コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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Near miss 4

 翌日は早くから手分けしてリック機が銃撃を受けたと思われる空域の捜索が始まった。
 リック機の訓練空域は波照間島より西へ200キロの上空。そこから波照間空港へ帰航するために宮古島を越えた辺りを最低高度150mで飛んでいたところ、突然エンジントラブルに見舞われたようだ。その際まわりに航空機の姿はなかったという。と、すれば宮古列島のいずれかの島から攻撃を受けた事になるのだが─。
 「この辺りに米軍の秘密基地とかあるんじゃねえのか」海図を見ながらジョーが呟く。
 「たとえあったとしても、いきなり撃ってくるわけがない」操縦桿を握る島内が言った。
 2人は今、水上機で担当空域を捜索している。他にセスナが1機、クルーザーが2機出てる。
 リック機と同じ高度150mで飛んでいるのだが、海面上にはなんの異常もない。
 「本当に銃撃だったとしたら、海上より島からだと思うが」
 列島というだけに島は多い。それらを調べるために水上機で来たのだが数が多すぎる。
 「高度ギリギリで飛んでくれ」
 船一隻浮いていない海面とはいえ150以下で飛ぶ事は禁止されている。だがジョーの要求を島内は見事な操縦で答えた。
 両足にフロートを付けている水上機は安定はあまりよくないのだ。
 「小せえ島はクルーザー組に任せて、おれ達は大きいのに降りてみるか」
 「・・・・・」
 “夏ならひと泳ぎできるのになァ”とボヤくジョーに答える事もせず、島内は彼を見ている。と、ジョーが振り返る。

 本気で睨まれたら誰もが体を縮こませるというブルーグレイの瞳が、しかし今は怪訝そうに島内を見ている。と、かすかに口を引き締めると島内から目を外した。
 「いや、違うんだ。その・・・すまなかった」
 「え?」
 再び島内に目を戻す。キョトンとしたあまり見ない表情だ。
 「この前は失礼な言い方をした。悪かったと思っている」
 「島内・・・」
 「だが、あれはおれの本心だ。それまで訂正する気はない。ただ言い方が悪かった」
 「謝る事はないさ」ふっと唇を歪める。「あんたの言った事は間違っちゃいない。おれはまわりに甘えていたのかもしれない」
 ジョーの体から力が抜けていくように見えた。後に残ったのは20才(ハタチ)そこそこの青年の表情だ。
 体も態度もでかいジョーは、いつもその年齢以上に見られてしまう。
 「だがおれの言った事も本心だぜ。あんたに覚悟があるんなら、いつでも─」
 「別に君に代わってもらう必要はない」島内はジョーを見てニッと笑った。「欲しい者は自分で手に入れるさ。JBにSメンバーが3組いてもいいだろう」
 「フンッ」
 とジョーが鼻を鳴らす。だが気分を害したわけではなさそうだ。かすかな笑みが浮かんでいる。と、
 「島内!あの小島を─!」島内はジョーの言いたい事を正確に掴んだ。大きく旋回し、もう一度小島の上空を飛ぶ。「─高射砲?」
 眼下の光景にジョーが呟く。
 “まさか”と口を動かした島内も、ジョーが目にした物を視認した。
 それは高射砲といえるような規模の物ではなかったが、それでも砲身が2機のものが3台、合計6機の砲口が空を向いていた。
 「あれだけじゃない。見ろ」
 島内が指差す方を見ると、少し離れた所にも高射砲らしき物が木々の陰から覗いているのが見える。
 「こちらフロート01、波照間、応答してくれ」ジョーがヘッドセットのスイッチを入れた。「多良間島北40キロ海域の小島だが、この辺りに米軍か自衛隊の基地はあるか?」
 『いや、沖縄本島にはあるが・・・。その海域にはどちらの基地もない』
 「じゃあ、あれは─」ジョーは波照間の施設に、眼下に見える状況を説明しようとしたが、「島内!避けろ!右35度!」
 突然叫んだ。機体が傾き滑っていく。と同時に後方にショックを受けた。
 「どこだ!?」
 「ラダーとエレベータをやられた!狙ったとしたら凄腕だ!」
 『フロート01!どうした!』施設に残った神宮寺だ。『島から攻撃を受けたのか?』
