コールナンバー ダブルJ

国際秘密警察スペシャル(S)メンバーと呼ばれる男達のお話です
Posted by  朝倉 淳

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Near miss 完

 「ここらしいな」
 大きな洞窟の前にジョーと島内が立っていた。
 ジョーのスピードマスターがこの奥に金属や電波が飛んでいる事を教えている。洞窟の上は三角形の山のように高く盛り上がっている。その頂上から何が飛び出しても不思議ではないくらいに。
 ジョーは神宮寺に連絡しようかと思ったが、それより先に島内が洞窟に足を踏み入れた。
 「用心しろ」舌を打ち、後に続く。が、「止まれ!」
 島内のジャケットを掴む。その彼の目の前をビッと横に光が走った。島内は驚いて2、3歩下がった。
 「左右を見ろ。金属製の噴出口のような物がある。レーザーか何かが出ているんだ」
 「いやな位置だな」島内が喉を鳴らす。「顔面に横線が入っちまう」
 見ると足元にもあった。身を屈めゆっくりと跨ぐ。それから島内も、周りをよく見ながら進むようになった。と、30mも行かないうちにドアが見えた。ノブも何もなく横にカードの差込口のついたボックスがあったがそんな物は持っていないので、ジョーがショットガンで強引に開けた。
 中は暗いが奥の方から光が漏れている。2人は慎重に進んで行った。と、突然タタタ・・・と弾ける音が響いた。2人は左右に逃れる。
 「近寄るな!」光の中からアクセントが微妙に違う日本語が飛び出してきた。「これ以上近づくと撃つぞ!銃はたくさんあるんだ!」
 「そりゃそうだろうぜ」ジョーが光の中の人物を睨む。男だという事はわかるが顔は陰になっていて見えない。「島内、援護してくれ」
 返事を聞かずジョーは飛び出した。島内はあわててコルトを両手でかまえた。眩しくてよく見えない。が、ジョーのショットガン以外の銃声に向かってコルトを撃つ。
 「島内!左だ!」
 反射的に左に体を回し発砲した。人影が倒れるのが見えた。前方からの銃声もだんだん少なくなってくる。
 あの男(ジョー)は自分も戦い、且つ、こっちの方も見ているという事か、と島内は思った。
 やがて前方からの光が消え、明かりが点いた。と、そこに30m四方の広い空間だった。しかし岩肌がむき出しのままのそこはグルリと機械類に囲まれている。おそらくこの島に仕掛けられている武器のコントロール装置だろう。
 何台かのモニタには島のあちこちの風景が映し出されている。空と海の映像もあった。が、その前に立っていたのは、たった1人の男だった。
 「何者だ、お前達」白衣を着た男が問う。「日本の警察か?」
 「そのうちわかるよ」ジョーが口元を歪める。「今はその機械をぶち壊させてもらいぜ」
 一歩、一歩、ゆっくりと進む。が、男は動かない。まるでジョーが近づくのを待っているようだ。ジョーのセンサーが危険を告げた。が、
 「ハハハ・・・。それ以上近づかない方がいいぞ!」男が大声を上げて笑う。「周りを見ろ!動いたり銃を撃ったりしたら、お前が周りから撃たれる!」
 「チッ」
 ジョーは舌を打ち、目だけで周りをみた。いくつもの銃口が自分の方に向いているのがわわかる。どうやらジョーが立っている場所が射程範囲らしい。
「機械だから的は外さない。確実にそこへ弾丸を飛ばすよ。おっと、後ろの人も動かないで。手動であんたの仲間を撃つ事もできるよ」
 男は島内の動きを牽制するように後ろのコンピュータのレバーを握った。うそか本当かはわからないが島内は動きを止めてしまう。
 「ここはもうだめだ。だから壊してもいいんだが─」
 「なにィ?」
 「どうせ壊すなら島ごと壊すよ。あまり調べられたくないしね」
 男は体をこちらに向けたままゆっくりと後退し、コンピュータのパネルを開けた。中には赤いスイッチが見える。その周りのスイッチをピピピと叩いた。と、2人が入ってきた通路にシャッターが下りた。もうそこから出る事は難しい。
 「ショットガンでもだめね。とても頑丈。後はこの赤いスイッチを入れれば島ごとボンッ!」
 「なんだって!」2人が声を上げた。「し、島ごと!?」
