮寺は自分達の乗っている攻撃ヘリをゆっくりと大きく、青いヘリの周りをターンさせた。「とにかくテープが貼られている場所を見つけるんだ」
 神宮寺は操縦桿をちょっと手前に引き加減に倒し、ターンを繰り返す。
 「──」
 ジョーは体を左右に振られながらも青いヘリに向かって目を凝らした。が、目の前に火花が散った。思わず目を覆う。
 「ジョー」
 「─大丈夫だ」
 そう答えたが視界が回っている。ヘリに酔ったわけではない。薬物の影響だろうか。頭を起こしているのが辛くなってきた。と、目の前に洸の顔が浮かんだ。が、アンリの笑い声と共に消えた。
 「く、くそォ・・」怒りと共に顔を上げる。と、そのジョーの目を何かがキラッと射った。「あ、あれだ!」
 「どこだ!」
 「後ろのローターの・・少し下だ」
 確かにテイルローターの下にキラキラしているものが見える。外部より機体をコントロールするためのデーターテープだ。長さ10センチくらいの、確かにセロハンテープほどの大きさだ。意識していないと見逃してしまう。だが、
 「あれをどうするんだ」
 「機関砲で削り取ってくれ」
 「なんだって!無茶言うな!ローターごとぶち壊しちまうぜ!」
 「それしか方法がないんだ」無茶は神宮寺も承知の上だろう。珍しく言葉に躊躇いが見える。「乗り移るのは無理だ。落とす事もできない。このままではあのヘリは山肌にぶつかる。その前にあのテープを取る」
 「だ、だけど・・・」
 「あのテープを取れば、ヘリは操縦可能になるはずだ」
 「洸、ヘリの操縦できたか?」
 「やってもらうしかない、洸も・・・ジョー、お前も」
 神宮寺がジョーを見た。
 黒曜石のような輝きのある瞳に表れた強い意志に射竦まれ、ジョーは何も言えない。おずおずと機関砲のスティックを握る。
 機が大きくターンした。ジョーが目を瞑る。大きく2、3回息を吸い吐いた。
 「ジョー」
 「よし、OKだ、神宮寺」
 カッと目を見開く。グルーブレイの光が前方を睨む。
 「洸!応答しろ!洸!」神宮寺が叫ぶ。と
 『・・・神宮寺?あれ?・・ここ・・どこ?なんか眠い・・』
 「起きろ、洸!目の前の操縦桿を握れ!」
 『そうじゅう・・・?わっ!ぼく、飛んでる!?』
 青いヘリの操縦席で洸がバタバタと暴れている。どうやら目が覚めたらしい。
 「詳しい話は後だ。おれが合図したら言うとおりにするんだ!」
 『え?ラ、ラジャ─』
 わけはわからないが、今は神宮寺の言うとおりにするべきだと判断した。洸は操縦桿を握り神宮寺からの合図を待った。
 「いくぞ、ジョー!」
 ヘリは一度青いヘリを追い抜き、再び大きくターンして青いヘリの後方に付いた。隣ではジョーがシートベルトを外しスコープを上げた。
 「もう少し・・・右へ1度、修正」
 このまま撃ったのでは、テイルローターごと吹き飛ばしてしまうだろう。なるべく被害を少なくし、テープの貼ってある部分だけを削るようにしなければならない。機体の微妙な位置調整が必要だ。
 「右へ1度」神宮寺が復唱する。機体がわずかに動いた。
 「その位置を維持していてくれ」
 緊張でジョーの声が震えている。
 射撃の名手と自他共に認める彼だが、さすがに今回は自信が持てなかった。
 失敗してテイルローターを壊してしまえば操縦可能になったとしても意味はない。墜落は免れない。だが─。
 「いくぞ!」
 すべての不安も躊躇いも振り払った。
 スティックの上部スイッチを少し押す。思いっきり押したのでは掃射になってしまうからだ。
 機体前方の下部に取り付けられている銃口から5、6発の弾丸が青いヘリのテイルローター目掛けて飛んだ。バンッ!とローターの下の部分が弾けて飛んだ。あのテープが貼ってあった辺りだ。
 「洸!操縦桿を右に倒せ!足元のペダルを踏み込むんだ!」神宮寺が叫んだ。だが目の前の青いヘリは前進したままだ。「どうした、洸!どっちでもいいから操縦桿を倒せ!」
 青いヘリに並び、追い越す。
 「神宮寺!あっちのキャノピーを見ろ!」ジョーの言葉に神宮寺はヘリを旋回させ、青いヘリのキャノピーが見える所まで自分達の機体を持っていく。「キャノピーの上の方にあのテープが貼ってある」
 “うっ”と神宮寺が唸る。テープはキャノピーの上部、ちょうど洸の頭の上の方に貼られていた。