 「だと思う。ラダーとエレベータを─うわっ!」再びショックを受けた。
 「右フロート破損!」島内が叫ぶ。「これで海上に降りられなくなった」
 「神宮寺。おれ達はその小島に降りる」
 『わかった。近くを航行中の西崎達を向かわせる』
 「だめだ。来るなら武装して来い。─神宮寺、おい、神宮寺?─チッ!無線が切れた」ジョーがヘッドセットを外した。「降りられるか?」
 「島は木で覆われていて無理だ。海上からあの砂浜に乗り上げる」エレベータの利かない機を降ろすため、だんだんとパワーを絞っていく。「つんのめるかもしれないが」
 「つんの・・?」ジョーがちょっと首を傾げたが、「ま、うまく砂浜に降りてくれれば、濡れなくて助かるがね」
 冬でも20度以上の気温があるこの辺りだが、やはり服を着たまま泳ぎたくはない。
 ジョーは胸のワルサーを確かめ、備え付けのショットガンを手にしシートベルトを締めた。
 機体はほとんど失速の形で降下して行った。が、ある程度の高さまで降りると高射砲からの攻撃を受けなくなった。
 目の前に海面が迫る。
 ガクンと大きく下がって着水した。が、右のフロートがないので傾く。しかしすぐに砂浜に乗り上げた。運が悪いと砂の抵抗を受けるが、今回はうまく砂に乗り30mほど走って止まった。
 「出るぞ」
 ショットガンを片手にジョーが機外へ飛び出す。ホッと息をついていた島内があわてて後を追った。と、ヒュューという音が響いてきた。ロケット弾だと認識すると同時に水上機に落ち爆発した。
 2人は爆風で飛ばされたが、まわりが柔らかい砂地なので大したケガもせずに済んだ。
 「森の中に入ろう」
 ジョーが先に立ち森林地帯に入る。それ以後の攻撃はなかった。
 「さっきといい今といい、よく飛んでくるとわかったな」島内が言った。「見えたのか?」
 「まさか、カンだよ。いや長年の経験かな?」事なげに答えるが、長年といってもSメンバーになって2年だ。島内の方がJBにいる年数は長い。「あの高射砲は島の東側に2台、南に1台あったな。おそらくリック機を撃ったのもあれだろう。人影は見えなかったからどこかでリモートコントロールしているのかな」
 とりあえず東側に向かおうと歩き始める。
 上から見た時は小さな島だと思ったが、実際に降りてみると森林地帯が多いせいか見通しがよくない。島内の持っているコンパスを頼りに進む。
 もし一般人が不時着したのなら、そんな危ない場所にわざわざ行かないだろうが、彼らはそういうわけにもいかない。その危険な場所こそが彼らの探し求めている所なのだから─。と、ふいにジョーが足を止めた。ゆっくりと周りを見回す。
 「どうした、ジョー。また何か飛んできそうか?」
 「いや、そうじゃないが・・・」再び歩き始める。が、数メートルも行かないうちに島内に飛びついた。地面に転がる。2人がいた所にバッ!と赤い光が散った。「走れ!」
 島内を先に行かせたジョーはショットガンで数メートル離れている大木を撃った。ボンッ!と木が破裂した。金属片が降って来る。
 「やっぱり作り物か」
 「レーザー光線か」島内もコルトを手にしていた。
 「かもな」と前方の幹がキラッと光った。「島内!」
 ジョーの声と共に2人は左右に跳ねた。赤い光が走った。島内の足をわずかに掠った。
 「こっちだ!」
 島内が東に向かって走り出した。
 ジョーがジャケットのポケットから小さな丸い物を出し投げた。バンッ!と跳ね、木は根元から折れ倒れていく。さらに2人の通り道の左右でキラッと光った所に投げていく。周りでバンッ!ボムッ!と爆発し、作り物の木々は倒された。
 「ハデだな」
 「ここまでだ。もう爆薬がなくなった」
 言ったとたんに赤い光がジョーに向かってきた。横っ飛びで避ける。大きな体がしなやかに素早く動き、腰溜めにしたショットガンで正確に撃ち砕く。
 訓練では何回か見ているが、実戦の方がより素早く鋭いと島内は思った。
 「くそォ。ナントカランドのアトラクションじゃねーだろうな。─おっ」
 『そこはヤバイぞ、ジョー』多少雑音が入るが、スピードマスターから神宮寺の声が響く。『今、各方面にその小島の事を問い合わせたのだが、ひとつだけ口を濁してる所があってな。ここら辺を管轄している海保の第11管区なんだが─』