 「お前も一緒に吹き飛ぶつもりか」ジョーが言った。
 「私は裏の通路から出る。心配いらないよ」男の手がスイッチに伸びる。
 「島内!」ジョーが叫んだ。「あいつを撃て!」
 「え?で、でもそんな事をしたら、君が─」
 「いいから撃て!早く!」
 ジョーの叫びに島内はコルトを男に向ける。男は右手を銃の手動スイッチに移した。島内が撃ったとたん、男はスイッチを入れるだろう。四方を銃に囲まれたジョーが逃げ切れるかどうか・・・。そう思うと決心がつかない。
 島内が撃たないと見たのか、男の手は再び赤いスイッチに近づく。指が掛かった。
 「くそォ!」
 ジョーがショットガンを男に向かって連射した。男の体がすっ飛びコンピュータに穴が空いた。と、同時にジョーも幾筋もの掃射を受ける。
 「ジョー!」
 島内が叫び、目に入る銃身を撃ち壊していった。
 銃声が止みジョーに駆け寄る。とっさに身を躱したが何発かは食らっているようだ。血が跳んでいる。
 「ジョー、すまない。おれが─」
 と、ジョーのスピードマスターが鳴った。
 『ジョー、今、島の南側にいるんだがここは高射砲だけで他には何も─』
 「神宮寺!ジョーがやられた!」
 『やられた?どうしたんだっ』
 「島を吹っ飛ばすと脅されて、それを阻止するために─」島内の声がだんだん小さくなる。「お、おれのせいで─。おれがミスって─。すまない、ジョー!」
 「・・・うるせェなあ」小さくひとつ息をつき、ジョーが言った。「わめくな、生きてるよ。だけどあんた、Sメンバーのテストは不合格だな。─おれは大丈夫だ。こっちは・・・つっ・・う・・」
 『やせ我慢はよせ。どこをやられた?』
 「大丈夫だって言ってるだろ」
 『お前の意地っ張りを訊いているんじゃない。正確な事を知りたい。どこをやられたんだ』
 「・・・ンな事・・・体中痛くてわかンねえよ・・」
 ジョーが口元まで持ち上げていた腕を下ろした。神宮寺の声が聞こえなくなるが、持ち上げているのもきつくなった。
 「ジョー・・・」島内だ。「自爆装置がオンになっているぞ・・・」
 「なに?」ジョーは体を起こしてコンピュータを見た。赤いスイッチが点滅してその横のカウンターの数字が動いている。「あと・・・5分弱か・・。神宮寺!自爆装置のスイッチが入った!5分もない!島から出るんだ!」
 『5分じゃ無理だ。海に飛び込むしかない。そっちは?』
 「鉄のシャッターが下りて出られない。おれ達はいいから早く逃げろ」
 『ジョージ、諦めないで』レニールだ。『自爆装置の概要を教えて。解除できるかもしれない。私、コンピュータ得意』
 「わ、わかった」ジョーは立ち上がろうとした。が、それを島内が止めた。
 「おれがテスト不合格なのは、相棒にケガを負わせたからか?」
 「違う。おれが撃てと言ったのに、奴を撃たなかったからだ」
 「だけど、君が撃たれたらと思うと─」
 「神宮寺なら迷わず撃っていた」
 「・・・・・」
 島内は息を詰めジョーを見た。
 相棒を危険な目に遭わせるとわかっていながら、それでも神宮寺は動いたと言い切るジョー。その瞳には彼に対する絶対的な信頼が見て取れた。
 「通信機を。ここはおれが知らせる」その言葉にジョーは黙ってスピードマスターを島内に渡し、映像の送り方を教えた。「島内です。コンピュータの映像を送りました。後はどうすれば?」
 『スイッチの横のパネルが外れるはずです。そこを─』
 レニールの指示を受け、島内がパネルを開け操作し始めた。
 ジョーは床に座ったままその後姿を見つめている。体中ズキズキと痛むので何発か食らっていると思うのだが、不思議と体は動いてくれる。しかし流れている血を見ながら─おそらく、もういないと思うが─この姿で波照間に帰りたくないと思った。少なくとも和美の目には晒したくない。と、
 「レニール!応答してくれ!レニール!」島内が振り返る。「通信ができない」
 ガガ・・・と雑音のひどいスピードマスターをジョーが受け取った。
 「どうしょう・・。まだ途中なのに・・・」
 「この中に通信を妨げる何かがあるのかもしれないな」
 不思議なほど、ジョーは落ちついていた。
 カウンターが残り3分を差していた。