 「ジョー」
 「横から狙うのは無理だ。前からでないと」
 いや、前からでもブレードが生み出す凄まじい風の威力で弾丸が狙い通りの軌道を飛ぶかわからない。2機のヘリコプターの動きから考えるとまさに神技の世界だ。
 「やれるか?」
 「・・・命掛けになるな」
 「かまわねえぜ。どーせおれはあの時─」ふと口を閉じた。
 「さっきも言っていたが、洸に助けられたというのは?」
 「なんでもねーよ」ジョーが不敵に笑う。「まっ、命があったら教えてやるぜ」
 「よし、聞くぞ」神宮寺も口元を歪め、かすかに笑う。そしてリンクで洸を呼んだ。「洸、お前ヘリの操縦は?」
 『アメリカで2、3回飛ばした事がある。飛ばすだけだったらなんとかなるよ』
 「よし、これからおれ達はお前のヘリのキャノピーを撃つ。うまくすれば操縦が可能になる。そうしたらどこかに着陸させるんだ。できるか?』
 「だ、大丈夫。1回やった事あるし』
 「おれ達の機がどうなろうと、お前は自分が着陸する事だけを考えろ」
 『え?それ、どーいう事?』
 「いくぞ、ジョー!」神宮寺はヘリのスピードを上げ青いヘリを追い越した。充分に距離をとってターンすると、青いヘリの真正面にその機体を晒した。「停止!」
 神宮寺はコレクティック・スティックを急速に下げ、同時に操縦桿を前に倒して高度を保つ。そして右のフットペダルを踏み込んで機首の方向を調節する─ホバリング体勢だ。
 神宮寺の操縦するヘリは、洸の乗るヘリの進路上にピタリと停止している。
 「急げ、ジョー!」
 「任しとけ」
 ジョーは再びスコープを起こす。さすが神宮寺だ。キャノピー上のテープの位置とスコープがピタリと合っている。
 その青い機体がだんだんと近づいてくる。スコープの十字とテープが重なる。
 ふと視界がぼやけた。何か気持ちの悪いものが胸からせり上がってくるのを感じた。歯を食いしばる。
 「ジョー!」
 スコープ内の青いヘリが、テープがアップになる。
 「Fire!」
 ジョーが叫び、機関砲から青いヘリに向かって弾丸が発射された。弾丸はキャノピーの上部を掠り、テープの貼ってある部分を吹き飛ばした。
 「うわああー!」操縦が可能になったのか、青いヘリが揺らぎ洸が大声を上げながら操縦桿を操っている。が、目の前には神宮寺達の機が─。「あっ!」
 洸の目の前まで迫っていたヘリが、突然消えた。
 「え?え?」洸はキョロキョロと辺りを見回す。と、遥か下方に1機のヘリが見えた。「神宮寺!ジョー!」
 衝突寸前で神宮寺が執った行動は、ヘリコプターの急速降下だった。
 本来、着陸時に用いるゆっくりした減速とコレクティブ・スティックを徐々に下げていく方法を急激に行ったのだ。ヘリはストンと急降下していく。ほとんど墜落に近い。どこの訓練所でもこんなやり方は教えていない。神宮寺も使ったのは今回が初めてだ。
 そして木々の高さにまで落ちないうちに、再びコレクティブ・スティックで回転数を上げてやる。そして引き上げた。だが、
 「だ、だめだ。戻らない」
 メインローターの揚力がわずかに増しただけで、再び上空に舞い上がるのは無理だ。
 ヘリコプターというのは意外に墜落に強い。トラブルが発生しても、高度と速度の理想的なデッドマンズカーブ上であれば、メインローターを空転しつつオートローテーション状態で安全に不時着できるのだ。しかし今は、速度はもちろんだが高度が足りない。
 「しっかり掴まっていろ!」
 神宮寺が下方に目をやる。森林地帯に入っていた。高い木が2本並んでいる。決断した。
 メインローターを空転させたまま、その2本の木の間に機体を落としていく。メインローターが壊れて飛んでいった。右に傾く。頭の上のキャノピーが木肌をズーと擦っていく。枝が飛びテイルローターが折れた。
 シートベルトを外していたジョーの体がスティックにぶつかりズッと滑り落ちた。
 バキッ!と大きな音が響き、ショックと共に機体が止まった。周りはベキベキ、バキバキとうるさいが、これ以上急降下する事はなさそうだ。
 だが神宮寺は操縦桿を握ったまま長い間動けずにいた。
 『ミスター!ジョー!』リンクから洸の声が響き出る。『無事なの!?』
 「─騒ぐな、洸・・・」ようやく神宮寺が顔を上げた。「こっちは大丈夫だ」