 ジョーは音量を最大にして島内にも聞こえるようにした。
 『1週間ほど前から、その海域でロケット弾や機銃のような音を聞いたという漁師から報告が入って調べていたそうだ。どうやらそれがその小島らしいな』
 「つまりおれ達が海保より先に乗り込んじまったって事か?」
 『そのようだな。そこはある犯罪組織の武器庫兼試射場らしい』
 「なるほど。高射砲にロケット弾、レーザー光線─立派に機能しているぜ」ジョーが肩をすくめる。「で、どうするんだ?海保に任せて引き上げてもいいのか?」
 『いや、せっかく降りたのだからできるだけ調べてほしいとJBを通して言って来た。あわよくば叩き潰してほしいって事だな』
 「あわ─?」首を傾げるジョーに島内が意味を教えてやる。「チェ、そんな事だろうと思ったぜ」
 悪舌をつくが元よりその気だ。神宮寺達の仇は自分達で討つつもりでいる。海保なんぞに出てこられてたまるか。
 『今、一平や西崎達とそちらに向かっている。おれ達が着くまであまり動くな』
 「止まってたらレーザーの的になっちまうよ」フンッと鼻を鳴らす。「とにかくご要望のとおりあちこち調べてやるぜ。そしてぶっ潰してやる」
 『2人だけでは危険だ。おれ達が着くまで待つんだ、ジョー。何が仕掛けられているのかわからな─』
 プツンと通信が切れた。ジョーがスピードマスターをオフにしたのだ。
 「どうする、島内?あんたはSメンバーじゃないから、おれと一緒に危険な所に飛び込む事はないぜ。神宮寺の到着を待てばいい」
 「年下のくせに生意気な奴だな」島内が眉をひそめる。しかし目は笑みを浮かべていた。「それだから誤解されるんだ。おれを含めて」
 「・・・・・」
 ジョーはちょっと驚いて島内を見た。
 JBは個人能力主義でチーフや課長になるのは年功序列ではない。だから行動部で最年少の洸やその1才上のジョーがJBでは副支部長の次の位置に当たるSメンバーでいられるのだ。したがって年齢がどうの、年下だからなんの、と言われた事がない。頭にくるより新鮮さを感じてしまった。
 「じゃあ一緒にくればいい」
 「Sメンバーのテストみたいだな」楽しそうに島内が言った。「使い物になるかどうか、よく見ててくれよ」
 知らねーよ、と呟くジョーを、しかし気を悪くした様子もなく島内が後に続く。

 「くそォ、ジョーの奴。通信切りやがって。香田、急いでくれ。彼らは大した手(武器)も持っていないはずだ」
 クルーザーの操舵を握る香田が“了解”と答えた。
 「神宮寺」ソナーを見ていた一平が呼んだ。「これ、機雷かな?」
 「機雷?今時?」
 と、言われてもソナーに映る影は機雷のようだ。島の北側に広がっている。空からでは高射砲に狙われるのでクルーザーで来たのだが機雷があるとは思わなかった。
 「西側から入るしかないな」
 神宮寺の言葉に香田はクルーザーを西に変針させた。
 そこは小さな入り江になっていて船舶が泊められるようになっている。この島を利用している奴らもここから上陸しているのかもしれない。が、今は一隻の船もない。
 香田はクルーザーを停船させアンカーを降ろした。
 「君はここに残って、いつでも発進できるようにしといてくれ」後の3人に目を向ける。「ジョーと島内は東の砲台に行くと言っていた。一平と西崎は北側を。おれとレニールは南側へ行く」
 「リモートコントロールしている所を見つけるんだね」西崎が言った。
 「うん。人影がないって事はたぶんどこからかコントロールしているんだろう。そこを見つけて叩いた方が早い。─行くぞ」
 4人は小島に上陸するとしばらくは一緒に行動した。
 ここ西側は草原で見通しもよい。だが建物はひとつもなかった。施設が地下にあったとしても通気口などは地上に作るので見分ける事ができるがそれもない。
 「よし、この辺りで分かれよう」1キロほど進んで神宮寺が言った。「一平、西崎、気をつけて行け」
 「ラジャ!」「そっちもな」
 口々に返事をし北側の森林地帯に入っていく。
 2人と別れた神宮寺とレニールは南に向かった。


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