 「シマウチさん!ジョージ!」レニールが神宮寺から借りたリンクに向かって叫んでいる。「通信ができなくなった。あと少しなのに」
 その時、神宮寺とレニールは洞窟の入り口まで来ていた。
 ジョーが撃ったコンピュータの一部にレーザーの制御装置が含まれていたのか、入り口近くに仕掛けられているレーザーは反応しなかった。が、確かに彼の言うとおり、通路の途中にシャッターが下りている。ショットガンではとても壊せないだろう。と、入り口の方から2人を呼ぶ声がした。一平だ。
 「ヘリで!洸が!」
 一平は通信機でこちらの状況を知り、西崎と駆けつけてきたのだ。
 洞窟を出ると目の前に海保の大型ヘリが着陸していた。MH929、11人乗りの救助用ヘリだ。洸が手を振っている。
 「洸!この奥にジョー達が閉じ込められている。爆薬か何かないか!」
 「いいのがあるよー!」一回機内に引っ込み、小型のランチャー砲を肩に担ぎ飛び降りた。「借りてきたんだ。使うかな?と思って」
 「よし。奥のシャッターを壊してくれ。西崎!香田に島から離れるよう連絡してくれ」
 “了解!”と各自声を上げる。
 洸と一平がランチャー砲を抱えて洞窟に飛び込んだ。バシュッ!と轟音が響く。レニールがすぐさま洞窟に飛び込み奥に向かって走る。
 「シマウチさん!パネル中央のスイッチを切って!」大声で叫ぶ。
 突然の爆発に驚いた島内だが、レニールの言葉を聞くとパネル中央の大きなスイッチをバンッ!と叩いた。
 「隣の配線を抜いて!」
 何本かあったがまとめて引っこ抜いた。ウィィ・・ンと音が震えカウンターが止まった。
 「ま、間に合った・・・」レニール越しに神宮寺がカウンターの数字を見た。「・・・あと2秒・・・」
 全員が大きく息をついた。と、
 「ジョー」床に転がっているジョーにやっと気づいた。「大丈夫か。自爆装置は止めたぞ」
 「何も言わず、いきなりドカンかよ」神宮寺に上半身を起こしてもらいながらジョーがぼやいた。「おれ達がすっ飛ぶ事は考えなかったのか?」
 「そんな事考えていたら全員がすっ飛んでいたよ」
 ひでぇ・・と、再びジョーが眉をしかめた。
 「それにしても島内の行動は素早かったな。レニールの指示通り正確にコンピュータを操作していたし、大したものだ」
 「おれ、コンピュータ、得意なんだ」ちょっとテレ臭そうに笑う。「どうだ、ジョー。これで先の失敗は取り消しにして、合格という事で─」
 「さあね。おれ、Sメンバーのテストの合格基準なんて知らねーもん」
 「ええ!?知らないで不合格とかナントカ言ってたのかあ!?」
 ひどいなァ、とぼやく島内にジョーが笑う。が、すぐにイテテ・・と身を屈ませた。
 「なに言ってんだ、2人共?」神宮寺がジョーの左腕を取り自分の肩に回して立たせた。右側には島内がついてくれた。「とにかく引き上げよう。洸、海保さんのヘリに波照間まで行ってくれるよう頼んでくれ」
 「いいけど・・・」ちょっと口ごもる。「その代わり皆も一緒に謝ってよ」
 「謝る?なんで?」神宮寺が怪訝そうに洸を見る。が、「まさか、お前─」
 「だって、沖縄に着いた時にジョーの飛行機が落ちたって聞いて、こりゃ大変だと思って迎えのヘリなんか待ってられなくて、那覇航空基地に行って─」
 「それであのヘリとランチャ?砲を乗っ取ってきたのか」神宮寺が呆れて、ため息混じりに言った。「あれ?待てよ。お前あんなに大きなヘリ動かせるのか?」
 「まさか!パイロット付きに決まってるじゃん!」
 なにあたり前の言ってるの、ミスターは、とうそぶく洸に、それじゃあプラス強制連行もじゃないか、と神宮寺は思った。
 「いいじゃねえか。これは元々海保の仕事だったんだぜ」ジョーが言う。「それをおれ達が片付けてやったんだ。ヘリの一機や二機くらいでガタガタ言わせねえ」
 「それもそうだな」ゆっくりと出口に向かう。「何か言ってきたら、洸を派遣したチーフに任せよう」
 洞窟を出ると青い空と海と、その大きなヘリが待っていた。