 『良かった!ぼくも着陸したよ。半分、落ちたけど』エヘヘ・・と洸が笑う。『すぐ救助隊を呼ぶから。トレーサーに切り替えて』
 「頼む─」神宮寺は息をつきシートに体を沈めた。が、「ジョー?」
 ふと横を見る。傾いた機内の隅にジョーが倒れていた。
 神宮寺はシートベルトを外し、体を滑らせるようにジョーに近づく。
 「大丈夫か、ジョー」頭をソッとこちらに向けた。強打している所はなさそうだ。だがジョーの顔色は青白く呼吸もほとんど聞こえない。「ジョー」
 救助隊が来るまで神宮寺には為す術もなかった。

 第1、第2機動捜査隊はわずか2時間あまりで那須のアジトを制圧した。
 地下の工場や実験室も、関や一平、第3捜査隊がデータを押収後破壊し、そこで働かされていた科学者や医師など5人を保護した。
 アンリを始め現場にいた13人の男達は皆捕らえられ、東京に護送される準備中に洸からの救助隊要請の連絡が一平のクロノグラフに入った。
 一平は樋口や中根ら3人を洸の元へ、西崎、立花ら5人を神宮寺の元へと向かわせた。
 洸のヘリは草地に完全に横になって落ちていた。が、洸にケガはなかった。
 神宮寺達は地上2mの所で大木に挟まれ止っていた。神宮寺は打撲で済んだがジョーの意識は戻らなかった。
 大型ヘリは3人を乗せ、一路東京へ向かうために飛び立った。

 「──だろ?だから──で、──して─」
 「・・そう・・だが・・・」
 「で、どーいう女の子が好み?可愛い娘(こ)?それとも胸の大きな娘(こ)?」
 「そりゃ・・どっちかといえば・・」
 いきなり目が覚めた。と、洸の顔があった。ジョーは目を見開きポカンとその顔を見つめた。
 「洸」少し向こうから神宮寺の声がした。「ジョーで遊んでると、また石丸さんに怒られるぞ」
 へへーっと洸が笑う。
 「やっと正気に戻ったようだな、ジョー」
 「え・・と・・・、おれは・・」
 「自白剤の副作用らしい。薬物がまだ体内に残っていたようだな。出動するなと言ったのに、と石丸さんがカンカンだったぜ」
 「???;;」
 榊原も怖いが石丸も怖い。2人共、相手がチーフであろうがSメンバーであろうが体調が悪いと見れば有無を言わさずベッドに放り込む。
 「おれ・・・まだ寝ていようかな・・・」
 「今チーフの所に行っているから大丈夫だよ」ミネラル・ウォーターをグラスに満たし渡してやる。ジョーが一気に飲み干し小さく息をついた。「水が飲めるなら大丈夫だな。お前丸2日水も何も受け付けなかったぞ」
 「・・・そうか」
 ジョーの記憶は青いヘリのキャノピーを撃った後、ヘリが急降下した所で途切れている。その後大型ヘリに乗せられた事も、JBの医療部に運ばれた事も覚えていない。
 「自白剤って怖いね?」洸が言った。「少し残っていてもあんなにペラペラしゃべるんだもん」
 “洸”と神宮寺が睨む。ジョーがキョトンと洸を見た。
 「ちょっと訊いたらさ、ま?、しゃべる事しゃべる事。?ジョージ・アサクラの真実!君は今その実態を見る!?って暴露本が出せそうだ」
 「なっ─!お前、おれに何を訊いた!」
 「こーんな事やあーんな事、そーんな事─!」洸がニマッと口を歪めた。「いや?、ジョーにこーんな趣味やあーんな趣味、そーんな趣味があるなんて思わなかったよ!」
 「洸」神宮寺だ。「いいかげんにしろ。ジョーで遊ぶなと石丸さんに言われているだろ」
 「おれの体の心配はないのか!?」
 「暴露本を出す前に、ちょっと皆に予告しちゃおうかな??」
 「あ、まて洸!」ジョーが洸を追ってベッドを飛び出した。「てめえ、一言でも余計な事言ってみろ!お前にあの自白剤を飲ませてやるぜ!」
 「ジョー、洸に助けられたという話は─」
 神宮寺が振り返る。が、部屋にはもう誰もいなかった。
 「おー、ジョー!」廊下で大きな声が響く。神宮寺が覗くと関が立っていた。「おれは君が気に入ったぞ!国際警察をクビになったら公安へ来てくれ。たっぷり可愛いがってやるぞ?!」
 「わ?、あーんな趣味かあ!?」
 叫ぶ洸にジョーが思いっきり回し蹴りを食らわした。

                                                完

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