 武装した小島は破壊させず残ったが、彼らがハデにコンピュータを壊したので島に設置された武器が使えなくなった。それでも海保が上陸して調べるという。
 そういう後始末は任せ、神宮寺達は翌日には東京に向けて波照間島を飛び立った。
 5、6発の弾丸を食らっていたジョーは、幸いな事に急所は外れていたし小口径銃だったので東京に戻ってから摘出手術を受ける事になった。島の医師に、それは無茶だと言われたがそんな事を聞くジョーではないので神宮寺達は誰も止めなかった。
 もちろん、JBに戻り石丸の雷が落ちる事になったが─。

 JBの3階にある食堂は昼を少し過ぎているせいかあまり人がいない。そこへ午前中の基礎訓練を終えた神宮寺が入ってきた。
 窓口でシーフードピラフとトマトジュースを注文し、次の窓口でトレイごと受け取る。室内を見回すと窓際にジョーが一人座っているのが見えた。
 「よお。もう出て来たのか」彼の前に腰を下ろす。だがジョーは神宮寺の言葉に答えるどころか彼の方を見ようともしない。「どうしたんだ?」
 「・・・神宮寺か」今、気がついたようだ。「別に・・・。今日は水曜日だなァと思って・・・」
 「そうだけど・・・」
 「お前、日曜日にミアイしたのか?で、結婚するのか?」
 「なんだ、その事か」神宮寺はスプーンを置いてジョーを見た。「見合いはしなかったよ。相手の女性が・・つまり行方不明というか逃げられたというか・・・」
 「逃げた?お前、何かやったのか?」
 「だから会う前に逃げられたんだよ。向こうもまだ結婚する気はないってご両親に言っていたらしい。それなのに強引に見合いを設定されて─」
 「怒って逃げ出した?こりゃいいや!」ジョーが声を立てて笑い出した。
 「だから見合いはしてないし、結婚もしない。元々そのつもりもなかったしね」
 「・・おばさん、ガッカリしてなかったか?」
 「ん・・どうかな。そうでもないみたいだけど・・」
 「そうか・・・」ジョーが波照間で和美と話した内容は神宮寺には伝えていない。「まっ、よかったよ。これでブランディはもちろん、奥にある年代物のワインも─」
 「あれもお前だったのか!」
 “しまった!”とジョーが立ち上がる。
 「どうもおかしいと思ってたんだ。あ、こらまて!」    
 神宮寺がジョーに掴みかかった。体を捻って逃げようとしたが弾丸傷に触ったのか悲鳴を上げた。神宮寺に捕まる。
 ジョーが目の前のシーフードピラフの皿を神宮寺の顔にベチャッと貼り付けた。
 「あれでSメンバーだなんて・・・」見ていた島内が呟く。「おれの方が適任だと思わないか?」
 横にいる西崎がナハハ・・と眉を八の字に笑った。
                                            完

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